第248話 平穏に過ぎる日々

続く3ヵ月の月日の中で魔法学校の生徒がこれまで以上に頑張った成果として、回復魔法を使えるグレード6の人数が7名から15名に増えた。


幼い家の子サチちゃんとガスリー君が刺激となって発奮した結果である。


これには、丁度良いタイミングで助っ人講師に入った6期生と7期生が非常に良い仕事をした結果だ。


よってラフティの面目を立てた事とになり、ラフティから大いに感謝されるのであった。

どうやらラフティは国王陛下からお褒めのお言葉と昇給を頂いたとか。

しかし本人曰く、「そんな物より結婚相手をくれ!!」と小声で呟いていたが・・・。

本人は直に言えないだろうから、今度それとなく国王陛下に要望を伝えておいてやろう。


誤解を招かない様に補足するが、家の子(サチちゃんとガスリー君)はこの治療院の治療担当のメンバーとなるに際して魔法学校の生徒同様に書くグレードの実技認定試験を受けてグレード6の認定を受けている。


いつの間にかちゃっかり王都訪問組のメンバーとしてローテーションに組み込まれており、幾らシッカリして居ると言っても幼い子供と言う事でこちらのゲートセンターから王都の治療院まで魔法学校の生徒と一緒に引率して貰って通う様になっている。


まあ何か在ったら反撃するか、ゲートで逃げれば良い訳だけど、念には念をだ。


そんな訳で週に何回か王都に行く様になると、向こうでも幼い2人のコンビは瞬く間に広まって人気となり、ちょくちょく高価なお菓子等をお土産に貰って来る様になったみたいだ。

まあ、その貰ってくるお菓子の大半が俺のレシピ由来と言うのはちょっと面白いがな。


そしてこの3ヵ月間でコータは随分と喋れる様になって、こちらの言ってる事も随分と理解出来る様になった。


俺がサチちゃんとガスリー君への魔法訓練を終えた事でコータに掛かりっきりになった結果、随分とパパっ子になってしまった。


日々コータの相手をするだけで自分のやる事の山場と言うか物足りなさが目立つ今日この頃。


前々からコツコツ準備していた飛行船の材料もある事だし模型感覚で自分専用機を作って見ようかと思い至ってコータが魔法訓練場で好きに魔法を使っている横で密かに自分専用機を作り始めたのであった。


本当はダンジョンアタック再開って案もあったんだけど、それだとコータの相手出来なくなるしね。


舌っ足らずで「とーたん! もほーいきゅ!(魔法行く)」と言って魔法訓練場に連れて行けと強請ったり、無属性魔法のリューターで木木材を削る事を覚えると、自分で何かを作ろうとしたり、と目が離せない事が多くなった。


余計な事を教える~だ!って言われるかも知れないが、確かにその通りだけど、コータも俺の子だけに物を作ったり造形したりするのがどうやら好きみたいでね。俺が飛行船を作る序でについつい教えてしまったんだよね・・・。



最初は俺が飛行船のフレームを作る際に出た端材を好き勝手に削ったりしてたんだけど、段々人の形に削ってたりしてて驚いてしまった。


まあたいした出来映えじゃないけど、下手な粘土細工よりも良く出来ていたよ。 どうやらそれはユーキちゃんの玩具としてあげるつもりだったらしい。


ほら、サチちゃんもお人形さんを大事にしてあそんでたじゃん!? 今でこそ当時ほどじゃないけど、サチちゃんの部屋に飾ってあるのを知ってるから、それを作り集ったんじゃ無いかと思う。


なかなか優しい子に育ってるじゃないか!? お父さん嬉しいぞ!


そんな感じに更に3ヵ月が過ぎて、いよいよ飛行船が形になって、ケープ・スパイダー・シルクに蒸着する金属をどうするかって悩んだのだけど、結局幾ら金が余ってるとは言っても只の趣味の延長なので価格的に安い白銀を使う事にしたのだった。


その代わりにケープ・スパイダー・シルクは他の2機との差別化でオールダークブルーと言うかネイビーブルーに染色して貰った。


つまり王国機と同じ手法である。ネイビーブルーに染色した裏面に白銀を蒸着させた。


もっと明るいスカイブルーとかも考えたんだけど、空に浮かばせた図を想像するとパッとしないので早々に却下となった。


その代わりではないが、王国機と同じ様に、金色のストライプの帯を真ん中に水平に入れる事にした。


これはオリハルコンを蒸着させて貼り合わせる感じである。


そのストライプの中央には一応宣伝効果も考えて黒文字で『オオサワ商会』の文字を大きめに入れてある。


ある意味、この世界初の宣伝用飛行船だな。


金色バックのストライプに黒文字でなかなか良い感じに仕上がったと思う。


狙った訳では無いが、飛行船が完成したのは、丁度コータの2歳の誕生日であった。


勿論、毎日飛行船を作る真横でコータも人形とか作って過ごしていたので、「コータ! ついに完成したぞ!」と声を掛けると、「とーたん、かんしぇー?」と今一つ理解して無かったが、

「さあ、コータも乗るか?」って聞くと「あい!」って嬉しそうに顔を上げていたのだった。


今まで他人の期待ばかりだったが、こうして自分の機体が完成すると、嬉しさも感動も一際である。


コントロールルームでシートに座りコータを膝の上に座らせた、まま離陸すると、コータがキャッキャと喜びの声を上げていた。


こうなると、もうちょっと『ホーラント輝石』の予備が欲しくなるな・・・どうせ国王陛下もその内欲しがるだろうし。

現在の2つを使い果たす前にスペアーをある程度確保しとかないとな。


多分、国王陛下はそこら辺の事全く考えずにホイホイ使っていそうな気がするけど、どうするつもりなんだろうか? とちょっと先がしんぱいになるのであった。



まあそもそもだが、この『ホーラント輝石』自体がどの程度保つのかもふめいだからなぁ。


スペアをもっと確保しったら、

その内この飛行船を使った遊覧飛行事業でもやるか?と一瞬考えたが、とても普通に払える人の居ない価格になっちゃうので、即座に自分の脳内で却下したのだった。


あ、勿論その後夕方に掛けてコータの単所祝いを家で開いたよ!

コータが嬉しそうに誕生日ケーキの生クリームを口の周りに付けて頬張っていた。

尤も我が家ではこうして銘々の誕生日を毎年祝っているが、此方の世界の常識では特に祝う習慣は無いらしい。

敢えて 言えば成人の時だけ割と盛大に祝う程度だとか。

誕生日ケーキ? 何それって感じらしい・・・まあ当然か。

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