第247話 領立療医院開設
家の子らの援軍(臨時講師)の件もあって、それからのラフティの動きは早かった。
まあ、それだけ切羽詰まっていたんだろう・・・目の下に隈も出来ていたし。
どうやらマッシュが迅速に人員の調節をした様で、6期生と7期生を講師として派遣したらしい。
治療院の話は直ぐにマッシモ様より認可が通って非常に低価格で治療を行う有料の治療院に決まったらしい。
まあ有料と言っても、大銅貨1枚(千ギリー)ポッキリなんだけどな。折角治療を行っても完全無料だと治療を行う者のモチベーションや責任感が保たない可能性もあるし、無料だからと言って下らないかすり傷程度で何度も来られると本当に治療を必要とする人に行き渡らない可能性もあるので有料としたのだ。
どこの世界にも、無料と聞くと後先や他の者の事も考えずに理不尽な事をする愚か者は存在するので敢えて無料にしなかったと言う訳だ・・・まあ提案者は結局俺なんだけどね。
ほら、日本の時に問題になっていた医療問題とかあったのを思い出したのもあってね。それを防止する為に有料を提案したんだよ。
そんな訳で、提案から約2週間でマッシモ領立治療院が開設されたのだった。
開設当日の治療担当のメンバーの中にちゃっかり家のおチビちゃん(サチちゃんとガスリー君)・・・いやここでは先生か?が紛れ込んでいたのだった。
2人共にかなり若くして魔法を始めてているので魔力量に関しては其処らの成人した魔法学校生よりは格段に多い。サチちゃんの場合、一般的な魔法学校生の約3倍くらいはあるんじゃないだろうか?
ガスリー君で、約2倍くらいか。これは、出遅れたガスリー君がサチちゃんに追い付こうと頑張った結果である。
この日に参加した7名の魔法学校生は自分達より遙かに幼い魔法使いの桁違いの魔力量に非常に驚いていた。
と言うのも、初日と言う事もあってか、冷やかし半分怖い物見たさか患者数が異常に多く、家の子らよりも先に魔力切れで7名共にダウンしてしまい、途中から控え室で横になって居たのだ。
そんな彼らに変わって『偶々』居合わせた俺が、抜けた穴を埋めるべくサチちゃんとガスリー君の隣に並んでサクサクと回復魔法を掛けて居たのだった。
まあ横目で2人が回復を掛けてるシーンを観察していたが、なかなか堂に入ってて問題無い治療が出来ていた。
流石は家の子達である!!! と心の中でドヤ顔をする俺であった。
家の子供らは初日以降も修行の一環としてこの治療院に通う事に決めた様だ。
特にガスリー君は訓練にもなってお小遣いも貰えると大喜びであった。
そう言えばサチちゃんに計算は教えたけど、お金の事については何も教えて無かったんだよな。それでどうやらこの機会にガスリー君が教えてくれたらしい。
俺とした事が完全に抜け落ちて居たね。普段全部買い与えていたし、特に決まった小遣いも渡してなかったし。
でも初めて自分でお小遣いを稼いだ帰りに2人で出し合ってお菓子を買った様で、俺やアリーシア、そしてコータにお土産をくれたのであった。
もうね、思わず嬉しさでギャン泣きしそうになったよ。 家の分を渡した後、残ったお菓子を嬉し気に持ってガスリー君はカレンさんの待つ家へと帰って行った。
きっとカレンさんも今頃ボロボロ泣いているに違い無い・・・。
領立療医院の若い魔法使い(ガスリー君)と小さな魔女(サチちゃん)の事は瞬く間にマッシモ中に広まり、初日に魔力切れで遅れを取った魔法学校生も刺激を受けたらしく、日々魔力切れまで頑張って魔力を伸ばす努力を続けて居る様だ。
魔法使いにとって魔力量は生命線だから多いに越した事は無い。是非とも自らの生命線を太く長くして欲しい物だ。
そんな訳で順調な滑り出しの領立療医院が魔法学校の他の生徒達にも刺激になった様で、やたらと魔力量の多い可愛い幼女と幼い少年のコンビに負けるな!とある意味停滞気味であった学校全体が盛り上がっているそうな。
後日ラフティから、「流石は師匠です! そこまで見越してのご提案だったのですね!?」と羨望と尊敬の眼差しで俺を見つめて来るラフティだったが、全くそんな高尚な意図も何も無かった俺は・・・「まあな。」とだけ返しておいたのだった。
お陰様で我が家の子らも自分の身体を傷付ける事無く重傷と呼べる大怪我の治療やちょっとした病気の治療を行って、順調に経験値を積み上げて行っている。これぞ正にwin-winと言う物だろう。
2人が俺の手をほぼ離れた事で、俺はコータとの時間を多く取り、日々ヤバイく無い魔法を教えて只管魔力を使わせて魔力量の底上げを密かに行っているのだ。
最近のコータの置きにお入りは砂遊び感覚で行う土属性魔法によえる秘密基地作りやトンネル掘りである。
この時ばかりは、無駄に敷地が広くてよかったと思ったね。
砂山の代わりに(土属性魔法で出した)土で作った山をベースにしてトンネルを掘ったり階段を作って山頂に小屋っぽい物を作ったりしてるんだからね。
俺も其処に加わって、長い滑り台を作ってやったりしてここ2ヵ月ぐらいでかなりコータと仲良くなったと思う。
さて、ユーキちゃんだが、日々可愛く表情豊かになって行っている。
まだあーとかうーとかだうーとかしか言葉を発さないけど、割と大人しくアリーシアの手を煩わす事も少ないみたい。
もしかして、ユーキちゃんもサチちゃんやコータ同様に魔法に関しては早熟なんだろうか?
サチちゃんとユーキちゃんで美少女魔女コンビか!?それもアリだな・・・。と親馬鹿全開の妄想をする俺であった。
■■■
治療院が安定して回り出した頃、ラフティからの連絡があり、どうやら王都にも治療院を開いて欲しいと言う『強い』要望?が王宮よりあったらしい。
そうは言っても回復魔法を使えるグレード6の生徒はそうそう沢山居る訳で無く、「どう対応しましょうか?」と言う面倒なご相談であった。
とは言っても、『王立』なだけにメインスポンサーのご意向である。上手くローテーションして王都派遣用の人員を作るしかない。
一応ラフティに言って、幾つか必須条件を出してそれを飲んでくれる事を大前提にする事にしたのだった。
・派遣人員や回復魔法を使える魔法使い(以降『医療資格者』)のゲート無料パスの発給。
・ゲートセンター近辺に治療院を開設する事。
・『医療資格者』に対し不敬罪等の適用の免除や強要を禁止する事の徹底、更に『医療資格者』の自己防衛の為に魔法や武力による反撃や攻撃を容認する事。
これによって、マッシモに在籍しながら日々通いで治療も出来る様になるし、王都で絡んで来そうな王侯貴族の無理難題を撥ね除けられるだろう。
まあおそらく、条件を飲んでくれるとは思うけど、家の子らはまだ幼いので当面は行かせないけどね・・・。
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