第246話 安全対策

もうここまで来れば俺の口出す事は少ないだろう・・・。え?回復魔法を忘れてるって? うんそうだったな。


そうなると、まずは人体の何たるかを教えてしまうのが先決だろう。


「さて今日は回復魔法を学ぶ為に重要な人の身体の仕組みについてを教えて行く事にする。これは事前に人体の仕組みを知っているのと知らないのとで回復魔法を使った際の効果や治り具合に大きく差が出るからだ。一般的に腕や指でも足でも部位を欠損してしまうと通常の回復魔法では治す事が出来ないんだが、人体の仕組みを知れば欠損部位だって修復することが出来る様になるんだ。」と言いながら俺が以前教材用に作った『人体の仕組みについて』と言う小冊子の教科書を2人に手渡す。


「基本回復魔法と言うのは、人体の持つ自然治癒力を高めてやったり、自然治癒力の範囲外の物を補ってやったりする事で治癒を進める魔法だ。 で、このテキストにも書かれて居るが、人体は色々な内臓や骨等の物で出来て居るのは既に知って居る通りだが、その臓器や何かを作って居る最小のパーツと言う物が『細胞』と呼ばれる単位になる。

例えばこの腕の皮膚だって、拡大して見て見ると、その『細胞』が集まって皮膚と言う形態になっている。その皮膚の下の筋肉も『細胞』の集まりだ。


そして重要なのは、その『細胞』の中に人体の設計図と言われている『遺伝子』が入っているんだ。だからもし身体の一部を失ってもその摂家図と言われて居る『遺伝子』通りに欠損部位の細胞を際限してやれば結果欠損部位の再生が可能となるんだ。」と締め括ると、2人から、「すごーい!!」と言うお言葉を頂きました。

「あ、でもな、死んで閉まったら生き返らせる事は『回復魔法』では出来ない。生きてる人限定だ。それに、出血してしまって流れ出た血液の補充が出来る訳じゃないので注意が必要だ。」と何でも出来る訳じゃない事を教えたのだった。


まあ、一定条件が揃えばAEDで心臓に電気パルスを流して遣れば息を吹き返す可能性もあるが、それは最後に教えるべきだな・・・。


あれも心臓停止から4分以内って言う誓約が有ったし。そう言う理由やら色々説明しないといけないしな・・・。


そう考えると、本当に色々とゴチャゴチャ諸々が多いな、子供らにちゃんと伝わって覚えられるだろうか? と思いつつ黒板のある部屋に移動して血液の中の白血球や赤血球、そしてその働きから、脊椎で血液が作られる事等を黒板に書いて説明しつつ、ノートに自分で写させて細胞の絵と遺伝子の絵を描いたりして知る限りの事を伝授したのだった。


■■■


実際の回復魔法の発動時のイメージ等に今日教えた人体の仕組みを踏まえた物を織り交ぜて魔力を練る様に教えつつ、俺の指や腕を切って回復魔法を掛けさせてみた。


そして回復魔法が正しく発動して俺の身体の傷がちゃんと治る様になったら、今度は自分の腕を軽く切らせて痛みに耐えて冷静に回復魔法を掛けさせる訓練を行った。


鬼畜と言われても、実際にこれが出来ないと回復魔法を覚えさせた真の目的である自分自身の延命や治療が出来ないのだから心が痛く苦しくともやらせないと駄目なのだ。


こればかりは仕方が無い。ゴメンな2人共。


午前中だけと言うかなり短時間で詰め込んだ授業となったけど、取り敢えずある程度の自分自身の怪我までは冷静に行える様になったと思う。


これで俺も安心して大丈夫だろうか?


まあ出来ればこの子らもそうだけど、魔法学校の生徒達にも街の人達相手に治療医院とかを定期的に開いて実践を行うべきだろうな。


この世界では神殿の方で回復魔法での治療とかはやってなくて、治療は全部ポーション頼りだったんだよね。


それもこれも、あの貴族らが魔法利権を独占して正しい情報を外に出さなかった事が原因で、圧倒的に回復魔法だけに拘わらず、『魔法使い』が足り無かった所為なんだが・・・。


これは全国の神殿に伝わる様に何か知識を広めて行った方が良いんだろうな。


でもなぁ~それで神殿サイドが後々腐って回復魔法を利権化したりしたら嫌だしどうした物か?と1人で悶々と悩むのであった。



回復魔法の授業が終わると2人は魔法訓練場に行って訓練したり、街の方に行って先日習得した『気配察知』の訓練をするつもりらしい。


ヤル気があって宜しいじゃないか!?



俺は俺で、折角良い事を思い付いた事だし久々に魔法学校に顔を出してラフティに学生による「魔法治療所」のボランティア?の件を話に行くのであった。



「よう!?ラフティ、久しぶり!元気そう・・・ではないな。お疲れ気味か?どうした?」と学長室にノックして入って窶れ気味のラフティに声を掛ける俺。


「あ!トージ師匠!!元気では無いです。過労で倒れそうです。師匠が飛行船ですか?あんなのを作って陛下が嬉し気に飛ばすものだから、入学希望者が爆増しちゃって。

それで講師が不足気味で、ギリギリで廻しているから、限界が・・・。」と声に力の無い弱った感じのラフティ。


こう言う時って甘い物を食べさせて少し幸福感を味合わせてやらんとな。 何かストックあったっけ?と手持ちの甘味を思い出して、シュークリームとアイスクリームの盛り合わせた皿を出してやると、

死んだ様な目に光が灯り美味そうに食べていた。


「トージ師匠、トージ師匠の所の子を講師にもっと出して下さいよ!今何期生まで居るんでしたっけ?」と思い出した様に食い付いて来るラフティ。


「ああ、今か? 多分な、20期生以上居るけど、魔法を会得して講師出来る者となると、良い所で8期生から10期生かな。そこら辺の詳しい事は全てマッシュに任せて居るから、ちょっと問い合わせてみてくれるか? 俺には了承を取ったって言って良いから。ちゃんと正規の派遣料は出るんだろう?」と行ってニヤリと笑うと嬉し気にウンウンと頷いていた。



「それでな、今日来たのは他でもないが、ここの生徒達にも『回復魔法』教えて居るんだろ? それでさ、街で無料でも有料でも良いんだが良心的な料金の『療医院』を行ってみたら良いんじゃ無いかって思ってな。ほら、あれって場数踏んだ方が実際身に付くじゃ無いか!?」と俺が今日来た本題を告げると、「なるほどぉ~。それは一理ありますね。」と思考には行ったのであった。


「マッシモだけじゃなくてさ、例えば王都とかの主要都市にも出張『療医院』を行っても良いし。採算が取れて、尚且つ生徒達の経験が増えれば尚win-winじゃん?」と俺がプッシュする。


「なる程、じゃあ一度、そう言う建物の提供を領主様の方で街の住民の為と言う事でお願いしてみましょう。」と前向きな姿勢を見せるラフティ。


「で、その際だけど、治療院の回復魔法を掛ける側の面子に家の娘と俺の弟子を1名追加で混ぜて欲しいんだけど良いかな?」と聞いてみたら、


「ああ、なる程~。師匠から魔法学校の運営に提案なんて珍しいって思ったら、それが本題ですかぁ~・・・って、あれ??娘さんってまだ小さくなかったですか?10歳以下でしたよね?あれ?」と色々察したあとで首を傾げるラフティ。


「」家の娘、サチは今4歳だな。もう1人の弟子は6歳だ。もう2人共にここの学校で言うグレード6を越えてるかな。回復魔法~『ゲート』まで使えるから。昨日も森に行って実習がてらにオークの集落を1つ殲滅して来た感じだ。我が子ながら恐ろしい上達振りだぞ。」と俺が言うとドン引きしていた。


「貴方って人は、幼女に何をさせてるんですか!? しかし、4歳で『ゲート』まで使えるんですか!? 流石にトージ師匠の血筋凄まじいですね。師匠! 今度私にも『ゲート』をお教え下さい!!一応これでも魔法学校の学長なので、幼女に負けて居られませんし。」とお願いされたのだった。


「まあ、それは構わんぞ。ラフティも弟子の1人だし、立場的に使えた方が示しが付くからな。先日家の一期生も全員『ゲート』を習得したし、頭が柔らかければ案外サラって習得出来るだろう。」と了承したのであった。


そんな打ち合わせを終えて、コータの待つ自宅に戻るのであった。



自宅に戻ると、積み木でつまらなさそうに独り遊びするコータの姿にちょっと胸が痛んでしまった。「コータ、ただ今!」と言って膝を着いて両手を広げると、ガバッって顔を上げて嬉しそうな顔で俺を見て「とーたん!!」と言いながらトタトタと駆け寄ったのであった。

俺はコータを抱き上げて抱きしめた後、夕食の時間になるまで一緒に遊んでやるのであった・・・。

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