第240話 サチちゃん超進化する その5
一晩明けた翌朝も朝から離れないコータと一悶着。
まあ親としては嬉しい懐きっぷりなのだが、手放しで喜べない事情もあって複雑な心境だ。
出来れば置いて行こうとする俺達の元から離れずにガシッと強烈な幼児とは思えない力で足にしがみつくコータとの攻防で、俺の心の方が先に音を上げてしまった。
実際、昨日の段階で単体相手の殺傷能力で言えばもうAランク?ぐらいなので今日予定している魔弾が増えたとて体勢に影響がないと言える。
つまり、使い方によってはAランクの魔物であっても討伐出来る殺傷能力の魔法と言う意味。
なによりこの歳にしてここまで魔法を習得してしまう天才児を封じ込めるのが勿体無く感じてしまっている単なる親馬鹿な俺が居るのだ。
結局『根負けした』と言う体でコータを肩車してサチちゃんと魔法訓練場に行き早練しているガスリー君に合流したのであった。
チラッと見た限りでも昨日の訓練終了時よりも発動スピードも威力も増していて、並んだ貫通した的の数々を見る限り既にかなり早出して頑張ったのだろう。
「おお、ガスリー君、昨日よりも格段に良くなったね!」と褒めながら頭を撫でてやると嬉しそうな顔で照れるガスリー君。
そんなガスリー君を見てやる気を出すサチちゃんと「あうー!」とやる気を漲らせるコータ。
今朝一番の俺の仕事は穴だらけになった的を修復し、更にその背後の防御壁も再点検代わりに強化修復する事であった。
30分ぐらい3人に撃ちっぱなしさせて置いたら、結局全ての的は同じ様に穴だらけである。
もういい加減鉄の的は駄目だなと諦めて、防護壁自体に的のマークを描き込む感じにしてしまった。
それまでバーン♪と言う貫通音からバキュン♪と言う音に換わり少々の事でもビクともしないのを見て俄然ヤル気をだしている。
おいおい・・・貫通させる気かよ!?って事で急いで防護壁の裏手にもう1層防護壁を急増したのであった。
尤も幾ら天才児共とは言え、俺の本気の防護壁を早々容易く貫通や破壊されたら堪ったもんじゃ無いからな。
一応、こちとら本職?っすから!そんじょそこらの若造に壊せる訳が無いのだけど、後ろに弾が飛んでいったら大問題だから念の為ね。
全員良い感じに魔力を消耗し、疲れだした頃、ストーン・バレッドより魔力コストの低い今回のメインイベントであるマジック・バレッド・・・魔弾を伝授する事にする。
「みんな。ちょっと良いかな? ストーン・バレッドは良い感じに仕上がってるし、そろそろ次の魔法に移るぞ!これは今までのストーン・バレッド程1発当たりの魔力を食わない。今みんな相当魔力を使ってしまって減った状態だと思うが、そう言う状態でもある程度の攻撃力を持てる魔法だ。
その名を魔弾と言う。ストーン・バレッドは土魔法で石の弾を作ったが、魔弾はフォース・フィールドと同じ無属性の弾をストーン・バレッドと同じ様な形の弾に圧縮して放つ魔法だ。威力自体は残念ながら石の弾と言う実態のあるストーン・バレッドに部があるが、発動スピードや1発当たりの魔力コストは断然魔弾だ。
実際の威力の程度を教えると、魔弾でもここらの森に出て来る魔物程度なら余裕で倒せる。マッシモ東ダンジョンのミノタウロスだと弾かれてしまうけど、それ位までは魔弾だけで何とか鳴る事が多い。非常に有用な魔法だ。」と説明すると、めを輝かせるサチちゃんとガスリー君。
意味側から無いコータだけは「うー?」と言いながらキョトンとしている。
まずは見本を見せる為に、再び鉄の的を用意して実際に魔弾を撃って見せる俺。
「パコン♪と言う音と共に的の中心が少し凹む。実際に本気を出せば魔弾でも鉄のフルアーマーぐらい貫通出来る威力はあるんだが、それはまだ先で良いだろう。
2人には言葉で既に説明してるし、2人共にフォース・フィールドの足場も使えるので無属性の下地はOKである。
自分なりに指呼錯誤しながら魔弾を撃とうとしているが、コータは取り残されて、「とーたん、うーうー」と早く教えろ!と自分の手を上に上げている。
これはきっと昨日と同じ様に実際に手を取って撃って見せろ!と言う事だろう。
まあ、ここまで来たら今更だし、何処まで進化出来るのか気になるところでもあるし・・・。
俺はコータの後ろに跪いて抱き込む様に寄り添って手を取ってユックリと魔力えお練って魔弾を作成して、コータの手の指から的に向かって発射した。
ポコン♪と言う音と共に魔弾が的に当たる。
更に続けて2発撃って見せると・・・またこの天才児君は自分自身で魔弾を撃って的にパコンと当てたのだった。
それと同時位に今回はその隣で自力で魔弾を撃とうとしていたサチちゃんとガスリー君もバコンと的に自分なりの魔弾を発射して当てて居たのだった。
今回はほぼ同着で、年上の威厳を守った形の2人共に良い笑顔で俺の方に『褒めて!』って顔で見て目を輝かせて居る。
「おお!2人共凄いじゃないか!?よくぞ自力で物にしたな!!偉いぞ!!流石だ!!」と言って、コータを含め3人の頭を撫でておいたのだった。
その後も昼飯時までの2時間程魔弾の練習を3人にさせて、十分に熟練度を上げる様にした。
さてコータだが、どうした物か?まだ魔装や正式な身体強化を教えていないのだが、身体強化自体は何となくあのしがみ付きで無意識に出来て居る気がするんだけど、
一番重要な防御の要である魔装をなんとか伝授したいところである。
ああ、言葉が通じないってもどかしい・・・。
丁度昼飯時になる頃には3人共魔力をかなり磨り減らしてかなりヘロヘロになっていたのであった。
この中で一番魔力の少ないコータなぞは、魔力不足でヘロヘロで、少々不機嫌にねってグズリ掛けていたのだが、家に戻って昼食後直ぐに寝落ちして昼寝して復活していた。
サチちゃんとガスリー君は昼食後も少し訓練をすると言って2人で訓練場へ自分のゲートで行ってしまった。
何となくお歳頃になった娘がデートに行くのを見送って居る様な気になってしまい、気分が少し落ち込んでしまうのであった。
アリーシアに言うと多分、何を気の早いと笑われてしまうだろうけど、意外に父としての俺はマジ落ち込みだったりするのだ。
さあ、魔弾の方は今日でかなり仕上がったが魔弾の次は何を教えるべきか?
本当なら、後々の事も考えて範囲攻撃魔法を教えたいところだが、そうなると、流石にコータは不可である。
どうした物か・・・と一頻り悩む俺であった。
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