第236話 サチちゃん超進化する その1
当初は肉祭りの参加人数の多さと、そのほぼ全員が俺の『オオサワ商会』の関係者である事に大いに驚いていた国王陛下とヘンリー君であったが、肉が食卓に並び出すと全く気に留めた様子も無く「美味い」を連発しつつブルー・ドラゴンを満喫していた。
やって来た当初は嵌められた感満載だったラルゴさんやゲンダさんも湯気の立つ肉が目の前に置かれると一転して満面のえみで食べていた。
そんななかで終始一番緊張して居たのはマッシモ閣下だったのではないかと思う。
ある意味この中に於いては中間管理職的な地位だし。
俺も含めそれ以外は全員庶民で下っ端の下っ端。 こう言う場面での正式な作法なんて無縁だし。
かと言って不敬罪で問われる事のないメダルもあるのである意味最強?
まあ、そんな気苦労の絶えない時間を過ごしたマッシモ様には帰り際にお土産で多めに15kg程のブロックをソッとお渡しして置いたけど。
国王陛下とヘンリー君夫婦? いや~気分的には渡したく無いけど早く帰って欲しかったから各10kgずつ渡しておいたよ・・・。
こうして3時間以上に及ぶ大3回肉祭りは無事に終了したのであった。
あ、大事な事だが、レッド・ドラゴンの肉もブルー・ドラゴンの肉も美味さは殆ど同じで牛肉にも個体差があるのと同じ様なレベルの差しか思い付かなかった。
言い換えて例えると、10tまで測る重量量り5gを測って針の振れ具合を見て居る様な物かな。
要は美味過ぎて差が感じられるレベルを超えて振り切ってる感じかな。
定期的に獲れるならどっちでもアリだね。
因みにレッド・ドラゴンもブルー・ドラゴンも肉の色は赤い。鱗の様な赤黒い色でも無ければ真っ青でもない。普通に赤い肉色なんで食欲減退する様な感じではない。
本当に微妙な差ではあるが俺の主観では、レッド・ドラゴンの肉はステーキや焼肉、肉串等に相性が良い様に思えるし、ブルー・ドラゴンの肉はすき焼きや牛丼系に合う気がする。
でもさ、ドラゴンの肉で牛丼とか冒涜だよな。勿体なさ過ぎで・・・今度屑肉で作ってみよっと。
良く弟の面倒を見てくれる本当に良い子に育ったサチちゃんとそれを補助してくれる仲良しのガスリー君・・・。
悔しいけど、ガスリー君も本当に良い子なんだよね。
まあそんなサチちゃん達にそろそろ次の安全な魔法を教えても良い頃合いかって事で何にするか悩んだんだけど、ここは人攫いとかに誘拐されても無事に帰還出来る事を優先すべきじゃないかって思ってね。
『ゲート』を習得させようって思ったんだよ。
マッシュ達にも教えた事あったんだけど、残念な事に上手くゲートが理解出来なかったんだよね。
その時の教材もあるので、今回もそれを使って説明する事にした。
2枚の紙を折り曲げ合わせて、真ん中に穴を開けて見せる俺。
「良いか、『空間魔法』では、距離は幾ら離れて居ても関係無いんだ。広げたこの紙の状態だと距離は遠い全く別の場所だが、紙を折る様に『空間魔法』で距離を『折って』こことこっち面の別の場所の面を裏表で合わせた所にこうやって、穴を開けると、ほら!通れた!」と穴から指を出して見せる俺。
更に、木枠にドアを付けた物を持って来て見せて、その木枠の狭間に紙を貼って在るんだけど、ドアを開けて其処(紙)に穴を開けて通り抜けて見せる俺。
「良いかイメージは簡単、この木枠の向こうに行きたい場所を思い浮かべそれをピッタリ引っ付けて穴を開けて通れる様にするだけだ.判るかな?」と問うと地震無さ気に頷くサチちゃん。
ガスリー君は何度も最初の折り曲げて穴を開けた紙を見ながらブツブツ独り言を言って時々目を瞑って居たりする。
「お父さん、ちょっとやってみる!」と言って、魔力を練り始めるサチちゃん。するとサチちゃんの目の前の空間が揺らぎ始めて黒い穴の様な物が見えその向こうにサチちゃんの部屋が見えた!
なんて奴だ!!!一発で成功させやがった・・・。我が子ながらもの凄い天才だ。
そんなサチちゃんの横で目を瞑ってブツブツ言っていたガスリー君の目の前にも同じく空間の揺らぎが見えてそして黒い穴の向こうにカレンさんの工房が見えた。
あ!ガスリー君もかよ!!此奴らすげーな!
要は空間の概念が理解出来ればゲートは発動するのだろう。
距離が関係無いって事を柔らかい頭で信じ込めれば空間と空間を引っ付けると言う事の意味が具現化出来ると・・・。
イカンな。これはマッシュ達にも是が非でもゲートが使える様に特訓せねばな!
実際には俺のプライベートゲートとゲートセンターのゲート網があれば然程支障はないけれど、そういう問題じゃ無い。
兄弟子たる者、後輩であるちびっ子に負けちゃイカン。
マッシュ達一期生は俺にとっても特別でもあるのだ。
え?ジェシカとラフティはどうなんだって? いやラフティには教えて良いけどジェシカに教えると面倒事が増えるから、教えなくて良いかな。
しかし、本当にサチちゃんとガスリー君は凄いな。1度成功すると、それが余程嬉しかったのか、もう何度も彼方此方行ったり来たりしている。
おっと・・・その前に注意して置くの忘れてたよ!!
「2人共、ちょっとタンマ! こんなにアッサリ成功するとは思わなかったから言い忘れて居たけど、注意事項がある。良いか、人前で『ゲート』が使わない事。人にバレない様にしないと悪いおとな達に目を付けられるから。大ぴらに『ゲート』使えるとか人に言っちゃ駄目。特に良く知らない人には要注意だからな。」と注意すると、
「「」は~い!」と言いながら手を挙げる2人。
「何、質問かい?」と促すと、
「行く先に人が居るか居無いかは行ってみないと判らないと思うけどどうしたら良いですか?」とご尤もな質問をするガスリー君とそれに同調する様に頷くサチちゃん。
「そうだな。俺の例を挙げるとすると、行く先の上空に繋いで、無属性魔法でフォース・フィールドの足場を作って、路地裏とかの人気の無い所に再度繋いでしまうな。みんな空とか見て無いからバレた事は無いね。」と言うと「なるほど~!」と関心する様に相槌を打つガスリー君。
「ああ、あともう一つ方法があるよ。俺が『光学迷彩』と呼んでる魔法があるんだ。これは透明になる様なシールドを自分の身体の周りに張って人から見えなくする方法。これなら、普通の人には気付かれない。」と言って
『光学迷彩』を発動して透明になると、「お父さん、凄い!!!」と声を上げるサチちゃんと「流石トージ兄ちゃん!!」と俺を讃えるなかなか見所のある少年。
「じゃあ今度はこの光学迷彩を教えてやろう」と2人の後ろ側に回り込んで頭の上に手を置いて撫でてやると、目の前に居ると思って居た2人は「「ひゃー!わぁ~」」と驚いて居た。
この反応が見たくて音で移動がバレない様に防音のシールドまで張ったのは内緒だよ。
サチちゃんはかなり驚いた様で、光学迷彩を解いた後にポカポカと叩いて来てた。サチちゃん、カワユス・・・。
でもこの調子だと直ぐに光学迷彩をもマスターしそうだな・・・。
そろそろ、攻撃魔法を教えても良いのだろうか?
確かに何時何時何処でトラブルに巻き込まれ亡いとも限らないし・・・。それより先に回復系が先か?と1人悩む俺だった。
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