第235話 襲来!?

ユーキちゃんが産まれて以来少しの間コータにやや甘え癖と言うか赤ちゃん返りの様な傾向が見られたが俺ではアリーシアの代わりになれず、逆にむずがる様な事が多くなった。


だがしかし、俺では駄目だったがサチちゃんには「ねーたん!」と言って甘えて構ってもらってご満悦になったりと、ちょっと父親として役に立たない情けない思いをするのであった。


そんなデリケートな日々も4週間程で徐々に『お兄ちゃんである自覚』を持ってくれたのかはたまた妹の居る状態に慣れてくれたのかグズる事が無くなって行った。


まあ結局殆ど俺は役に立たなかったんだけどね。



そんな折り、ゲンダさんよりそろそろあのポンコツコンビに出す解体依頼のストックが無くなるとの連絡があったのだった。


さてどうしたものか・・・。別に奴らの安定収入の心配までしてやる程のお人好しじゃないんだけどな。


一応俺の『時空間庫』にはブルー・ドラゴンを始めまだまだ在庫は残って居るんだけど、レッドの次はやっぱり気になるブルー肉だよな!?


解体さえしてしまえばマジックバッグに入るサイズになるし、ユックリ消費するなり熱りが十分に冷めた頃にオークションに出しても良いし。


と言う事で魔の森の小屋でマジックバッグに在庫魔物の亡骸を移して何時もの様に冒険者ギルドのゲンダさんの所にメインであるブルー・ドラゴンの解体依頼をレッドの時と同様の条件で出しに行ったのであった。



「ども!ゲンダさん。またデカイの解体依頼しに来ちゃいました。」と俺が爽やかに言うと、

「おめぇ~まさかデカイのって『また』?・・・」と言葉を失うゲンダさんに頷きつつ「まあ今度のはブルーだけどね。やっぱりほら、レッド同様に美味いのか気になるじゃん?他の素材の処分はもっと先に延ばせば良いけど肉は先に食いたいし。」と微笑むのであった。


引き気味のゲンダさんであったが、肉の件に関しては同意らしく「確かに・・・また呼んでくれよ!!」と言ってニヤリと悪い顔で微笑むのであった。


結局レッド・ドラゴンの解体の時同様に2週間足繁く冒険者ギルドに通い毎日ブルー・ドラゴンを出したり指示されたばしょをスパンと斬ったり帰り掛けには回収し・・・を続けたのであった。



一応、このブルー・ドラゴンの解体は極秘で行っていたのだが2週間後には解体の終了を待って居たかの様に見慣れた紫のストライプの入った飛行船と真っ赤な飛行船がマッシモ上空に現れたのであった・・・。


そしてこの2隻の飛行船は仲良く俺の新邸宅の敷地内に着陸したのであった。


まあ、2隻の飛行船が十分に余裕を持って駐機できるだけの敷地ってのもあるけど、『アポなし』のこれ肉集りはあんまりな横暴なのではなかろうか?

尤も肉目的とは単なる俺の邪推だけどな・・・。


ちょっと対面する前から頬がヒクヒクと痙攣しながらグッと抑える大人な俺。


しかしこの絶妙なタイミングの襲来。何処からブルー・ドラゴンの件が漏れたのやら・・・。


逆に解体が終わるまで待って居たとすら思えてしまうよな。


王都からは1日あれば十分だが帝都から直接だと数日は掛かる。


それが昨日やっと解体が終わったばかりなのにその翌日に現れるって言う事は、王都で両者スタンバって居たって事だろう?


俺が携帯電話なんか作って普及させちゃったから情報の伝達も速攻って事だよな。


かなり自分で自分の首を絞めてしまっている感じがするな。


しかも解体場所はみんなの目に触れる冒険者ギルドの裏の訓練場だし、諜報員?が確認して連絡してたとしても防ぎ様が無いよな。



暫しの間そんな事を頭の中で考えていると、飛行船から、国王陛下とジョニー殿下、もう一方の赤い方からヘンリー君夫婦が嬉しそうに降りて来たのだった。


「みつ・・・、トージ殿、久しいのぉ~。王都から遙々顔を見に来たのじゃぞ!?」と国王陛下。

「トージ、すまぬな・・・、我では止める事が叶わなかった。」と申し訳無さそうなジョニー殿下。


「お久し振りです、国王陛下、ジョニー殿下。お揃いでどうかされましたか?」と一応しらばっくれる俺。


そこへ空気を壊す様にジェシカが声を挟む。


「師匠!!お久ですね。可愛い弟子がダーリンとやって来ましたよ~!」と初っ端から相変わらずのジェシカと


「お久しぶりです、トージ殿」とスチャっと片手を挙げるヘンリー君。


「ああ、久しぶりだね弟子よ。ご無沙汰しております、ヘンリー皇帝陛下。そしてジェシカ皇后陛下?はどうしたんだい?」と此方にも何事でしょうとしらばっくれる俺。


するとジェシカがニコニコしながら「またまたまた~、師匠もお人が悪いフフフ。しらばっくれても無駄ですよ? 早く始めましょうよ!!長旅で腹ペコなんですよ!! ねぇダーリン?」と欲望を書く巣気さえないある意味潔いジェシカ。


国王陛下は国王陛下で、「儂も自分から率先して動かねば前回の様に仲間ハズレにされてしまうからのぉ~。今日は・・・今回こそはよしなに頼むぞ!トージ殿!」と空かさず自分の正当性を差し込んで来る国王陛下。


ああ、どうやらバックレ作戦は端から破綻しているっぽい。もう諦めよう。



俺は、携帯電話を取りだして道連れのゲンダさんとラルゴさん、それに欠かせないここマッシモの領主であるマッシモ侯爵閣下に連絡し、早急に我が家に来る様にと招集を掛けるのであった。



マッシモ閣下以外には国王陛下や皇帝陛下の来襲は伏せて置き、ブルー・ドラゴンの肉祭りで釣って置く。


いやぁ~、餌が良い所為か、みんな来るのが早い早い。


子供らにも早上がりで店を臨時休業でも良いからと連絡を廻して我が家のスタッフ陣にも可能な限り参加させる事にした。


え?同じ食卓を囲むのは不敬なんじゃないかって? そんな事いわせねぇ~よ!!俺の肉だし。俺が食わせたい奴に食わせる『序で』に国王陛下やヘンリー君夫婦にも食わせるんだから。


と強気の姿勢だが、

実際まだブルー・ドラゴンの肉は試食してないので本当に強気で正解なのかは判らない。


まあ強さや魔力云々の理論通りなら同等の美味さだと思うのだけどね。



知っててやって来たマッシモ閣下から暫く遅れてやって来たラルゴさんとゲンダさんが「やられた~・・・聞いてないよ!!」って顔をしていたけど、ニッコリ笑って出迎え、

「まあ今日は諦めて十分に味わって楽しんで行ってよ!無礼講で良い筈だから気にする事は無いかと。ドラゴンの肉は強いから。」と言うと引き攣っていた・・・。


土魔法で作ったテーブルや椅子そしてBBQグリルに分厚い鉄板を置いて準備を皆で手分けして始める。


子供らやスタッフ達もゾクゾクと集まり目立つ2隻の飛行船をバックに大3回の肉祭りの準備が進行している様子に驚いてはいるものの彼らは俺の動向に慣れているのか直ぐに諦めた様に切り替えて手伝ってくれたのであった。


我が家からは産後間も無いアリーシアとユーキちゃんは不参加で、サチちゃんとコータ、それにガスリー君親子も参加していた。


もっとも、流石に生えかけの歯のコータに肉食はキツ胃ので、作り置きの雑炊や離乳食での参加だが、肉で出汁を取ったスープを美味しそうに飲んで「おーちい」と喜んでいたのであった。


結果数百人規模の肉祭りになったが、レッド・ドラゴンの肉の時同様に美味いブルー・ドラゴンの肉は大好評でステーキだけで無く焼肉等色々な料理で満腹になるのであった。


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