第232話 肉祭りの余波

第二回の試食会で前回呼んで無い面々(国王陛下やジェシカ夫婦)を呼んだ所為で余計に五月蠅い事になってしまったでござる・・・。


全員ミノタウロスの肉は食った事のあるメンバーだったんだけど、レッド・ドラゴンの肉の余りの美味さにノックアウトして、お土産に欲しい欲しいとお強請りだ酷い。


まあ一応金を払うと言っているんだけど、こんなレアな物を一体幾らで売れば良い? しかも元は国民からの血税だよ! 売りにくいよ。


しかも一度呑んだら際限無く強請ってきそうじゃない?


そこで、どちらにしても今度出品するレッド・ドラゴン関連のオークションが終わってからって事に何とかジョニー殿下の説得で収まってくれたのだった。

つまりオークションの落札価格を反映した肉の適正価格でって言う事なんだけど、そうすると、滅茶苦茶な金額に跳ね上がる事は間違い無いって思うんだよね・・・。


もしオークションが終わっても我が儘を言う様であれば別途第90階層のボス部屋を周回しに行こうかと思っているところなんだよね。


しかし、次回も上手くレッド・ドラゴンがでてくれるかは不明。


オークなんかと違ってレッド・ドラゴンとかコストが高そうだから、そうそう何匹も繰り返し同じ高コストな魔物を出てくれるものかは微妙である。


うむ、あの我が儘トリオは抜きにしてどうなのかを念の為に調べて置く必要があるか。

浅い階層のボスは繰り返し同じ種が出て来るのは知っているけど、ある程度の深度になると、知る限りだとランダムに変わる気がする。


もし繰り返しレッド・ドラゴンが出て来るなら良し。完全運任せのランダムなら二度と味わえるか判らぬ貴重な物となる。

俺としては乱獲可能な前者を望むが・・・。



そんな訳で肉祭りから3日後、久々に第90階層のボス部屋に再チャレンジ。


『黒竜丸』を片手に重厚な岩の扉を開けて中に入ると、後方でトボらが閉まると同時に巨大なホールの中央に魔方陣が青く光り巨大なシルエットが見え始める!


「やった!レッド・ドラゴンか!!」と思わず喜びの声をあげる俺。


瞬時に駆け出し実体の定まらないシルエットの直前まで迫ると実体が現れるとほぼ同時に一咆哮すらさせずその青い鱗に覆われた巨大な魔物の首を刎ねていたのだった・・・。


「うむ。またつまらぬ物を斬ってしまった? え?レッドじゃない?どうやら『ブルー・ドラゴン』と言う物らしい・・・。」と斬った相手を解説しつつ、大きく血の噴水を避けて退避する俺。

『女神の英知』先生によると水系の激しいブレスを放つ『レッド・ドラゴン』と同等の強さのドラゴン種という事だ。


驚きに固まった顔のブルーの首が床に転がっている。


ここまで瞬殺だとちょっと哀れに思えてくるがちゃんとありがたく美味しく頂くから安心して成仏してくれと心の中でてを合わせる俺。



しかし何かい? もしかして、周回するとお約束通り他に、緑や黄色やピンクとか5色揃うのかな?



しかし、ドラゴン種がまた食えるのは非常にありがたい。


これがダンジョンでなくて外の世界に住んでるドラゴンだと長生きで人間と意思疎通が出来たりすると、斬って食う気にもならないからな。


本当にダンジョンに出てくれてサンキューだよな。


そして、レッドの時同様に苦労しつつ『時空間庫』に回収していい汗を掻いたとばかりに帰途に就くのであった。


『時空間庫』に入れてあるとは言え、今度はレッドの熱りが冷める頃に直ぐ解体に出さないとな。


実際重さも大きさも関係ないとは言え、『時空間庫』を圧迫されてる様な錯覚に陥るし。早く身軽になりたいと・・・。


でも、これで多少はレッド・ドラゴンの肉を分けても、問題無さそうである。



少し、国王陛下達にお裾分けして程良く噂が廻る時間を置いた後に、レッド・ドラゴンの肉を少しオークションに出して、みるのも面白いかも知れないな。


と思い付いてクックックと笑う俺。


同じ日本人の転生者が居たら、「トージ、お主も悪よのぉ~。」と言われる事必須である。


ブルーの解体はその後だな・・・思わず零れる黒い笑みが止まらないのであった。





鼻歌交じりに自宅に戻った俺は子供らと遊びながら、サチちゃんとガスリー君に魔法を教えたりして過ごした。

サチちゃんは本当に魔法の上達も理解力や応用力も抜きん出て凄く、さながら『小さな魔女』である。(まだ空は飛べないけどね)

世が世なら、主演アニメ作品になってもおかしく無いと思うのは親の欲目だろうか?


アリーシアのお腹もかなり大きくなって最近は動くのも辛そうである。


とは言ってもコータはまだまだ甘えたい盛りで、ちょっと3人目を急ぎ過ぎたかもと申し訳無い気持ちになるが、その分俺が沢山構ってやるとしよう。


まあ、父親と母親とでは違うのだろうけど・・・。

コータをフォース・フィールドの足場で高い高いしてやるとキャッキャと喜んで可愛い奇声を上げて居る。


歯も乳歯がチョボチョボと生えて来ていてニカッと笑うと小さい歯が見えて非常に可愛いのである。


このまま素直に育って欲しい物だ。



 ◇◇◇◇


肉祭りから1ヵ月以上が過ぎて漸く王都でのレッド・ドラゴン関連のオークションが終わって結果もの凄いトータル金額で骨や鱗や牙や爪が落札された。

尤も爪の一番良さそうな物は何時の日にか、『赤竜丸』でも作りたいろと思い俺が貰って『時空間庫』の肥やしにして居る。


そろろろ頃合いであろう。


と言うのも最近、主に国王陛下の肉寄越せの催促が鬱陶しいのだ。


まあそこまで言うのであれば、売るのでは無く贈呈しようじゃないか。勿論ジェシカ夫婦にもな。


しょうがなく? 両国のトップにレッド・ドラゴンの肉のブロックを10kgずつ進呈すると大変喜んでくれて

腹心達へ少量ずつ食わせる等と色々と非常に良いインフルエンサーとして活躍してくれた。


巷では噂が噂を呼び『レッド・ドラゴンの肉』の話で持ち切りである。


どうやら、機は熟した様だ。


満を持して俺はラルゴさん経由で『レッド・ドラゴンの肉』20kgをオークションに出して貰う事にしたのであった。


既に肉祭りで食べてその美味さを知るラルゴさんは非常に惜しそうに肉のブロックを見ていたが、俺がソッと別に10kgのブロックをラルゴさんに進呈すると嬉しそうな笑顔で抱きついて来たのであった。


いや、ちょっと、お触りは勘弁して欲しいのですが・・・と思いつつも、くちには出さずに大人の対応をするのであった。


実際の話、レッド・ドラゴン関連のオークションの時はそれなりに噂になって庶民の間でもザワザワしていたのだが、今回の『レッド・ドラゴンの肉』20kgのオークションはその比ではなかった。


口コミが先行しまくって、庶民の間の『死ぬまでに~~』ってのに続く言葉 として、『死ぬまでに一度はレッド・ドラゴンの肉を食ってみたい』がトレンド入りするぐらいだった。


まあそれだけ周知されたと言う事である。


まあこう言う物は何度も小刻みに出すと価値が下がるので、レッド・ドラゴンはこれで終了である。


後は身内で美味しく頂く感じで消費するのが吉であろう。


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