第231話 王国史上初?のドラゴン肉祭り

2人共ホクホク顔で俺の自宅へと帰って来た。

「ゲンダさん、レッド・ドラゴンの肉美味いと思う? 俺は美味いんじゃないかっておもってるんだよね。

何か傾向として魔力量の多い強い魔物はその度合いに応じて美味さが増す傾向にあると思うんだよね。」と俺が持論を熱く展開すると、

「確かに魔力量にも依存してる気はするな。その理論通りなら、レッド・ドラゴンの肉はヤバイよな!?」と言いながらゴクリと生唾を飲むゲンダさんと俺。


多分歴史上ドラゴン食った奴ってまだ居無いよね?


「さあ、いざ歴史1ページを紡がん!!」と威勢良く声を上げたが、ふと 一応友人と思えるジョニー殿下の事が脳裏を過り、慌てて待ったを掛ける俺。


「あ!ゲンダさんちょっとだけタンマ!! 折角だし友人呼んで良い?」と俺が言うと、

「ああ、元々トージの肉だ。俺はご相伴に与るだけだし、ええに決まっとるよ! ただ余りこの寸止め状態で焦らすのは勘弁してくれよ?」とスンナ了承してくれたのだった。



徐に携帯電話を出してジョニー殿下へとダイヤルすると、素早くワンコールで繋がって、嬉しげな声が受話器の向こうから聞こえて来る。


「もしもし、トージです。ジョニー殿下、今から時間あります? ちょっと歴史的にも珍しい物が手に入って極秘の試食会開くんだけど、折角だしジョニー殿下もどうかなって、え?何かって? ふふふ、今言うと驚き半減しちゃうからなぁ~・・・来てのお楽しみで。まずここ100年で食べた奴は居ないと思うし」と俺が言うと即座にOKがでて、件の王城の俺専用のゲート部屋に10分後に迎えに行く事になったのだった。

丁度居たマッシュとリンダ達も試食会に引き摺り込んで下準備を手伝って貰い、アリーシアやサチちゃん、そして一緒に居たガスリー君も強制参加として、カレンさんにも連絡して来て貰った。


そしてちょっと席を外してちょっくらゲートでジョニー殿下を王城でピックアップしてマッシモの自宅へトンボ返りだ。



突然『友人』を迎えに消えた俺が、ジョニー殿下と連れ添って戻って来たのを見てゲンダさんが絶句していた・・・。



「こ、これは第一王子殿下、私、冒険者ギルドマッシモ支部の副ギルドマスターのゲンダと申します。」と冷や汗を掻きながら自己紹介をして居たが、ジョニー殿下は


「そんなに畏まられると逆に居辛いので普段通りで敬語無しでお願いしたい。トージと同じく『ジョニー殿下』とでも呼んで貰って構わない。寧ろそうして欲しい。」と言うと、やっと安心した様に小声で「ジョニー殿下・・・」と呟いて居た。


「うむ。それで頼むぞ。 して、トージ、その歴史的な珍しい物ってなんだったんじゃ?」と尋ねるジョニー殿下に俺はニヤリと笑って

「ここまで来て焦らすのはヤリ過ぎなので、発表します。本日の試食会のメイン食材は、ダンジョンの90階層のボス部屋の主である『レッド・ドラゴン』さんです!」と言うと、

聞いて無かったマッシュとリンダも含め「おーーー!!」と人数少ないが故に小さいながらも歓声が沸き起こる。


「ギルドの資料の中にはこれまでにドラゴンが討伐された記録が無いらしい。 つまり、ここ100年でもお伽噺でもドラゴンを食った奴は居ないらしい。さあ、みんなで歴史の1ページになを刻もう!」とおれが拳を突き上げると、みんなもノリ良く「おう!!」と拳を突き上げていた。



さて、マッシュとリンダに頼んで、巨大な鉄板がコンロに用意されている。


色々と調理方法に迷ったものの、肉本来の味を楽しむのであれば、やはりステーキがベストだろうと言う結論に達した俺はマッシュ達2人にステーキの準備をお願いしておいたのであろ。


牛脂ならぬ竜脂を熱した鉄板に置いて溶かした脂を鉄板に馴染ませるとそれだけで素晴らしく甘い様な香ばしい様な何ともいえない香りが尾行を擽る。


そこにスライスしたニンニクを並べ、脂にニンニクの香りを付けて行く。


十分にニンニクの香りが浸み出したらニンニクスライスが焦げない様に、一旦退避させて、人数分のカットして塩胡椒したドラゴン肉をジューッと並べて置いて行く。


片面を1分ちょっと焼いて丁度良い焼き色が付いた頃合いで裏返して個別にフードを被せて内部で蒸し焼きにして内部にまで熱を程良く入れる。

1分程裏面を焼いたら、それぞれの上にカットバターを置いて、溶かしバターをで軽く焦げ目を付ける。


そして、素早くミスリル製の包丁で切り分けて更に移してさきのスライスニンニクをトッピングして、全員に配膳して行く。


「では、みんなで、頂きます!」と手を合わせて声を上げると、箸で肉を摘まんで塩にチョンと付けて口に運ぶ。


美味い!!!何て肉だ!!!歯で噛む前に口の中で解ける様に溶ける肉と言えば良いのだろうか? 決して脂っこい訳で無くそしてシッカリとした肉の旨味とホンノリ甘い後口。

これに比べるとミノタウロスの肉が霞んで消えてしまうぐらいである。


その証拠にドラゴン肉を口にした全員がシーンと静まり返り、めを積むって感動に震えて居る。

真っ先に声を発したのは意外にサチちゃんで、

「お父さん、これ凄く美味しいよ!!凄いよ!!」と絶賛してくれた。


それに釣られる様に、石化から溶かれた全員が、「美味しい!」「これはミノタウロスの肉以上の極上品」と絶賛してくれる。


ジョニー殿下に至っては余程感動してくれたらしく、「トージ!!!ありがとう!!」と言ってガシッと両手で握手して来た程であった。


「いや、美味しいだろうとは思ってたけど、まさかここまで美味いとはビックリだよ。本当にこれはヤバイね。幾らでもイケちゃうよね?」と俺地震も予想外に美味し過ぎて言葉が美味く浮かばない。



この後全員もう2周同じサイズをたべてお腹一杯になってダウンしていたのだった。



帰り際にゲンダさんにもジョニー殿下にも再度お礼を言われた。


ゲンダさんに至っては、「ああ、俺本当に今まで生きて居て良かったーー!」と冒険者時代の絶体絶命の時を思い出しつつシミジミと語って居た。


確かに、美味しい物を食った時、俺も同じ様に「あぁ~生きてて良かった~!」って心の中で呟くし・・・九死に一生を得たどころか、マジに一度は死んだ経験のある俺としては、大いに共感する言葉である。


そんな美味しい物をこうして、家族や気の置けない者達と一緒に食える幸せな一時に感謝するのであった。


勿論、レッド・ドラゴンステーキは焼きたてを1人前焼いて、神殿でマルーシャ様に献上したのはいうまでもない。


ちゃんと定期的に献上しておかないと、結構後で文句言われるからね・・・。





とここまでで、終われば良い話で終わるのだが、この後スッカリ忘れて居た某国王陛下から、「何故儂も呼ばない?」と言う恨み節の電話を頂く事となってしまうのである。


そうすると似た者親子の某弟子までやって来て非常に面倒な事になったのであった。



しょうがないので、先日仕事で参加出来なかった子供ら全員参加の回に国王陛下とジェシカ夫婦も呼んで盛大に第二回試食会を開く羽目になったのであった。


まあ、物がレッド・ドラゴンだけにこれだけの人数で食っても食い尽くす事は無いのは幸いであった。

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