第230話 王国史上初の快挙を解体!

思い出した序でに翌日冒険者ギルドを訪れてゲンダさんにコソコソと小声で解体をお願いする訳だが、

「なにぃ~!!? レッド・ドラゴンだぁ??」と驚きの余りに大声で叫ぶゲンダさん。


一番混み合うピークの時間帯ではないものの、それなりに冒険者は居る訳で、ザワつくギルドのロビー。


「ちょっ!ゲンダさん!!」と小声で語気を強め抗議する。


初期の頃にゲンダさんには見せてしまって知られては居るが良く知らない有象無象にまで俺の『時空間庫』を知らせたく無かったので態々小声で話し掛けたと言うのに・・・。


「悪りぃ~悪りぃ~。まさか予告無しにそんなお伽噺レベルの物が出て来るなんて普通思わねぇ~だろ?」と軽い調子でゲンダさん。


そこで俺は第90階層までを攻略し、第90階層の階層ボスとしてレッド・ドラゴンを討伐した事を告げると驚きつつ賞賛の言葉を述べてくれた。


「しかし、トージよ、そのレッド・ドラゴンも売るのか? 買取経って、ご存知の様にマッシモ支部ごときじゃぁ買い取り無理だし、先日の『グランド・ドラゴン・スケルトン』の骨と魔石もやっとオークションで売れたばっかしだし、ちょっと時間空けないとオークションも難しいよなぁ~」と現実的な事を話すゲンダさん。


「そうだろうね。そこはまあ理解してるけどさ、肉だよ肉!!ゲンダさん、レッド・ドラゴンの肉ってどんな味だと思う?食って見たいって思うでしょ?」と俺がニヤリと笑いながら言うとゴクリと生唾を飲み込むゲンダさん。


「少し食わせてくれるのか?」と身を乗り出して来る。


先に『物』を一度確認したいと言う事で、2人裏の訓練場にやって来て、言われるままに『時空間庫』を開いて、無属性の触手とフォース・フィールドの足場を駆使してレッド・ドラゴンの巨体をズリズリと引き摺り出す。

「うぉーーー!マジじゃん。これがレッド・ドラゴン!!」とまた大きい声を上げるゲンダさん。


その声に釣られたかの様にロビーに居た冒険者数名がコッソリ訓練場に着いてきて目にしたレッド・ドラゴンの巨体に小渡時の声と言うより「ギャー!」と悲鳴を上げて居た。


此奴らは瞬く間に消えたが、ゲンダさんと2人で解体の打ち合わせをしていると、ザワザワとした気配を感じて振り向くと先程の冒険者達が大勢の観客を引き連れて我が事の様に「レッド・ドラゴンって言うらしいぞ!」と自慢気に設営していたのだった。


ゲンダさんと検討した結果、解体に俺も立ち会う事となった。


理由は簡単でmおそらく俺以外にレッド・ドラゴンを断ち切る事が出来ないのが最大の理由である。


一般的に硬い鱗や強靱な爪や牙は武器や防具の素材として高額で取引されるが、俺の『黒竜丸』の様にダンジョンドロップ以外にドラゴンの素材を使った武器や防具は見た事が無い。


まあそれも当然で、ドラゴンなぞ、普通出会うとこの世の終わりと目を瞑って仕舞う様な魔物がポロポロ居る訳も無く。更に言うとそれを討伐出来る程の人類は俺以外に居無いだろうからである。


だから、素材が出回る事が無いのでそれを使った武器も防具も出回らないと言う事だ。


そうそう、前回の『グランド・ドラゴン・スケルトン』の骨と魔石も何処かの貴族が数家でタッグを組んでもの凄い金額で落札してくれたのでホクホクだったけど、今回はどうするかねぇ~?


仲介したマッシモの冒険者ギルドもウハウハだった様で、それを仲介した『専属』?のオッサンゲンダさんにも多額のマージンが入ったらしい。


だからこそ、受付嬢は自分を売り込んで担当になろうとするらしい・・・。


まあ幾ら色目を使われても、俺にはあと数ヶ月もせずに俺の3人目の子共を産んでくれる大事な奥さんアリーシアが居るので揺るがないのだけどね・・・。



話は逸れたが、緊急依頼と言う事で翌日から丁寧に解体をしてくれる人と言う事で解体が終了するまで、先着20名を日当金貨2枚20万ギリーと言う破格値の募集を行うと、勿論『あの』ポンコツコンビももれなく募集に応募して来て居たのだった。


今回あのポンコツコンビは前回程にヤレて無くて、血色も良くゲンダさんの配慮で生かさず殺さずの塩梅で俺の解体依頼を出して貰って飢える事無く生きて居たらしい・・・。


「トージの兄貴!今回も宜しくお願いしやーす!」と何時もの調子でやって来て俺に挨拶していた。



訓練場に置かれたレッド・ドラゴンの亡骸に響めく集まった解体依頼を受けた冒険者達。


「みんな、俺の依頼を受けてくれてありがとう。試して貰うと判ると思うが、俺じゃ無いと此奴を切る事が出来ないので俺も補助として参加してる。特に、肉を綺麗に解体して欲しい。鱗や牙や爪は傷を入れようとしても普通に傷付かないと思うから。では解体終了まで気を抜かずに宜しくな!」と挨拶をすると、声援とも歓声とも言えない妙に盛り上がった声と拍手が鳴り響いた。


そしてゲンダさんの指揮の下、俺は命じられた部分でレッド・ドラゴンをスパンと切断し、その度に「おーー!さすがはトージの旦那(兄貴)!」と妙な歓声が沸き起こって居たのだった。


俺の切断シーンを見て、俺に断りを入れてから自分の剣で剣戟を入れるチャレンジャーも数人居たが、可哀想に剣が折れたり、欠けたりするだけで、鱗に傷一つ入れる事すら出来ていなかった。


そこでスパンと斬った俺の腕と言うか俺の剣に関する質問が飛んできて、高周波ブレードの説明をすると、

「それは魔法を習得すれば誰でも使える様になるのですか? あの魔法学校に行けば?」と魔法に関する質問にまで拡大し、取得すれば、『高周波ブレード』だけで無く様々な事が出来る可能性はある。後は本人の適性と頑張り次第だと丁寧に説明してやったのだった。


もしかすると、この中の何人かが、今後魔法学校を経て俺同様にダンジョンアタックをする冒険者となるかも知れないからね・・・。


俺としては後続のダンジョンアタッカーが生まれて欲しいと言う気持ちは多いにある。是非ともこれっを機会にも奮起して欲しい物だ。



結局、俺は2週間程この解体作業に付き合わされて、鮮度が落ちない様にと、盗難防止の為に連日回収と取り出しをする羽目になってしまった。


また、普通の解体ナイフでは綺麗に切れなかったりするので、今回の解体専用にミスリル製の魔石を填め込んだ高周波ブレード擬き解体ナイフを急遽30本程無属性魔法のゴリ押しで作り今回の解体で貸し出す事にしたのであった。


この特製解体ナイフは頗る好評で、是非とも欲しいと言う者が続出し、とは言え値段的に折り合いが付かず、結局は冒険者ギルドの方で買い上げて貸し出す感じに落ち着いたらしい。


冒険者ギルドにしては偉く豪気だな?って思ったら、件のオークンで多大なマージンが入った事と今回のこのレッド・ドラゴンもオークションで売り出すことになるので有意義な先行投資と言う事らしい。


ちなみにこの特製解体ナイフの値段はは1本大金貨1枚100万ギリーとしている。稀少で高純度のミスリルを使った魔動具化したナイフだ本当なら白金貨1枚1000万ギリーでも良いくらいだろう。だから非常に良心的価格と言える。


実際、高周波ブレード擬きの効果が無いダンジョンドロップの普通のミスリル製ナイフでさえ軽く白金貨1枚1000万ギリーはするのだから・・・。


この特製解体ナイフの登場で当初難航していた解体作業は頗る捗り工数を早める事ができたのだが、日雇いの冒険者にとっては実入りが減る事に繋がるので一計を案じ、彼らのモチベーションを保つ為に早期に完了した場合、1人につき金貨5枚の早期終了ボーナスを出す事にした。


結果冒険者達はマンマとそれに乗って奮起してくれたのであった。


こうして、見事に2週間で解体が終了し、俺は欲しかったレッド・ドラゴンの肉を手に入れた!!


俺は待ちきれず、ゲンダさんを誘って我が家に招待して、レッド・ドラゴンの肉を試食する事にしたのであった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る