第229話 程良い距離感の友人?

3週間の突貫工事で外装へのストライプ追加と国旗部分の張り替えを行った。


2日に1度の割合でジョニー殿下がやって来てはたわいの無い世間話や小さい頃になりたかったダンジョンを探索する冒険者の話等をしたりして大分ジョニー殿下と仲良くなれた気がする。


その会話の中でマッシモ東ダンジョンのダンジョンアタック話をしてやると目を輝かせて聞いていた。


ある意味王家の長男として生まれた悲哀なのだろうとちょっと可哀想な気持ちになった。


「でもジョニー殿下、地位のある者は生活の安定・・・何不自由なくひもじい思いもせずに明日のご飯の心配も不要な生活をしていると思いますが、庶民は庶民で明日のご飯を心配したり、今晩の寝床の心配をしたり色々生きる事への苦労や不安を抱えているのですよ。

つまり、皆が100%満足出来る生き方や全くデメリットの無い生活をしている訳では無いと言う事。つまり、マイナスどんな人にも生きて行く上で、良い面と悪い面を持って居ると言う事ですよ。」と俺が説明すると、

「うむ、トージの行きたい事は良く理解出来るのだが、でもトージが言うと説得力が無い気がするのは気の所為か?」と居たい所を突いて来た。


「うーん、確かに私の場合嫌味でも何でも無く正直なところ今の生活に全く何の不満もデメリットも無いですね。十分以上に幸せに暮らしていると思います。ハハハ」と最後を笑って誤魔化す俺だった。


人はそれぞれ持って生まれた役割があるとしたら、俺の場合、女神の手駒としての使命は果たしたので既に役割自体を全うし終えたと言える。


ただ、父親として、夫としての役割は、まだ続いて居る最中である。



「そうだ、私の故郷の諺に『隣の芝生は青い』と言う諺がありまして、実際はそうでなくても『他人の物』は『自分の物』より良く思えてしまうと言う様な意味です。どんな物にも一長一短があるんですよ。」と説明するとなる程と納得して居た。


あれ?諺の意味合ってたっけ? まあ納得してくれたのなら良いか。



紫のストライプが胴体の先端から最後尾まで一直線に入るだけで、何か想像以上に躍動感が出てカッコ良い。


ただ、直線のストライプだけにキッチリ中心を水平に走る様に貼るのが本当に難しかった。


丁度来て居たジョニー殿下にお願いして2人でもっと後ろが上に10cmだとか言い合いながら綺麗に直線で貼れたと思う。そしていよいよお待ちかねのメインイベント国旗の貼り付けである。


これも結局ジョニー殿下に手伝って貰って2人で楽しく貼る事が出来たのだった。


逆にジョニー殿下はジョニー殿下で作業を手伝えた事が楽しかったらしく、全ての作業が終わると凄く寂しそうな顔をしていた。


「ジョニー殿下、お手伝いありがとうございます。 お陰様で何時もの様に寂しく1人で悪戦苦闘せずに済みました。 作業はこれで終わりましたが、これで最後と言う訳では無いので、また何かの機会にでもお茶でも飲みましょう! ご迷惑で無ければ・・・。」と控え目にお誘いすると、

しょげて居た筈のジョニー殿下が急に目を輝かせて「そうじゃな!! 勿論迷惑でなんぞ無いぞ!!また近い内に連絡するぞ!」と言って笑顔で完成した飛行船に乗って王宮に帰って行ったのだった。



ジョニー殿下は嬉し気に持って帰ってしまったが、一応納品確認をして了承して貰わないと代金を支払って貰えない可能性もある。


翌日、王宮に赴いて国王陛下へのお目通りをお願いすると、出来映えを気に入る気に入らないとか杞憂と直ぐに判る程上機嫌の国王陛下が俺の所へと老体に鞭打って小走りにやって来て、その遙か後ろから宰相閣下もフラフラしながら現れた。


「どうも、国王陛下。そのご様子だとお気に召したようですね?」と尋ねると、被せる様に

「トージ殿、あれだよ!!予想以上に良い物になっったよ!」と興奮気味に握手されてしまったのだった。


遅れてきた宰相閣下から、受領書に確認のサインを頂いて、一見落着である。


尚、国王陛下はジョニー殿下を引き連れてこれから、帝国まで見せに行くらしい。


当初は禁止していた事だが、両国共に同じ物を保持しているからもう問題無いだろう・・・。これ以上の面倒事に巻き込まれる前にスッとマッシモの自宅にもどるのであった。



まあ今回の件で最大の収穫は、次期国王であるジョニー殿下とそれなりに仲良くなれた事だろうか。


友達と言うには立場が違い過ぎるが、友達に立場も地位も関係無いよな!? 尤も向こうがそう思ってくれてないと話がややこしくなるが、お互いボッチ同志で丁度良いのかもな。


ジョニー殿下は姉のジェシカと違ってグイグイ来るタイプでも振り回すタイプでなく丁度良い距離感を保ってくれるので意外に嫌では無いのだ。



この日の事は無理矢理付き合わされてしまったジョニー殿下から詳細を聞いたが、嬉し気にリニューアルした飛行船を娘夫婦に見せびらかして、紫のストライプを散々自慢していたらしい。


大人げない・・・。


まあ喜んでくれるのは制作者として嬉しい限りではあるが、国王陛下よ、少しは大人になれよ!と言いたい。


ジョニー殿下曰く、「御父様も、姉上も、あんな感じなので逆に毒気を抜かれてしまって冷静になってしまうので子供の頃から冷めてるとか言われてしまったのじゃ。」だそうで。

ジョニー殿下、小さい頃から苦労してたんだね・・・。




俺は漸く一区切り付いてホッとする緩やかな日々を子供達を眺めながら過ごすのであった。


アリーシアの出産予定日はおそらくまだまだ先だから、当分はノンビリして居ても罰は当たらないだろう。


女、男と来たら次はどっちだろうか? どっちでも健康に産まれてきてくれればどっちでも良いんだがな。


でも、どっちが生まれて来ても良い様に良い名前余裕のある今の内に考えて置くとしよう・・・。


で、話は変わるが、飛行船の俺専用機を作るのか?って話だが、パーツは全部揃ったものの、現在保留。


理由は簡単。場所を取るから! 駐機しておくだけで、50m×20mぐらいのスペースが必要になるし、暫定じゃない正式な屋根開閉式の格納庫とか作るとなるとそれはそれで大変だからだ。


アイテムボックスの様に『時空間庫』に格納出来れば良いのだが、流石に大きく重いので出し入れが大変なのだ。


あ!!!バタバタしててレッド・ドラゴンを冒険者ギルドに出すの忘れてたよ!!


忘れ無い内に解体&買取に出さねばな。 ドラゴンの肉って美味いのだろうか? 『ドラゴン・ステーキ』インパクトあるよな!

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