第228話 王国専用機カスタマイズ

帝国機の納品の翌々日王宮へと国王陛下の我が儘を聞きにやって来た俺は何時もの様に俺専用のゲート部屋から、メイドの案内に従って国王陛下とやや困り顔の宰相閣下の丸国王陛下の執務室へと通された。


「どうも。先日振りですが、王国の紋章入りに外装を変更するかどうかの話し合いに参りました。」と挨拶をする俺。


「今日は態々出向いて頂いて申し訳ないのぉ。じゃが、今陛下にもおつかえしておったのじゃが、予算がのぉ~。」と渋い表情の訳を申し訳無さそうに伝える宰相閣下。


「でしょうね。飛行船作っただけでも相当の金額ですからと当然の事と思います。」と頷きながら答える俺。


すると、非常に悲しそうな顔をする国王陛下と思わず目と目が合ってしまい縋る様な何とも言えない表情をされてしまう。


まあ、多少融通を利かせてやろうって一度は思った事だし、そこでこう切り出してみた。


「本来なら、外装用のケープ・スパイダー・シルクを全支給頂く必要と張り替え工賃って事でこれ位は掛かる所ですが、国王陛下のお気持ちは多少理解出来ますので、こう言う方法で費用を安く済ませるのは如何でしょうか?」と妥協案を提示してみた。


謂わば一枚物で全面張り替えが強度的には望ましいが強度が若干落ちるものの、コントロールユニットからの剛性アップの効果を期待して、部分張り替えとして、王国色への全面染色は勿論無し。単純に胴体中央部分に大きな国旗を貼り付ける様なプランである。

ちなみに、ローデル王国の国の色は紫だそうで。


なので更に張り替え時の難易度が上がるもの、横に一本紫のラインを染色したケープ・スパイダー・シルクを貼り合わせる事で簡素に済ませればかなり良いのではないか?と提案したのであった。


このプランだと最初提示した全面張り替えの半額ぐらいまで費用を圧縮出来る。


そして漸く宰相閣下が渋々と言った感じで頷き、金額にOKを出してくれた。


「そうじゃろ! やはり、国旗を付けておらねば何処の飛行船かも判らぬ故、これは必要な出費ぞ!?」と調子付く国王陛下に


「いえ、そもそも飛行船自体の必要性も微妙なのでそう言われても何とも言えませぬな・・・。」とピシャリと撥ね付けられていたのだった。



さて、国旗の部分用のケープ・スパイダー・シルク生地だがそんな高価な物を余分に持って居よう筈も無くこれから発注と言う事になるとまた更に数ヶ月待ってそこから更に刺繍を始めるとなると、何時まで掛かるか判ったもんじゃない。



そこで、何時の日にか作る俺の専用の飛行船を作る際にと先にオーダーしておいたケープ・スパイダー・シルクを『良い値』で一部融通する事にしたのであった。


勿論『良い値』と言っても非常に良心的な価格に設定したので当初心の中で思っていた程ぼったくり価格になっていない。


だって、元はと言えば全ては国民からの税金だもんね。多少はマージンを乗せるけど非常に微々たる物である。


と言う訳で早速ストライプ用の紫の染色と国旗部分の刺繍に入られる事になったのだが、宰相閣下は俺が先回りしたかの様にケープ・スパイダー・シルクの現物を持って居る事に非常に驚いていた。


誤解されると嫌なので、

「こんな事もあろうかと!?と言いたいところですが、実際には皆さんの飛行船作っててカッコ良いのでちょっと悔しくなりまして、自分専用機を作ろうかと思って徐々に素材集めをしておりました。だから、また自分用の分を発注しておかないと・・・。」と言い訳すると『自分専用』と言うフレーズに驚いていた。


「トージ殿、確か『天空の城』なる飛行物体をお持ちではなかったかの?『自分専用の飛行船』となると2機目と言う意味にならぬか? 一体何のもくてきで?」とやや恐れを滲ませつつ尋ねる宰相閣下。


「別に深い意味も目的も何も無いんですが、単純に『趣味』です。折角作れる物ならちょっと作って眺めながらニマってしたいじゃないですか!? 『天空の城』の時、サチちゃんに『お父さん凄い!!』って褒められちゃってね。もう一度聞きたいかなってね。」と俺が他の人が聞くと下らないと良いそうな理由を述べると呆れた『あ~此奴か!?』と言う感じの顔をされてしまったのだった。


「まあ、家には沢山の子供達も居ますし、その子らを乗せて遠出するのも良し、若しくは一般人相手に遊覧飛行の事業を始めるもの良し。『趣味』なので特に目的を持つ必要も無いし、それに・・・こうしてケープ・スパイダー・シルク等の素材を購入する事で当方の口座に眠って居るお金が世間に出廻る事で経済も活性化するでしょう?

だから、宰相閣下も今回の陛下の要望をそう言う経済的な面で捉えて溜飲を下げてみるのは如何でしょうか? 実際に、ケープ・スパイダー・シルクに関わる所や刺繍や染色を請け負う職人や工房にもお金が廻る訳ですし。」とヤンワリ国王陛下のフォローをするのであった。


「確かにのぉ~。まあ今回はそう言う事にして置くとせねばな・・・。良いですな?陛下、今回のみですぞ!」とシッカリ釘を刺す宰相閣下であった。


何だかんだ言って、国王陛下、ボッチじゃないじゃん! 宰相閣下と良いコンビじゃん!? て事はボッチなのは俺だけか?


まあ正確には、家族も居るし、多くの子供達も居るからボッチでは無いのだけどな・・・。





 ◇◇◇◇


刺繍が終わるまでの3ヵ月間、俺はまたダンジョンアタックをしながら、日々ノンビリと過ごしていた。


ダンジョンはこの3ヵ月で90階層のボス部屋をついに乗り越え、あと10階層で100階層の大台に到達するまでに至った。


90階層の巨大なボス部屋では、漸くこの世界で初のレッド・ドラゴンとご対面し、恐れ等よりも感激が先走って思わず大興奮。


やっぱり、ドラゴン種は一味違うのよ! 存在感が全然。


強さ?うん、強いと思うよ。特に硬いね。魔力を纏わせた『黒竜丸』で斬れない程では無いけど前面的に素材大事にで極力傷を最小限で済ませようって言う編な良くを出したのが討伐時間が掛かった理由かな。


最終的に首をスパンと切断し、無属性の触手とフォース・フィールドの足場を駆使して頑張って『時空間庫』に回収したさ!


まあダンジョンはそんな感じで第90階層までは攻略完了した訳だ。


それ以外に家族の話をすると、この間にサチちゃんはあとちょっとで5歳を迎える頃となり、更にコータは掴まり立ちからヨタヨタ歩きへと進化していて、サチちゃんの時よりも早い時期に「とーたん」「かーたん」と呼んでくれる様になっている。

サチちゃんの事を「ねーたん!」と言いながらヨタヨタと歩いて抱きついて来るコータにサチちゃんもメロメロである。


更にコータの事に言及すると、コータも魔法に対する親和性が高い様で1歳になる前にはサチちゃんと同じ様に自分でクリーンを自然と身に付けて居た。


本当に家の子達は、素晴らしい天才児達である。


サチちゃんは最近では、本当にお姉ちゃんぷりに磨きが掛かっており、第3児目を妊娠中のアリーシアに代わり良くコータの面倒を見てくれて、絵本を読んでやったり、積み木の建物を作ってやったりして居る。



■■■


漸く国旗の刺繍と紫のストライプ用の染色も終わったとの連絡を受けて飛行船を俺の王都邸に持って来る様にとお願いすると、第一王子殿下が操縦して飛行船を持って来てくれたのであった。


次期国王をパシらせてしまった様でちょっと心苦しいところではあるが、


「これはどうも、第一王子殿下、まさか第一王子殿下の操縦でお持ち下さるとは・・・申し訳ありません。」と一応形式上恐縮していると、


「なに、構わぬ。トージ殿、『第一王子殿下』は止めて貰えぬか? どうも堅苦しい。姉上と同様に気楽に『ジョニー』と呼び捨てで構わん。余とトージ殿とはそんなに歳も違わん故に友人となって貰えると嬉しいのじゃが? 駄目か?」と聞いて来た。


「いえ、私は構わないですが・・・、本当に呼び捨てで宜しいので? 不敬罪になりませんか?」と念の為確認すると、ニッコリ笑って


「不敬罪に等ならぬよ! トージ殿はあのメダルを持っておるじゃろ? よって身分等関係無く呼び捨てで『ジョニー』と呼んでも誰も罰する事も出来ないのじゃぞ? 何なら、トージ殿の方がある意味身分が上とも言えるのでな。」と問題無い理由も教えてくれたのであった。


「では、お言葉に甘え、これからは『ジョニー』殿下と呼ばせて頂きます。私の事は、単にトージと呼んで頂ければと。」と俺が答えると


「おお、そうか!まあ殿下も要らぬのだが追々で良いか・・・では余はトージと呼ばせて頂く。」と嬉し気に返すのであった。



それから3週間程の改造の工期中ジョニー殿下はちょくちょく格納庫にやって来てはたわいも無い普段の生活の話や愚痴等を話しては嬉し気に帰って行くのであった。

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