第227話 深紅の機体
ケープ・スパイダー・シルク供給までの長期放置となる為外装を貼り終えるまでフレームだけの状態で野晒しにして置く訳にもいかず、帝国機は俺が土魔法で作った大きなカマボコ状の格納庫の中に駐機してある。
基本胴体内部の通路や部屋の一部は外装有りきで考えていたので補強となる部分以外に余計な屋根を極力省いているので外装を貼る前に夜露や雨が降るのは都合が悪いと言うのもあるが、素材的には宝の山なので、放置時の防犯の意味も含めて居る
王国機の時は何だかんだで連日ここに来て作業をしてたが、流石に2機目となると効率良く作成出来る様になったので作業が前倒しに終わってしまって、更にはケープ・スパイダー・シルクの刺繍という余計な作業も入るので、街が長くなった為の其方である。
ジェシカからの連絡を受けて1日早めに受け取って、格納庫の中で長いケープ・スパイダー・シルクのロールの裏側に白銀の蒸着を只管熟して、金色の派手な紋章が胴体の膨らんだど真ん中に来る様に、仮留めをしては、離れて都遠目にみて一をチェックしを繰り返し漸く満足いった場所でフレームに慎重に貼り付けて行く。
ソロソロ国王陛下がやって来る頃合いだろう。2日間貫徹で五月蠅くなる前に一気に気合いで外装のケープ・スパイダー・シルクを貼り付け終わった。
王国機で一度経験済みと言う事もあり、あの時よりも大幅に作業こりが良かったが、貫徹作業となったのが実に悲しかった・・・。
早く帰ってサチちゃんやコータ、そしてアリーシアに会いたい一心で必死で作業したのが良かったのか・・・。
王国機の時の様に何日も掛からなかったのは幸いであった。
ついに完成した深紅の帝国機。
凄い!凄く良い!!
これを見たら、絶対に国王陛下が騒ぐのは間違い無い。
しかし、ここまで赤が似合っているのに、
実はちょっとしたアイデアはあるんだよね。
俺がウィングスーツで滑空する際に空気抵抗を減らす為に使っている風魔法のシールド! あれを胴体全体に纏えば、恐らくこれだけの図体だし、かなりの効果がありそうな機がするんだよね。
『ホーラント輝石』をセットしているあのコントロール・ユニットに風魔法のシールドを付加する方法は見つけてあって、実際に俺の『天空の城で実験したら、滅茶滅茶高価あってあの重たい『天空の城』が全く風の抵抗を受けずに軽々と加速する様になったんだよね。
赤い機体は3倍の速度と言うセオリーに従いたくなるのが日本人の習性ではあるが、こう言う細かい所から軍事競争がはじまるのはほんいではないので、グッと我慢する俺。
偉いよな? こう言う自制出来る様になった所に自分ながら成長を感じるよな。
完成した翌日、知らせてもいないのに国王陛下がヘンリー君夫婦と一緒に格納庫に来てドンドンと扉を叩いて「開けろ!」と騒いでいた。
さあいよいよお披露目か・・・さわぐだろうなぁ~と思いつつ、俺は土魔法で作った格納庫を解除して一瞬で消した。
扉を叩いていた国王陛下が突然叩いていた目の前の扉が消えて前につんのめって転んでいたが、起き上がるより前に目の前に鎮座する深紅のボディーに金色の王国の紋章の入った機体を見てしまい口をパクパクとして絶句してしまっている。
うん、気持ちは判るよ、国王陛下。俺も納品するのがちょっと惜しいし
「おー!完成したんですね!流石ですね、トージ殿!!」と誇らし気な声で俺に語り掛けるヘンリー皇帝。
「ダーリン、やっぱり紋章いれて大正解でしたわ。これで遠目にも何処の国の機体か一目瞭然ですもの。」と愕然としてまだ立ち直れていない実の父に煽りを滲ませる鬼畜なジェシカ。
そして、漸く再起動した国王陛下が、
「どーしてだーーー!何故我が愛機には紋章が入っておらん!!?」と言う国王陛下の悲しげな絶叫が響いていた。
「国王陛下、勘違いしないで頂きたいのですが、帝国からご支給頂いたケープ・スパイダー・シルクが紋章の刺繍が入っていただけなのです。私の方でこんな面倒な刺繍するわけがないじゃないですか!?」と俺が事実を言ったがそれで納得して貰える訳も無く結局めんどうな王国の紋章入りのケープ・スパイダー・シルクに張り替えるって言い張る国王陛下を宥める為に後日別途宰相閣下を交え話し合いの場を設ける子ととなったのだった。
さあ、気を取り直し、いよいよ初飛行である。
胴体下部のコンパートメントの搭乗口より船内に入り、階段を上がって胴体内部へ。
全ての部屋や施設をトイレから、客室、風呂場まで全部案内して廻っていよいよ肝心要のコントロールルームへとやって来た。
前回の王国機での国王陛下の起こした事故を教訓にコントロールルームに乗客用(見学者用)のシートを設け、更に全シートにシートベルトを備え付けた。
シートベルトの付け方の説明とそれを備え付ける原因となった国王陛下の起こした事故を説明すると、気拙そうなお顔をしていたが、
「ああ、国王陛下、お陰様でより安全に配慮出来る様になりました。後で王国機の方にもこのシートベルトを追加したいと思いますので、後日打ち合わせ致しましょうね。」と言うと
「うむ、この他の者が吸われるシートも欲しいのぉ~。」と追加を要求されたので、「ええ、それも含めご相談って事で。」とはなしを切り上げてヘンリー君に操縦の仕方やコントロールユニットの各部の名称と昨日の説明を行うのであった。
まずは俺の操縦でテスト飛行を兼ねて一通りの動きをチェックし、上空でヘンリー君に操縦を替わって、後ろから手を添えて加減を教えてやると第一王子殿下同様にアッと言う間に感覚を掴んであんしんして任せられる程に美味くなった。ジェシカもやりたそうにしており、
「ダーリン、私にもやらせてくださいまし。」と甘えた声を出して、直ぐにジェシカに交代し、文字通り手取足取りでイチャイチャと国王陛下の前で教えて居た。
いやぁ~娘を持つ父親として、これはキツいな。
俺も俺のサチちゃんが目の前で誰か余所の男に甘えた声出してイチャイチャしてたら、思わず怒りで魔弾で蜂の巣にしてしまうかも知れん・・・。
しかし、苦い顔をしているものの、国王陛下はグッと堪えていたのである。俺には真似出来んな。元々政略結婚前提の王族故なのか?
今日、お目に掛かって以来初めて国王陛下を心から尊敬した瞬間であった・・・。
なのでちょっとだけ、外装張り替えの件で少し前向きに検討してあげようと思うのであった。
何か、国王陛下に同情しながら、2日間の貫徹の疲れと達成感で思わず安心式ってしまって揺り動かされて気付いたら、帝都に着いていたでござる。
ビックリだよ!!
「え?何で帝都? 俺帰って寝たいのに・・・。」と起こしたジェシカに言う俺に
「師匠、たまには我が家に御父様と一緒に泊まって行ったら如何ですか?」と恐ろしい子とを平然と言う。
そんな事をしたら、ポロッと俺が魔王だとバレるかも知れないし。リスクは最小限に抑えねば。
「いや、今日までに仕上げるので2日間も家族の顔を見てないのは流石にキツい。サチちゃんやコータに会いたいし、俺は帰るよ。またの機会って事で。 陛下もうしわけありませんが、お先にお暇致します。」と断りを入れてバレない為にゲートセンターから通常のゲートで王都に戻ったのであった。
結局、マッシモの自宅に戻ったのは夕食ギリギリであったが、グッタリしていたものの、嬉し気に出迎えてくれるサチちゃんやアリーシア、それにアウーと両手を広げるコータを見て疲れがスーッと抜けるのを感じるのであった。
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