第226話 寂しげな顔のボッチ
2機目ともなるとフレームのリブ作り等の細かい作業の熟練度が増して、サクサクとまでは言い過ぎだけどある程度コツが身体に染みついて蒸気の当て方や厚を掛ける加減も良く判る様になった。
王国機の際には勢い余って何回か曲げに失敗して折ってしまったが、今回は今の所パーフェクトである。
今回の機体はワクワクする様な新しい技術と言うと、紋章の刺繍入りの赤色に染めたケープ・スパイダー・シルクの裏側から蒸着しただけでちゃんとコーティングされるのか?と言う所である。
ただ、これで成功してカッコ良い機体が出来上がったら、それはそれで面倒な事になりそうな予感はヒシヒシとしている。
『あの』国王陛下がスンナリ矛を収めてくれる気がまったくしないのだ。
きっと自分の機体にも王国の紋章を入れるって言い出しそうだよな。
そもそもだが興味が無いので自分の住んで居る国ではあるが、国旗も国の紋章も全く知らないのである。
非国民って言われそうだな・・・。
とは言え、多俺だけじゃなくて分平民の殆どは国名は知っていても国旗すら良く知らない者が多いんじゃ無いかと思う。
その点日本の日の丸って覚えやすくて良いよな。
俺もお子様ランチのお陰で真っ先に覚えたし。
でもさ、他国の国旗だと真ん中に複雑な絵が入ってるのとかあったけど、国民はシッカリ覚えて自分で描いたり出来る物なんだろうか?
例えば、国旗の中のライオンの髭の数が足りないとか細かく色の順番が違ったとかさ。
話はズレたが、もし仮にあの国王陛下が駄々を捏ねたとしても、ビックリするぐらいに改造費を吹っ掛けてやれば良かろう・・・。
多分宰相閣下の方で諦める様に説得してくれる筈だし。
王都邸の敷地内で前回同様に新しい機体を組み立てて居る訳だが、何故か噂を聞き付けた国王陛下がお忍びで・・・いや全然忍んでもないけどさ、ちょいちょい偵察にやって来るんだよね。
どうやらヘンリー君夫婦に自慢して散々煽ったものの、実際に同じ物を作られるとなると『本当に同じ物』か気掛かりで抜け駆けされてるんじゃ無いかと気になって仕方無いらしい。
だから俺があれだけ見せたりするな!と・・・。
まあ今の段階じゃフレームの形が大きく違うとか無い限り判らないだろうけど、元々同じ形の物を作る予定で居たのでそこら辺は問題がない。
多分国王陛下が発作を起こし始めるのは数ヶ月先だよね。
でもさぁ、どうしよう? 外装用のケープ・スパイダー・シルクが出来上がってくるまで俺ボーッと数ヶ月してるのもキツいよな。
空いた時間はミスリル鉱石の採掘してまたダンジョンアタックかな?
そうだな・・・もし俺の気が変わって自分用の飛行船作る事になっても良い様に一応ケープ・スパイダー・シルクを家の方でも念の為に注文入れて置こうっと。
約1ヵ月が過ぎ、飛行船のフレームも導体内部のコントロールルームや客室等もほぼ完成し、後は外装用のケープ・スパイダー・シルクと白銀のの支給を待つばかりの状態となった。
さて、国王陛下だが、律儀な事にまだ週に1~2回偵察に通って来て居るんだけど、明日からは当分やる作業が無いので、俺の居ない間に来ても可哀想だと思って、
「国王陛下、マメに視察に来られてますがお暇なんですか? いよいよ、ケープ・スパイダー・シルク等の供給待ちとなりますので、暫く私もお休みしますので、来られても無駄なので。」と言うと
「そうか・・・。」と少し寂しそうな顔をしていた。
「帝国からケープ・スパイダー・シルクが支給され次第作業を再開するので、ジェシカ殿下にケープ・スパイダー・シルクの用意が整った頃に連絡を貰える様にお願いして置けば良いではないですか?」と俺が進言すると「そうじゃのぉ。」と同意はするものの、やはり寂しそうな表情は変わらないままであった。
まるでボッチの少年にやっと出来た友達が転校して行く時の様な顔は止めて頂きたい。
なんか此方が悪い事でもして居る様な気分になってしまうじゃないか!と心の中で叫ぶのであった。
まあ、それもあるか・・・。国王なんて友達出来難そうだもんな。
ああおれは平民で良かったよ!!
あれ?あれれ? 俺平民だけど、改めて考えて見ると友達って居るのか?
敢えて友達と呼んで良いのか知らんが、ラルゴさんぐらい? 後は微妙だけどゲンダさん? あれれ? 俺も人の事言えないじゃんよ・・・。と自分の状況に愕然として目から汗が滲み出る俺だった。
友達かぁ~作ろうと思って作る物とも違う様な気がするし、友達と利害関係で繋がりがあるのも片な話だから、そう言う意味で年齢層も大きく違うラルゴさんも違うのだろうな・・・。
日本に居た頃、こんな俺にだって何人かはネトゲで繋がっている友達がいたんだが、直接会って話した事さえ無いし、日本が消滅したって時点で
◇◇◇◇
さて空いた3ヵ月の間、俺は魔の森の採掘とダンジョンアタックの再開で、台85階層まで深度を深めていた。
色々厄介な階層も多かったが、フライング・アローフィッシュと言う口先の尖った飛び魚の様な魚の魔物が鳥の大群の様に周回しながらツッコんで来る台83階層は当初厄介だったものの、このフライング・アローフィッシュ、滅茶滅茶美味しいのだ。
飛び魚と同じで目刺しにして干した物を焼いて出汁を取ると絶品の出汁が取れるのだ。
勿論塩を振って焼いても美味いのだ。
もうね、美味いと判ると現金なもので、今まで鬱陶しく集団でツッコんで来る鬱陶しい奴から、入れ食いさせてくれる素晴らしいお客さんに替わるのである。
捕り方? 簡単だよ!フォース・フィールドのブロックでも良いんだけど、身が傷付いて勿体無いから、空中に無属性魔法の網を用意して突っ込んで来たら、その網にビリッと電流を流してサクっと絞めるだけ。
もうね、ウハウハだったよ。
子供らもこのフライング・アローフィッシュは大喜びしてくれて、余りの美味しさに全国のアンテナ・ショップの方で限定数の飛び魚目刺し定食を出す事になったのだった。
で、魔の森の採掘を頑張った結果、ミスリル鉱石は勿論だが『ホーラント輝石』も3つ発見してしまった。これは何気に嬉しい!
予備として大事に取って置くとしよう。
今の所国王陛下は大人しく、先日漸くジェシカから電話が在って、来襲ぐらいに刺繍済みのケープ・スパイダー・シルクを納品出来るとの事であった。
さあ、果たして裏側からの蒸着で王国機と同様にコーティング効果が出るだろうか?
そして、真っ赤な機体の帝国機・・・これ速度3倍とかじゃ無いけど許して貰えるだろうか?
真っ赤な飛行船に金色の紋章・・・派手だよな。 どんな風になるのか完成が楽しみである。
そしてそれを見た際の国王陛下の顔も是非見逃さない様に見て置かねばな・・・。
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