第222話 困難なフレーム作成と後悔

さてとミスリル線の方は準備も出来たし、『ホーラント輝石』をセットするコントロールユニットの方はちょっと改造して予備用の『ホーラント輝石』をセット出来る様にしてみた。


つまり1つ目が空にったら予備の『ホーラント輝石』に切り替わる仕様である。


これでエネルギー切れで墜落って事はなくなるだろう。


俺の作った乗り物で国の最高指導者が事故死とかマジで笑えないジョークだからな。

念には念を入れて置けば憂い無しだろう!?


それにこれで上手く行ったら俺の『天空の城』の方のコントロールユニットもツイン仕様に変更するし。



さて、飛行船のフレーム作成方法だが、まずダンジョン産の樹木を製材し、5cm厚の板を只管何枚もカットして行く。


グランドピアノの曲線部分を作る際の動画で見た様に複数枚の板を曲げて合わせて行く合板の様な作成方法を採用する予定なのだ。


土魔法で岩製の治具を作って飛行船型の上部のはまき部分の断面円形のリブ?を作って行く予定。


紙で作った模型をスケールアップした治具に合わせ、蒸気を当てながら無属性の触手とフォース・フィールドで加圧しながら徐々にユックリと治具に合わせてギリギリと材木を曲げて行く。

それを何枚も加えて行って、今度は水魔法で木材の水分を抜いて乾燥させてしまう。そして、3枚で一つの円形のリブに成る様に樹液から製造されてるこの世界の接着剤を塗布して

3枚の曲げた板を加圧して、接着剤を乾燥させる。

ちなみに、接着剤と一緒に件のミスリル線を仕込んであるので、完成時にはこのフレームもカチカチになるだろう。


こうしてやっと1つ目ののリブが完成したのだが、これ1つを作るのに、タップリ2時間掛かり、魔力も相当に浪費してしまった・・・完成までは思った以上に大変な道程っぽい。


だが初めての試みなので、苦労している割に笑顔が零れてしまう。


今回の設計図では10個直径の違う円形のリブを製作し、角材でそれらを繋いで行く感じになる。 ラジコン飛行機の胴体なんかを作る際や昔のレーシングカーのバードゲージと呼ばれるフレームの製作手段と似た方法である。



と簡単そうに行ってるが、先の様に1つ作るだけで相当に時間と魔力を食う為早々簡単に終わらない。



結局、10個のリブを作り終わるのに魔力の方の問題で6日間を要してしまったのだった。


漸く10個のリブができあがったら、今度は、地面にまたもや土属性の岩で治具を作り、その10枚のリブを垂直に立てる。

さあ、ここからが繊細な作業となる。 これからの力加減次第で飛行船型の上部の葉巻部分が歪になってしまう可能性がある。


軽量化を兼ねて外装は王宮から支給されるケープ・スパイダー・シルクを貼る予定だから、硬いわけじゃないが、このケープ・スパイダー・シルクにも魔力伝導線を接続してやるので、相応の強度は出る筈だ。


と言う事で曲面を繋ぐ細めの角材を多数切り出してリブに入れた切り込みに合わせて接着しながら蒸気を当ててギリギリと曲げて行く。

そして、最後の部分まで10個のリブ全ての切り込みに填め接着し終えるとフォース・フィールドで外側からずれない様にキッチリ加圧して、水魔法で水分を抜いて乾燥させて形状を固定させる。


一応、この角材はバランスを取る為に中心から対角線上に正反対を接続して行く感じにした。つまり、3時方向の角材の次は9字方向と言う感じ。12時方向の次は6字方向。

そして、12時全ての方向の角材をリブに接続し終わったら、今度はその角材に斜めの筋交いを入れて補強をする。この内部は元の世界の飛行船とは違って客室であり荷室にもなるので、床板を付けたり個室をつくったりして行く。


そして、飛行機の胴体部分の様にサイドには強化ガラス製の窓ガラスを綺麗に一列に整列させて填め込んで行く。


作っていて自画自賛じゃないが、これはかなりカッコ良い。


段々と形になって行くに従って、そのフォルムの美しさ故になんか引き渡すのが惜しくなってしまう。


俺の『天空の城』が『静』な方向の良さを表して居るとすれば、こっちの飛行船は『動』の方向の良さだろう。


もっとミスリルが豊富に有れば、外装に貼る予定のケープ・スパイダー・シルクにミスリルを蒸着させて更に強度を増すつつミスリルシルバー色の機体にするのも一興だっただろうな・・・。


今度俺の2号機を作るの時にはやってみたいな・・・。


飛行船のコクピットと言うと通常ならこの葉巻部分の下部にコンパートメントがぶら下がっている物だが、この飛行船の場合、葉巻部分の内部にコクピットを作れるので本来なら下部のコンパートメントは不要なのだが、


この飛行船の場合は乗り降りの搭乗口や、着地用の設置脚が必要となるので、その脚も兼ねてコンパートメントと横に張り出したソリの様なランディングギアを取り付けた。


尚、通常飛行船に付いている尾翼は本機には不要なので、一切付いていない。その代わり、尾翼のあった下部にはランディングギアのソリがV字型に付いている。



ここまでで約1ヵ月半が掛かったが、後は王宮からのケープ・スパイダー・シルクの納品待ちである。


宰相閣下曰く俺が算出して要求したケープ・スパイダー・シルクの長さがかなりの長さとなったので、時間が掛かっているらしい。



まあ幾ら急かしてもケープ・スパイダーの吐き出す糸の量は無限じゃないから無理な物は無理だし仕方が無い。


この間に、国王陛下に言って内装に置きたい調度品等を用意させておく事にした。


ちなみに、国王陛下、クリスマスを待ちきれない子共の様に、何度も何度も俺が作業している王都邸まで足繁く通って来るもんで、最近では家の工事をしている職人達も呆れてしまってて、


最初こそ跪いて礼を示していたが、最近でで苦笑いで会釈する程に慣れてしまっている。 まあ普通なら不敬罪で手討ち物なんだけど、ここの空間では俺の庇護下って事で無礼講になってしまっている。



俺も連日ここで作業しているので、頻繁に職人達に昼飯を振る舞って居るんだが、最近ではシレッとその時間帯に合わせるかの様に国王陛下がご降臨・・・ぜっていに飯を食いに来てると思うんだよね。


その証拠に肉体労働している職人達より「美味い!これ、美味しいのぅ~何て料理じゃ?」とガッついて食ってるし。


王族の品格は何処に?と・・・。


こうして見ると、やっぱり、ジェシカの父親だなって、思わず納得してしまう・・・血は水よりも濃いってか!?



まさかだが、食い気の為に、納品を先延ばしにして無いよな?って疑い始めた頃漸く宰相閣下からケープ・スパイダー・シルクの納品が在ったのだった。



「これで漸く完成させられますね。 それと、ミスリルの残りの補充は如何です? 俺の方の分で出し代えてるままなんですが?」と尋ねると苦い顔で首を横に振る宰相閣下。


どうやら、本当か嘘かは知らんがこれ以上は難しいらしい。しょうがないな。



「判りました。もし、内装に使う調度品出来た物が在ればお持ち頂ければ装着して置きますけど、納品後そちらで取り付けるなら特に急ぐ必要はないです。」と答えて、早速最後の外装張り作業に入るのであった。


樹脂製接着剤を使ってピンと張ったケープ・スパイダー・シルクをフレームに貼って行く。・・・が途中でハッと気付いて作業を一時中断した。


これは空を飛ぶのである。晴れの日もあれば雨の日もあるし、雲の中は基本水蒸気だろうし、ケープ・スパイダー・シルクと言う布が水で濡れて汚れれば見窄らしくなってしまう。

昔の第一次世界大戦時代の複葉機とかは絹張りにドープ(塗料の様な物)仕上げと聞いているが、この世界の塗料は重く汚いので却下だ。

しかもその塗料には防水性も無いし。


防水ですらないケープ・スパイダー・シルクをこのまま使うのは愚策と気付いたのだ。


そこで、ミスリル程ではないが、魔力の伝導率の良い白銀を使って蒸着して防水効果と強度を両立しようと思い付いた。


幸い白銀は銀程に酸化しやすくは無いこの世界特有の金属である。ほんらいであればミスリルが良いに決まって居るが、追加のミスリルの供給もなさそうなので仕方が無かろう。


俺は、貼ってしまった部分のケープ・スパイダー・シルクも含め全部に白銀を蒸着させて胴体のフレームに貼って行き、ミスリル線の魔力伝導線をなお部で接続して外装も強度を増す様にしたのであった。



蒸着作業が追加になった分若干工数が増えたので、胴体にケープ・スパイダー・シルクを貼り終わるのに10日程掛かってしまったが、神経を使って几帳面に貼った結果、辺に歪む事無く綺麗に外装が腫れたと思う。



結果として、ちょっと白っぽい銀色と言う派手な色彩になった飛行船は非常にカッコ良くて、本当に渡してしまうのが惜しくなった。



■■■


昼飯を食いに来た?国王陛下が完成した飛行船を見て年甲斐も無く大興奮して喜んで居たので・・・しょうがなく納品してやる事にしたのであった・・・。


「トージ殿! カッコ良いのじゃ! これカッコ良いのじゃぞ!!」と興奮して五月蠅い国王陛下に思わず微笑ましい様な気持ちで眺めて居た。


ここまで素直に喜んで褒めて貰って制作者として嬉しい様な誇らしい様なむず痒い様な何とも複雑な気持ちだった・・・。


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