第221話 懐かしの魔の森と下準備

この身体が15歳の頃何も無いこの森で目覚めて以降、本当に苦労して日々必死だった。


『魔法のある世界』と言う数少ない救いに縋って来る日も来る日も魔法の目覚めに向かって粗食に耐えて頑張ったあの地獄の日々を経て今・・・。


里帰りと言う訳では無いが、2児の父となってグレードアップして戻って来た訳だ。


まあ頻繁に見繕えの為に着替えや風呂でに立ち寄ったりしてるけど、こうして本格的活動目的で戻って来るのは初めてでは無いだろうか!?


あれから何年経った? こっちに来て8年か?


その間に結構色々な事があったな、まさかこの俺が結婚出来る日が来るなんてな。



そう言えば、ここ8年魔物の間引き殆どして無いけど魔の森の周囲は大丈夫なのだろうか?


採掘の序でに間引きもして置こう。


周囲に溢れ出てからじゃ取り返しが付かないもんな。


本来魔の森の様な魔境の管理は国や冒険者ギルドの管轄なのだろうけど、この国の冒険者や騎士達の実力を知る今俺の仕事じゃねぇ~しと捨てて置けない自分が居る。


これも守るべき家族や魔物や盗賊によって両親を失った子共達が身近に居る所為だろうか?


朝から久々の魔の森に入るの事で少し感傷的になったみたいだな。



さて、まずは必要な物の採掘から始めよう。


断層まで移動して、かつて採掘ぢていた跡の場所を無属性魔法のシャベルや鶴嘴代わりのパイルバンカーで慎重に掘り進める。


出て来た土の塊や岩を割ったり、水魔法のジェット水流で洗い流したりしてお目当ての『物』取り出して行くのだ。

どちらかと言うと、掘る事よりもこの洗い流しによる分別が一番重要だったりするので慎重に慎重を重ねて目を皿にして分別する。


相変わらすここの地層からは素晴らしい。久々の採掘を始めて小一時間で色々な宝石の原石や鉱石等がゴロゴロ出て来る。


ミスリル鉱石も幾つか発見して横に集めて置いているけど、まだまだ少量しかない。



ミスリルはこのミスリル鉱石を精製して不純物を排除し纏める事で高純度なミスリルのインゴットに代わって行くのだ。


ちなみに、この精製作業は非常に魔力を必要とする厳しい気の遠くなる様な作業となり、非常に精神力を使うのだ。


錬金術を学ぶ前の当時の俺にその精製作業が出来たのも日本での知識や主に動画等による刀鍛冶の鉄を鍛えるシーン等の知識と『女神の英知』のお陰だろう。


日本での知識と『女神の英知』による知識の補正で明確なイメージが出来たのが精製の成功の要因だったと思う。




うーん、ミスリル鉱石はちょいちょい見つかるが肝心の『ホーラント輝石』はそうそう簡単に出て来ない。


まあ、現実はそんなに甘くは無いか・・・。


おかしいなぁ~事前にマルーシャ様にスィーツの賄賂渡しに行ったんだけどなぁ~。


確率変動入ってないのかな?




既にここに通って4日が経過している。ミスリル鉱石の集まり具合はまあまあ順調で漸くインゴットで1本分と言った所だろう。



俺の『天空の城』でミスリルのインゴットで約5本分が必要だった。


飛行船型はそれよりも本数が少なく済みそうだと言っても

おそらくインゴット3本分くらいは必要だろう。



宝石の原石や金等他の物も見つかっているのでトータルの収益自体は売ればかなりの額になるだろう。


4日でインゴット1本分か・・・・3本分必要として、って事は更に12日間必要って事? 約2週間じゃん!!


わぁ~更に2週間はキツイなぁ~。既に飽きてきてて、気晴らしで魔物の間引きを合間合間に入れて入るけどさぁ。





■■■


ボヤキつつも結局3週間掛かって、ミスリルの精製済みインゴット4本分くらいのミスリル鉱石を漸く集める事が出来た訳だが、その3週間頑張ったご褒美だろうか?


最終日に『ホーラント輝石』を1つ発見する事が出来たのだ。勝因は何時もの採掘場所から少し確度を変えて掘り進めた事だろうか?


もうちょっとこの方向で掘ってみれば第ニ第三の『ホーラント輝石』が見つかる可能性もあるかも知れない。


どうするか迷う所だが、まずは『ホーラント輝石』の予備も入手出来たって事だし、更なる日数の浪費は一旦止めるとして、ここからはミスリル鉱石の精製作業に入りたいと思う。



一応、王宮の方に確認したところ、王宮側でなんとかミスリルインゴット1本分は集める事が出来たらしい。


だが!である。経験上一般市場に出回る様なミスリルって精製自体が非常に甘く、純度が低いのだ。


だから、インゴット1本分って王宮から回答を貰ったが額面通りに受け取る事は出来ない。

俺がそのインゴットを精製し直したとしたら、良い所で残るのは8割ぐらいだろうか? つまり約2割不純物で実質のミスリルインゴットから減ると言う事だ。


王宮の方には引き続き、残りのミスリルを供給する様にと一応言ってはいるが、国王陛下がちょいちょい俺の方でどれくらい集められたのかを聞いて来るし、

おそらく何だかんだで俺の集めたミスリルインゴットを頼りにしている様な気がする・・・。


まあ俺の採掘したミスリルを売りつけても良いのだが、数字だけのお金を貰っても意味が無いし使い切れないからぁ~。


欲しい物も無理してでも買いたい物も無いし、俺に出来るのは精々無理矢理理由を付けて世間にお金をバラ撒いて流通させる事ぐらいなんだよね。



さて、ミスリル鉱石からのミスリルの精製である。


昔より錬金術を学んだ事や魔力の操作の熟練度が大幅に上がった恩恵で、ミスリルの精製が非常に効率良くなって居る。


俺も地味に成長したって事だろう!? つまり、城壁や道路建設の日々も強ち無駄では無かったって事だ。


流石は自称魔王と言ったところかな。フフフ。



こうして、必要なミスリルのインゴット3本分+俺のストック用の1本の精製が終わるのに5日掛かったが当時のペースで予想したより2日程時間短縮と鳴っていた。



ただ必要なミスリルのインゴットは揃ってが、やはり王宮の集めたミスリルは非常に不純物が多く俺が精製し直すと、残ったのは当初の7割のみと言う有様であった。


そして、結局は俺の採掘したミスリルを使う羽目になってしまったのだった。


予想はしていたが、一生懸命に集めた俺のミスリルが奪われるのは結構精神的に辛かったのは言うまでも無い。


高純度のミスリルインゴットからミスリル線を無属性魔法のゴリ押しでつくってリールに巻いて行く。

細い細いミスリル線ではあるが、このミスリル線、凶悪な程に丈夫で普通になかなか切る事が出来ない。


例えば、首の位置に仕掛けて置くと、勢いによっては簡単に首チョンパになっていまう。

指を切るなんてとても簡単なので舐めて雑に扱うと、悲惨な事になるので要注意である。


更に1週間を掛けて漸く必要な量のミスリル線のリールが揃ったのであった。

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