第215話 ジェシカの嫁ぐ日

今日は朝から素の俺がジェシカの師匠のトージとして兄弟弟子を代表しマッシュとリンダを連れて帝都へとやって来た。



本当はアリーシアやサチちゃんも連れて来て、美しい花嫁衣装を着たジェシカおねーちゃんをサチちゃんにも見せてやりたかったが、乳飲み子の居るアリーシアは不可能だし、同様に3歳児連れも非常識と言う事で自粛した結果だ。


それに1人だと寂しいし、師匠だ弟子だって言うならば、ジェシカの兄弟子や姉弟子に当たるマッシュとリンダのカップルはある意味外せまい。


それに『魔王様』からの言伝の仕掛けもあるし、助っ人は必須なのでこの面子にしたのである。


それにマッシュとその伴侶予定のリンダにはこう言う人達(王族や皇族)との面識も諦めて慣れてもらって置かないといけないし。


そう言う事を素直に口にすると俺と同じ様に嫌な顔をされそうだけど、ある意味、こう言う場に顔見せしとけば、変な半端貴族共を蹴散らかす際の度胸も付くだろうし。


俺の目の黒い内は良いんだけどさ、俺の居なくなった後にも彼らの人生は続くからね。シッカリと色々『みんな』で手分けして引き継いで行ってくれれば良いかなぁ~ってね。


まあ既に割りと2人共に緊張気味ではあるんだけどね。



一般のゲート経由で帝都入りした俺達3名は丁重なおもてなしの上竜車にて両国の婚姻の儀の式典会場へと送られて来た。


「おおこれはトージ殿!! 久しいですな!」と我が国と国王陛下と第一王子殿下、そして宰相閣下がやって来て出迎えてくれた。


「どうも、陛下に第一王子殿下、宰相閣下も。ご無沙汰しております、お久しぶりです。本日は大変ジェシカ殿下のご婚礼と言う事で大変おめでとうございます。そしてお招きありがとうございました。 こちらに居ますのは当方の一番弟子・・・第一期生と呼んでおりますジェシカ殿下の兄弟子姉弟子に当たる私の右腕左腕の者共で、マッシュとそのパートナーのリンダにございます。我が家の自慢の子共達です。行こうお見知り置きを!」と言いながら2人を紹介すると、

「ほほう、自慢の秘蔵っ子と言う所か。トージ殿の所は人材が豊富で羨ましいのぅ~。2人共に、緊張せずともトージ殿の所の子なら我らの大事な国民であり国家の友人の子共も同然じゃ。今後もちょくちょく遭う機会も増えようぞ、よしなにたのぞ。」と国王陛下が言うのであった。

「これは、トージ殿の所の噂にお聞きしておる第一期生ですか、宰相をしておるセルゲーゾフじゃ、今後も頻繁にお目に掛かる機会もふえそうじゃから、お手柔らかに田尾頼み申すぞ。」と宰相閣下も軽く会釈をしつつ言葉を掛けて来た。


「私が第一王子のジョニーだ。おそらく年の頃はかなり近いのかと思う。もし良ければ、姉上だけで無く、私とも友人となってほしいのだが、なかなか難しいか・・・。」と後半声のトーンが弱くなる第一王子。


マッシュ達が16歳だし、ジョニー王子が17歳だっけ? まあほぼ同世代だな。


「まあ、まずは身分の垣根を踏み越えられれば友人にもなれるでしょうけど、不敬になってしまいまいますよ?」と俺が言うと、

「構わないのじゃ!ジョニーと呼び捨てで構わないのじゃじぞ!」と懇願されていた・・・マッシュとリンダが。


まあ最終的に、引き攣りつつも、ジョニー呼びして、マッシュ、リンダ、ジョニーって呼び合って微笑ましい空気を作っていたのだった。


こんな所と言うか、友達作ろう話題で盛り上がっていて、思わず本日のメインイベントの意趣返し・・・でなくて、『魔王様』降臨企画の件を進める為の仕込みをしにヘンリー&ジェシカの所に『魔王様』の言伝も伝えたりと、色々ヤル事が多いのだ。


ヘンリー君とジェシカの控え室に移動して、先程同様の件を一頻り行って挨拶とお祝いを済ませ、いよいよ今回の(俺的な)メインイベントの話を始める。


「で、今回『魔王様』より言伝と荷物を授かって居りまして。」と最初に断りを入れてから言伝の言葉を続ける。


「お二人、おめでとう。両国の平和と結び付きを心より喜んでいる。


ご招待を頂いたが、この形が我の正装故に場に相応しく無い。我はどちらかと言うと、死の伝道者であるからな・・・。元々人前に余り出る性分でない故に直接ではないが、我が友トージ殿の所の商品の力を借りて間接的に遠隔(リモート)参加したいと思うのじゃ。」との事でした。


と言ってから、マッシュとリンダに合図すると、マジックバッグから、巨大な蒸着ガラスディスプレイを取り出してセットした。

起動すると、予め録画してある魔王コスの俺がお祝いを2人に告げ、この様な間接的な参加になると言う事を告げる。


所謂この世界初のビデオレターって奴だ!


ヘンリー君は「魔王様!ここまでして我々の婚礼の儀に参列してくださるとは!!」とちょっと相変わらず微妙にズレた感動に身を震わせて居たが。


当初、悪戯の成果を楽しみにしていたジェシカもまさかこの切り返しにはビックリして言葉を失っていた・・・やったね!!


俺がやられたーー!って残念がるジェシカを横目に見て思わず心の中でガッツポーズをキメたのは言うまでも無い。


そんな下らない目に見えない攻防はさて置き、


■■■


1時間もしない内に婚礼の儀が始まった


流石は両国合わせて約2000年の歴史を誇る2国間の挙式である。俺やアリーシアの結婚式さえお飯事に見えてしまう程に荘厳で絢爛な式典である。

見てるだけでも手順や動作 等覚えられない程に色々と凄く大変そうであった。


ジェシカの写真もちゃんと何枚も撮影し、家で待つアリーシア達のお土産にしたいと思う。


そして、披露パーティーの式典の挨拶時には俺の持ち込んだ巨大蒸着ガラスディスプレイによって、『魔王様のお祝いスピーチ』が上映されて、初めて見る動画に会場の参加者達にもの凄い宣伝になったみたいである。



そう、これぞ俺の意趣返しの一石二鳥のもう1羽の効果である。


尤もつい先日この巨大蒸着ガラスディスプレイも動画撮影可能なカメラの完成もしたばかり。


全く在庫も何も無し。


帰ったら早めに量産体制を築かないとヤバイ事になりそうである・・・。


と言うのも、ジェシカが来賓達の問い合わせに頻りと「詳しくは『オオサワ商会』に!!」って言って廻ってるんだよね。


これが意趣返しの仕返しなのか? 師匠に対する宣伝の恩返しなのかは測りかねるな・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る