第206話 新たなる歴史の1ページ 更なる深みへGo! その2

魔の森の小屋で狩った肉達を解体依頼用のマジックバッグに入れ替えてから一っ風呂浴びて綺麗になった俺はマジックバッグを抱えてマッシモの冒険者ギルドの近所の裏路地にゲートで移動して久々の冒険者ギルドへと足を進める。


ギィー♪と何時もの軋み音と共にドアを開け冒険者ギルドに入って行くと少し受付嬢の顔ぶれが変わったのか見かけない顔の受付嬢が増えていた。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ・・・」と辿々しい挨拶をして来るその新人?の受付嬢に会釈だけしてまえを素通りしようとすると、何故か待ったを掛ける様に

「いらっしゃいませ、今日はどう言ったご用件でしょうか?」と呼び止める受付嬢。

「ああ、何時もゲンダさんにお願いしてるんで、ごめんね。」と言って前を強引に通り過ぎると悲しそうな顔をされたのであった。


何時もの一番奥のゲンダさんの指定席まで行くとニヤニヤしながら先のやり取りを見て俺に語り掛けてくるゲンダさんが居た。


「トージ、前から思ってたんだが、お前、ホント受付嬢に連れないよな?まさか・・・俺目当てか!?」と態と酷い言い掛かりを投げ掛けて来るゲンダさん。


「まさか・・・おれは普通に女性が恋愛対象なんでオッサンは要らんです。 ただもう愛する妻も可愛い子供も居るし・・・余所にの女性に現を抜かす暇が勿体無いので。 と言うか、何時ゲンダさんにおねがいしているので、他の方にお願いする時には1から説明し直すのが嫌なんですよ。それをちゃんと冒険者ギルド内で情報共有して居てくれれば、別に誰でも構わないと言えば構わないんですけどね!?」と俺が言い訳すると、

「トージ、おめぇ~、其処は尊敬するゲンダさんにお願いしたからだって言う場面だろ?」と自分で言っておいてガハハとバカウケしていたのだった。



そんな無駄な会話をして居ると入り口の方から、


「あ!!アニキだ!!!やったーー!おい、仕事にありつけるぞ!!」と言う何か聞き覚えのある声が聞こえる。


振り向くと其処には見違える程に見窄らしくなって萎れたあの懐かしのポンコツコンビがヨレヨレのヨロヨロで立って居た・・・。


確かに久しく解体依頼は出して胃無いが落ちぶれっぷりが激しい。


「出たなポンコツコンビ・・・。何かちょっと見ない間により貧相になったな。ちゃんと依頼受けて食ってるのか?」と俺が質問を投げ掛けると目の前の受付カウンターに陣取るゲンダさんが苦い顔で首を横に振っていた。


なんだよ、こいつら相変わらずなのかよ!?とあきれつつもしょうがないので、ゲンダさんに解体依頼する魔物の亡骸が入ったマジックバッグを差し出しつつ、「ゲンダさん、これ何時もの様に解体依頼なんだけど、彼奴らポンコツコンビに多めにやらせてやってくれるか?」と伝え、lポンコツコンビに銀貨2枚を渡して、


「良いか?お前達臭いから今から綺麗にしてやるから清潔な状態で解体しろよ!食肉なんだから。あと、先にその金で飯食ってちゃんと仕事出来る状態にしておけよ!」と言うと2人とも涙を流しながら喜び、「流石俺達御のアニキだーー!」と鼻水を拭ったままの粘っこい手を伸ばして抱きつこうとしたので、慌ててクリーンを掛けたのだが間に合わず、折角風呂に入って着替えたばかりの服を汚しやがった・・・。


まあ、一応、俺も再度自分自身にクリーンを掛けたけどな。


と言う様なエピソードを終えて自宅に戻ってサチちゃんとの時間を過ごしつつ、強請られるがままにダンジョンでの出来事等、階層毎に色んなフィールドになる事等を話してやるのだった。



 ◇◇◇◇


一夜明けて翌朝、朝食を終えると今日もダンジョンである。


そう、今日こそは、最深階層更新の日である。


第60階層のボス部屋の出口にゲートで飛んで61階層へと階段を降りて行く。


ワクワクのこの瞬間が何時も堪らない。徐々に61階層の明かりがチラチラと見えて来る。


どうやら61階層は普通に明るそうである。と思ったが・・・。


『普通』では無かった。普通以上に明るく、眩しいフィールドであった。


夏のピーカンの日なんて目じゃない眩しさで恐らく、地面の白い砂?の所為か太陽光をギラギラと反射しており、周囲の風景も白飛びした様な感じでどう言う状況なのか今一つ良く判らない。


「これはサングラス無いと無理なフィールドじゃん。」と思わず愚痴が零れてしまう。

エスキモーの様にスリット型のサングラス作るか?

ガラスも在って、蒸着出来るんだし、ミラーサングラスも作れるか!? あ、フレームは無理か・・・ゴーグルにしようか。とサッサとこの状況のままでは戦闘にならないと判断し、ミラーサングラスゴーグルを作成しに一旦撤退するのであった。





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トージがゲートを開いて自宅の個人工房へと戻った直後の事である・・・。

正にトージの居た場所の砂が急激に吸い込まれ『流砂』の様に消えて行きポッカリと半径2m程の窪みが出来たのであったが、勿論トージが去った直後なのでトージは知らない。


トージの居た場所は階段の出口であり、通常階段の出入り口近辺は暗黙のセーフティーゾーンとなっていて魔物は寄りつかず、トラップも無い物とされているのだが・・・。

この61階層ではこれまでのダンジョンの常識は通用しないのかも知れない。

そもそも、その『ダンジョンの常識』とやらも下位の階層での統計的な経験則を人が勝手に『ダンジョンの常識』と実しやかにルール付けているだけであって、何の保証も根拠も無い事である。

今回トージが運良くこの流砂?トラップ?に遭遇しなかったのは単純に運が良かったもし苦は撤収の判断が早かった事による幸運と言うだけである・・・。

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自宅の個人工房へ戻った俺は密かに以前作ったゴーグルに合う様に薄めに蒸着したガラスでミラーサングラス用のガラス板を作ってゴーグルの枠に合う用に慎重に無属性魔法の高周波リューターで削って行く。

ギュイーーン♪と言う甲高い音が五月蠅く響くので慌てて防音シールドを張ったのだが、いち早く察知したサチちゃんがスタタタタと工房のドアの前までやって来て、

「おとーしゃん? 戻った?」と嬉しそうな声を上げて居るのが聞こえた・・・。


これは流石に無視は出来ないので、リューターで削るのを止めて防音シールドも解除して、

「サチちゃんか? ちょっとね、準備が足りなかったから一旦作りに戻って来たんだよ。部屋にはいるか?」と尋ねてみると、まだガスリー君も迎えに来てないので1人で退屈していたらしく、「はいりゅー!」と喜んで部屋のドアを開けて入って来たのだった。


「にゃにつくってりゅの?」と俺の手元に在る蒸着レンズを不思議そうに覗き込むサチちゃんに、「これは『サングラスゴーグル』と言ってね、光の眩しい所でもめを開けて見られる様にする為の道具だよ。」と教えてやったら、

「サチもほちぃれちゅ。」と言い始めた。

しょうがないのでスペアのゴーグルを出してやり、

「明る過ぎる所以外だと外が見えなくなるから、まずはこれ普通のゴーグルだな。一緒にダンジョンに行く様になる時までに、サチちゃんの『サングラスゴーグル』用のレンズも作って置くよ!」と言うと、「わ~い!!」と喜んでくれたのだった。


それっから、サチちゃんのワクワクするチェックの視線の中で再度防音シールドを張ってから無属性魔法の高周波リューターでの切削加工を再開するのであった。


まあサチちゃんと一緒に楽しい工作の一時を過ごし、完成した『サングラスゴーグル』を目に装着して再度第61階層の階段の出口の上空へとゲートで移動して、上空からフィールド全体を確認するのであった。



『サングラスゴーグル』を装着しているお陰もあって、真っ白いフィールドの全容は概ね確認出来る物の普通に白い砂丘というか砂漠と言う感じである。


全体を見回しても、何処が下層への階段の入り口かサッパリ判らない・・・。


ふぅ~またか!?って思うシーンではあるが、今回は秘密兵器があるのだ!!「テレッテレ~♪『自動マップ』ぅ~♪」と某未来の猫ロボ風に宣言してから『自動マップ』を取り出した。


『自動マップ』を広げ魔力を『自動マップ』に注ぐと、あ~ら不思議、地図に何やら山っぽい物や渓谷の様な物や河っぽい物、とこと処に赤い丸等が描かれる。しかも赤い丸の1つは俺のフォース・フィールドの足場の真下である。

「何だろう?この赤丸って。何となく良く無い物の様に感じるね。しかも、俺の真下ってヤバイやん!?」と思わず驚きの声を漏らしていると、休息に接近する気配を察知して、戦闘態勢に入る。


どうやら、61階層最初のお客さんは大きな鳥の魔物らしい。


魔物の癖に歴戦の戦闘機乗りの様に太陽を背にして上空より翼を折り畳んで空気抵抗を減らし急降下爆撃宜しく加速して突っ込んで来る愚かな鳥・・・まあ所詮鳥だからな。バカなのはしょうがない。


今の俺には『黒竜丸』と言う、超絶な斬れ味を誇る愛刀があるのだ。

俺は、腰を落として構え居合抜きの様な態勢で突っ込んで来た鳥に合わせ刀の鯉口を切る。

一瞬にして綺麗に両断された鳥は、『デザート・ロック・バード』と言う肉の美味しいらしい鳥であった。美味しい肉はウェルカムである。


我が家には食べ盛り、育ち盛りの子供らが多いので肉も魚も多くて困る事は無い。


そして俺は日本に居た頃と違って、ここでは美味しい美味しいと喜んで食べてくれる子供らの喜ぶ姿を見るのが大好きなのだ。


急に慈善家になった訳でも何でも無いのだが、何年も陸の孤島の様な場所で粗末で味のしない物なんかぼっちで食っててみ?


何の為に毎日食って生きてるのか疑問に思って来るから。だからこそ、『誰かと』ご飯を食べる事、『美味しい!』と微笑んでくれる事の嬉しさが胸に染みるんだよ。


っと!!また2匹目の『デザート・ロック・バード』のご来店である。「いらはいいらっしゃい!」とばかりに、スチャっと『黒竜丸』で今度は食べる『実』が多くなる様に心懸けつつ斬り付ける。


あ!また2匹来る。上空にフォース・フィールドの足場で居る所為か、ドンドンと鳥が餌箱に集う様にやって来るのである。


うん、これはこれで肉的に『アリ』だな。



鳥の来襲で話がやや逸れたが、赤い丸が罠と仮定すると、差し詰めこの緑の丸が下層への階段って事かな? それとも、この3つ程ある青い丸だろうか?3つしか無いって事は隠し部屋うや宝箱の可能性も高いな。


対して緑の丸は2つあって、1つは先程出て来たばかりの60階層からの出口ね。そうすると、もう1つが下層の階段しかないじゃん?


当初全然この『自動マップ』には期待してなかったんだが、すまん『自動マップ』よ!君の事侮ってたわ。


ちょっと、この青丸の正体3箇所廻って探って行こう・・・。


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