第202話 またもや俺を悩ます命名の儀再び

おチビちゃんが生まれて来てくれて2日も経つと漸く家の中も家族子供らやみんなも通常の毎日に戻って行くのだが、その通常におチビちゃん詣でが追加された感じだ。


特に女の子達はキャイキャイ言いながらやって来るのだが、大抵おチビちゃんが寝て居るのでチラリと一目だけ見て嬉し気に帰って行く感じである。


そして何時までも『おチビちゃん』では可哀想なので正式な名前を付けなきゃって事で、お産疲れも取り敢えず落ち着いたアリーシアに相談すると、

「サチちゃんの名前も素敵でしたし、やはりトージさんにトージさんの国らしい意味のある名前にして欲しいです。」とお任せされてしまいました。


ちなみに、最近忘れがちだが俺の元の本名は大沢藤治郎である。


この『藤治郎』って名前には少々子供の頃に嫌な思い出があって、幼稚園の頃にお友達から、「とうじろう? 何かお爺ちゃんの名前みた~い!」って揶揄われて泣いて帰ったと言う位記憶が合ったりする。

帰って家で親父に「何でもっとカッコ良い名前にしてくれなかったんだよーー!」って泣きながら食ってかかったのを覚えてる・・・今思えば悪い事をしたな。


当時、健太郎とか、健太とか、そんな名前が今風でカッコ良いって思ってたし○○郎とか○太郎とかは嫌だったんだよね。(※注意:該当する名前の方をディする意図は無いのでお許しください。)

ただ。小学校に入った後に、ドンドン感じを習って自分の名前を漢字で書こうとするんだが、結構バランスが難しくて上手くカッコ良く書けないのがお嫌だったのを覚えて居る。


今となっては気に入っているし、異世界だと何の先入観すら無いから問題ナッシングだ。


でもさ、この『藤治郎』って別に全く意味を込められて無いんだよね。

昔居たレーサーの名前の読みをと親父が好きだった女性歌手の名字からこの『藤治郎』にしたっって言ってたし。


そこで息子の名前って事がどうする? サチは『幸』だ。幸太? 幸多 ・・・漢字で書くと名前としては多が珍しいけど、どうせ読みだけなんだから、コータとなる訳だ。


これなら悪くないし、サチちゃんの弟って繋がりも漢字的には韻を踏んでる? うん良い気がして来た!コータ!!!


と言う事で早速アリーシアの許可を頂きにやって来た。


「アリーシア、名前考えたよ。コータってのはどうかな?サチの幸って字はコウとも読めるんだ。幸せが多いって書いて幸多・・・つまりコータ。どうかな?」と俺がアリーシアにお伺いを立てる。


「コータちゃん、コーちゃん、うん、何か良いですね!? 私は凄く気に入りましたよ!! ねえ、コータちゃん、あなたのお父さんが素敵な名前を付けてくれましたよぉ~♪ 良かったでちゅねぇ~♪」とおチビちゃんからコータに進化したアリーシアにピットリと貼り付いて居るように抱かれた我が子に声をかけていた。


「コータ、宜しくな!元気にスクスク育って、沢山幸せになるんだぞ!」と俺も声を掛けるのだった。


「ふぅ~。これで俺のメインイベントは終了っと。デス・ワーク続いてるから、ちょっと数日空けたし顔を出して様子見てくるよ。兄姉弟子達が体調崩すと拙いからね。何かったら、携帯に連絡頂戴。病で戻って来るからね!」と言ってアリーシアの部屋から出て行くのであった。




3日振りに来るライン工房の方は開けた扉をソッと閉め直してUターンしたくなる様な以前同様のフル稼働振りで、いち早く通常業務に戻っていたマッシュから目敏く発見されてしまって工房内へと招き入れてしまい脱出のタイミングを完全に逸してしまったのだった。


もうこうなったら、腹を括って皆と頑張るしかない。


でも、何か俺は去る時以上にフル稼働している気がしていると、マッシュからの不吉なご報告を頂いてしまった。

「トージ兄ちゃん、えっとね、この3日間で、国内の分だけでなくて・・・帝国からも注文あってね。ちょっとヤバイぐらいのバックオーダー数なんだよね。どうしましょう? このままだと、ちょっと捌ききれないかも。」と普段滅多に弱音を漏らさないマッシュから珍しく弱音が出て来たのだった。


「まあ、こっちに回せるだけ基礎教育の終わった見習いを含む子供達を動員するとしても、やっぱ最低でも12歳以上で無理の内容に配慮して、それ以外も全員だけど、キチッと休みや休憩を取る事。時間外までの作業は禁止だな。 兎に角ラインを増やす為にちょっと俺は蒸着の魔動具等のセットを出来るだけふやすよ。」と指示をして、作業中のみんなに向けて声を張り上げるのであった。


「みんな、ちょっとだけ聞いて欲しい。俺の私用で暫くほったらかしになってしまって申し訳無い。先日聞き及んで居るかとは思うけど蕪辞に男の子が生まれた。先程名前をコータと決めて来たのでお礼と報告をして置きたい。

あと、みんな決して無理をしない様に。ちゃんと休みや休憩を入れてくれ。出来る限り増員の手配もするし、期日なんて在って無い様な物なんだから、無理して職らが身体を壊すより、客を待たせた方が良い。

諸君らは俺達の家族なんだから。兎に角気負わずにマイペースに出来る範囲で頑張ってくれ。ではご静聴ありがとうございました。」と言って頭を下げると、何故か皆から拍手を貰ったのだった。



俺さ、こうして子供らを雇って働いて貰っている訳だけどさ、何か殆どが13歳以上の成人と言っても、日本で言うところの中学生だもんね。元日本人の感性としては、どうしても劣悪な環境で少年少女を働かせて搾取してる悪徳商人って気になっちゃうんだよ・・・。


そして、こうして忙しい状態になるとそんなつもりは毛頭なくても、健気に頑張ってくれようとする彼らを利用している様な気になって。凄く罪悪感を拭えないのだ。


だからこそ、他よりも良い条件で全員で幸せになって行きたいと心の底から思うのだ。



兎に角、少しでも彼らの負担を減らす為、ライン増強分の魔動具等のセットをサクサク作って俺も戦線に参加しないとな・・・。


この忙しい時期に3日間休んだ事で若干早く上がり難いのだが、何となくサチちゃんの事が気掛かりで言う程早い時間では無いが、4時半には自宅に戻らせて貰ったのだった。



サチちゃんの何が心配だったかって? そりゃあ、今までは両親や周囲の者の愛と注目を一身に受けて居た所から弟の出現でその座を奪われた訳じゃん。


幾ら賢く優しい子だと言ってもまさ2歳の後半に差し掛かった頃。


幾ら平気そうにして居ても寂しく感じてない訳が無い。


だから少しでもサチちゃんに構ってやりたくてさ・・・。



自宅に帰ると案の定サチちゃんが一人で大人しくお人形さん遊びをして居た。


「ただいま~♪ サチちゃんと遊びたくて早く帰って来ちゃったよ!」とゲートでリビングに出て声を掛けると、

「あ!!おとーしゃんだー!おかゆりー!」と弾ける様な笑顔で出迎えてくれて俺の方へと小走りに駆けよってくれた。


俺も片膝を付いて跪いて両手を広げると、ヒシッとサチちゃんが抱きついて来た。


そんなサチちゃんの気持ちを察して抱っこして優しく背中をポンポンとしてやるのだった。


俺が居ない間の事等今日の出来事を聞いてその後は一緒になってお人形さん遊びに参加してサチちゃんをうんと可愛がってやるのであった。



ちなみに本日俺の居ない間の殆どはカレンさんの所にお邪魔してガスリー君とお勉強したり魔法の練習をしたり、本を読んだりしていたらしい。


今度カレンさんにお礼を言って置かないとだな。


「だきゃら、さびちくはにゃかったよ。」と笑うサチちゃんにちょっと胸が締め付けられるのであった・・・。



とは言え、現在の工房の稼働状況で、俺だけ我が儘を言える訳も無く非常にもどかしい。


その言葉に出来ぬ寂しさを何ともしてやれない不甲斐ないお父さんでごめんな。と心の中でサチちゃんに謝るのだった。

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※文中で主人公の名前を含み特定の名前を例に出しておりますが特にそれらの名前をディスったりする意図はなく、そう言う風に当時は思った と言うエピーソードの1つとしてご容赦下さい。m(__)m

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