第201話 二子目のお産はは早いって聞いたんですが?

午前11時頃から始まった陣痛の波は徐々に周期が短くなるものの、第二子目の割に時間が掛かっている気がする。もう既に5時間位経っているのだ。


もっと二子目はスッキリスパンと行くのかと勝手に良い方向に解釈していたよ・・・。


頑張ってくれと。そして母子共に無事に出産をしてくれと、隣の部屋から聞こえて来る周期的なアリーシアの苦痛に耐えて唸る様な声を聞いてお互いに抱きしめ合った状態で固まる俺とサチちゃん。


途中に何度かサチちゃんと部屋を抜け出して神殿に行って女神マルーシャ様に思わず祈りを捧げて1分程で戻って来る俺達。


きっと神界ではそんな俺達を見て女神マルーシャ様が苦笑いしているんだろうなって思うけど、そうは言ってもね・・・生憎変わってやる事も何も出来ない俺には只待つ敷か無いのである。


これでもサチちゃんの手前、比較的先の出産時よりは落ち着いて行動出来て居る筈である。


まさか。第二子もサチちゃんの時の様に10時間以上掛かるなんて事は無いと思うけど・・・。


少し隣の部屋から聞こえるアリーシアの声の音量が大きくなった気がする。

「おとーしゃん、おかーしゃん、くるちーって苦しいって!!だいじょび大丈夫?おかーしゃん、だいじょび大丈夫?」と頻りと俺に尋ねて来るサチちゃん。


「ああ、大丈夫だよ。サチちゃんを生む時はもっともっと大変で苦しかったみたいだし、今度も大丈夫だから。何があっても、俺の愛する家族は俺が・・・お父さんがキッチリ守るから大丈夫だよ! お父さん公見えてもね、魔法が上手なんだよ!だから、どんな怪我でも病気でも生きさえしてれば治してみせるから。 だから、サチちゃんは心配しないで大丈夫だよ。」と自信あり気に胸を張って答えたのだった。


うん、どうやらゴールは近いみたいだ。俄に隣の部屋の動きが活発になって、サンドラさんの「そうだ、今息んで! ほら、来たよ」とか言う声が聞こえて来る。


「ちょっと待って、受ける準備良いよ、ほれ、最後のひと踏ん張り!はい息んで!!」と掛け声を掛が聞こえ、


「良し来たー!出たよ!おおこれは大きいね。」サンドラさんの声に交じって「オンギャー♪」と言う待ちに待った可愛い泣き声が聞こえて来た!!


「ああ、元気な声だ! サチちゃん、生まれたよ!!! サチちゃん、お姉ちゃんになったよ!!!よく一緒に頑張ったねぇ~」と言いながら、サチちゃんを抱きしめつつ背中をポンポンとしてやると、


「やっちゃーー!サチおねーちゃんだーー!」と漸く大きく息を吸い込んだ後に小さく叫んで居たのだった。


「さ、ちょっとお母さんの部屋の前の廊下に行って中に入れるのを待つかな。」と言いながら、移動を開始する俺。廊下に出ると、カチャリと隣の部屋のドアが開いて中から、ちょっと焦った様子のリンダが飛び出して来た。

「トージ兄ちゃん、ちょっと、サチちゃんは廊下で待っててね。ちょっと出血が止まらないから、トージ兄ちゃんの回復魔法をお願い!!」と手短に用件を伝えて来た。

俺は「了解。ちょっとサチちゃんっはここで一瞬だけ待っててね。」とサチちゃん廊下に降ろして自分自身にクリーンを掛けつつ部屋全体、そしてベッドで出血の為か青い顔をして居るアリーシアにもクリーンを掛けてから、出産時に裂けたであろう幹部や痛めた可能性の有る子宮を含め入念に完治するイメージを込めて回復魔法を発動したのだった。


アリーシアが一瞬白く輝き、そして、苦痛層に唸って居たのが収まり正常な呼吸へと戻って行く。


「よし、治療はOKだ。子共の方にも念の為回復掛けよう!」と俺が言うと、スッとリンダが白い布にくるまれた生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこして連れて来た。


「これが我が第二子か。 こんにちは、おチビちゃん。お父さんだよ。」と言いながら、クリーンを掛けた後、疾患等や怪我や炎症箇所等が在れば治療するイメージで回復魔法を掛けてやった。


赤ちゃんが一瞬白く光って収まり、可愛い顔の全容が見えて来た。


アリーシアは、疲れ果てた様で、白いシーツを掛けた上から寒くない様にタオルケットを掛けられて少し寝息を立てて眠って居る。


俺はアリーシアの方を向いて起こさない様に小声ソッと「アリーシア、可愛い子供を産んでくれてありがとう。愛してるよ!!」と言ってから、廊下で1人寂しく待ってくれて居るサチちゃんに赤ちゃんを見せる為にドアに近付くと、俺の意を汲んだリンダがドアを開けて廊下で待つ不安気なサチちゃんを連れて来てくれた。


「サチちゃん、お母さん頑張って疲れちゃったから、今寝てるけど、元気だから心配要らないからね。 それに、ほら、元気な赤ちゃんだよ!これがサチお姉ちゃんの・・・えーっと」とここまで言ってまだ性別すら聞いて無い事に気付く俺に横からソッとリンダが「弟ですね。男の子ですよ。おねでとうございます。トージ兄ちゃん。」と付け加えて来たのだった。


おー!男の子だったか!!!お腹に居る時からやんちゃだとは思ったが、そうか!男の子か!!これで一男一女だな。良いじゃ無いか!とほくそ笑んでしまう俺。


赤ちゃんを抱いたまま、サチちゃんの目線まで下がり跪いて赤ちゃんを見せてやると、

「可愛いでしゅ! 弟ちゃん、サチおねーしゃんよ!よろちくね!」と可愛い笑顔をみせながら、愛おしそうにお手々やホッペに触るのであった。


うむ、何とも微笑ましい尊い光景で胸の奥がジーンとなって、思わず目頭まで熱くなってしまった。


ハッと気付くと、不覚にも嬉し涙を流していた様で、サチちゃんから「ヨチヨチ」と言いながら頭を撫でられて居たのであった・・・。


その後、肩で無理矢理涙を拭って、照れを笑いで誤魔化しながら早めに初乳を飲ませると言う事で赤ちゃんをリンダ達に取り上げられて部屋から追い出されたのであった。




あーちゃん赤ちゃんかーい可愛いかった。なまい名前何にしゅりゅ?」とサチちゃんに尋ねられてハタと考え込む俺。


「うん、どうだろうな・・・後でお母さんと相談してから決めないとな・・・。」と応える。


「しょっかぁ~。」と微妙な感じに答えるサチちゃん・・・。


無言で居たがその実、既にのミソ総動員で名前の候補を考え始めるのであった。


だって、早めに候補作らないと、お姉ちゃんスイッチ入ってしまっているサチが勝手に候補を決めそうな予感したからな・・・。


こればかりは、親から子に渡すの大事な人生最初のプレゼントであり、親の大事な役目の1つだしな!

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