第200話 気の早い各方面からのプレッシャー
あー、本日も必死に『携帯魔動電話』を製造中の俺です。
商人ギルドの2人の来襲はは予想してたけど、まさか、ジェシカ経由で王宮からも発売を急かされるとは思いもしなかったよ。
いやね、商人ギルドの2人に言われるまでも無く、発売と同時に大変な状況になるって思ってたから、こっちもこうして言われる前に兄姉弟子達を総動員して製産に励んでいる訳だが・・・。
物の規模が規模だけに、家の者全員を使った高負荷テスト等を派手に方々でやったのが悪かった? いや、悪くない筈だ!!
ある意味口コミとしては絶大な宣伝効果を得たと言っても過言では無いだろう。
でも、王宮と言うか王家までが責っ付いて来るとは正直予想外だった。
まあ確かに言われて見れば国や軍隊にこ俺のそ欲しい一品だよね。
「出来る限り速やかに供給をお願いしますね、師匠!!」と王女モード全開の笑顔で言われてもな・・・今更感が半端ない。
まあ俺は良く出来た大人だから指摘も失笑もしないけどね。
しかし、よくよく考えると値段さえ決めて無いんだよな。
もうこの世界に来て何年か経ってるけど、唯一この魔動具を始め新規に出すレシピや製品の価値や値段の見極めが全然出来て居ない俺。
これまでは、そう言う関係はアリーシアにお任せしてたんだけど、臨月で何時陣痛が始まるか判らない奥さんに余計な負荷を掛ける訳にもいかないので現在オロオロして居る訳だ。
我ながら情けないが・・・困った時のマッシュって事で家の頼りになる若頭に商人ギルドの2人と値段の摺り合わせをお願いしその後そのままジェシカの話を聞いてみて欲しいとお願いしたのだった。
マッシュにお願いして心が軽くなった俺は「ふぅ~。良い仕事をしたぜ。」と呟いたら、
「ゴメンよ・・・悪気は無いんだよ!? 何時も頼りにさせて貰ってるからちょっと安心してな。つい本音がポロリと・・・。」と俺が慌てて言い訳をすると笑っていた。
結果物が物だけに無闇に安価にすべきでは無いと言う商人ギルドの2人の意見では大金貨1枚・・・の百万ギリー日本円にして百万円と言う主張を庶民の手に入る金額にトージ様はしたいはずですからと言うマッシュの意見との激しいバトルの末、
庶民が頑張れば手に入る金貨5枚 つまり日本円にして50万円と言う価格に落ち着いたのだった。
てか、それでも十分に高いじゃねぇ~かよ!って日本人の感覚では思えてしまうけど、昔の高性能なノートPCだとそれくらいの金額もあったし、そんな物なのかなぁ~ぐらいの感想である。
人任せにして置いて酷い言い様かも知れないが、俺としてはは別に安くしたいとは思っていない。
理由は簡単で、この地獄のデスマーチならぬデス・ワークが長く続いてしまうからである。
デス・ワーク・・・言い得て妙だな。兄姉弟子がやってるだけに
いや、可愛い兄姉弟子を早く地獄から救う意味であれば商人ギルドの2人の言う1台大金貨1枚の1万ギリーでも良い様な気がするがな。
しかし、一旦丸投げ・・・信頼して任したからには余計な口を挟むべきではないだろう。と口を噤み只管黙々と兄姉弟子と一緒になって流れ作業で『携帯魔動電話』を製作して行くのであった。
マッシュの交渉の結果、王宮からの要求数が判明し俺も兄姉弟子達も現顔を引き攣らせて在愕然としているところである。
「マジか・・・まだこれから5000台も作るのかよ!?」と嘆く俺。
兄姉弟子も項垂れている。
そこにマッシュからトドメの一撃が入る。
「皆さん、気落ちしているところに申し訳ないのだけど、ちょっと違うので、訂正を。正しくは、第一段階の納品の数量が5000台で、第ニ第三と続きますし、商人ギルドからの注文分もそれに近い数があるので・・・。」と鬼畜なお言葉を頂くのであった。
「兄姉弟子の諸君よ、この労働には十分に報いる事を約束しよう。 そして、錬金術の知識の必要無い単純作業に関しては助っ人を大幅に導入して増員しまくってちゃちゃっと終わらせて美味しいBBQで全員でしようぜ! 勿論各人に報奨金も出すからな!」と言って兄姉弟子達を元気付ける俺。
俺の『増員』や『助っ人』という言葉を聞いて少し希望を見出した様に顔を上げ出す兄姉弟子達。
我が社はホワイトを売りにして居るんだから、仕事には夢と希望が無いとイカン。
そうして、単純な作業の助っ人に第六期生と第七期生を導入して作業効率を大幅に改善する事に成功し、今まで青くなって作業していた兄姉弟子達はどちらかと言うと、作業指導と監督と言うポジションとなって俺が総括って感じになった。
そうして波に乗って来だしたところで、『携帯魔動電話』が鳴り、見るとアリーシアの番号であった。
電話に出ると、苦しそうなアリーシアの声が・・・陣痛が始まったらしい!
直ぐに俺はマッシュを連れて自宅に帰るのだが、マッシュの提案で途中、リンダと第一期生の女性陣を招集しつつ、サチちゃんの時にお世話になった産婆のサンドラさんを呼びに行って貰うのであった。
自宅に戻ると、苦しそうにしているアリーシアを心配そうに見ながらベッドの傍に置いた椅子に大人しく座ってアリーシアの手を一生件目に握っているサチちゃんと、
アリーシアの額の汗を拭いたりしているサリエーナさんの姿があった。
「ただ今。大丈夫。サンドラさんも呼んであるから。もうちょっとしたら、迎えに行って来るから。サチちゃんは、お母さんの看病してくれてたありがとうね。助かったよ。 流石はお姉ちゃんだな。」と俺が褒めると、嬉し気に「サチ、おねーしゃんになるんだから!大丈夫!」と胸を張って居た。
そう、サチちゃんは後少ししたら、お姉ちゃんになるのだ。
「よし、お母さんにサチちゃんのエネルギーが入ったから、お腹の赤ちゃんも元気に生まれて来るよ!! さあ、じゃあお産の準備に入るから、お父さんと一緒に赤ちゃんのお着替えやお風呂の準備とか、サンドラさんのお迎えとか、出来る事を遣りに行こうか。サチお姉ちゃん、手伝ってくれると助かるなぁ~。」と俺が言うと。
「あい!おてちゅだいすりゅー。サチお姉ちゃんらし。」とサチちゃんもお手伝いしてくれる様だ。
俺はサリエーナさんに「じゃあ、助っ人の女の子達ももう来て居るので、後は宜しくお願い致します。」と言ってから、
「アリーシア、安心してくれ、ずっと家に居るから、母子共に安全だから!俺が居るから・・・!心配するな! 愛してるよ!」とちょっと気が焦って何とも励ましにもならない激励の言葉を贈ってから、サチちゃんを抱っこしたままサンドラさん自宅の近くの路地裏にゲートでいどうし、先行したマッシュと合流したのであった。
サンドラさんの家の前には鞄を持ったマッシュと、サンドラさんを急かしながら引き連れて来るリンダの姿があった。
そして、おれは3人にうなずてから、ゲートを自宅のアリーシアの部屋の隣の部屋に繋いで戻って来たのであった・・・。
普通なら第二子の出産ともなれば少しは慣れて落ち着きそうな物だが、そう単純な物では無い。やはりどうしても、漏れ聞こえるアリーシアの息も絶え絶えで来るし気な喘ぎ声を聞いていると、尋常な精神状態では居られなくなってしまうのだ。
何とかしてやりたいって思うのは当然の事だろう。
とは言え、今回は俺の手を不安気にギューッと握り締めている小さいサチちゃんが居るのだ。
俺が不安にして居る所を見せる訳にはいかない。
ドシンと構え大丈夫なんだって思わせないと!!
何かしてないと気が紛れないので、俺とサチちゃんとで軽食の準備を始める事にしたのであった・・・。
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