第192話 明日の為の基礎技術開発と改良 その1

一応暫定的に魔動具としてカメラの再現は実現したが、性能的には10世代程前のガラケー時代のカメラ機能にすら劣る画質だ。


まあこれは偏にレンズを作れない事と、受光体の感度(魔力感度)の悪さに起因する。


その為にオリジナルのアーティファクトは水晶球がしようされていた訳だが、それでは加工性が悪くコストだけたかくなってコスパが悪い。

その為に平面ガラスを使用したが通常のガラス自体はそれ程魔力伝導率が良く無い。つまりこの場合感度が落ちる。

だから、カメラの性能を上げようとした場合2つのアプローチが在る訳だ。


1つはレンズを用いた地球の知識を使った光学系の手法。


そしてもう1つは、受光体の感度自体を上げる為にガラスに何か処理をする方法。


そこでフト思い付いたのはミラーサングラスによく用いられている蒸着である。

真空の空間で金属のフィラメントをセットし非蒸着物質サングラスの場合はレンズだな。コレをフィラメントの上に置いて加熱を流してフィラメントが蒸発すると、その金属の蒸気が上にあるレンズ等に付着するのが蒸着だ。


この蒸着を使ってガラス板にもっと魔法伝導率の良い金属を表面に蒸着させれ受光体としてのば感度も良くなるんじゃないかってね!


そしてテストを繰り返した結果、最高の結果を得られたのは想像通りミスリルを蒸着させた場合だったが、これ自体は殆ど市場に出回らない金属なので継続使用は難しい。


そこで、ミスリルの別マリが魔法銀である事から、普通の銀自体もある程度魔法伝導率が良いのでは無いかと想像し、銀を蒸着させたガラス板でもテストをした結果、ミスリルに比べて極端に落ちる物の、十分に蒸着の効果が確認出来た。


これでガラス自体に付与し放題となった訳だ。勿論筐体裏のディスプレイが平面ガラスもコレに変更したので移した物を頼鮮明に表示する事が出来る様になった。


この蒸着ガラスの製造法を師匠に教えたら、珍しく大絶賛して褒めてくれたのだった。


師匠に褒められると、別にマザコンでも何でもなかったけどさ、何かお袋に褒められて居る様な気持ちになって、胸にグッと来る物があるんだよね。



師匠に褒められた事に気を良くした俺は普段より妙に冴えて居て面白い発想の転換を思い付き、実験してみる事にした。


簡単である。現状のピンホールを、蒸着したガラス板をレンズに見立て、魔方陣を掻き込む事でレンズの代わりに遠くの景色と言うか光を増幅して鮮明にするフィルターを作ってみたのだ。


ピンホールから、レンズっぽい効果を付けた事や持ち易さを考慮した結果、形状は大きく変えて、望遠付きの一眼レフに近い短い茶筒が付いた様な筐体形状とした。

魔付与による疑似レンズの為、焦点距離とかを考慮する必要も無いのが光学系に疎い俺にはありがたい。


こうして異世界初のカメラの魔動具は完成から5日程と言う俺史上初の超短期間で、Ver.2へと進化してしまったのでる・・・。


これも、イキナリ登録したらまたあの2人に理不尽な文句をいわれるので、1000台分のストックが完成するまで只管蒸着ガラスを作り続ける俺であった。



物が物だけに普段は率先して手伝おうとはしない塩対応が売りの師匠なのだが、早く発売して世間の反応を見たいらしく、組み上げ工程を手伝ってくれている。



てか、師匠だけかと思って居たら、師匠が錬金術を教えて居る俺の兄弟弟子達にやらせていた・・・。


「ちょ!?何やらせてんですか、師匠!!」と俺が言うと


「なぁ~に、優秀な兄弟子の作品を手伝って手に取って学ぶ事も大切な事なんじゃ。」と誤魔化す様に言っていたのだった。


だってさ、コレってそれ程参考に成る様な魔方陣とか見える所に無いんだよね。


もし勉強になる点と言うのであればコピーさせないように偽装している点かな・・・。


まあ兄姉弟子には色々仕組みや考え方等も教えるから良いんだけどね。


そんな訳で1ヵ月程昼夜頑張った結果、魔動カメラVer.2改め『魔動カメラ』はストック分も含めフィルム用魔石のストックも各1000個を越えるまでになったのだった。


そして久々にマッシモの商人ギルドに屋って来たら、いつの間にか受付カウンターの受付嬢まで増えていてビックリ。


どうしよう?って一瞬オロオロしちゃったけど、直ぐにルミーナさんが奥から俺に気付いて出て来てくれたのだった。


久々に商品と特許の登録と言う事を伝えると直ぐにロバートさんの居るギルドマスター室の方に連れて行かれたのだった。


「ご無沙汰しておりますトージ様。今日は新製品とお聞きして居りますが?」と既に嬉し気に身を乗り出している落ち着きの無い犬の様なロバートさん。


思わず「ロバート、ステイ!」って言いそうなるだろう?


やっとお茶を運ぶルミーナさんが戻って来たので、ソファーに座ったのを確認してから、テーブルの上に『魔動カメラ』をソッと置いたのであった。


「失礼ですが、これは?」と『?』だらけの顔の2人に向けて、1枚パシャリ♪


そうそう、カメラと言えばこのシャッター音無いと撮った気がしないんだよねって事で最後にシャッター音を追加したんだよ。


え?シャッター音すると、気付かれるから盗撮に向かない?いいや、盗撮犯罪だし(但し参考までにこの世界では違法では無い・・・)。


呆気に採られて居る2人に撮った画像を裏面のディスプレイに映して見せると、「「うぉーーー!(キャーー)」」と言う2人の感嘆の雄叫びが上がった。


尤もルミーナさんの悲鳴は連日の激務による目の下の隈を見てのマジ悲鳴だった様だが。ドンマイだ。


「トージ様!!!これは売りましょう!5000台がストック用意してますよね? 売れます!ヤバイですって!!!革命ですよ!!」と頻りと捲し立てるロバートさんの隣で、黙々と手鏡を見ながら化粧を直し隈を隠し終えた後に平然と撮り直しを要求するルミーナさん。



なかなかにカオスである。

「ストックは現在10000台フィルム魔石もストック1000個」と応えて、カメラ本体の使い方とフィルム魔石の意味やセット方法を伝授した。

「トージ様素晴らしいです!!本体を購入しても、使いつづいける為にこのフィルム魔石を定期的に買い続ける必要があるって言う嫌らしい商売方法、最高です!」と言いながら悪どい得画をこちらに見せて居たのだった。



こうして、更に1000個のストックを生産させられたところで『魔動カメラ』を正式発売すると、高額な値段設定にも拘わらず、飛ぶ様に在庫が捌けてしまい、日々カメラを作り続ける俺達(含む兄姉弟子)だった・・・。

ちなみに、フィルム魔石の価格は程々に押さえて居るのである程度は良心的な感じだと思う。


つぎなる商品のプランはこの撮影済みのフィルム魔石の中身を表示する『魔動タブレット』だが、これは蒸着ガラスさえ作れれば作るのは比較的に簡単。


尤も最大のネックはその蒸着ガラスの製造で、今の所、俺1人が発狂しながら作って居る状態。ちょっと兄姉弟子をもっとスパルタに仕込んで蒸着ガラスの製造を少し分散させないとヤバイ!

そう・・・俺がね。



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