第186話 閑話:季節外れの餅つき
決して忘れ去っていた訳じゃないのだが、気付いたら全然餅つき関係無い季節になっていたでござる。
既にウルチカ子爵領から大望の『ウルチカ・モチ・マイマイ』を入荷してて何時でも時間さえあれば作れる環境にはしていたんだよ!
嘘じゃないって。ちゃんと、トレント素材製の杵と臼も製作済みだし、何なら、おこわを蒸す為の蒸籠も作って在るんだよね!
だから、いそいそ準備してた時はまさかこんなに時間が空くとは思いもしなかった。
だが、それは悪い事ばかりでは無かったと言うと意外に思うかも知れないが、丁度『ウルチカ・モチ・マイマイ』・・・長いので以降は餅米と呼ぼう。
で餅米が揃い杵や臼をトレント素材から作り始めた頃は漸くサチちゃんも離乳食を始めた頃で、一足跳びに只でさえ危険な餅を食べさせるには厳しい時だったのだ。
つまり、意図せず時期が今までズレ込んだお陰でサチちゃんに突き立ての餅を食べさせてあげられるまでに成長したって事だよ。
もうすぐ2歳になるし、色々とお話し出来る様になったサチちゃんは凄いんだよね!
何よりも末恐ろしく感じつつも自慢したくなるポイントは魔法の習得の早さとその理解力である。
その驚異的な才能はマッシュを始めとする第一期生も苦笑いしてしまう程である。
とはいえ、まだ2歳前なので幾ら凄いと言っても、攻撃魔法等の殺傷性のあるヤバイ魔法は教えて無いし、種類としては少ないのだけどね。
ただヒッ殺傷性の魔法に関しては回復魔法や浄化魔法等も含み、一期生が苦笑いしてしまうレベルではある。
まあ俺とアリーシアの血を分けた愛する娘だからそりゃあそうなるよね。
まあ半分ではあるけど、手駒専用ボディの遺伝子入ってるからね。
全員の休みが重なった本日、漸く『餅つき大会』を開く事にしたのである。
「やあ、みんな貴重な休みの日に集まってくれてありがとう!漸く! 漸く全てのピースが揃い、今日ここに『餅つき大会』を開ける様になった事を心から祝いたい。まあ本来は正月や年末辺りの行事なんだけどな。」と俺が開会の宣言を行うと「わーー!」とあまり良く判って無い子供達が歓声をあげつつ、拍手する。
もう臼と杵のちょっと離れた隣では蒸籠でおこわを蒸しているところである。
もうね、この日の為にきな粉も大根おろしも餡子もちゃんと用意してスタンバって居る。
まずはジェキンスさん、カッツさんの大人組に杵を持って貰って蒸籠から蒸し上がったおこわを木枠ごと持って来て、布えお持ち上げて蒸し上がったおこわをうすに入れる。
で、カッツさんの杵を借りてグイグイと臼に押し込んで行き、同じ様にジェキンスさんにもやって貰い突く前段階の準備はOKとなった。
「この杵って言う槌みたいなのでこの餅米のおこわを突いて餅にして行くんだけど、餅の部分を突く様に!臼を直接突いちゃだめだからね! 時々、杵の先っちょを横にある桶の水でぬらして、餅に引っ付かないようにしてね。」と注意事項を素早く伝えて掛け声と共に突き始める。
ペッタン♪ペッタン♪とリズミカルな音が鳴り徐々にモチモチとした餅になって行く。
只のお米だった物が、ネバネバした物に変わっていくのを見て良く判って無かった最近家に入って来た子らは面白そうに見て居る。
サチちゃんも音が気に入った様で「ペッタン♪・・・ペッタン♪・・・ペッタン♪」とリズムに合わせて掛け声を掛けて居る。
「よし、最初の物はこれ位で良いだろう。」と告げると俺は餅を無属性のフォース・フィールドの触手で持ち上げて隣の餅丸め様の作業台に片栗粉を撒いて突き上がった餅をドンと置いた。
「さあ、みんなで小分けにした餅を丸めるぞー!!全員、クリーンを掛けてからやるんだぞー!」と声を掛けて、見本を見せつつ丸めて見せてから、カプッと一口味見で齧り付いた。
「美味い!!」みんなも、突き立ての餅をそのまま食べてご覧。 あ、サチちゃんも食べてみるか?」と言いながら聞くと「うん、サチもまりゅめりゅ!」と言うので餅を分けてやると、小さなおててで一生懸命に丸め始めた。
その間周りでは各自丸めた餅を始めて口にしてその食感と素材の美味しさを味ういつつ「美味しい美味しい!ご飯の味とは全然違う!」とはしゃいでいる。
サチちゃんは3分程餅と格闘して居たが、ようやっと丸くなった餅を宝物の様に掲げ、口を開けてパクリと囓って、俺が注意した通りに良く噛んでから飲み込んでいた。
「な? 結構美味しいだろ?でももっと美味しくなるから、ドンドン突いて行くぞー!!」と俺が声を掛けると子供らのテンションが上がっていて「「おーー!」」とみんな拳を突き上げていた。
ペッタン♪ペッタン♪~~
これだけ人数いると、突き手がオーバーワークになる事も無く非常に楽で良い。
第二弾以降は、きな粉もおろし餅、餡子餅、ソイのみ、そして磯辺焼きを出してみた。
子供達にはきな粉餅と餡子餅が大人気で口の周りに餡子を付けた状態で良い笑顔を見せていた。
大人組にはおろし餅、磯辺焼きが大人気で、
「これだけの屋台やっても十分にバカ売れしそうな気がしますね!」とカッツさんが目を輝かせて居た。
「ヤル気あるならやっても良いよ!元々餅のレシピはウルチカ子爵領の為にも登録して世にこれらを出す気で居たし。」と俺が応えると真剣に考え込んでいた。
サチちゃんもお餅うぃ突きたいらしいのだが、残念ながら、サチちゃんサイズの杵は想定外過ぎて作ってなかった・・・。
なんてこったい・・・サチちゃんがシュンとして代わりにお兄ちゃん達お姉ちゃん達(主に一期生)所に行って、
「リンダ姉ぇちゃんペッタン♪」(意味:リンダお姉ちゃんもお餅突こうよ!)と言ってしまった・・・・途端に場の空気がピキッと氷付き、一瞬で周囲がシーンとするも、死んだ様な目のリンダは屈んでサチちゃんの目線まで下がってから「サチちゃん、お姉ちゃんはペッタンじゃなくてボイインさんなんだよ!」と諭す様に
意味が判ってないサチちゃんは首をコテンと傾げて「リンダ姉ぇちゃん、ボインさん?」と不思議そうに復唱して居たのだった。
何てデリケートな所に斬り込む・・・
しかし、一連のやり取りは3m程離れた所できな粉餅を食べていたマッシュの壺には直撃したらしく、思いっきりブハッときな粉と餅を吹いていた。
更にはきな粉が気管に入ったのか、暫く咽せながら、涙を場がして笑って居た。すると能面の様な表情になって行くリンダ・・・。
その後リンダによる雷魔法のパラライズ・サンダーを浴びせられて、吊り上げられて船の甲板でピチピチ跳ねる魚の様に地面の上で痙攣していたのだった。
マッシュ・・・南無ー。
てかさ、マッシュの思い人ってリンダだったんだよね。以前お土産買う際に誰かにあげるって言ってたけど、翌日リンダが凄く嬉し気に髪にマッシュに貰った髪飾り付けて居たから。
まあ、あの2人は馬鹿な事さえしなければ鉄板だと思うんだけどなぁ~。
マッシュももうちょっと笑いを耐える訓練しないと駄目だな・・・。とマッシュの恋の行方を心配する俺であった。
そんな感じで、第一回の『餅つき大会』は大盛況の内に幕を閉じたのであった。
後日談となるが、マッシュはあれから3日間リンダから口を利いて貰えず、目に見えて塞ぎ込んで居た。
「マッシュ、お前さぁ、リンダ好きなのミエミエなんだよ!ちゃんと先に告って置かないと絶対後で公開するぞ!俺の見立てではお前ら2人は相思相愛の鉄板カップルだ。
でもな、俺も人の事言えないけど、気持ちは口にしないと相手には伝わらない物なんだぞ! 俺の生まれ育った所では、愛の告白の時には跪いて指輪を渡して愛の告白をするんだよ!」と俺がアドバイスをして置いたのだった。
結果? ふふふ・・・その翌々日には頂上機嫌のリンダとニヤニヤ顔の締まらないマッシュが居たって事で理解してくれ!
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読者の皆様どうもです。
何時もお読み頂きありがとうございます。m(__)m
変な時間からスイッチ入ってしまって、ロールキャベツと言うか『巻かないロールキャベツ』を作り始めてしまいアップするのが遅くなってしまいました。
一応結果から言うと、普通に巻いた方が狭い台所では楽って事が判明しました。
味見は明日の予定ですが、取り急ぎのご報告まで・・・。
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