第184話 忘れた頃に・・・ その5
東西南北の各新旧の城門までを一直線に結ぶメインストリートの建築前に魔力を広げて墨入れの様にマーキングを行う。
そう、俺と俺以外の者がやった場合の大きな差はこのマーキングだろう。何も無い只の地面にナスカの地上絵の様にクッキリ線を描くのはやはり魔力を使った方法がベストである。
墨壺では無くて、普通に糸を使ってピンと張って杭を打ち込む手もあるが、如何せん糸は弛んだり風でズレたり思った様にキッチリと出来なかった。
まあ過去にそれでズレてしまって大変面倒なやり直しをした経験があるのだ。
日本の様にナイロンの糸とか在ったらまだ違うんだろうか?
最初はケープ・スパイダーの糸を使ってビンビンに張ろうか?とか考えてたが、それより、無属性の魔力の糸を使う方が現実敵でコストも掛からないと気付いた所から、現在の魔力によるマーキングに行き着いたのである。
まずは4本のメインストリートのマーキングを終わらせ、ホバー移動をしながら、マッシモ準拠の舗装道路を作って行く。
またこれをヤラされるとは思いもしなかったな・・・。
面倒だし多少手抜いても良いんじゃね?なんて出来もしない事を考えて自虐気味に苦笑する。
折角ここまで頑張って仕上げて来た作品に自分からケチを付けるなんて馬鹿な事は出来ないからな。
やはり無駄な事を考え無い様にまた「ヘイヘイホー♪」と歌を口遊ながら作業に集中してガンガンとメインストリートを舗装して行く。
不思議な物で歌を口遊んだり、鼻歌を歌いながらヤルと単調で面倒なだけの作業も妙にリズミカルに進んでしまうのだ。
まあ最大の問題は曲によっては2番3番を知らず永遠にサビの部分をループしてしまう所かな。
別に演歌が好きって訳でも無いし、ゲームのBGMでもイケるし、アニソンでもOKだ。
どちらかと言うとノリの良い曲が良いけど、アニソンやゲームになると、その種類によっては、建造でなくて破壊のリズムになってしまうので要注意だな。
■■■
2週間で東西南北の内の1本の道路を完成させて、次の道路へと取り掛かる。
つまり、仕上げやちょっとした補修も入れると、4本のメインストリートの舗装にガッツリ2ヵ月半も要した。
まあでも、道路を作る際にアップダウンの在る部分を一緒にある程度水平に均したので、区画割して実際の建物を建てる際にはかなり重宝する筈である。
このアップダウンの均し作業自体は特に言われてないのだがツイツイやってしまった。 まあ作品の一部でもあるからなぁ~。
さあ、ここまでで俺の仕事は終わりの筈だ。
早めに引き上げようと思っていたら、いつの間にかジェシカの竜車と満面の笑みを携えたジェシカの姿があった・・・。
「ゲッ!」と俺が思わず短く叫ぶと、
「師匠、可愛い弟子の姿見て『ゲッ!』は無いでしょう? 酷いですわ!」とヨヨヨと泣く様な真似をして態とらしい演技を挟んで来るジェシカ。
「何だよ? だって不吉な予感しかしねぇ~し、『ゲッ!』ってなるだろ?」と俺が吐き捨てる様に言うと、
「流石師匠、ビンゴです。メインストリートは終わった様で、ありがとうございました。お疲れ様です。残りは各枝道ですか? あれもお願い致しますね。ああ、そうだ!師匠にご相談と言うかお願いなんですが、公園も作りたいんですよ! 公園と言えば師匠の所の遊具じゃないですか!? あれも設置お願いしたいんで、序でにお願いしちゃいますね。 やっぱり師匠の作品って本当に他の追従を許さないですよね。本当に素晴らしい出来です!
私は弟子として誇りに思ってますもん。サチちゃんももう少し大きくなったら、師匠が・・・お父さんがやった偉業の数々に囲まれて成長して行くって、嘸かし嬉しいでしょうね! 自慢のお父さんかぁ~良いなぁ~サチちゃん♪」と何とも素晴らしい事を魔法の呪文の様に呟いた。
「お!ぉ? そうか? やっぱ、そうかな? サチちゃん誇りに思ってくれるかなぁ?」と俺が仮面の下でデレデレに蕩けて居ると、ジェシカが侍女から受け取った図面の紙を広げ、
「師匠、凄い王都作って自慢のお父さんの偉業を残しちゃいましょう!」とジェシカが俺に向かってガッツポーズをして来た。
「おう!!そうだな!! よーし、サチちゃん、お父さん頑張ってお前が生涯誇れる作品に仕上げるからねぇ~♪」と拳を上に突き上げて気合いを入れて、図面を受け取ったのであった。
あれ? あれれ? と気付いた時にはジェシカも竜車も居なくなっていたのだった・・・。
卑怯な戦法でサチちゃんを引き合いに出されてしまいマンマと乗せられたのだが、確かに言われて見れば父親の偉業か。 確かに悪く無い考え方だな。
ここは一つ乗せられておいてやるか・・・。
こうして、東西南北のメインストリートの後に図面に記載の無数の枝道等をシコシコと連日作る事になるのであった。
まあ、同一の作者が一環して作業した方が均一の出来映えになるし、ミスも少ないからな。
まあこうして無数の道を作っていると、どの辺りを貰うかを決めるのに役立つな。
そうそう、王都拡張時の話だが、近隣に川や森があるってのがあったと思う。川は城壁の下に鉄格子を填めた水路を作って、場内を流れる様にしたんだよ。
だけど、森は無理。折角の森自体を破壊しかねないので城壁自体を森を避ける様な形でオフセットさせた。
つまり森は以前同様に城壁の外に存在してる。
やっぱり、近隣に森等の資源は残すべきだと思ったし。
生態系とかもあるし森が破壊されると、そこを稼ぎ場にして居る低ランクの冒険者とかが困りそうだからね。
森を回避したとしてもそこら辺だけ若干歪なかんじだけど上から見たらほぼ円形だし良いかなってね。
そう、だから、川の傍で今なら土地の確保は出来るんだけどね。そんなに水量が多く無くて下手したら匂いそうな気がして河沿いは止めておいた。
まあ、ドブ化しなければやりようによっては良いロケーションかも知れないけどね、そもそもその川自体誰が管理するのかも判らないし、ある意味地雷になりかねない。
そもそも他の場所で井戸を掘っても良いし、普通に水道系の魔動具あるから、ノープロブレム!
だから、水源の有無に拘る必要は無いだろう。
◇◇◇◇
ちょっと安請け合いし過ぎたか?
最終的に全ての枝道や公園等までを作り終えるまでに6ヵ月も掛かってしまった。
一番デカい公園は件の川の傍に作って良い感じの丘や、遊具と植樹した樹木等で素晴らしい公園になったと思う。
一応この川の管理は王宮側で行う様にちゃんと言っておかないとな。
そして、俺の貰うべき土地も決まってそこら辺一角の環境に関する取り決めも済ませた。
もうね、半年だよ半年!!! ゲッソリだよ・・・。
本当に割に合わないな・・・安請け合いしちゃったのは俺だけどね。
でも、サチちゃん未来永劫に誇りに思える様な作品に仕上がったとは思うよ!
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