第182話 忘れた頃に・・・ その3
漸くサチちゃんも1歳となって、乳歯もかなり生えてきたので、母乳から離乳食へと切替始めた今日この頃。
ニカッと笑うと真っ白い綺麗な小さい歯が顔をみせるのがチャームポイントである。
それに喋りの方もちょっと舌っ足らずな感じではあるが、もうそれも相まって可愛くて堪らんですよ!
「とーじしゃん、あちょぼー!」とか言って来て足下からよじ登って来るんだもん、思わずフォース・フィールドの足場で持ち上げてやって、一緒になって『高い高い』しちゃったりとか。
r?ヤリ過ぎだって? そ、そうかな? でもサチちゃんもキャッキャと喜んでくれてるし。
でもね、最近はサチちゃんも前よりアクティブになったから身を守れる様に魔装を教え込んだんだよ。
1歳児に良く教えられたと思わない? その為にね、よくTVのコントなんかで出て来る肉襦袢ってあるじゃん、相撲取りの様に太って見える様な綿とか詰まってるあれ。
ああ言うのを作ってさ、それをちょっと・・・・アリーシアに着て貰うのは血の雨降りそうだから、忙しいマッシュに無理言って着て貰ってさ、その横で俺が同じ様に魔装を、纏って本来無色の魔装にちょっと色を付けて可視化してみせたんだよ。
そうしたら、それが面白かった様でね、キャッキャと笑いながら、何度も強請るので、その度に見せてやってたら、ある日自分で魔装を纏える様になってたんだよねぇ~。
本当にサチちゃんマジ天才!
えっと、だから徐々に離乳食食べ始めてて、漸く自分でフォークを握って果物を刺して口に運んだりも出来る様になったんだよね。
ご飯はまだお粥とかにジャガイモを細かくして煮込んだ物とか、薄目の味で柔らか目の物が中心だけど、日々成長して行くのが早過ぎて、お父さんちょっと寂しくなっちゃうよ!
そんなに急いで成長しなくて良いんだよ!と思わず言ってしまいそうになる。
最近は件の王都の城壁の拡張工事がズーッと続いてて、昼間は一緒に居られないから、余計に成長が早く感じちゃうんだよね。
■■■
最近漸く王都の住民にも王都の城壁拡張工事のニュースが知れ渡ってしまってさ、何かけったいな格好した魔王とか言う奴が『魔法』で城壁の拡張工事してるって噂になっているんだよ。
まあこれは打ち合わせ通りに王宮側が故意に流した噂で、魔王についての根も葉も無い・・・いや、割と根も葉も在るな。 実話に基づいたヤバイ武勇談を流してもらっているんだよね。
何でそんな無意味に魔王を怖く強い奴に仕立て上げるかって?
それは言わずと知れた新スラムの浄化作戦時に無用な抵抗や武力抗争を避ける為なんだけどね。
まあ言葉による伝承だけだと、魔王がどんな格好をしていて、どれ程の凄い魔法を使ってこうじしてるのか?とか伝わらないので竜車による拡張工事ツアーがここ王都でも爆誕した。
本当は鬱陶しいんだけどさ、痛し痒しだよね。
なあ幸い素顔は晒してないのでギリセーフ。
そんな訳で、今日も王都の城壁拡張工事現場にツアー客を乗せた竜車が3台連なってやって来て、キャーキャーワヤワヤと俺の一挙手一投足に騒いでらっしゃる・・・。
そんな状態なので、俺も余計なサービス精神が働いて、無駄にフォース・フィールドの足場で宙に浮いて出来上がりのチェックを上空から確認したり、飛び降りて重力制御魔法でフワリと着地して見せたりと、過剰にパフォーマンスを誇示したりした。
そして、そんな日々(工事の日々)を過ごしつつ、すこしずつ王都の街中に魔王コスのまま屋台で肉串を買ったりして、場内にもこの姿の『魔王』を定着させて行く。
そしてある日ついに新スラム街へと突入してみた。
まあ上空からは既にこっそりと偵察はして居たんだがどうやら、王都から裏の勢力が消えた事で新たに王都の裏社会を牛耳る事を目的に王都に潜入して来た一団が住み着いたのがこの新スラムと言う事らしい。
そして、子供らは都合の良い小間使いとして以前の都市から連れてきた子供と言う事が事前調査で判っている。
そして今日は表から姿を見せた状態で堂々とスラム街で裏ギルドを新たにを作ろうとしていた連中を始末する事にしたのだ。
スラム化して約半年と言う事だったが、もう既に立派なスラム街で、辺り一面饐えた匂いやアンモニア臭が漂っており、まともな人間が寄りつけない様なエリアとなっていた。
俺が足を踏み入れると、真っ先に若い18歳前後の男5人組が鳶出して来るが、俺の出で立ちをみてギョッとして言葉を失い立ち尽くして居たが、お互いに牽制し合う様に肘で突いたりして、1人が俺に口をp開いた。
「や、やい! 命惜しかったら、身包み全部置いて行け! へ 変な格好しやがって・・・。」と言い放つ若い青年。
「我に言っておるのか? 『魔王』と知っての言葉か? それとも相手の実力さえも理解出来ぬ愚か者か? 命知らずな小僧よ? 御託は要らん、直ぐにボスの所に案内せい!」と俺が命じると『魔王』と言う羽羽ワードを聞いて少々顔色が悪くなる5名。
「ど、どうするんだよ?魔王とか言ってるぞ!?」とかギソゴソと言い合って居たが、残念な事に自分の武力と幸運で勝負に出る事にしたらしい。
ナイフを取り出して俺の腹にナイフを突き立てようとするが、ガキンと言う音と共に魔装に弾かれて序でに俺の撃った魔弾で足を打たれてギャーと言う悲鳴を上げながらのたうち回っている。
面倒なので、此奴らは、衛兵の詰め所にゲートで送り込んで檻の中に入れて置く様にと伝えて置いた。
ここら辺の手順については事前に王宮側と打ち合わせ済みで、俺が無力化した者を送り込んだら軒並み拘束する様になっている。
ここのボスは事前調べではベルコと言う45歳くらいの顔に傷のあるハゲたオッサンである。
そして幹部が5人居り、其奴らの更に下には10代~20代前後の構成員が居る訳だ。
まあ幸いだったのはまだ組織的にも日が浅くこれから暗躍しようと強請集り、強盗に強姦、そして誘拐と言う最悪のフルコースはやっている連中であった。
俺としても半端な悪党よりは心置き無く息の根を止められるハッキリとした悪党の方が躊躇も遠慮も要らないので好都合だったりする。
ボスのアジトのドアを蹴り飛ばし家の中にはいると、
「てえめぇ~何しやがりる!?って、え? ま、魔王か!?」と家に踏み込んだ俺を見て驚きながら叫ぶ1階のリビングに屯して居たチンピラ共。
余りにもテンプレっぽいので言いたく無いのだが、一応は形式美と言う事で踏襲する。
「我は『魔王』ぞ!お前達の悪事も計画もお見通しだ。ボスを呼んで来い!そして大人しく法の裁きを受けよ!」と宣言するも
折角大人しくお縄に付く様にと俺の実力の噂を流したのに、ここに居るアホ共には全く無意味であった。
素直に捕まる気もボスを呼ぶ気も無いらしい。
と言うか、異変に気付いたボスは隠し通路から逃げようとして居るのを察知した。
俺は直ぐにその隠し通路を土魔法で塞いでやると奥のボスの部屋と思わしき方から大きな罵声が聞こえた。
「おい!、どうなってやがる!通路が塞がってやがるじゃねぇ~か!?」と焦った声で他の者に怒鳴っている。
因みに窓から外に逃げられない様に、この建物の周囲に城壁と同じ強度で20cm厚の壁で窓も勝手口も塞いである。
隠し通路には気付いて無かったが、他は完璧である。
「ボス!窓もだめでさぁ~壁の様な物ですさがれてやす。」と手下の者の若い声が聞こえてきた。
「」奥の部屋に居る奴らに告ぐ、直ちにこちらに出て来い。我は『魔王』じゃ。逃げ道は全て塞いだ。諦めて出て来るのじゃ。」と俺が言うと置くの部屋のドアが開き、
中からハゲ頭の顔に傷を持つ中年の男が悪態をつきながら出て来た。どうやら、奴がベルコらしい。
だが奴は、俺の後ろにドアが壊れて解放されて外が丸見えになっているのを確認してニヤリと笑い、その場の全員に「おい、おめぇ~ら、全員あの変態野郎に突撃だー! いてまえ!!」と叫んだのだった。
その号令に今まで俺の異様なコスチュームに威圧されてフリーズしていた1階のリビングに屯していた全員が無謀にもナイフや剣を片手に俺に突撃して来た。
今後の為にも痛い目に合って貰った方が良いだろうと思った俺は全員の足に魔弾を叩き込んで全員の足の骨を折ったのだった。
すると、グニャリと力無く転んでその拍子に自分の持っていた剣やナイフで負傷する者が続出し、1階は阿鼻叫喚の血の海地獄である。
その様子に呆然とするベルコの足にも平等に魔弾を撃ち込んで骨を砕いてやった。
ギャーギャーと呻く馬鹿共の声が鬱陶しいので早々に先の衛兵の詰め所にゲートを繋いで憲兵を呼んで移送させたのであった。
その後、抜け道も含め周囲の囲いを解除し、子飼い状態で連れてこられていた子供達を救出し、話を聞くと、半ば強引に誇示を連れ去って来て居た事が判明し、王都の孤児院に預ける事にしたのであった。
尤も、子供達も全く悪事に手を染めて無いなんて事は無く、上からの命令で盗みやスリ等の軽犯罪?を行っていた。
そこは生きる為に仕方無かったと、多めに見てやりたいが安易に許しては駄目だろう・・・。
そこで、後の事は司祭様に任せるものの、子供らには祭壇で以降は悪事を働かないと言う事を誓わせるのであった。
まあ、司祭様と女神マルーシャ様に丸投げって事だな。
「ちなみに、お前達が悪事しているのを見たら我、魔王が無慈悲な鉄槌を落とす故に心して置くのじゃぞ!」と一応脅して置いた。
とは言え、脅すばかりでは駄目なので、真面目に頑張れる様に『トージ』が近い内に王都の孤児院に慰問に来る事だろう・・・。
そんな訳で、一応の王都のスラムの浄化が完了し、工事の中断は1日で済んだのは幸いであった。
尤もこの日の為に時間外勤務で夕食後の夕方~夜中に掛けてスラムに潜入したりそれとなく犯罪の邪魔をしたりと結構面倒な事もしていた。
つまり、その分、貴重な家族との時間が割かれる事となるのだ・・・余計にイライラするのも無理は無いだろう?
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