第181話 忘れた頃に・・・ その2
最近、
と思いつつも、心の何処かでスンナリとダンジョンアタック再開させて貰えない様な嫌な予感は感じているのであった・・・。
まあ国王陛下が泣いて・・・云々は大袈裟にジェシカが膨らませているだけだろうし、実際に拡張工事ヤレと言われたら拒否したい。もうここ最近十分に城壁作ったと思うし。それに一口に城壁拡張って簡単に言ってくれるけどさ、そもそも現状の王都の城壁でさえかなりの直径だし、何も無かったマッシモと違って王都の傍には川在り森在り、丘在りとかなり考慮すべき点が多いのだ。
その時点で面倒な匂いしかしない。と言うかそもそもだが俺はヤルとは言って無いし拒否権を行使したいのだがな・・・。そんな事を思いながら国王陛下と第一王子殿下のの待つプライベートな応接室へとやって来た。
で、ジェシカは俺を呼ぶだけ呼んでサッサと消えて何処かに行っちゃった。
まったく酷い弟子だ・・・。
「まあ、ようこそ、『御使い様』? それとも『魔王様』とお呼びした方が良いだろうか?」と言いながら自分達の向かいのソファーのシートを手で示して勧めて来る特に泣いてもいない国王陛下。
「国王陛下も第一王子殿下もお久し振りでございます。普通にトージでお願いします。」と魔王呼びを直ぐに封じて置く。
で、早速口を開いて本題に突入する国王陛下はジェシカの言う様に、泣き落としに近い懇願であった。
現状で言うと、一地方都市であるマッシモが王国最大の都となっているののだ。しかも、住民の数だけで言うと王都の方が2倍以上住んで居るのだ。
現状だと発展させようにも城壁と言う物理的な制限が蓋となってしまってやりようが無いと嘆く訳だ・・・良い歳のオッサンなのに。
でも、やりたく無いでござえる・・・。と心の中でシャウトしてるのだが、
「・・・とは言え、こちらの要望ばかりではなかなかトージ殿もヤル気が起きぬだろうて・・・。でじゃ。なにやら帝国では宝物庫と武器庫の中から好きな物を選んで貰ったそうじゃな? 1000年の帝国よりはやや短いが我が国も900年ぐらいの歴史がある故にそれ相応の宝物は持っておるぞ! どうじゃ?同じ様な条件で?」と俺の物欲から揺さぶりを掛けて来る国王陛下。
うむ。此奴なかなかにやりおる・・・。
「それにじゃ、王都の拡張が出来れば、その分職が増えて、現状で職にあぶれておる者も継続的な職に有り付けるじゃろう? 勿論孤児院の子やスラムの子達もな。」と俺の弱い所を突いて来た。
あれれ~? それは良いが、スラムって無くなって(以前に俺が住民を頂いたので事実上スラムが消滅)今のゲートセンターになったんじゃ?と疑問に思ったら、何でも別の場所に新たなスラムが出来たらしい・・・駄目じゃん!!
何やってるんだか・・・。言っちゃあ悪いが本当に仕事してるのかよ?と思うのは仕方無いよな?
俺がその件で苦い顔をしていると、
「トージ殿、儂らとて何もしなかった訳では無いのじゃぞ!?のう?ジョニーよ!」と援軍を求める様に隣に居る第一王子殿下へと話を振る。
「ええ、まあ気付いた時には今まで普通の一角だった場所が徐々に荒廃して行き、浮浪者共が自然と集まって居たのです。そしてその一角だけがあれよあれよと言う間に治安が悪くなりまして。」と気拙そうに話すジョニー君。 やっぱ駄目じゃん!!
「それ、子共だけでも保護して隔離しないと、完全に抜け出せなくなるんじゃないのかな?」と俺が感想を漏らすとピンと来て無い様子。
なのでお坊ちゃんにも理解出来る様に判り易く1度悪の手先になった子共の辿る道を教えてさし上げた。
しかし不思議なのは王都の孤児院にもちゃんと寄付をしていて、キャパは越えて無いって話だった様に聞いていたのだがな。何で新しいスラムに子共が混じっているのか?
「もしかして余所から流れて来た子共達なんじゃないですかね? 確か王都の孤児院にはまだ余裕あるって話だったし。 て事は城門の衛兵が子供らが入場する際にちゃんと気を付けてなかったって事になるんだけど?
一声掛けて居れば,神殿の孤児院に行ったのかも・・・。」とポロッと漏らしてしまった。
まあ真相は闇の中だがしょうがないのでその新スラムの浄化も兼ねて城壁の拡張を請け負う様な変な流れになってしまった。
なんか納得は行かないのだがなぁ~。
どうしよ?スラムの方の威圧や浄化まで手を伸ばすなら素の状態より魔王コスの方が個人を特定されない分だけ俺の周囲への悪影響が出ないよな・・・。と考え、しょうがなく魔王コスで工事をする旨を国王陛下に伝えたのであった。
別に魔王コスをしたい訳じゃないんだよ!? だけど、ここ王都にもアンテナショップと焼肉屋出したりするじゃん。そして新スラムに手を出した奴の関係する店って情報が流れると、厄介事が起きそうな感じがするからね。
スタッフに何かあってからじゃ遅いし。ちょっと仮面とか鬱陶しいけど、仕方無いかと。
そんな訳で良く判らない流れで断る予定だった拡張工事をする事になってしまいちょっとガックリしながら自宅へと戻るのであった。
しかし、またあのコスで工事するのか・・・。季節柄別に蒸し暑くも無いのだが、素顔を見られないって言う事以外に全くメリットが無いんだよな。
キャラ付けも結構痛いし。
◇◇◇◇
翌日は朝からサチちゃんをギューッと抱きしめてサチちゃん成分を補充してから魔の森の小屋で魔王コスに着替えて王都上空へとやって来た。
何をするじゃって、城壁を同心円状に建築する為に目測で王都の中心の上空にフォース・フィールドの足場を展開して、国王陛下のご要望通りに拡張してマーキングをしているんだよ!
何が面倒ってこの作業が一番神経使って嫌かも知れないな。
魔力を込めて同心円状に広げて行き16km広げた地点にマーカーを築く元々の王都の旧城壁が10kmって事だから、現状より直径で6km増える感じだな。
マッシモが実測で約12kmだったからこれ位広げれば満足だろう!?
これ以上に広げろって言われてもやらんけどな!
簡単に広げろって言うけどさ、円周にすると大変な長さになるんだからな!ってこの世界の人に円周率とか行っても通じないし。
過去の御使い?手駒になった人はどの程度の実績を残したのか、実際に調べた事は無いけれど、今度国王陛下に聞いてみるかな。
思うのだが、王都にしたって、何処の都市にしたって、広げすぎると結局場内の移動が大変になるんだよね。
そりゃあ、巡回バスの様に乗り合い竜車とか廻ってるけど、毎回乗ってるとそれだけで結構な出費になるんだよね。
場内専用のゲートあった方が便利なんじゃないかな? あ、そうすると乗り合い竜車屋さんが失業するか・・・。
何事もなかなか難しいね!
マーキングした後は、何時もと同じ様に、マーキングした円周上をホバー移動で移動しつつ、只管に城壁を築いて行く訳だ。
ここの所の一連の城壁工事で手慣れた俺に掛かれば・・・こんな物、いややっぱ大変っす。
一気に作れる距離は増えたし、出来映えも良い感じだとは思うけど、100m刻みではないけど、徐々に徐々に大理石の様な綺麗な高さ15mの城壁が俺の後ろに仕上がって行くのだ。
今のところ、旧城壁から遠く離れているので王都の住民や街道を行き来する商人の目にも留まってないので工事現場は静かな物である。お陰で気軽にお面を取って水分補給も軽食をパク付く事も可能なので実に効率が上がる。
幾ら障害物が少ない所とは言っても6km先の建設中の城壁が見える訳が無いので、この分なら、ほぼ完成して国王陛下から何らかの発表があるまで秘密裏に作業が出来るか知れないな。
それはそれで強制籠城っぽくて面白いな。今度何処かの都市への嫌がらせの際にやってみるか?越えられない様に高さ20mぐらいの城壁で取り囲んでしまうとパニクるよな!?
ふふふ、まあ嫌がらせの為だけにそんな面倒な事はしないけどね・・・多分。
工事が進むにつれて、街道を横切る箇所に行き当たり、Uの字をひっくり返した様なアーチ状の城門の土台を作って街道を跨ぐ様に回避して行く。
これからは、街道の通行人に発見される確率が上がると言う事だ。
騒ぎになっても、国王陛下側で対処をするだろうし、元の城門から6kmも離れてる所まで見に来る物好きは少ないだろう。
まあ2日も過ぎれば先日作った仮の城門から遠く離れ、建築した城壁が良い遮蔽物になって街道からは視認出来なくなって居る。
先はまだまだ遠い。
よくよく考えると魔法を使えるのは俺だけじゃない。魔法学校の卒業生にも工事させれば良いのにな!城壁は無理でも道路の舗装ぐらいの役には立つだろうし。
逆にそれすら出来ないようなら卒業も怪しいよな!?
ひょっとして、魔法土木建築科とか作った方が良いのか?と思い付き、今度提案してみようと心にメモするのだった。
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