第177話 延長戦
自ら申し出てしまったアホこと『魔王』です! と心の中で自分自身の判断に毒突く俺。
やっぱ、どちらかが貰い過ぎって何か遺恨を残しそうな気がしてさ。
それに、完全に城壁無しじゃ、住民も安心して暮らせないし、都市として破綻しちゃうじゃん?
そんな訳でガラにも無く仏心って物が湧いちゃった感じだよ。
まあ、悪い意味の方の『人の嫌がる事を進んでヤル』を頑張っちゃった結果を少し緩和しようって事だ。
でも俺って相当に恨まれてるんだろうな・・・。
あの俺が城壁をボロボロに物質変換して最終的に国境の都市、トランバニア侯爵領の領都であるトランバニアにやって来た。
あれ程立派だったトランバニアは現在は哀れな姿で、木製御の柵で急場を凌いでおり、国の援助を受けながらこれから復旧作業に入る所らしい。
まあ哀れなトランバニアにとって幸いだったのはヘンリー君が皇帝になって講和を結んだ事で王国から侵略を心配する事も無く更にゲート網と言う高越手段を手に入れた事であろう。
まあ、そんな太っ腹のヘンリー君が俺に国宝級の刀をくれたのでそのお返しって事で自主的に申し出た訳だが、まあ帝都に比べ総延長は大した事も無いし、マッシモの城壁の方が大きいくらいだからそんなに苦労はしないだろうって思うだろ?
帝都は嘘でも城壁残ってたけど、こっちは城壁だった物の瓦礫が邪魔でね・・・それなりに大変なのだよ。
まず、瓦礫の処分、そして城壁の構築って順序になるんだけどね、瓦礫を素材として再利用して城壁作ってしまった方がワンステップ減るんじゃね?って気付いて、そっちに切り替えて少し楽になった。
それに、瓦礫を利用する事で原料となる石材の素がある分無から城壁を魔力のみで作るよりも大幅に必要魔力量が少なくなった。
って、今考えると、マッシモの城壁は俺の魔力だけでゴリゴリ建設していたけど、あれってかなりの無駄と言うか無謀だったんじゃ?ってね。
お陰で魔力量の底上げには貢献してくれたけどね。
と言う事で、勝手に作業を開始する俺。
そうすると魔王コスの俺が上空から降り立って城壁のあった辺りでゴソゴソし出したのを遠巻きに見て衛兵がザワザワとし始める。そして早々に伝令が走って上の者へと報告に行ったみたい。
俺が勝手に始めた城壁の建築が50mぐらい完了したぐらいに、焦った様に竜に騎乗してやって来たのがどうやら、ここの領主って事だろう。かなり武人っぽい面持ちでよくあるデップリ系の領主とは一線を画する雰囲気を持って居る。
「あ、暫し! 暫しお待ちを! もしや、『魔王様』ではござらぬか? お初にお目に掛かる。某、ここ、トランバニアの領主をしておる、ケビン・フォン・トランバニア・・・侯爵を拝命しておる。陛下から『魔王様』がわが領都の城壁を修復いして頂けるやも知れぬと伝え聞いております。 此度は何卒よしなに。」と俺に頭を下げて来た。
意外に腰の低い貴族には珍しいタイプの様だ。
「如何にも。お初にお目に掛かる。我は『魔王』を名乗っておる者じゃ。 城壁無くて困っておろうと思い建築しに来てみた。」と挨拶を返すと、大喜びをするトランバニア侯爵。
「それはありがたい、おおもうこんなに立派な城壁が何十mか出来ておりますな! 流石は『魔王様』ですな。 しかし、不躾な願いで恐縮なのですが、折角『魔王様』の頑丈な城壁を作って頂けるのであれば、是非ともお願いしたい事があるのですが、聞いて貰えますじゃろうか?」と何やらちょっと謙った態度とは裏腹になかなかに強かな事を言い始めて来た。
「うむ・・・聞くだけは聞いて可能か不可能かは内容によって判断しよう。」と俺が応えると、もうね、割と眼光鋭い武人系なのにスッゴい嬉しそうな顔をするんだよね。
「では、厚かましい願いで恐縮なのですが、折角『魔王様』から城壁を作って頂けると言う幸運に便乗して、出来れば、この先300年くらい領都を発展させ続けられる様に、出来ましたら、元の城壁のイチよりもやや広めの外周で城壁を作って頂けると,非常に嬉しいのじゃが、如何じゃろうか? もし某で払える物であれば追加の費用は何としてでもお支払いさせて頂く故に。」と増築したいって言い始めたよ・・・。
あ~あ、トランバニア侯爵もかよ? ここの所似た要望が多いよな! 都市の拡張が最近のトレンドなのかね?しょうがねぇ~なぁ~。
「広くか・・・可能か不可能か?と言われれば可能じゃが、広くした分、作る城壁の総延長は伸びるのじゃが?」と些か嫌そうに答えつつも、城壁以外(道路とかのインフラ整備)は自分達でやるならと城壁の直径を2km程に作り変えてヤル事に同意したのであった。
追加工事分の代金を払うったってねぇ~。 そもそも一地方領主が払える程の金額でも無いし、欲しい宝物なんか持ってなさそうだし・・・。 いや、そもそもがヘンリー君から貰った刀の分のお釣りを返すって言う体だったのだしと、『今回に限り』特に追加報酬等は発生しないと明言しておいた。
まあ、そんな訳で、一旦作り始めた城壁50m程を撤去して無かった事にした。
そして、マッシモの時と同じ手順で同心円状にマーキングをして、『ホバー移動』を使いつつ、拡張したエリアに城壁を建築し始めるのであった。
で、工事を始めているんだけど、このトランバニア侯爵、凄いんだよね。ほったらかしにしたろせず、ちょいちょい、俺の視界に入るか入らないかの微妙な邪魔にならない位置で俺の工事を見守ったり、適度な時間毎にお茶うあ軽食等を用意して差し入れしてくれるんだよ。
しかも、皇城の方からのアドバイスかも知れないけど、俺が心から休憩が出来る様に、人目に付かないパーティションの仕切りまで用意してくれてるんだよ!
俺としてもさ、やっぱこうされると、気分良い訳よ。
「ありがたく、頂戴致す。」とか言って、お茶や軽食をちょこちょこ休憩時に取って、気分の所為もあって、疲れも嫌な気分もなくて快適に工事を進める事が出来たよ。
とは言え、拡張さえしなければ、今日だけで半分くらいは終わったかも知れないが、拡張してるので、まだまだ数日以上掛かりそうな気配だ。
夕方になろうとする頃合いにトランバニア侯爵に一声掛けてから本日の工事の終了を告げたのであった。
「『魔王』様、感謝するぞ! ま、また明日も来て貰えるのじゃろ?」と若干不安気に尋ねて来たので大きく頷いて、「勿論じゃ。完成するまでは通う予定じゃから。」と答えてから、魔の森の小屋経由で汗臭いのを綺麗に洗い流し、綺麗で爽やかなお父さん姿に戻ってから、サチちゃんの待つ我が家へと戻ったのだった。
最近サチちゃんは俺が帰って来ると駆け寄るだけじゃなくて、変な鼻歌をフンフンフ~ン♪歌いながら、妙な『お出迎えダンス』を披露してくれる様になった。
この鼻歌の元となった歌も曲も俺には心当たりが無いんだよね。
一体誰がこう言う可愛い小ネタを仕込んでいるのか不思議だが、本当に可愛いのよ!
早くサチちゃんの映像を残す魔動具作らなきゃ!って思う俺だった。
行き掛かり上、トランバニアの城壁工事からにしちゃったけど、本当は折角ヒントになりそうなアーティファクトを入手出来たんだし、映像魔動具の研究からにすべきだったかもな・・・。
こうなったら、頑張って工期を短縮せねばな!!と心に誓うのであった。
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