第175話

1週間掛かってもまだ宝物庫の全てを制覇していない状況である。


ん?ジェシカ? そりゃあ、あのお調子者のジェシカが今まで一緒に廻って居る訳が無いだろう?


「志半ばで非常に残念ですが、母国の方の魔法学校の引き継ぎも残っておりますし、陛下に会いたい一心でかなり無理を言って来ましたの。ですから、可愛い生徒達の為にも1度戻らねばなりませぬの・・・。」なんてヘンリー君にもシレッと告げて無念そうに帰って行ったよ。


ジェシカの凄い所はその引き際の見極めとその去る際の理由作りの鮮やかさである。


我が弟子ながら彼奴、本当に世渡り上手いよな!


そんな訳で俺と文官3名とで黙々とリストとそのアイテム詳細を書き起こししているんだけど、前半は余りはしゃぎたくなる様な物はみつからなくてドンドンと気持ちが下降気味だったんだよね。


だけど、漸く宝物庫のアイテムで面白そうなダンジョンからドロップしたらしきアーティファクトを幾つか発見したよ!


『身代わりのネックレス』って言う名前のネックレス・・・効能も名前のまんま。死に至るダメージを1度だけ身代わりしてくれるって言う残機を増やす様なアイテムね。


他に面白いところでは、『投写の蜃気楼』と言うクリスタルぽい玉。 これは魔力を注入した者者の姿を1分程投げた先で投写してくれる囮として使えるホログラムの様な物だ。

但し、1回こっきりの使い捨てでコスパが非常に悪い。


ここ一番の逃走劇には使えそうだが、使い時に悩みそうだな。 これさ、5分程ジックリ『女神の英知で』調べてみてたんだけど、意外に簡単な構造で何か頑張れば同じ物を複製出来そうなんだよね。


1回こっきりの使い捨てでも複製して大量にあれば、原材料の価格にもよるけど、気兼ね無く使えそう。


あと『投写の蜃気楼』に似た囮系のアイテムとしては録音した音を再生してくれる『亡霊の語り部』と言う物騒な名前のボイスレコーダーっぽいアイテム。


但し、これは1回の使い切りでなくて、繰り返して使う事が可能だ。



サチちゃんの成長の記録や幼少期の姿を録画や記録出来る何かが見つかればと思ってコツコツと一見この無駄な作業を行っているのだが、1週間が過ぎても尚全然終わりが見えない状況である。


『遠見の筒』なるアイテムは単純に望遠鏡であって、見た物を記録する機能は無いし。 身体強化で視力を強化した方が手っ取り早い。

録画、写真撮影、それらの映像の記録媒体やそれに役立つ参考となるアイテム、来い! って日々念じて居るのだが、スカ続きである。


最悪、通信魔動具的なアーティファクトとかでも良いが。



まあここまで来ると人間不思議な物でここまでの努力を無駄だったと思いたく無いと言う心境も加わって何とか一花咲かせてやろう!見返してやろうって気になってしまうのだ。 まあ言い換えれば、泥濘に自ら填まって行くとも言うけどな。



俺も疲れて来ているのだが、俺に随行する3名の文官の衰弱と言うか疲弊振りはかなり酷くそろそろヤバそうなので5日程休暇を挟む事にした。


「なあ、ペドロ、トレバース、デロース、お主達連日の作業でかなり疲れておるな!我もじゃ! しかも全然先が見えぬ故に余計に疲れが溜まるし精神的に来るのじゃ。よって、明日から5日間リフレッシュ休暇としようぞ! 我の都合でお主ら3名に休みを強制的に与えたと

我からヘンリー陛下に言って置こう。


よって気に病む事なく、ユックリと休むが良いぞ! あとな、これは休暇の際にリフレッシュの為の小遣いじゃ。兵士と同じで休める時に休むのも仕事の内じゃ。」と文官3名に言ってポカンとしているペドロ、トレバース、デロースらに1人10枚ずつの金貨の入った革袋を渡して廻った。


「ま、魔王様!? こ、これは?」と金貨の入った革袋を揺らしてジャラジャラと言うので驚く3名。


「何お主ら3名は我に巻き込まれた者達だからな。これ位のメリットはあった方が良いだろう? 我のポケットマネー故、誰からも咎められる事の無いクリーンな金じゃ。安心せい!」と言うと大感激した様で涙ぐみながら大喜びしていた。


「あ、そうの代わり、5日間リフレッシュ休暇の後はちゃんと出て来て続きをやるからな!」と俺が釘を刺すと、


「はっ!御意!」とヤル気を漲らせた返事が返って来たのだった。


その後は早めに『上がり』としてヘンリー君に連日の神経使う作業で精神的に疲れたので、事後報告となって悪いが俺の独断で、あの文官3名にも5日間のリフレッシュ休暇を与えた。彼らも相当に疲弊してたので、5日間無断欠勤じゃなくて有休扱いにしてやってくれとお願いして置いた。



幸いな事に、ある意味越権行為なのだがヘンリー君は怒る事もなく了承してくれた。 実は越権行為だと後で気付いて拙い!ってちょっとビビっていたのでちょっとホッとしたよ。


やっぱりね、毎日何時間と『女神の英知』を使い続けて多大な情報量を脳内で処理し、それを口頭で説明するって何気に重労働なんすよ!


特に脳みそが凄く疲れる。この専用ボディーでさえそうなのだから、ノーマルボディーの3名は尚更キツイだろう・・・。




 ◇◇◇◇


5日間のリフレッシュ休暇中、俺はサチちゃんと

遊ぶだけで無く、ちゃんと中途半端に中断していたダンジョンアタックを再開し、ついにダンジョンの第59階層をクリアして、人類到達最下層を更新して置いた。


そして第60階層の階層ボスに出てきたデュラハン、そして相棒?のリッチの2匹組をキッチリ討伐しておいた。デュラハンも剣の名手と言うか剣の腕は凄かったものの、俺の高周波ブレードの的では無く、剣を受ける事すらせずに、俺の剣を請けようとした剣ごと胴体を袈裟斬りにして置いた。

俺の斬撃を受けようとしたのが剣ごと胴体までサックリ斬られた際、片腕に抱えられたデュラハンの「えっ?」って顔がちょっと壺に入ってしまったぐらいである。


それよりも魔法に特化したリッチの方が面倒で流石に被弾0とは行かずに、何発かみた事も無い魔法を頂いてしまったのであった。

尤も、被弾はしたけど、魔装を突破する程ではなく。

ヤバかったのは、時間のタイムラインの速度を変えた攻撃で、奴が完全に何をヤっているのかを理解するまで翻弄されてしまい、かなり良い様にボコボコと魔法を受けてしまった。

実際他人?の魔法をここまで受ける機会は無かったのである意味新鮮で勉強になった。

最終的に、魔法の使い過ぎで魔力残量の低下で怯んだ一瞬を見逃さずに瞬時にゲートで背後に廻って首チョンパしてやったのだった。

良い様に攻撃してくれたのでざまぁ~!って思わず叫んでやった。


5日間のリフレッシュ休暇明けに完全に溌剌とした年齢相応の元気さを取り戻した文官3名が笑顔で戻って来た。



休み明けの3名は、何かメチャメチャ俺に対する信頼感と言うか忠誠心に近い物が凄くなって居たが、所詮は帝国の官僚である。人の所のスタッフを引き抜いたり背信させるのは良く無いので敢えて一定の距離間を維持する事に努めたのだった。









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