第171話 俺なりのリフレッシュ・タイム その2
今日で第58階層4日目である。
一応、今日まで毎日上空から偵察も行っているがまだ下層への階段の入り口らしき物も建築物も発見出来ていない。
階層を追う毎に益々先に進ませない様にしているのか、スンナリ階段の場所が判る事は無い。
出て来る魔物が強くなって行くのはある意味しょうがないし、覚悟もしているが、こう言うだだっ広いフィールドで、時間と人数を要するような人海戦術を強いる様な仕組み早めて欲しい。
そんなのは難易度とかじゃなくて、単なる意地悪である。
と、ここで今更だけど、久々で忘れて居た事を思い出した、過去に下層への階段が判らない際に魔力の流れを探った事を・・・。
俺とした事が、スッカリ忘れてたぜ!と照れ隠しの様にハハハと乾いた笑い声を出して誤魔化す俺。
直ぐさまフォース・フィールドの足場の上で安静にして魔力の流れを読むのだが・・・今まで向かっていた方向とはかなりズレている事は取り敢えず判った。
まあそりゃそうだよな、最初から闇雲に一定方向に進んだだけだもん。ズレてて当然だ。
尤も関知した魔力の流れの元の方向には特に何かが見える訳でもなくて、ズレを正す為に定期的に上空から関知し直した方が良さそうである。
もうここ数日でこの階層の魔物とは十分に戦ったと思うし、ここは一気に空を飛んで行こうとウィングスーツで砂漠の上空を滑空し始める。
直射日光が強烈ではあるが、俺の風魔法のシールドによる空気抵抗の削減ととシールド内部のエアコンで快適である。
直ぐに高速飛行に入り鼻歌交じりいたのだが、何やら飛行経路が風によって煽られてズレ始める。
都度修正しているのだが、先程までギラギラと容赦なかった日光の光が陰って来た様に感じて振り返って上空を見て見ると黒い雲が風に流されて休息に太陽光を遮り始めるとイキナリ飛んでる俺の背中から踏まれると言うか、叩き付けられる様な下降気流が俺を砂丘へと叩き墜とした。
余りにも急な事だったので体勢を立て直す事も出来ず辛うじてシールドと魔装の強化だけを何とか間に合わせる事に成功し、殆ど減速の無いままに砂漠の砂の上に高速で擦られてしまった。
卸し金で削られる大根の気持ちが少し判った気がする・・・。
漸く止まった時は頭から砂丘の斜面にツッコんでいて、必死で後退しながら砂の中から生まれ出た。
ぷはぁ~♪と一旦大きく息を吐き出して、ヤバかったなと思っていると、今度はバチンバチンと拳大の雹が下降気流で加速されて降って来た。
拳大・・・直径10cm~15cmぎらいだろうか、こんなのをマトモに頭に食らったら怪我で済んだら良い内だろう。周囲の砂にドスンと落ちると軽く小さなクレーターを作っているくらいである。
尤も俺の魔装を突破して俺にダメージを入れる程の威力がないので俺には痛くも痒くも無いのだが、雹と風は益々強くなり、ゴロゴロと上空の黒雲内部では地響きの様な音が鳴って時々雲のの中が青白く光ったりしている。
あ!雷!!
そもそもだが雷・・電気に対して魔装って有効なんだろうか? 余り絶縁体ってイメージが無いのだけど。と一瞬弱気な事が頭に浮かんだ物の魔法はイメージが大事なのだ。
魔装が
あ!落雷し始めた! 向こう側の砂丘の尾根部分にビッシャーンと言うバカデカイ音と目の眩むような稲光が落ちたヤバイ!落雷時の衝撃の所為か帯電した砂粒が四方八方に青白い放電のアークの糸えを曳きながら飛び散って居る。
魔装の耐落雷性能も気にはなるけど、今ここでそれを我慢比べの様に実証する意味は余りなさそうと判断した。
もしもの事があると人知れずダンジョンに吸収されて終わる事になるし、サチちゃんを父親の居ない子にしてしまう事になるからな。
取り敢えずこのままここにこういして居るのは愚策と気付いて目印の剣を砂に刺してゲートでサクっと魔の森の小屋へと退避したのであった。
魔の森の小屋で1時間程時間を潰した後、また先程の砂漠に戻って来て目印に使った剣を回収して異常な雹も落雷も収まった砂漠を今後は『ホバー移動』で砂漠の上を進むのであった。
別に下降気流にビビった訳じゃないのだけど、先程の一連の異常気象?は何となくダンジョンの環境トラップの様な気がしてならないので念の為である。
デス・スコーピオンの群を撃破しつつ進んで行くと会いたくない
前回同様に高周波ブレードソーサーでサクっと首を切断して、匂いに飲み込まれる前に回収せずに先へと進む。
途中2回程上空から魔力の流れを探って進路を微修正し2時間程進んだ辺りで、今度は砂嵐に巻き込まれてしまった。
魔力の流れによると、この辺りに在る筈なのだが・・・。
もしかすると、この砂嵐も下層への階段発見に必要な要素なんじゃないかと言う予感がする為、安易に避難せずに魔装とシールドの強化で踏ん張ってたえているのだ。
ほら、昔のアニメで『砂の嵐に守られた~♪』ってアニソンを聴いた事あるし、何かが隠してあってもおかしくないかなって。
別に砂粒が風で叩き付けられても、痛くもなんともないんだけど、一つ困るのは砂に埋もれちゃう事。砂って結構重いし、埋まると抜け出すのに苦労するんだよね。
30分程砂嵐に耐えて漸く砂埃も収まって風の音も砂が叩き付けられる音もしなくなった時、目の前には大きな石作りの鳥居の様な門が出現していた。
捜し物はこれだ!
どうやら普段は砂の中に埋まっているらしい・・・。
こうして漸く第58階層の砂漠フィールドを終えた俺は下層への階段の通路から、魔の森の小屋に一旦戻って、風呂に入って身綺麗にした後意気揚々と自宅へと戻るのであった。
■■■
自宅に戻ったら、サチちゃんとアリーシアだけでなく、思わぬ人物が普段と違い真剣な面持ちで俺を待ち構えていた。
「師匠、ちょっと真剣なお話しが。」と開口一番で俺に告げるジェシカである。
どうやら、雰囲気から察するに帝国絡みの話の様だ。
「こないだ振りだな。話か。お茶でも飲みながら書斎で話すか。」と言うと素直に頷くジェシカ。
場所を俺の書斎に移した後、お茶を一口飲んでから、ジェシカが話始める。
「師匠、気を悪くしないで冷静に聞いてみて欲しいのですが。」と前置きして続ける。
「確かに今回の帝国・・・いやヘンリー殿の対応は配慮に欠けていたかも知れません。でも考えて見て下さい。私も含め王族や皇族は一般的には命じる事はあってもお願いする事に慣れていないのです。
一般的に発注して、相手が請け負ったら、完了するまでは基本放置が普通なのです。請け負った相手の信頼度によっては、労を労う意図ではなく、サボリや不正の有無のチェックの為の監視を密かに置いたりする事はありますが、途中で施工主の最高責任者である皇帝が視察に来たりはしないのです。
逆に視察に来ない事こそが、国によっては『信頼の証』と善意に取られたりするのです。」と言う事を告げて来た。
「なるほど・・・つまり、俺は真逆の意味に取って怒っていたかもと言う事か? なるほどなぁ~・・・。」と呟きつつ不快溜息を付く俺。
「教えてくれてありがとう! 判ったよ。魔王で明日にでも皇城に行って禍根を残さない様に工事の再開を伝えるよ・・・。板挟みになるような状況にしてすまなかったな。」とジェシカにお礼とお詫びをしたのであった。
書斎から出て、先程はサチちゃんとただいまの挨拶をしてなかったので改めて「サチちゃん、ただいまだよーん!」と両手を広げて迎え入れて抱き上げたのであった。
まあ当然の様にジェシカも一緒に夕食を家で取って行ったのだけど、ヘンリーが魔王様が来なくなったとオロオロして王国にまで魔王様と連絡が取れないだろうかと問い合わせして来たらしい。
俺の予想では鬱陶しい目の上の瘤が無くなったって喜ぶと思ったのだが、どいうやら違ったらしい・・・。
どうやら俺の早とちりと言うか勘違いだったと言う実に恥ずかしいオチか? 明日帝国に赴いて一応謝っておこう。
と自分の短絡的な発想や感情を反省するのであった。
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