第167話 祝! 卒業
やっとマッシモの自宅に戻った俺達は身も心もボロボロに疲れ切っていた。
子供らは怒濤の展開について行けずに主に気疲れ。 そしておれは、魔王の件がバレるんじゃないかって言うビクビクによる精神的な疲弊である。
しかし、喉元過ぎると何とやらで、流石は家の子、切替が早く俺がグッタリとソファーに沈んでアリーシアとサチちゃんに癒やして貰っている間に復活して、初めて入った王城の事でキャッキャと盛り上がっている。
女の子とかは、その豪華な内装の事でアレが綺麗だったとか、アレはイマイチとか評論している。
俺の方はアリーシアにどうなったのかの概略を掻い摘まんで報告した。
「あら、トージさん、また工事ですか? まあローデル王国の拡張工事は一応母国?でもあるから請けない訳にはいかないですよね? でもバッケルガー帝国の城壁は『魔王様』がボロボロにしたんだから、『魔王様』に修理して貰えば良いんじゃないでしょうかね?」と暢気な事を言ってくる。
「でもさ、『魔王様』が修理って結局俺がやる事になるじゃん。流石に数日じゃあ無理なレベルだよ。それをタダでコツコツやるのはなぁ~。」と俺が顔を顰める。
国家予算を大幅に上回るお金(帳簿上の数字のみの存在)を持って居る癖に、何を今更ケチ臭い事を言っている?って思うかも知れないけどさ、仕事は仕事。 物作りは楽しいから好きだけど、ちゃんとした仕事の成果物を誇りを持って提供するんだから、何かご褒美無いと気合いが入らないと言うか、モチベーションが上がらないんだよ。
これは持ってる物を上げるのと全く別の感覚なんだよね。正当な評価とご褒美は必要だよね!
そんな話をした後は少しの間サチちゃんと戯れて、気分を入れ替えた。
そして、大晦日って事もあって、神殿に女神様へのご機嫌伺いと言う名の餅米情報収集と言う使命を思い出して先に餌・・・いや貢ぎ物を何か持参した方が口が軽くなるだろうと思って何を持って行くべきかと10分程悩んだ結果、『みたらし団子』を作って持って行く事にした。
ほら、あれもモチモチしてるから、餅米に話持って行き易いかなって思ったんだけど、肝心の団子を作る際に必要とされる『白玉粉』の成分が餅米を使ったもち粉って『日本の食の英知』にあって、思わず愕然としてしまった。
餅米無いのに・・・。ダメ元で米粉ベースで作ってみたが、微妙なモチモチ加減でもし、団子を知ってる人が食べたら「これじゃない!」ってお叱りを受けてしまいそうな団子になった。
要は澱粉の粘着力でひっついては居るけど、焼きおにぎりよりは団子っぽい感じと言えば判るだろうか? でもそれに『みたらし』のトロっとしたタレを掛けて『みたらし団子風』にしてみた。
子供達も含めみんなにも1年間お疲れさんの意味を込めて、多めに作って出してやると、新しい食感と甘いトロ味のあるタレが意外に評判が良くてアリーシアも含めて喜んでくれたのだった。
みんなのリアクションで勇気を得た俺は、『みたらし団子』擬きを持って神殿へとコッソリ訪れたのであった。
何時もの様に神殿の祭壇にあるマルーシャ様の像の前にみたらし団子擬きの皿を置いて献上すると、パッとみたらし団子擬きの皿が消えた。
そして、2分程待った後、何時もの様に「ナンシー様!ナンシー様!」と声を掛けると
「お!お主か!いよいよ、妾の合格が決まったぞい! トージよ、よくぞやってくれた!でかしたのじゃ!。これで漸く妾も一人前の女神じゃ!」と開口早々に喜ぶナンシー様の声が頭に響いて来る。
「そうですか!おめでとうございます。 じゃあこれ以降は俺の役目は終えたと思って良いんですよね? そう言う話でしたよね? まさか、この身体を返せとか、お役御免で即死亡とかってオチはないですよね?」とちょっと不安になって確認をする。
そう、折角結婚して可愛い娘も産まれ人生の楽しさ、家族の居る幸せを今から存分に味わおうって場面でイキナリ退場とかは勘弁だからね・・・。
「うむ、後は前に言った様に自由に生きて良いのじゃ。 あ!世界は破壊するでないぞ!マルーシャ様に怒られるでな。 でじゃ、こうしてお主と話せるのも恐らくこれで仕舞いになるじゃろう・・・。妾も新しい独自の世界を作り底を管理せねばならんのでな!トージよ、何かお主に礼をしたいのじゃが、生憎とその世界の権限は全てマルーシャ様の物じゃからな。何時の日か何か何かの形で報いるのでな・・・。良い人生を謳歌するのじゃぞ!そろそろじゃな・・・ では達者でな!」と言ってナンシー様の声が途切れ代わりにムチャムチャと団子を食べる音が脳裏に聞こえて来た。
「あ!え? もうか!? と、トージよ、これもなかなかに美味じゃぞ!」と一瞬CM中に物を食っていてイキナリオン・エアーなったアナウンサーの様な焦るフレーズの後、何事もなかったかの様に取り繕うマルーシャ様。
「ナンシーから聞いたかえ? 正式に合格の通知を出したのじゃ。歴代高得点だったんじゃぞ!これで彼奴も一人前の女神となった訳じゃ。さてどんな世界を作るのやらの? ちなみに1つの世界を作るのは本当に色々大変なんじゃぞ! ほら、色々考えんと、矛盾だ出て結果世界が崩壊したりするんじゃ。1つの世界を構築しある程度の安定稼働状態になるまでに数万年なんかザラじゃぞ!?」と如何に女神業が大変かを切々と語るマルーシャ様。
「なるほど、確かに矛盾あるシナリオだとバランスが壊れて崩壊するのはよくある話だな・・・。流石はマルーシャ様ですね!」と間の手を入れてご機嫌を取りつつ本題へと話題を誘導する。
「しかし、ナンシー様の手駒の任も完遂した訳で、これで心置きなく好き勝手に生きて良い、何の任務も無く第ニの人生を謳歌して良いって事ですよね? でも、俺も少しはこの世界に貢献しましたよね? 何か少しでも俺にご褒美在っても良くないですかね?」とご褒美をお強請りしてみた。
「なんじゃお主、ご褒美欲しいのか?そうは言ってものぉ~前に言った様にこの世界の理に今更手を加える事は出禁のじゃ。」と俺が前にお強請りしたレベル制の導入のお願いと勘違いして出来ないと諭して来た。
「いえ、そうじゃなくて、今日の献上品の『みたらし団子』如何でした? 実はとある特定の特性を持ったマイマイがあれば、格段に美味しくなるし、他にも色々美味しい物が作れるんですよ。 出来ればご褒美にそのマイマイの情報とか欲しいなって。」とズバリ本題を切り出してみた。
「なんじゃ、そんな事か? まあお主の望む特性の物が丁度在るかは判らんがのぉ。」と前向きな回答をくれるマルーシャ様。
餅米の特性を説明すると、「多分在ると思うが、暫く精査して、『女神の英知』を更新してやるのじゃ。」と言う回答を引き出せたのであった。
「わーーい、ありがとうございます。!マルーシャ様!」と大喜びする俺だったが、「しかし、更新はそれなりに激痛じゃから気を付けるんじゃぞ!?」と厭な一言が追加された。
今でも思い出すあの激痛・・・。
「え?あの激痛また来るんですか? 何時ぐらいになります? 安全な自宅とかアップデートを受けないと! もしダンジョン探索中とか安全が確保されない所で始まっちゃうと、確実に死にますよね?」と俺が言うと、
「まあ今回はナンシーの手駒の任達成の褒美も含んで居るのでな。かなりお主の喜ぶ内容に情報を現行の物に更新掛けてやるのじゃぞ! ほれ!? 妾は英知の女神じゃからな! まあその分余計に痛くなるんじゃけど、そこはドンマイじゃ! 期間か・・・そうじゃの~情報の精査におそらく1ヵ月~2ヵ月は掛かるじゃろう。お主も頻繁に顔を出すが良いぞ! 何でも頭を使う仕事や作業には甘い物が良いらしいからの!」とあからさまな甘い差し入れの強請?要求?が入ったのであった。
っして、今年最後のマルーシャ様との会話が終わったのだった。
しかし、これで、俺は晴れて何の縛りの無い自由な立場になった訳だ。ナンシー様、おめでとう! レベルのある楽しい世界を作ってくれよ!と心の中で祈るのであった。
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