第161話 マッシモ東ダンジョン その12(報告編)
第57階層を終えた翌日、俺は先に第57階層までの未提出分のレポートを纏め、冒険者ギルドに持って行った。
大きな理由は、もし不慮の事故で未提出のまま俺が死んだ場合、全てが無駄になるのを避ける為もあるが、最大の理由はあのキモイ他の蟻は勿論だけど、バカデカイ白いブヨブヨの
果たしてアレに需要があるのかは知らんけど。
俺は全ての第57階層の素材を魔の森の小屋でマジックバッグに移し替えてから冒険者ギルドに移動した。
毎度の様にゲンダさんに挨拶しながらダンジョンのレポートの紙の束(数階層分で結構な量)を渡すと、「これまた超大作だな!おい!!」とその量に驚いていた。
それも当然かも知れない、先の先駆者達のもたらした情報は持ち物数の制限等の有る中で最大限に持ち帰った不完全な者であったが、俺は実質制限も無く何時でも即時日帰り可能で、オマケに『女神の英知』と言う情報源まで持って居る。
後続の者に残す情報として詳細に気合いをそれらを交えて入れて残しているので濃密な情報量になってしまうのだ。
まあ、しかしこれらの情報を果たしてどれ程の冒険者が真面目に読んでくれるか・・・ 俺の知る範囲ではそこまで真面目に情報収集する冒険者は俺以外に居無いし。
「あとに第57階層の素材の買取ををお願いします。 ちょっと超ドデカイ奴居るんで、其奴は訓練場じゃないと出せないと思いますんで。」と一応注意事項を伝えると、
「えー?訓練場規模の素材ってなんだよ?怖いじゃねぇ~かよ!」と言いながらゲンダさんの顔居が少し引き攣っていた。
俺に一緒に訓練場に行って「さあ出してみてくれ!」と言われ、余り
俺達の後ろにはゾロゾロと野次馬も一緒に着いて来てて、ワクワク顔で見守っている。
「バカだなぁ~、そんなに見て楽しい物じゃないのに・・・。さあ、出すから気を付けて!」と声を掛けてから、マジックバッグから全くバッグのサイズ感と釣り合わない巨大なゲテモノを嫌々引っ張り出したのだった。
ドシンと言う地響きと共に現れるカデカイ白いブヨブヨの
一瞬シーンとした後、「ぎょわー!」と変な悲鳴っぽい声が聞こえている。
「これだ! グレートアンツ・クイーンって言うのが正式名称らしい。無限に卵を産み続けるヤバイ奴だ。」と紹介すると、流石のゲンダさんも「なんじゃこれ!?」と叫んで居た。
序でに、此奴の産んだ子共達を全種類出して並べて見せると遠巻きに見ていた冒険者達も徐々に近寄って蟻達の亡骸を突いたり、コンコンと叩いたりしてその堅さを確認していた。
そして、それらの素材の入ったマジックバッグをゲンダさんに無理矢理押しつけて後は宜しくと冒険者ギルドを後にしたのだった・・・。
さて、やるべき義務?を果たしたので、今度はもう1つを片付ける為にラルゴさんの所にお邪魔した。
「こんにちは、ラルゴさん、突然訪問して申し訳ありません。」と応接室に通されてラルゴさんに挨拶をすると、
「いえいえ、トージ様なら何時いらしても大丈夫ですよ! 今日前触れも無く来られたって事は何か楽しそうな予感もしますし。」とニコニコ顔で返すラルゴさん。
「ええ、ちょっとダンジョンの宝箱から面白い物が出て来ましてね・・・これなんですが。」と言ってから、『エリクサー』を応接室のテーブルの上に置いた。
金色に輝く小瓶の中のポーションを見たラルゴさんが息を飲んで押し黙る。
そして、30秒ぐらいしてハーハーと息を再開し、ちょっと掠れ気味の声で「も、もしかして、『エリクサー』ですか!?」と声を震わせる。
俺は、ユックリ首を縦に振って頷き、ニヤリと微笑むと、師匠に見せた時の様に「な、なんて非常識な!!」と興奮気味にクレームを付けてきた。
まあ本気で文句を言っている訳で無く、この世界の人の中では伝説上の物であって、実在するとは思って無い様な物って言う様な認識らしい。
でもそもそも伝説やお伽噺に出て来る時点で全くの架空の物って事でも無い気がするんだけどなぁ~。
ほら元の世界での神話やお伽噺とかって、割と考古学とかの調査で遺跡とかで本当にあった事なんじゃ無いかって学説が出て来たりするじゃん?
そう言えば日本人で言えば縄文人にも謎が多いって話だったな。シュメール文明との関係性とか、縄文時代が1万年の歴史あるとか色々あったよな。
なんかロマンあるよね!? って、元日本人の俺からするとそう言う感覚なんだけど、こちらの世界の常識人に取ってはそうではないらしい。
そんな興奮気味なラルゴさんを宥める事2時間。 やっと話が纏まって、また王都のオークションに出す事で合意したのであった。
と言う事で、ラルゴさんに『
ラルゴさん曰くそんな物騒な物は預かれない!!!王都のオークション受け付けに提出する際まで責任持って持って居て欲しいと言われてしまった。
そんな唯一無二の危ない物を預かったら寝られなくなって仕舞って倒れるからと言う・・・。
うーん、判る様な判りたくない様な・・・結局身軽になる事に失敗し、一緒に王都に行く事も約束させられてしまったのだった。
■■■
これで今日の予定は終了である。後はノンビリ家でサチちゃん成分の補充とアリーシアとイチャイチャ・・・いやこの時間帯は難しいよな。
頭では理解して居るのだけど・・・だけど、サチちゃんのお母さんとなってしまったアリーシアとくっつく時間が激減と言うか、産後の肥立ちで安定するまでそれ処じゃなかったし、
俺の奥さんと言うよりサチちゃんのお母さんが優先だから遠慮してたんだよね・・・。
もし出来るならアリーシア成分も補充した!と思ってしまう俺ってもしかして父親失格?
等とちょっと口に出し辛い事を頭の中で考えながらきたくするのであった。
家に帰ると、満面に笑みのサチちゃんが「トーしゃ!」と小走りに歩いて来て、更にその後ろから子共を産んでから、綺麗な中に優しい柔らかさが加わったアリーシアが笑顔で出迎えてくれたのだった。
うう、邪な心にその笑顔が眩し過ぎる!! とちょっといた良心の呵責に苛まれながら2人を
纏めて抱きしめたのであった。
その後サチちゃんと遊びながら、久々にアリーシアともゆっくり話をするのであった。
「アリーシア、最近は体調は元に戻ったのか? 何か不調あったら遠慮無く言うんだぞ!」と俺が言うと、「ええありがとうございます。 お陰様で産後体調はトージさんの回復魔法で治療して頂いたのが良かった様で、初めての子育てにも慣れて来たので、先月ぐらいからは依然と同じ様に動き廻れる様になりました。」と笑顔で答えた。
「そうか、良かったよ! じゃあって訳じゃないけど、今度また王都のオークションにあの『エリクサー』を出しに行くんだよ。俺はラルゴさんに渡して帰ろうとしたら、全力で止められてさ、物騒な物は預かれないって言われて、一緒に持って行く事になっちゃって。だからさ、体調良いら、久々に
今度はサチちゃんも連れて王都に行かないか?」と誘ってみた。
「王都ですか!?サチは大丈夫ですかね?」と聞いてきたので、「大丈夫だよ。俺が肩車でガードして置くから。 ね、サチちゃん、今度、お父さんとお母さんとサチちゃんの3人で王都に行こうか!?」と言うと、
「あい!」って返事をしていた。
最近は意味が判って居るのか居無いのかは微妙だがこう言う受け答えが大分成立する様になって来たのである。
さて、もう直ぐすると王都でオークション、そして3週間程で年越しである。
一つ非常に残念な事があって、餅米に相当する粘り気の強い種類のマイマイが見つかっていない事だ。
年末年始と言えば、年越し蕎麦に終わって、お節やお雑煮に始まるのが日本人としてのセオリーである。
もっとも、俺としてはお節に対しての拘りはそれ程ではなくて、どっちかと言うと黒豆とお雑煮に多大な執着がある。
まあ理由はお節はお煮染めは好きだけど御重箱に入っているのを見るのはワクワクするが、他はそれ程でも無い。
更にお雑煮に関しては母が亡くなって以降自分でトライしてみたものの、あのお袋の味が再現出来ずに逆に正月早々悲しい気持ちになってしまうのでズッと封印していたのだ。
こんな事なら、せめてお雑煮位作り方を習って置けば・・・と。
って、事でお餅の無いここではお雑煮を作れないのである。
もし餅米あれば、色々美味しい物が増えそうなのにな!
何だったら、今度これをネタにマルーシャ様に餅米の交渉してみるか!?
きな粉餅や、餡子餅、よもぎ餅等色々作れるから・・・それに!おでんに欠かせない餅入り巾着も作れるからな!! 良いな!餅!!!
と近々に神殿で交渉する気満々になる俺であった。
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