第160話 マッシモ東ダンジョン その11

直ぐに『エリクサー』の処分に動くとおもったろ? ノンノン、別にお金が無くて逼迫してる訳でもないし、『エリクサー』なんて持って行くと確実に騒ぎになってダンジョン処じゃなくなるのは目に見えてるからね。


折角勘も戻って良い感じに気分も乗ってる所で水を刺す必要もなかろう?


って事で、本日も平常運転でダンジョンアタックの続きである。


先日の宝箱の部屋はまだ残っていたが、通路へと運び出した金色の宝箱は消えて、宝箱の部屋のトラップの反応も消えていた。



つまり、あのトラップは宝箱と連動してたって事だろう。 面白いな。


釣りに例えると餌だけ食われた状態か。 そう言う存在が居るかは知らないが、ダンジョンマスターだか管理者は嘸かしムカついている事だろう・・・。


と言う事だが敢えてそう言う存在(ダンジョンマスターや管理者)を嘲って煽ったりする気は無いので、静かに先っへと進むのだった。



さて、進み始めてから最初のホールに入ると、ホールに繋がった枝道から顔を出したお客さんに発見された。


しかし本日最初の相手は昨日までの相手とはっちょっと違って色がシルバーっぽい奴であった。


先頭の奴がギギギと鳴いて後ろからゾロゾロと仲間が出て来る。

どうやら昨日までの真っ黒いグレートアンツ・コマンダーやグレートアンツ・ソルジャーと違って、今回はグレートアンツ・ガーディアンエリートがグレートアンツ・ガーディアンを指揮して襲って来たらしおい。


昨日までの奴らよりも異様に素早い動きでパワーも段違いに強く銀色の外骨格も別物に近い程硬い。


魔装を突破される程でも無いが蟻酸を水鉄砲の様にビシューっと高圧で飛ばして来るので気が抜けない。これ魔装を持って無かったら、確実にヤバかったと思う。


事実、俺が避けた蟻酸の水鉄砲がダンジョンの壁に深い穴や溝を白い煙を上げながら刻み込んでいる。


もしかすると、この蟻酸を採取出来たら、武器や砦等の防御設備の何かに利用出来るかも知れない・・・。


とは言え、現在敵対する国家は王国の周囲に無いのだっけ? そう言えば、気にもして無かったけど、ローデル王国の周囲ってバッケルガー帝国以外に国境が接してる国があるんだろうか?


良くも悪くもバッケルガー帝国が大過ぎて他を気にした事が無かったな。


おっと戦いの最中に余計な事に現を抜かしていてはイカンな。


と気を引き締め直して銀色の蟻を殲滅して行く。


此奴らもモンスタートレインかって位に後続がギギギと仲間に伝言して行きドンドンと蟻共を引き寄せてくれる。


ガーディアンって位だし、人間界で例えるなら、近衛騎士って所だろうか? だとすると、此奴らが出て来たって事は俺の読み通り此奴らのママか女王だかにもう直ぐお目通りが出来ると言う事かも知れない。


無属性魔法で作った高周波ブレードを使っていて本当に良かったと思うのは、斬れ味も耐久力も全く落ちる事が無く、今までのところ、破壊された事が無い。


これが鍛冶師が鍛えた物理的な実体のある剣だと当に折れたり砕けている事だろう。


実際にこの銀色の外骨格は自慢の高周波ブレードであっても切り裂く際に抵抗を感じるのだ。 今までの様にバターにホットナイフって言う感じではない。


漸くモンスタートレインが打ち留めになって、無惨に転がる残りの亡骸も素早く回収しホールにマーキングを済ませ、ちょっと休憩を挟んで枝道を選び先へと進む。


飽くまでも推測の域ではあるが、この階層の終点が近いかもと言う微かな希望が俺の足取りを軽くする。


昼が過ぎ、ここじゃ落ち着かないし、匂いの所為で美味しく感じ無い事もあって魔の森の小屋で遅めの昼食を取った後、ダンジョンに戻って続きを進んでいると、巨大な部屋にビッシリと白い縦型のエーリアンの卵の様な物がビッシリと置かれた部屋に到着した。


正にどう見ても、蟻の卵部屋だろう!?


どうするかって? あたりまえだろう、殲滅の一択だ。


さて、如何にこれだけの数の卵を殲滅するかだが、前に使った気化爆弾の魔力版であるミスト・バーンを使おうかと思ったが、ダンジョンの洞穴と言う特殊な塀空間でアレを使うと自殺行為となる可能性がある。


幾ら魔装があってもあの爆発力はヤバイ。兵空間がと爆風や圧力で魔法が保たないかも知れない。


そこで考えたのはアルテミット・バーンと言う火魔法?と風魔法の混成魔法である。 燃料となる魔力ミストを空間に満たし、その魔力ミストで長時間燃焼し続ける延焼魔法である。


魔力を練って魔力ミストを卵部屋に満たして行き、部屋が真っ白のミストに埋め尽くされた後、シールドを強化して張ってから発動点火させて危なければ直ぐにゲートで退避しようと言う計画である。


最初から退避しとけば良いって思うかもしれないけど、魔法の発案者としてどれ程の威力の物かとか、燃焼具合とか改良の余地とかを知りたいと思うのは仕方のない事だろう?


そんな訳で学術的興味を満たす為に居残って可能なら見守ろうかと言う訳だ。


「3,2,1ファイヤー!」と言うカウントダウンと共に大爆発ではないが、ゴーーーと言う断続的な音と凄い勢いで周囲の空気を吸い込んで消費しながら赤いと言うよりも高温で白く輝く様な炎が部屋中の卵を燃やして暖められた卵が高温で高まった内圧に耐えられなくなって、バンバンと派手な炸裂音を立てて小爆発を起こして飛び散って居る。

と言うシーンを見た後、シールド越しでも熱くて堪らずに魔の森の小屋の方までゲートで退避したのだった。


派手さは無かったが、アルテミット・バーンなかなかに使えそうな魔法だ。


改良の余地があるとすれば、酸素をもっと供給してやる事だろうか。


取り敢えず、10分程ここで休憩をした後、卵部屋に戻ると、卵部屋はまだ高温で生き残った玉着は無くて全滅であった。


もうこの部屋には用は無い。


ここに卵部屋があると言う事は産んでる奴も近くに居るのだろう。と思って部屋の反対側にも通路の入り口を発見してそこから先に進むとこれまでのホールの10倍位は在りそうな直径50mはありそうな広い空間の真ん中に白くてブヨブヨしたデッカいシロアリの様なデカイ腹?下半身を持つ蟻を発見。


『女神の英知』によると、グレートアンツ・クイーンらしい。


つまり、先程俺が殲滅した卵産みの親って事だ。


俺の侵入を察知したらしいグレートアンツ・クイーンがデカ過ぎる故に衰退した足では身動きも逃げも出来ずにギー ギー ギギーと悲痛な助けを求める鳴き声を上げて居るが・・・


「すまんな。お前の近衛騎士達、俺が大量に屠ったからな、もう多分居ないと思うぞ?」と一応間の手を入れてから、魔弾で奴の白い頭を吹き飛ばしたのだった。


グレートアンツ・クイーンは全く防御力も硬い外骨格も持って居らず、通常の魔弾で呆気なく沈黙し、その巨大な身体をボタリと横たえたのであった。


恐らくこれで、長かった第57階層も終わりだろう。


さて最後の問題は、このバカデカイ白いブヨブヨのグレートアンツ・クイーンシロアリって素材として需要在るんだろうか? 持って帰るべきなんだろうか?と。


一頻り悩んだ結果、そうそう何度もお目に掛かれないと思って頑張って回収した。


勿論キモイので素手で触らずにフォース・フィールドを利用した触手マジックハンドを使ったのは言うまでも無い。


そして、漸くこの女王の間の反対側に下層への階段を発見し、何時もの様に魔の森の小屋で一旦身を清め匂いを取ってから自宅に戻ったのであった。

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