第158話 マッシモ東ダンジョン その9

ダンジョンの方は第35階層のリザードマンに相手をして貰い


再度37階層に戻って、今度は剣を使って魔弾無しでミノタウロスを相手に勘を取り戻す為の攻防を行う。

ミノタウロスの持つ棍棒や大剣を俺の剣でモロに受けると簡単に折れるので、一応折れない様に剣にも魔装を延長して掛けてコーティングしてある。


俺が粘るもんだから、相手をしてくれている5m近い特殊個体がイライラを隠そうともせずにブモー!と怒りの声を上げている。


「すまんな。ちょっとブランクがあってな。厭でも付き合って貰うけど。」と言いながら、奴に向かって剣を振り下ろす。


更に15分程の攻防の後、漸くまんぞくした俺は訓練相手を無属性魔法で作ったの高周波ブレードで足を切断し、前に倒れて来て首が良い高さに落ちて来た所をスパッと切断したのだった。


良い感じに身体も温まった。

これ位動ける様になればブランクは埋まっただろう。


そして第56階層を一通りサラッとお復習いしてから、本命の第57階層へと進むのであった。


初めて 足を踏み入れる第57階層は薄暗くどうやら洞窟の様だ。


坑道型の洞窟でも無く鍾乳洞型や一般的な洞穴の様な穴では無くて、何かによって削り取られたり溶かされた様な跡もみうけられる。床は土では無くデコボコした岩の表面で、転ぶと痛そうである。


足場としては最悪で、ズリッと滑って足首を捻ってしまいそうである。


しかも洞窟ステージの所為か、空気が厭な酸っぱい様な腐った様な匂いが籠もっていて気持ち悪い。

一応、魔装と空気魔法のシールドでシールド内の空気は清浄化して置こう。

先へ進むのは良いが、これは普通に足で歩くのもリスキーだなと考えて、先の工事の時に編み出した新技である重力制御を用いた『ホバー移動』(一応ホバー移動を正式命名とする)を使う事にした。


この『ホバー移動』はこの条件下では大正解で、怪我する事も転ぶ事も無くスイーっとデコボコした洞窟を進んで行く。


何だろう? さっきから何故かこのダンジョンのこの洞窟の雰囲気に見覚えと言うか心当たりがありそうな変な感じがしている。


アップダウンが激しくて、時には分岐で真上に伸びている通路があったり、ストレートでなくてクネクネ曲がっていたりして、時々広めのホールがある。


喉元まで答えがで掛かっているんだけど、何だっけ?と首を傾げていたが、最初の魔物が「ギギ」と鳴きながらホールへと登場して来た。


「あー!!!蟻の巣だー!」と出て来た魔物を見た瞬間に叫んでいた。


そう、そうだよそう!! 何似煮てるって、小学校の頃の蟻の巣観察で瓶で飼育していた蟻の巣の構造そのものだったんだ。道理で見た事がある気がしてた訳だ。

出て来た蟻の魔物はグレートアンツ・ソルジャーと言うグレートアンツ種の兵隊蟻らしい。


てか、デカ過ぎてキモイ。顔に産毛の様なトゲトゲが生えていて、触角をヒョコヒョコ動かしてギギ♪と不快な鳴き声を頻りと洞窟に響かせている。


あれ? 此奴もしかして仲間呼んでない?と昆虫への不快感を取り敢えず置いておいて、先に此奴を屠る事にしたのだった。


こっちから先制攻撃を仕掛けようと気持ちを切り替えた瞬間に蟻の口から蟻酸がビシュっと音を立てて飛んで来た。


やっべぇ~、俺の魔装に当たって跳ね返されたり滴り落ちた蟻酸が床の表面に付いた瞬間にジュワーと白い煙を出して頑丈なダンジョンの床の岩肌が溶けてソコソコの窪みが出来た。


つまり、この洞窟がデコボコとして痛そうな訳は此奴らの蟻酸の所為って事だ。


しかも最初に感じた漂う空気の酸っぱさはこの溶かす時に出た白い煙が原因っぽい。



実に最悪だ。



しかしゲンダさん曰く、昆虫系の魔物・・・特に蟻等の外骨格は硬く軽く丈夫な為、武具の素材としては優秀らしく、倒したら、兎に角持って帰って来い!と言う指令が出ていた。


そうなんだよね。解体は冒険者ギルド側でやるから外骨格寄越せ!と言うのだ。


しょうがないな・・・。と諦めて2発目の蟻酸を躱しつつ奴の死角から接近して首の関節からスパンとキショい頭を切り落としたのだった。


2度程命令者を失った身体がビクッと痙攣したがその後は動く事も無く無事に回収する事が出来た。


そして、魔力を薄く広げ索敵すると、索敵エリア内に猛烈な勢いでこっちに向かって居ている新手6匹を発見した。


こっちの世界の魔物の蟻も元の世界の蟻動揺に、お尻の穴から、フェロモン?を出してマーキングして道しるべを残す様だ。更に先程のギギギと言う鳴き声で危機を知らせ近場の仲間に援軍を求めて居るみたいだ。


更にやっかいなのは、こっちに向かっている6匹が伝言ゲームの様に更に鳴き声で仲間を呼び集めているらしく、その6匹の後方からも他の蟻が張り切ってこっちを目指して居る。


非常に迷惑な話である。


この分だと芋蔓式に恐ろしい殲滅戦を強いられそうだ。

どうする? 逃げ帰る? いや、どうせ遅かれ早かれこのダンジョンの制覇では何時かは通る道だ。



どうせなら、こう言う戦いも経験しておいた方が良いだろう。

俺は『ホバー移動』を解除し、フォース・フィールドの足場を足下にだして、足首を捻らない戦い易い床を用意した。


やはり、足場が良いと戦い易い。最初の6匹を秒殺して、続く戦いの邪魔にならない様に回収して、続く敵を10秒程待つと、ギギ♪と鳴きながら、続々と現れる赤黒い巨大な蟻達。

一応蟻酸は回避はしているのだが、何発か魔装に当たって滴り落ちて居る。在って良かったよ魔装!


最初の1匹以降35匹を屠って漸く一連の蟻・・・ある意味蟻地獄が終わったのだった。


蟻の亡骸を回収し終えた俺が真っ先に行ったのはこのホールの空気の入れ換えだった。


やっと深呼吸をして一息付いた俺は、ちょっと早めの昼食を取って、午後の探索に備えるのであった。



■■■


昼食後に探索を再開したが、この第57階層は分岐や脇道が異常煮多く一応マッピングも行っては居るが、ハッキリ言ってキリが無い。


しかも、先程35匹以上倒したけど、そんなのは氷山の一角ですら無く、所処で出会い頭に殺しヤリ合って、結局先程のリプレイとなっている。


そんな事は昼食後の3時間で5回。


一体何匹居やがる!?と悪態をつくも、もう何となくとある筋書きが脳裏に浮かんでいる。


何となくだがこの先の女王蟻?の部屋で女王蟻をやっつけないと、この悪循環が終わらないんじゃないかと言う予感。


蟻の巣って、アップダウン激しいし、無秩序に作られているから、総延長は途轍もなく長いんだよね。


そうすると、今日あと2時間ぐらいで終わる気が全くしない。


下手しなくてもこの階層で数日費やしそうな気がしていたりする。


兎に角、4時半ぐらいまで探索してみて時間になったら明日に持ち越しだな。と心の中で気持ちを切り替えたんもであった。





 ◇◇◇◇


結局

4時半になるまでに更に3回程リプレイを繰り返した。もう、蟻はお腹一杯である。


速攻でサチちゃんの待つ自宅に借りたい所だが、


折角だから、オークとミノタウロスの解体依頼とこの蟻共の買取も冒険者ギルドに出して置こう。


因みにオークとミノタウロスの肉のストックはまだ十分に持っていたりするのだが、どうせなら肉貯金を増やして置こうと言う事だ。


ああ『肉貯金』なんと良い響きだろうか?何時でも食べられる美味しい肉が豊富にあるって素晴らしい。


サチちゃんはまだ歯も生えて無いし離乳食はまだまだ先だろう。


歯が生えて普通食を食べられる様になったら美味しい物を沢山食べさせてやろう。


先日『草原の猫』を護衛で募集して以来振りの冒険者ギルドである。


魔の森の小屋の前でマジックバッグ3つにオーク、ミノタウロス、そして買取に出す大量のグレートアンツ・ソルジャーの亡骸を詰め替えて、颯爽と冒険者ギルドの近所にゲートで出た。


冒険者ギルドに入ると中に居た冒険者達がガッとこちらを見るが来たのが俺と判るとサッと目を逸らす。


えっと、別に俺が嫌われている訳じゃ無いからね?


ほらその証拠に虚け嬢のおねーさん達は俺の方を向いて最高の笑顔を見せて会釈してくれて居るから。


まあ、そんなカウンターの前を素通りして奥に陣取る厳ついゲンダさんの所にやって来て、マジックバッグ3つをドンドンと置いて行く。


「どうも、こないだ振り、ゲンダさん! 今日はオークとミノタウロスの何時もの解体依頼とグレートアンツ・ソルジャーの素材買取だよ。」と言ってマジックバッグをそれぞれ手で示して中身を教える俺。


「判った、解体は急ぎじゃないんだろ? また何時もの彼奴らも入れて良いか?」と聞いて来たので笑いながら頷いた。


彼奴ら・・・そう、あのポンコツコンビである。ゲンダさん曰く彼奴ら全然強くはならないが、最近益々解体が上手くなって行っているらしい。


もう既に冒険者と言うよりも解体業者と言っても過言ではないかも知れない。


しかも、完全に俺の出す解体依頼を宛てにして生きて居る感さえある。


まあ本人達がそれで良いなら良いのだが、そんな話を半端に聞いてしまったもんだから、俺としても定期的に『肉貯金』用の解体依頼を出していたりするのだ。


冒険者ギルドでの用事も終り、裏路地からゲートで自宅へ戻ったのだった。



自宅に戻ると「トーしゃ!」と両手を挙げて出迎えてくれたサチちゃんだったが、抱き上げると何故か顔を顰め、「くちゃい。」と言って、サチちゃんからクリーンを掛けられて仕舞ったのだった。

しまった・・・今日に限ってクリーンを掛け忘れてしまっていた・・・。


ガーーンと腰砕けにになりそうになるのを踏ん張って、サチちゃんに「ゴメンね。臭かったか。クリーン掛けてくれたんだね。ありかがとうね。」と俺がお礼を言うと、

「トーしゃ!くちゃいナイナイ」といってニッコリ微笑んでくれるのだった。


今度から、絶対に忘れ無い様に気を付けよう。これが元で嫌われたりしたら、死んでも死に切れんからな!と心に刻み込むのであった。


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読者の皆様どうもです。

何時もお読み頂きありがとうございます。m(__)m

『肉貯金』私も冷凍庫でやっているんですが、在庫が少なくなると少々心細くなります。

ああ、トージが羨ましい(*´∀`*)

まあ、ちゃんと冷凍庫の中の『肉貯金』の残高を把握して置かないと万年氷河の中から出て来た肉の様になっちゃいますから注意が必要ですが・・・。

我が家もそろそろ『肉貯金』を補充せねば。

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