第157話 王国全土スカウト・キャラバンその2

我が家の天使サチちゃんは日増しに成長し、最近では俺の事を「トーしゃ!」と呼んで足下にトテトテと歩いて来て両手をバッと上に上げてバンザイの様なポーズで抱っこでは無く肩車を要求して来る。どうやら高い所からの視界がお気に入りらしい。


そう、俺がお父さんと呼ばせようとして、いるからか、アリーシアや周囲の者がトージさんと呼ぶからかは不明だが、俺は『お父さん』と呼ばせる事に失敗していた。

まあそなんだが「トーしゃ!」と呼ばれてもデレデレに嬉しいので良いのだ。


師匠もサチをだらしない顔で見ながらに目尻を下げつつ自分で『バアバ』と呼ばせ様としている。


当初「子共なんて五月蠅いし・・・」とか言ってたのが幻だったのだろうか。




さて、クリスとアーニーの『スカウト・キャラバン』だが、何か怪しげな商会の怪しい商売の使い捨て要員とかの勧誘等と疑われたり門残払いを受ける事は皆無で各孤児院で諸手を上げて受け入れられているらしい。

どうも、全国規模の孤児院への寄付や持参しているマッシモの司祭様の紹介状が利いている様だ。

更には、訪問している一期生の2人が孤児達に熱く語り掛けて魔法を使って見せてデモンストレーションをしているとか・・・。


お二人さんや、欲しいのは弟子ではなくて、従業員だからね? ちょっと不安になるが、そこら辺は信じて成り行きを見守ろう。



都合の良い事に行く孤児院毎に卒園のシーズンが微妙に違うので、一気に新卒の子が押し掛けて来て溢れると言う事は無い。

タイミングが合った場合は2人がそのまま連れ帰る様になるが、言うても2人はまだ中学生ぐらいで護衛は付けてるものの、そんな2人が多い時は15人ぐらいの新卒の子を引率し、その15人分ぐらいのゲート代金も支払う様は異様で瞬く間に方々で噂になって行った様だ。


回り回って噂を聞いた俺は、一応念の為に『草原の猫』に更に警戒を強めてくれる様にとお願いした。

まあ、嘘でも都市や街の中だから、幾ら相手が中学生ぐらいとは言え、護衛の付いた相手を襲撃して金品を奪ったりしないとは思うけど、場所によっては絶対とは言えないからね。



さて新卒の子がマッシモの宿舎にやって来ると、一期生の手の空いてる子がメインで受け入れの面倒を見つつ、アンテナショップをヤル上で必要となる俺のレシピの調理を指導したり、キッチンの魔動具の使い方をレクチャーしたりと大活躍して居る。

ここ2年ぐらいで一期生の成長振りは凄い物だ。

兵士じゃないが、正に文武両道、一騎当千のマルチプレーヤーである。


そな孤児院出身の良き先輩に感化される様に新卒生も奮起して日々色々と教えて貰った事を吸収して行っている様だ。


更に、ヤル気のある子には一期生が魔法も教えて居る。


つまり、最初の出迎え時こそ歓迎の挨拶をしたりちょこちょこ話をしたりする絡みはあったが、殆ど俺の出番は無い感じである。




そこで俺がダラけて遊ぶ・・・だと子共だけを働かせてその上前をはねるロクデナシだが 俺は違うからね!


予てより要望の多かった王都は勿論、今回ゲート網開設以降に熱烈的な要望の多かったや主要な伯爵以上の領都に『アンテナショップ(オオサワ・レシピの店)トージ飯』を出店すべく店舗の物件を探しに行ったり、その街の雰囲気や領主の評判を含め調査をしたりしている。


本当なら、彼らの出身の街で開店出来ればそれに越した事は無いのだろうけど、申し訳無いが流石に開店後に閑古鳥が鳴く様な集客が望めない規模の街には出店出来ないからね。


そこら辺は了承して貰っている。


やって来た新卒の子らは皆マッシモの発展振りと宿舎の綺麗さや出て来る食事の美味しさ、そして待遇の良さに大変驚いている。


そして、それらによって夢を膨らませヤル気を漲らせてくれる様だ。



資金に問題が無くて、売れそうな商売のアイデアやネタがあるならヤラない手は無い。


まだまだスイーツの店とかも出したいし、人手は在って困る事はない。


そんあ感じで徐々に各地の孤児の受け入れをして行き、手を広げて行くのだった。




因みにゲート網の拡充に伴うゲートの魔動具のバックオーダー分は既に納品済みで何時でも対応出来る様にある程度のストックも作って置いてあるので、長きに渡った俺の拘束はほぼ解除されたと思ってよさそうである。



後は、新店舗の開店とかで各地を廻ったりもするが、そろそろダンジョンアタックを再開したいと思い始めている所である。


奥さんと子共を持って、働かなくても十分に食って行けるけど、サチちゃんにこのままダラけてる背中を見せて育てるのは父親として駄目だと思うんだ。


それに、ダンジョンは一応俺の数少ない趣味と言うか楽しみの1つでもあるからね。


折角ファンタジーな世界に転生したからには、ダンジョンの最下層を目指したいじゃないか!? そして、大きくなったサチちゃんから、「お父さん凄い!」って言われたいじゃん!


そう言う事も思いつつ、サチちゃんの日々の成長を見守るのが嬉し過ぎてなかなか先に進めないで居るんだよね。


余り戦いから離れ過ぎると拙いので、支店も増やす事だしそろそろ肉補充と言う名目で、肉の収穫に行くとするかな・・・。



■■■


数ヶ月振り処ではないのか?


お目当ては、『オーク階層』と『ミノタウロス階層』である。


一応これまで日々の鍛錬のルーティーンは熟していたので全く身体が動かないなんて事は無いので心配要らない。

オークで魔物狩りの勘を取り戻し、サクサクと収穫して廻る。


暫く、間引きに来て無かった所為か、オークの数が非常に多く、オーク・ジェネラル等の上位種もチラホラ居た。


まあオークは多くてもそれ程脅威では無い。寧ろ討伐後の血抜きと回収と言う作業の方が面倒って事で問題だったりする。


やはり、最初から血抜きして回収して解体した肉と後で血抜きと解体に出したした肉とでは如実に味が違うのだ。


だからこそ、現地で

面倒だとブツブツ言いながらもセッセと血抜きも討伐後のルーティーンにいれているのである。


午前中の3時間を掛けてオーク階層を終えてイヨイヨお待ちかねのミノタウロス階層だ。


ここでもオーク階層と同じく数が多いし、チラチラと嘗て戦って脅威を感じた特殊個体並のデカイのが混じっている。



オークと違って、ミノタウロスは侮ってはいけない。特に特殊個体は尚更である。


さて、結果から言うと、魔法による数々の土木工事を請け負った恩恵だろうか?


魔圧とでも言うのかな? 硬い城壁等を作る為に滅茶滅茶圧力を掛けまくったのが功を奏した様で、以前は脳を揺らす程度の威力で頭蓋骨に弾かれていた魔弾が特殊個体の頭にめり込んで爆ぜた。


何気無い魔弾の一発一発の威力が大幅に上がって居る。


これは嬉しい誤算であったが、肉は大量に手に入ったもののダンジョンの戦闘勘を取り戻すのには失敗と言うか余り役に立たなかった。


だって、全部魔弾だけでイケちゃったし・・・。


もう少し何階層かピックアップして勘を取り戻すとしよう。

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