第152話 歴史的快挙
開校から半年が経過すると授業も含み学校の運営の方も安定して来た。初等科に代わる小学校の様な物を各地に作るべきだと進言したものの、流石に王国全土の規模で直ぐには難しいと却下されてしまった。
やはり、元居た世界の日本の様にはいかないらしい。
一応マッシモ様の領内に関しては初等科に匹敵する小学校を各町村単位に設ける方向で行くらしい。
それがモデルケースとなり王国全土に広がる事を切に願う。
件の貴族の子弟の落ちこぼれ達の残りは無事に魔法科のグレード1を終えて、本格的に魔法を使う方に足を踏み入れた。
どうやら、見せしめとなった1人の処遇が余りにも衝撃が大きくて以降の学園内での身の振り方と言うか他人への接し方を変えた様だ。
まあそれが一時的な物で無い事を淡い期待を持って祈るのみだ。
サチはこの6ヵ月間でスクスクと元気に育ち、寝返りから這い這いまで物にした!家の子ってマジ天才! って、え?それで普通ですか?
でもね、俺が家に帰ると天使の様な最高笑顔でニコーって笑ってくれるんだよ!
もうお父さんメロメロでしゅ。
そうそう、新しく建ててる自宅の方だけど、講義の合間にコツコツやってたので時間食っちゃったけど、外装は終わって自宅と宿舎を含めて今は職人さんに内装を仕上げて貰っている最中だ。
新しい所が完成したら今の
今の所、ゲートを使えるのは俺だけだし、もっと某未来の猫型ロボットの様に何処にでも繋がるドア的な魔動具が作れれば新居に移っても利便性は代わらないんだけどね。
そもそもこの俺の使って居る『ゲート』は座標と座標を空間的に繋ぐイメージだから、瞬間移動や転移的な力技より魔力を使わないのが代々のメリットなんだよね。
そう言う意味で、魔動具化しても運用して行くランニングコストは非常に低く抑えられると思うんだ。 うん、正に魔動具向きだね。
これが出来れば、今まで俺が毎週行っていた海産物の運搬やミルクの運搬を他の人にお願い出来るんだよね。
そうしたら今よりもっとサチやアリーシアとの時間を作られる様になるし。
出産だ、入学期だとバタバタして居る間に季節はもう夏に変わってしまっている。
無事成人を迎えた第一期生であるマッシュ達には、そろそろ次の段階に移って貰って管理職的な立場や新しい事にチャレンジさせて行きたいんだよね。
出来る事の幅を広げて行って自分なりの目標や夢に向かって進んで欲しいし、それを全力でサポートしてやりたいし。
そんな訳で第二期生にアンテナショップの主力を移しつつ、本人の希望も聞いた上で第一期生には魔法学校の講師や師匠に着いて錬金術を学んで貰ったり、うちの商会の盤等と言うか運営をして貰ったりする方に転属して貰った。
要は今までアリーシアが補って回してた所が現状疎かになって居るのでその部分を継いで貰う感じだね。
そして俺は、サチの日々の成長振りを見守りつつ、ゲートの魔動具開発に取り掛かった。
学校の方の講義頻度は徐々に絞って行って、最終的にはフェードアウトしたいかな。
だって、子共の成長ってあっという間でさ、這い這いの時もそうだけど、昨日までゴロゴロ転がっていたのに、ある日突然這い這いし始めたりするんだよ! 初這い這い危うく見過ごす所だったよ。
危ない危ない。 この世界には監視カメラも動画も無いから、リアルタイムで見過ごしてしまうと永遠にそれは見られないって事なんだよね。
何か最近サチちゃんがね、クリーン掛けてやると昔はキャッキャと喜んでただけだったのが、最近では不思議そうに考え込んでる様にしてたり、何かしようとしてるんだよね。
何か魔力を操作しようとしている風に見えるんだよ。
もしかして、自分でクリーンを掛けようとしてるんじゃないか?と・・・まさかね?
■■■
課題のゲートの魔動具作りだが、一番の問題点は座標の指定方法であった。 そこでちょっと考え方を変えて特定の空間を経由し番となるゲート魔動具の方から出る仕組みを考えてみた。
某猫型ロボットに倣ってドア型も考えたんだけど、別にドアとか固定物である必要ねぇんじゃ?って事で、壁や床に貼り付けたりして運用出来る布製の魔動具で行く事にした。
ケープ・スパイダーと言う魔物の糸を紡いだご存知のケープ・スパイダー・シルク これは非常に魔力の通りが良く、これに魔方陣を刻んだユニットを取り付けて番が起動したら、連動してもう片方が起動する様にしてみた。
つまり、特定空間を経由してそのまま番側から出る事が出来る仕組みって事だ。
れは確実に物流に革命が起こるが、そんな事をすると失業者増えそうだから、大っぴらには公表出来ない内容だ。
当面身内だけだな。
あ!ジェシカ・・・どうするかなぁ~。
彼奴あんなんでも王族だし。まあ、一応俺達の事を尊重して無理強いはせず、打診したりお強請りしたりする程度で、憎めない性格ではある。
前回の王都帰還で懲りた風だったけど、本来なら頻繁に王宮に報告したり提言したりする必要ありそうだし、王宮? いや国王陛下に魔動具売りつけるかな?
イヨイヨ仕上がったゲートの魔動具の人体?テストである。
被検体はゲート使える作者である俺だ。
俺なら、変な所に閉じ込められても自力でゲートを発動して帰られる可能性が高いし。・・・多分。
俺の部屋に付けた魔動具、ゲートの主機と番の子機をゴザレオの家のリビングに取り付けてみた。
さあ、テスト開始だ。
魔動具を起動すると、壁に掛けたケープ・スパイダー・シルクの生地に黒いゲートの穴が出現する。
まあ、これで普通なんだけど、布一枚の裏側を捲ると普通に壁だった。まあ当たり前なんだけどね。
そして穴の中に一歩踏み出すと、ゴザレオの家のリビングにちゃんと無事出て来た。
一発成功である。
流石俺だ!!!誰も居ないゴザレオの家のリビングで1人で踊る俺。
二分程踊って冷静になった俺はコホンと咳払いをして、ニンマリと笑みを漏らしながら、帰途の為に子機側でゲート魔動具を発動して、マッシモの自室へと戻って来たのであった。
そのままの高いテンションでアリーシアの部屋へと突撃して、アリーシアにゲートの魔動具が完成した事を告げると、大袈裟な程に凄い凄いと褒めてくれたのだった。
第一期生に錬金術指導中のメリンダ師匠の部屋に行って、ゲート魔動具の完成を報告すると、大変驚いていたが、神神器に等しいアーティファクトだの歴史的快挙だのと、ロストテクノロジーの復活だのと珍しく興奮気味に褒めて貰えた。
だがしかし、「だけど、トージよ、これを一般販売するのはお薦めしないよ!国に・・・いや王宮に一旦報告しないと拙いと思うから、その辺ジェシカ殿下経由で上手くおやり! 下手すると国家反逆罪や国家転覆罪とか言い掛かり付けて来る輩が居ても不思議はないからね!」と忠告してくれたのであった。
「師匠、判りました。ご忠告ありがとうございます。 元より一般販売は色々な理由でするつもりが無かったので。下手すると物流業界が崩壊して失業廃業が増えちゃって混乱しそうだし、冒険者も仕事が無くなる可能性が大きいですからね。将来的に徐々に普及浸透させるにしてもそれは俺の死後とじゃなくて、国の仕事ですからね。」とお礼と俺の見解を述べて部屋を後にしたのだった。
俺は、王都の俺の自宅に行って、子機を壁に取り付け、早速学園へと向かって、校長室のジェシカを訪ねたのであった。
守衛の騎士に会釈して、ジェシカ殿下への謁見をお願いする間も無く、「ああトージ師匠、お久し振りです。 ジェシカ殿下、トージ師匠がお見えです。」とドア越しに声を掛け、許可を取って からドアを開けて中に入れてくれたのであった。
「師匠、珍しいですね!師匠から会いに来てくれるなんて!」とお疲れモードのジェシカが俺に告げて来る。
「そうだな、確かにな。今日のこの時間はラフティは授業か?」と尋ねると首肯するジェシカ。
「で、早速なんだが、今日はとある新製品を見せるのが目的でな。 これを一般売りすると色々拙いので、王国と言うか王宮側が購入したいんじゃないかって思ってね。」と言って小脇に丸めて抱えたケープ・スパイダー・シルクの生地を広げて、
許可も得ずにジェシカの校長室の壁に仮留めして見せた。
「師匠、この布きれの魔動具?は何でしょうか?」と不思議そうに首を傾けるジェシカ。
「今見せるよ!ちょっと、こっちに来てくれるか?」と手招き(通常なら非常に不敬な行為)をしてジェシカを隣に呼んで魔動具を起動すると、黒い穴が生地の上にポッカリと現れる。
「あ!? これはもしかして!!」と既に一度俺のゲートを体験しているジェシカが、小さく叫ぶ。
「ふふふ、多分ご名答だよ。この先は何処だと思う?」と俺が言い終わる前に既に一歩ゲートの穴に入って行くジェシカ。
そして、俺もそれに続くと、「ここって、王都の師匠の家ですよね?」と興奮しまくっているジェシカが居た。
「そうだよ。これがあると便利だし、ほら、今度の新しい家って、今の店やなんかから遠くなるじゃん? 不便だし、広い新居はもう直ぐ完成だしって思ってさ。」と俺が言うと、
「普通はそんな理由でこんなお伽噺に出て来る神器レベルの
一応、これを一般売りしない理由をジェシカに、悪用すると人攫いや盗み等色々な犯罪がバレずに行える事や取り締まり時の逃走にに利用したり出来る事等の例を挙げ、更に既存の物流従事者やその業界が潰れてしまう事等やそれに伴って儀営任務の冒険者が仕事にあぶれる事、最悪盗賊になってしまうと治安が悪化する事等を判り易く解説した。
「なる程!仰る通りですね。」と神妙な顔付きで頷くジェシカ。
「だから、もしこれを徐々に民間に開放するなら、それは国家が運営して、通行料を取れば良いかなってね。つまり国営の移動手段だよ。易くし過ぎると業界が潰れるから、まずは商人や貴族連中が漸く払える料金設定ぐらいだな。そうすれば、業界に影響はで無いだろう? それに地方の領主やっている貴族にしてみれば、王都との直通の手段は喉から手が伸びる程欲しい物だろ? それを王宮が管理出来るって言う事は奴らに対する強いカードになるだろう?」とニヤリと笑いながら締め括ったのだった。
「だからさ、そんな訳で、これを国王陛下に進言して上手く調節して欲しいってのが最終的な今日の訪問の目的だった訳だよ。」と言って、ジェシカが部屋に居無くなったと騎士が気付いて騒ぎ出す前に校長室へと戻ったのであった。
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