第146話 マッシモ拡張計画 その6

聞いてくれ!

俺!どうやらお父さんになるらしいんだ!!


ここのところずっと体調悪そうにしていたアリーシア。

凄く心配していたんだけど、回復魔法を何度も掛けようとしたら、笑顔で止められて、

「トージさん、大丈夫ですよ。病気じゃないですから・・・どうやら、赤ちゃん出来たみたいなんです!」とはにかみながらアリーシアが俺に告げて来たんだよ!!


「え?えー?赤ちゃん!! 俺達の子共! でかした! やったな!」と大喜びして思わず、ガバッと抱きしめようとして、慌ててアリーシアから手で制しされて、

「トージさん落ち着いて!ソッと優しく!」と言われたのであった。 危ない危ない!! ソッと優しく!ソッと優しく!! と自分に言い聞かせアリーシアを引き寄せて

ソッと背中に手を回して抱きしめたのだった。


この日から俺の日課にアリーシアのお腹に話し掛けると言うのが加わったのは言うまでもない。


子供達やみんなに、アリーシアの妊娠を報告すると、何気に師匠が一番喜んでくれて嬉しそうに目を細めていたのだった。


日本での軽い一般常識ぐらいしか知らなかった俺は直ぐに商人ギルドのルミーナさんの元へと行ってこの世界での妊娠やお産に関する情報等を教えて貰う為に詳しい家政婦さん(可能ならお産経験のある女性)を雇う為に依頼を掛けるのであった。



幸いな事にサリエーナさんと言う2人の子を産んで育てた経験のある45歳の女性が見つかり、アリーシアに面接して貰い気さくに接する事が出来そうだと言うので住み込みでお願いする事にした。


ちなみに2人のお子さんは既に成人しており、20歳以上で独り立ちして王都の方で元気にやっているらしい。


最初、お子さんの居る場所が王都と聞いて凄くドキドキしたのだが、幸いな事に件のテロに巻き込まれていないとの事でホッとしたのであった。

何で巻き込まれて無いって判ったかって? いや巻き込まれて居たらシャレにならないので直接的に聞く訳にもいかなかったんだけど、息子さんからの手紙にそのテロ事件の事やジェシカ殿下の魔法の事等が書かれていたらしいので、事件後に書いた手紙って判ってホッと肩を撫で下ろしたんだよね。


まあ後日その渦中のジェシカ『殿下』がお腹を鳴らしながら「師匠ぅ~、疲れました!お腹が減りました! 弟子への癒やしを要求します!」と我が家にズカズカとやって来たものだから、目の玉が飛び出そうな程に目を見開いて驚いていたんだけどね。


そう言えば、ジェシカの事伝え忘れていたな・・・。


まあ後で底玉恨み言を言われたけどね。


そして最後に「旦那様! もう他に言い忘れている事や隠し球は無いでしょうね?」って怒った時のお袋の様な感じのサリエーナさんから詰め寄られたが、まあ家の場合全部が全部外部の人に言える事ばかりじゃないからな・・・笑って誤魔化したのだった。

母親も早くに亡くし、お産に関する知識を知る術が限られて環境で育ったアリーシアだったが、サリエーナさんが来てくれた事で色々と教えて貰いお産に関する不安が多少取り除けたのか、体調不良や不安気な顔をする事が減って来た。



まあ、俺はと言うと、相変わらず、増築した場外部分を駆けずり回って道路工事をする毎日を過ごしている。


毎日出かける時と帰宅時にはアリーシアのお腹に向かって話し掛けているが、まだまだ多分豆粒の様なサイズで目も耳も出来て無い頃だろうな。


アリーシアの不調は要は悪阻って呼ばれるアレである。

ある日突然酸っぱい物が食べたくなったり、脂っこい物が食べられなくなったり、色んな拒否反応?や食べ物の好みが変わったりするらしい。

初めの頃はお粥とかだけしか口にしなかったりしてて心配してたのだが、徐々に具入りのお粥や雑炊やうどんや麦とろ飯等、サッパリした物なら大丈夫になって、徐々に栄養を取れる様になって来たので安心したよ。



別に日本に居た頃の俺は子供好きでも子煩悩なタイプでも無かったと記憶するのだが、自分が愛する女性との間に出来た子共だからだろうか? 居ても立ってもいられない感じに愛おしく感じてしまうのだ!


これが父性の目覚めって奴なのか?


 ◇◇◇◇



あれから3ヵ月が過ぎた。


アリーシアのお腹が少しずつ膨らんで来てポッコリと可愛い感じで歩いているが、動作は態とユックリとしている。

決して重い荷物等を持たない様にと言う注意事項もちゃんと守って居る様だけど、やっぱり妊婦は大変みたい。


サリエーナさんが日々付き添ってくれているのが心強い。


そのお陰で俺も安心して工事に集中出来るので、ここのところ、作業に慣れたのと、気合いの入り具合のお陰で、作業効率がアップしている。


それこそ、もう道路職人と自称しても違和感が無い位に。


そんな訳で道路工事は全体の80%は既に完了しており、佳境を迎えていると言っても過言では無い。



そして漸く長かった道路工事も来週で終わるだろうと言う見通しが付いた頃、憂慮していた事が起こってしまった。



騎士団の増員の募集で方々から集まって来た家督を継げない貴族の子息(主に3男以降)が俺の所の焼肉屋でゴネて暴れやがった。


要は高過ぎるだの、酌をしろだの女性従業員に手を出し(身体を触り)それを止めに入ったジェキンスさんを殴り飛ばし手大怪我を負ってしまったのだ。


一応護衛の冒険者を雇ってあったのだが、相手が貴族って事で全く役に立たなかったらしい。


何の為の護衛だ!?って話だよ!


男なら命張るぐらいの気合いを見せろよ!


幸い大怪我は負ったが命には別状が無く、直ぐに場外の俺の居る所まで伝令がやって来たので直ぐにマッシモの街に戻って回復魔法でジェキンスさんを治療sた。


幸い、5人組の犯人は現場でまだギャーギャー喚いたので俺が怒りのままにぶっ飛ばして顎の骨を粉砕しておいた。


これでこいつら無罪放免にするつもりは無い。

下手なチンピラや盗賊よりも下手に地位が在るだけ最悪である。


兎に角、逃げない様に手足の腱を切っておいたので、地面でナメクジの様にズリズリと這いずって居る。


ざまあ見ろだ!!


店内が破損した為、これ以降急遽休業としてお客さんには後日食事し直して貰える様にサービス券を出して置いた。

その後に従業員へのフォローを済ませてから深々と頭を下げたのであった・・・。


さあ、奴ら5人組にはそれ相応の終わらない『地獄』を見て貰うとしよう!!とほくそ笑むのであった。



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