第144話 マッシモ拡張計画 その4

さあ、工事屋トージの再来である。


ユックリ休ませてもらったので、ヤル気十分である。現状新旧の城門を結ぶ幹線道路は未着手なで、チャッチャと俺が済ませてしまえば、資材等の運搬も効率的に行える様になるのでその後の都市計画が加速するのだ。


とは言っても、線を引いた様に真っ直ぐ一直線の道を作るのは簡単じゃない。


そう、一般人なら だ。


俺には豊富な魔力と魔法がある。墨壺代わりに無属性の魔法の糸による魔力で墨入れを行う。


どう言う事かと言うと、端点を地面に固定し、そのまま魔力の糸を伸ばしつつ城門の前まで行って、魔力の糸を地面に叩き付けると地面にキッチリと一直線の溝が出来るのだ。


これを道路の左右の端で各々行えば完了である。


この方法なら理論上、俺の魔力操作次第で何kmだろうが、何百kmでも線入れが出来るのだ。

だが、この方法の最大のネックは、端点固定した所からゲートを介すると魔力線が途切れて拡散しちゃうので、自分の足でテクテク歩くしかないのが最大のネックである。


そこで、マジで先日考案していた、バーニアとかスラスター的なホバージェットの様な推進力による移動、そうホバー移動を魔法で何とかしようと考えて居るのである。

先日の風魔法を使ったジェット推進による飛行速度の向上でお馴染みのジェット推進・・・この際これをジェットブースターと呼ぶ事にする。

で、そのジェットブースターをブーツの裏や、適所から出す事で某アメコミの『鉄男』や某SFアニメの重厚ロボットの様にホバー移動を実現しようと言う訳だ。


これが出来る様になれば、機動力が大幅にアップして、肉体的にはかなり楽が出来る筈である。


取り敢えず、道路にすべき線引きは終わったので、暫しの間新技の習得に励む事にする。


前回同様にブーツの裏側から風魔法で噴射するのだが・・・いや、これは難しい、某『鉄男』の映画で掌からの推進力で姿勢制御をしていたのも頷ける。


もうね、へっぴり腰で即スッテンコロリンってひっくり返る感じだね。


判り易い例えを上げると、両足の下にビーチボールを踏んでる様な微妙なフワフワで心細い状態かな。


これはこの『ジェットブースター』の強弱とかで上手く浮いて進むのは無理と言う事がハッキリ判った。

思った以上にポンコツプランであった。


もっとこう・・・フワッと浮く様な、無重力状態的な・・・あ、無重力か!! と閃いて


こっちに来て初めて反重力と言うか、自分自身に掛かる重力をキャンセルする様な感じに重力制御をしてみた。

立っている自分の足に掛かる体重の重みが空から見えないロープで吊られて居る様に消える。

「ああ、これぞ無重力だ!」と歓喜の声を上げる俺。

だが、喜びの余り、ちょっと暴れてしまってその場で後ろに倒れ込む様な縦回転でクルリと回ってしまって苦笑いするのであった。


この重力制御による状態で両手の掌から『ジェットブースター』を発動する事で前進したり、方向転換したりする事が可能になった。


まあ余り慣れていないので、危なっかしいからそんなに速度を上げられないが、両足で立ってなくても良くて、膝に負荷も掛からないので、正直移動が楽である。


そもそもだが、掌からの『ジェットブースター』で進まなくとも、この重力制御で重力を80%ぐらいにするだけでも普通に地面を蹴って走る感じで滅茶滅茶楽に移動が出来る。


正に傍から見るとホバー移動っぽく見えるだろう。




■■■


新しい移動手段を開発した俺は、有頂天になって、意欲的に新旧の城門を結ぶ幹線道路を元居た日本の様な感じの雨天時の水捌けを考慮した側溝まで建設しつつ作り込んで行く。


やはり、気分的な物は重要で、「ああ面倒だな!かったるいな!」って気持ちだと手が進まないって言うか、なかなかモチベーション上がらない物だが、単純に歩いて何kmも移動しなくて良いってだけで、モチベーションが爆上がりである。


まあ本来なら、道路の舗装・・・つまり地面の平坦化をしつつ表面を硬化して側溝や下水道まで作りつつ道路工事をするってなると非常に面倒なのだが、この時の俺は脳内から気持ちの良い成分が出てて、「重力制御魔法の習熟もついでに出来て一石二鳥だ!」って言う風に思っていたんだよね。


それこそ、東西南北4本の幹線道路が完成するまでの約2週間。



まあ完全に人の手だけでこれだけの工事をするとなると、やはり軽く年単位でも難しいだろうし、魔法有りきでやったとしても下水道や側溝等、ヤラないといけな事が細かいので、非常に面倒で細やかな魔法制御が必要になって来るのだ。



勢いとは言え、4本の幹線道路をこの水準で作って仕舞った事を深く俺が後悔するのはもう少し先の話である。


結局、現実問題、このレベルの工事が出来る奴が居る訳も無く・・・結局全ての道路(路地裏の側道に至るまで)を後々俺が担当するしかなくなるのであった。


まあ、俺達の住むマッシモだし、もしかすると俺とアリーシアの間に生まれる子らが育って行く街である。そしてこれから俺の代わりに工事出来る様な人材を育てる為の教育機関設立の為の工事でもある。


ここはグッと言葉を飲んで追加工事を請け負う事になるのであった・・・。



何か知らないけど、最近やたらと遊覧竜車的な物が俺の工事している所にやって来る様になったんだよね。


後日子供達が教えてくれたのだけど、胃様な速度で街が出来て行く様を見るのが最近のマッシモのブームになっているらしい。


商魂逞しいと言うか、人の工事をエンターテイメントにしてしまうとは凄い発想だよな。


そかも日々出来上がって行くから、リピーターが多いらしくて、かなり儲けているらしい。


俺が出演してるんだから、多少なとギャラ貰っても良いぐらいだと思うのだけどな。



ジェシカから、報酬で貰う予定の土地をそろそろ決めろ! と言う話が出ている。


そうは言ってもなぁ~。周囲に何が出来るかで大きく環境が変わるから、決めた後にそれこそ娼館や飲み屋等が密集する地区になってしまうと子共の教育上宜しく無いし。

そう言う事も含めて確約取って置かないとリスクが大きいよな。


と言う事でアリーシアや師匠も含み、全員で家族会議を行う事にしたのであった。



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