第138話 マッシモ拡張計画 その2
毎日俺の進む後ろには長い真っ白な城壁が目映い光を放っている。
最初こそ知る人は少なかったのだが、
中に住んでるだけの人は当然場外へ出る事も少なくて自分の住んでる街の外が今どんな事になっているかなんて殆ど知らなかったり、魔物や盗賊が怖いので場外に出ない人が多いのだ。
現行の城壁は、平時の日中限定ではあるが、マッシモの住民は城壁の上に上がって景色を眺めたりデートに使ったりする事が可能である。
そして、そんな外部から来た者達の噂話を聞いて城壁に上がる住民がここ数日で増えて来たらしい。
日を追う毎に白く目映い城壁が長くなって行くので、遠く離れていても肉眼でキラリと輝く城壁が見えるのだ。
領主様からはまだ何のアナウンスも無いが、ちょっと頭の回る奴ならこれが何を意味する事なのかピンと来る訳で、新しく拡張された土地を人より早く手に入れようと商人ギルドに駆け込んだり問い合わせたりと大騒ぎするのだ。
まあ幾ら商人ギルドを突いてもまだ商人ギルドには領主様からの情報が敢えて止められており降りて来て居無いので何もしようが無いのだ。
しかし、商人ギルドのあの2人がそのままにしてジッと待つ訳も無く、ニョキニョキと城壁が建築されて居る状況を知って俺の仕業に違いないと睨み朝一番で出勤前の俺の自宅に突撃して来たのである。
流石鼻が利くと言うか、名推理と言うか、まさか突撃して来るとは思って無かったので驚いてしまった。
尤も、突撃されても俺もウッカリ喋る訳にはいかないので煮え切らない生返事しか出来ないのだが、領主様とジェシカに言ってこの2人も早めに計画に巻き込んで置いた方が得策だろう。
「と言う事で現状俺には何が起こるのかを教える権限無いから、近々に2人にも知らせて手伝って貰う様にと進言しとくよ。そんな訳で今は何も言えないし、我慢して帰ってくれ!」と朝食を食わせて送り出したのであった。
一応、出勤前に領主様とジェシカへの進言の手紙を書いてアリーシアに託してから、建築現場へとゲートで向かうのであった。
俺の進言の手紙は効果あったらしく、それから3日ぐらいで商人ギルドの2人が俺達サイドに入って来たのであった。
だが、2人は単なる拡張工事ぐらいの話と思っていたらしく、まさか、『国家プロジェクト』の一端を担う事になるとは思ってもみなかったらしい。
まあ商人ギルド員としては栄誉な事だと思うのだが、次に会った際にまさか国家プロジェクトレベルの大事とは思ってなかったのに巻き込まれてしまって少し青い顔で軽く恨み言を言われてしまったのだった。
「自分から突っ込んで来た筈なのに、何と理不尽な・・・。」と俺が言うと、「まさかここまでの事だなんて思いもしなかったので・・・胃が痛いです。」と言ってたので2人を軽く回復魔法で治療してやり、もっと頑張れる様にしてやった。
ここに来て新しい拡張されたエリアの街の設計を始めると言う事になって、ジェシカに問われたので、このタイミングで初めて拡張されたエリアの大きさと言うか、新しい城壁の直径を告白したのだった。
「え? 師匠、今何と? 12kmと聞こえたのですが?」と聞き返すジェシカ。
「ああ、そうだよ実測したら、ザックリ直径12kmぐらいだった。本当は王都と同じ10kmのつもりで最初の目印を設置したつもりだったんだけどさ。俺もここまで遠隔地で魔法を発動させるのが初めてで、ちょっと力と言うか魔力が入り過ぎてね、2km程オーバーしてしまったのさ。 俺もまだまだだなぁ~。」と頭を掻きながら告白すると、10km以下で見積もって居た様でそもそもの目論みが根底から崩れたらしくガックリと項垂れていたのだった。
「拙かったか? だってマッシモ様の雰囲気だと広ければ広い程良いって感じで広い分には問題無いって言ってたし。」と俺が言い訳したが、
「広過ぎるとそれをある程度埋める必要あるので大変なんですよ!」とジェシカ。が訴えていた。
「まあ、それなら、公園を多めに作って置けば良いよ。 もし将来的に手狭になれば必要に応じて公園を潰せば良いし。 後は出来るだけ最初から広めの道路をキチッと舗装して作って車道と歩道を分離して置けば、事故が起き難いぞ!」と助言をしたのであった。
「なるほど、流石は師匠ですね!魔法以外にも色々とご存知で。」と言ってメモに掻き込んでいたのだった。
「まあどうせ、この調子だと城壁が終わった後も俺が手伝わないと道路とかの整備も難しそうだな。 まずは、道路や下水等のインフラから先に作ってカッチリ都市設計して置かないと王都みたいにグチャグチャになるからな。兎に角城壁をなるべく早く終わらせる様に努力するから。」と一応予め助力する事を伝えて置いたのだった。
確かに広めにしてやれとは思っていたのだが、やはり遠く離れた場所に目印を設置するのは思った以上に難しくちょっと力を入れ過ぎてしまった非は俺にあるからな。
12kmは確かに広過ぎる気もしないではないし・・・。
■■■
気の早い連中から伝わった情報で普段から入場者の多いマッシモへやって来る人数が日増しに増えて居るらしい。
その為宿の部屋の数が足りず、使って無い竜車をキャンピングカーの様に寝床にしている奴が場外の門の付近に出始めたらしい。
そんな現状に追われる様で焦るのだが、だからと言ってペースが上がる訳で無いのでしょうがない。
多分現状で一番精神的に圧迫を受けているのはジェシカと商人ギルドの2人だろう。
下手にその場外の奴らがそこに住み着いてしまうとスラム化しそうな予感がしてならないのだ。
だから早めに仮設の宿等を建てられる様にしようと都市設計を急いでいるらしい。
なので区画さえ決定してしまえば仮設の宿を建設しても邪魔にはならないからな・・・。
それにこの先職人や作業員も大量に必要となるので、それらの人材を各地から呼ばねばならず、仮設でも何でも宿舎的な物は相当数必要となるのだ。
この城壁工事を請け負って非常に良かったと感じるのは遠隔地での魔法発動のコツを掴んだ事や最近では魔力の枯渇状況を殆ど作れなくなっていて困っていたのだが、枯渇までは行かないにしても日々もの凄い魔力の増減を繰り返す事が非常に良い刺激となって居るy様で、それなりの効果を得ているのだ。
例を挙げると、一度に一気に大量の魔力を込めて魔法を発動するので、今までよりも魔力の通り道が太くなったのか、大量魔力の通りが非常に良くなったのだ。魔力圧損や抵抗が減ったと言えば判り易いだろうか?
自分で言うのも烏滸がましいが、魔力操作がもう一段上手くなった事だ。
更に追加すると、前にも言った様に使った分の魔力の回復が以前よりも格段に早くなった事だろうか。
今の俺なら、
慣れとは素晴らしい事で、日々の城壁建築を経て習熟した俺の土魔法は当初は1回の魔法発動で5mの城壁を作っていたのが、今では倍の10mを建築している。
なので、建築ペースがかなり上がって居る。
一応、週1日はお休みの日を設けているが、最近仕事ばかりでつまらないので、気晴らしを兼ねてアリーシアとお出かけしようと思っているのだが、以前にピクニックに行った花園ぐらいしか知らないので悩んで居たりする。
流石に帝国に連れて行くのはリスクが高過ぎるので却下だが、前回の定期訪問時にタイラー君から帝国に『温泉』が在ると聞いて俺の
今度一回温泉を偵察して安全そうなら、アリーシアと一緒に行こうかな・・・。
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