第137話 マッシモ拡張計画 その1

呼び出しの2日後から容赦なく『俺の』城壁工事が始まった。

ここで何故俺のと言う単語になったかと言うと、俺単身で作業員が俺だけであるからだ。



どうやらジェシカが気を効かせてマッシモ様に提案してくれた様なのだが、良く言えば厚い信頼の証? でも悪く言えば丸投げって言う・・・ね!?


まあ、ジェシカの思惑としてはあの王宮の庭園でザッと作ったドームと大理石張りの浴室のレベルの城壁を作って貰いたいらしい。


そして俺が遺憾なく力を発揮出来る様にと『人払い』状態を作ってくれたと言う事であった。



確かに俺に取ってみれば余計な人目が無い方が好都合なのは間違い無く。 素直にそのジェシカの用意したお膳立てに乗っかる事にしたのであった。


新しい城壁は最低でも直径3kmの位置に広げたいとの事であるが・・・正確な測量の技術等この世界にある訳も無く、それもひっ包めての丸投げ、いや委託らしい。


別に広い分には直径4kmでも5kmでも広くなる分には全く問題ないらしいが、広くなった分だけ余計に城壁を作らないといけない総延長が伸びるので、マッシモ様としては俺の魔法に頼る事になる為に微妙に遠慮しているらしい。


まあ、どうせ作るなら、先々余裕で使える面積にすべきであるのは明白である。


ちなみにジェシカに聞いたところ、王都の城壁は直径約10kmくらいあるとか。


そう聞いてしまうと、思わずムクムクと悪戯心が持ち上がってしまうのは仕方の無い事だろう・・・。


そして、着工した俺が最初にやったのは、現状のマッシモの中心地であるマッシモ様の屋敷の上空にフォース・フィールドの足場を出して陣取り、魔法でグルッと円状に魔法を発動し、目印となる真っ白い石を置いた。


欲張って余りにも遠い場所に遠隔で魔法を発動した為に1回でかなりの魔力を食われてしまったが、これが設計図みたいな物なので無茶を承知で頑張ってみた。


一旦休憩を入れて、再度同じ位置に2回目の目印の真っ白い石を置く。


これを10回繰り返した所で昼休憩に入ったのであった。


不敬にもマッシモ邸の上空でアリーシア特製の愛妻弁当を堪能した後、更に15回程午前中と同じ様に目印の白い石を置いたのであった。


これで、地面への墨入れではないが、ナスカの地上絵の様に上空から見てもハッキリと判る城壁の建設位置がキッチリと判る様になった。


明日からはこの円周上に本番の城壁を築いて廻れば良い筈だ。


でも幾ら頑丈で優れた身体能力を持つこの身体でも、この円周上を日々城壁を築きながら歩いて廻る事になるのは少々気が滅入る。円周って2πRだっけ? と頭で家さんしながらウンザリする俺。


いや!請けたからには俺とアリーシア子共だけでなく、その子孫の時代まで誇れる城壁を作って見せようでは無いか!と自分で自分に言い聞かせるのであった。


翌日から目印の白い石の所までウィングスーツで滑空してショートカットして誰も居ない荒野の白い石の上に着地したのであった。現在のこの白い目印の石垣は約50cmぐらいの高さである。


一応、城壁の高さは現状の城壁と同じ高さにして欲しいと言われているので、この50cmを15mぐらいに上に伸ばす必要がある。


さあ、始めよう。魔力を練ってツルツルで超硬い白っぽい大理石の様な石をイメージしつつ厚みを持たせた15mの城壁を作って行く。 作った本人が言うのもなんだけど、今のマッシモの古い城壁が見窄らしく感じてしまう立派な城壁が5m程出来上がった。


1回の発動で効率的に作れるのは今の所5mぐらいみたいである。まあ円周が判っているので5mで割れば後何回魔法を発動すれば良いか判るのだけど、気が遠くなりそうな回数を知る事で逆にモチベーションが下がりそうなので止めて置いた。



当初危惧していたよりも魔力の消費は少なくて、移動しつつ城壁を作成、そして移動を繰り返していると、日々の鍛錬のお陰で今では早くなった意外に魔力の自然回復速度が使った分の魔力を殆ど回復してくれる。


お陰で魔力切れで止まる事無く建築は続く。 幾ら才能のある者でもここまでの連続発動は難しいのではないだろうか? 流石にこの魔力の回復速度は我ながらチートだと思ってしまうのであった。



朝から夕方の4時半まで城壁建築を行った結果、驚く事に2km近くの城壁が完成したのだった。休憩時間以外連続で歩きながら魔法を発動し続けた俺も大概だが、こんな単調な作業を我ながら良く頑張ったと褒めてやりたい。


明日以降もこのペースで作れるのであればかなり工期を短縮出来るかも知れないな・・・。



何時もの時間に自宅に戻ると、ジェシカとラフティが夕食を食べにではなく、工事の進捗具合を確認って口実で家で待ち構えて居てアリーシアと一緒に出迎えてくれたのであった。


「師匠、お帰りなさい! お疲れ様でした。工事方、如何ですか?」と聞いて来るジェシカに俺が「まあまあ順調だよ。良かったらジェシカも一緒に明日歩きながら魔法を発動する練習すくるか? 凄く訓練になるぞ!」と俺が割と真顔で誘うと「渡しが余計な物を間に挟むと言うか作ってしまうとそこだけ強度も落ちて崩壊の原因になるので、ご遠慮致しますわ。」と正論で断られてしまったのだった。


「そうなんだよなぁ~。他の件ならいざ知らず、本件ではそれが正解だな。今日1日で約2kmが出来た感じだ。 まあ、1周グルッと出来た後に城壁の上の張り出した手摺と言うか遮蔽物的な物もグルッと1周作って外部からの階段とかも作らなきゃいけないけど、一定間隔で物見櫓でなくて物見塔を建てる予定もあるし、先は長いな。」と俺が状況説明をしたのであった。


「もう2kmですか! 流石はトージ師匠!」と空かさず俺を賞賛する事を忘れ無いジェシカだが、ジェシカはジェシカで、この先教育機関の建物や運営の方法も含め色々とヤル事が多いのだ。


まあ城壁が終わった後なら建物の方は多少手伝うのは吝かでは無いけれど、運営方法や入学の基準等に関しては関わる気が余り無い。


まあ俺が言うべき事は先日のマッシモ様との会合の場で「貴族優先で入学させると、同じ利権に執着する選民意識の高い連中を作る事になるからそこら辺も気を付けないと、次は無いからね?」と俺が釘を刺して置いたので大丈夫であろう。


そんな訳で、ジェシカは工事を俺に押しつけて自分だけ楽をして居る訳ではないのである。


結局、マッシモは今の食の街から、魔法の学園都市へと変貌の予定なのである。ジェシカの今後の采配によるが、学園のなかでは身分を問わないと言う治外法権的な感じになる筈だ。


だからある意味一番重責が乗っかっていて面倒臭い仕事を担っているのはるのはジェシカなのかも知れないな・・・。


まあ、そう考えると、王家の者の責務とは言っても可哀想だし息抜きで夕食を食べに来るくらいのサービスは良しとしてやりたくなる。


それに、兄弟弟子である子供達もジェシカとラフティに懐いているしな・・・。


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