第133話 魔王のケツ持ち

それからもちょいちょい魔王になって帝国を訪れ、タイラー君から報告を聞いて新たな指示を出したり、褒美として奪ったお金や備蓄食料等を返却し、タイラー君の方針(=俺の方針)に異を唱え妨害したり反抗的な態度の貴族などを粛正したりして陰ながらタイラー君の政権運営を補助していたのだった。



俺の方針は至ってシンプルで防衛以外で他国に攻め込むな! さらに種別差別や身分制度、そして奴隷制度の見直し。


あとこれも優先事項の1つだが、王国に謝罪して仲良くしとけ!って事。まあ、王国だけで無く、基本的にはその他の隣国も同様に『良き隣人たれ』って方針だ。


だが、王国に関しては俺の口利きで多少は無理が効くだろうから何とか丸く収まるとしても、その他の国々が「これまでゴメンね!これからは普通に仲良くしようぜ!」が通用する程に甘くも無く、『謝罪』=『弱さ』であり『付け入る隙』と捉える厄介な国が多いのが実情だろう。


なので、相容れない国とまで無理に仲良くする必要は無い。 ある程度の距離を保った付き合いに留めれば良いだろう。


最悪の場合、俺が出張る事も視野に入れて別途ご相談って事になっている。



そう聞くと、なんかケツ持ちのヤ○○の的な感じだが、帝国国内に『魔王降臨』の話を積極的に噂として流す事で他国の間者経由で周辺国家にもケツ持ちの『魔王』による抑止力効果が出る様に狙ってみた。



最初の2週間は割と頻繁に顔を出していたが、タイラー君に俺の目指す方向性への理解が深まった事で帝国訪問の頻度を落として行った。


既に帝国から王国の方に正式な謝罪と国交正常化を目的とした使節団が出発しており、まだまだ先の話となるものの王都への到着が待ち遠しい状態となっている。



■■■


結婚後、何も帝国だけにかまけていた訳で無く、アリーシアとの時間も当然だが、ミンサーの試作段階も成功して、鍛冶屋のおやっさんとで本格的な量産に入っている、


アリーシアの方は焼肉屋の店舗の改装工事を主動して貰っている。


現状、肉のストックは問題無いのだが、開店する上での最大の問題は店員。そう人材が足りないのだ。


洗い物の問題は以前にアンテナショップの方でも使うので作った食洗機の魔動具があるし、室内の焼肉臭に関しては換気扇もあるので室内の清掃は、食洗機と同じウォッシュ&浄化クリーンを室内に発動する魔動具も作ったので簡素化出来る。




商人ギルドの2人に相談した結果、商人ギルド経由で公募する事となったのだが、今回初めてオオサワ商会が公募すると言う事もあって、恐ろしい数の募集が集まってしまい、面接前のペーパー審査で大幅に審査で絞り込んで15名を直に会って面接する事となった。


尤もこの俺に人を見極める様な力は無く、結局アリーシアやロバートさん達にも面接に立ち会って貰う事にしたのであった・・・・。


まったく・・・魔王ともあろう者が恥ずかしい限りである



今回の募集では特に男女のどちらかを雇いたいと言う要望は無いので良い人が居れば男女関係無く採用して行きたいと思っている。


商人ギルドの会議室に面接の受験者の男性3名、女性12名が入って来た。


男性3名はまずは第一関門通過で良いだろう。しかし12名の女性の内1名はこの時点で明らかに不合格である。


「ああ、面接を始める前に・・・まず、この面接は今度新しく当方で開店する『飲食店』の従業員の募集と言う事はちゃんと皆さんご理解頂けてますでしょうか?」と先陣を切っておれが口火を切ると、全員から「「はい。」」と言う返事が返って来た。

「じゃあ皆さん、『飲食店』の従業員の募集と言う主旨はご理解頂けて居居るのですね? では、右から2番目の女性の貴方、不採用なので本日はお帰り下さい。」と言って香水の匂いを撒き散らしていた女性を早々に退出させたのであった。


「一応、理由を言って置きますが、飲食業でその様に食事に悪影響を及ぼす様な香水を付けて働くとか非常識です。そう言う理由なので、お引き取りお願い致します。」と俺が言うと何か食い下がろうと口を拓き掛けて居たのを遮る様に「あ、そうそう、飲食店でその爪の長さも不衛生で却下の理由の一つなんで。香水を働く日だけ付けなければ良いって言うレベルの話では無いです。

飲食店の面接にその状態で行こうと思った常識が最大の不採用の理由なので。 お疲れ様でした。」と食い下がる事を一切許さずにショットアウトしたのであった。


そして面接は進み、甘ったるい喋り方が理由で更に女性1名を不採用にして、男性3名、女性10名が正式に採用となったのだった。


男性の中の最年長の20歳のジェキンスさんを一応現時点でのこの中のリーダーとしてこの先店長候補として色々と覚えて行って貰う事とした。


別に、俺が孤児院出身者だけしか雇わないなんて逆差別をするつもりもなくて、孤児院出身だからと言う色眼鏡で不採用にしたりしないだけである。 だから別一般の家庭に育った人でも全く問題は無いのだ。


ただ孤児院で育った子らって、助け合う協調性とか連帯意識、それにハングリー精神が凄いから、逆に金の卵だったりするんだよね。


だからって、ブラックな労働環境にしたり弱みに付け込んだりしないから安心して欲しい。


そんな訳で、採用した全員を紹介すると、


男性陣は、

ジェキンス(20歳)、カッツ(18歳)、エクラ(17歳)って感じで、余り俺と年齢差が無いので感覚的には同世代の友達に接している様な錯覚に陥ってしまいそうだが、そこは逆にキッチリ線引きしておかないとだね!


そして女性陣は、非常に若くて可愛い子が多い。13歳~上は17歳まででその殆どがソフィアの同世代と言う感じだ。

ラズ(16歳)、エムリア(17歳)、アルジェ(16歳)、ケイト(15歳)、アリス(17歳)、リリー(13歳)・・・・以下省略~。


一応一番シッカリしていそうなイメージのエムリアさんに女性陣の纏め役をやって貰う事としたのだった。



男性陣は自宅からの通いが多いので従業員宿舎は不要らしいが、女性陣は全員が従業員宿舎への入居を希望した。


まあ、理由は家の従業員宿舎には風呂が完備されていると言うのは何処から漏れたのか、公然の秘密となっていて、下手な宿や下宿に各自で借りて住むよりも安全で美味しい食事まで付く夢の様な独身寮と言う専らの評判だったりするからであろう。



現状では宿舎の部屋数は問題無いが、あと2年以内にはもっと広い土地へ移転するか、この近所を地上げして敷地の拡張が必要になりそうだな・・・。



子供達・・・男の子のお陰で男性の俺が肩身の狭い思いをしなくても良くなって、現在の新築した自宅では、男風呂も完備したので、やっと男のおれにも我が家での市民権を得た感じだったのだが、ここに来て急激に我が家の敷地内の男女比率が男性劣勢になってしまった。


先日ちゃんと大々的に結婚したし対外的にここを『ハーレム』と邪推したりする奴は居ないとは思うが、若い子(女性)が多くなると俺の方が気を遣ってしまって若干息苦しく感じてしまう・・・。




まあ、そんな感じで焼肉屋の方の開店準備と従業員指導や教育ははかなりの部分をアリーシアや先輩従業員である他の子供達にもお願いして居るのが現状である。


理由は俺は俺で帝国での『魔王』役と王都での『御使い』役で頼まれてもない落とし処の仲介役をせねばならないからである。


俺が介入する理由の1つは俺の住む国やマッシモの安定や安泰を目的なのだけど、半端に王都のテロの防衛に関わってしまって助けた『恩』?があるので普通に考えて国王陛下も俺からの要望を素気なく袖にする事は出来ないだろう・・・。と思って居る。


特にどちらの片を持つって事は無いが、ソコソコで仲良くして置け!って事だ。


現実問題として、現在王国側に帝国を迎え撃つ戦力も何も無い。 あの時俺が国境であのちょび髭オヤジ達の軍勢をスルーしていたら、今頃国境線が変わっていた事だろうし、独自の報告書も添えてラグナ辺境伯からも王宮に早竜を出して居る筈なので、


そろそろ、俺が捕捉する頃合いの筈なのだ。


そんな訳で対帝国の経緯や現在の状況と俺の『強い』『要望』を手紙に認めて王城の門番へ渡しに行く予定だったりする。


本当なら、ケチの付いたアリーシアとの王都デートのやり直しをしたい所だったりするのだが、俺が色々とアリーシアにお願いしてしまっているので、アリーシアは大忙しだったりする。


近々に落ち着いたら、アリーシアとお出かけしよう! 新婚旅行もまだだし・・・。

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