第131話 新しいオオサワ家と 正しい帝国の詰め方

結婚初夜の嬉し恥ずかしい話は内緒だよ。


まあ『あんな事』があった訳だからそう言う事に対する嫌悪感や拒絶反応とかがあるかも知れないし、無理強いせずに気長に行こうって決めてたんだけど、そんな俺の機持ちを察してか、逆に積極的に俺にひっついて来て、

逆にマーキングするかの如く非常に満足のいく素晴らしい夜を過ごしたよ。


俺は本当に幸せだ! 願わくばアリーシアにも同じぐらい? いや俺以上の幸せを感じて欲しいと切に願う。

こうして漸くスタートした俺とアリーシアのオオサワ家が始まった。

考えてみれば、一緒に住み始めて1年以上経つのに今更スタートって待たせ過ぎだよな? 申し訳無い・・・。



さて、気持ちの上での存在感がより親密な物に変わっただけで、俺達の生活その物が変わる訳でもなく、我が家は至って平和で平常運転だ。




先日は姉であるソリアが嫁ぎ、今度は俺とアリーシアが結婚してしまい、、ある意味1人取り残された感じになったソフィアの事をちょっと心配して居たのだが、その心配は杞憂に終わった様で何時もと変わらぬ様子のソフィアにホッと胸を撫で下ろしたのだった。



こうして、一応我が家の一大イベントは終わったので、次は帝国にケジメだを取りに行かねばな!


それが終わってスッキリしたら、結婚披露パーティーで大好評だった焼肉屋開店を早急に進めたいし、それに合わせてダンジョンアタックの再開もしないといけないな。


まあこれらの中で一番面倒であるが色々配慮する必要があるのが帝国の件だ。


下手に素顔を出すよりも仮面を被った魔王ムーブで行った方が得策な気がする。


震え上がらせるぐらいの方が良いよな? 何時何時何処に現れ何をしでかすか判らない絶対的な存在、彼の意に反する事をすれば、どんな制裁が待ち受けて居るか判らない。次は何を失う事になるか?って精神的圧迫を掛けてやればちっとはまともになるんじゃないかな?


恐怖で支配してた奴らが逆に恐怖によって制限を受ける・・・シャレが効いてて良いんじゃないかな?


それに何処の誰とも判らぬ神出鬼没のミスターXが相手では手の打ち様が無いだろうし、特定されなければ、身内への報告も周囲への強迫もあり得ない。


そうと決まれば、早速適当な変装アイテムを仕入れなきゃ!


アリーシアにはここ1週間程俺が何処で何をやっていたのかを大体話してあるんだ。

勿論何故俺がそんな事をするに至ったかも説明したけど、こちらから説明するまでも無く最初から理解してくれていた。


そりゃあ、あの日一緒に王都であの現場を見ているからね。


王国の防衛力がガタ落ちになったのは魔法使いの集団が全滅した事で一目瞭然だったし。


結局あの日以降、王国一の魔法の使い手はジェシカとラフティになっちゃったからね。


そんな訳で俺が王国関係無い善意の第三者?を装って・・・ まあ全然善意でも無いのだけどな!?


帝国を脅すと言う流れにする予定だ。


あの王都の乱で『偶々ローデル王国へ観光で懇意にしていた知人の友人の隣人が亡くなった』と言うよくある理由にする。


さて、言い掛かりの理由は決まったし、後は衣装やお面である。市場で民芸品みたいなのを見繕う感じで良いかって思っていたのだが、アリーシアに下手な民芸品にすると特定される可能性があると言われて、納得し、自分で能面っぽいのを自作する事にしたのだった。


白い能面って夜視たら絶対怖いよね!


俺は堅くて軽い木のブロックから、無属性魔法のリューターでギュイーン♪と言う歯医者で歯を意削っている時の様な音をたてながら能面を削り出して行く。


目の部分は本物の能面の様に点では無く、視界を確保する為に割りと大きめのスリットにして本物能面よりも大幅に視界を良くした。


そして能面と同様に真っ白に塗料を塗って唇だけ赤色を入れた。自分で作っておきながら、実に不気味である。


夜トイレに行こうと暗い廊下を歩いていて、曲がり角から、こんなお面付けた奴がヌッと出て来たら俺でも間違いなくチビってしまうな。



序でに衣装の方もインパクトある物にしようと言う事で、現在赤のローブが俺のトレードマークになっているが、これを以前にダンジョンで討伐して入手したブラック・ワイバーンの真っ黒な皮で作る事にした。


勿論ローブだけでなく、ズボンも同じブラック・ワイバーンの皮で作る事にした。


アリーシアが特急で作ってくれる様に手を回してくれたお陰で5日後にはローブもズボンも出来上がるらしい。


その間は、子共の学芸会では無いけど、それっぽい喋り方や立ち振る舞い、登場の仕方や去り方等、俺よりもアリーシアの方が面白がってノリノリで演技指導してくれたのであった。


実際のところ、まるで『中二病』の様な喋り方や台詞で変な汗が背中をツツーっと流れて行く。



もし、元日本人が見たら、確実に失笑されるのは間違い無い。



だからと言って俺の為に必死で演技指導やキャラ作りを考えてくれるアリーシアのプランを断る事も出来ないので、俺はこの羞恥プレーの様な特訓?を頑張った。


結局、俺がシャレで言って居た『魔王』の響きがインパクト的に良かった様で、そのまま魔王が採用となってしまったのだった・・・。


でもアリーシア曰く、魔物の王の『魔王』では無く、魔法の王の意味での『魔王』だそうだ。


そして最初のキメ台詞の「我は『魔王』貴様ら帝国の手勢がローデル王国の王都でテロ行為を行った事で偶々同国を訪れていた我が友ロシナンテと我が名付け親となっていたその友の子を失った者である。」


「もう判っておろう? お前らの最大の失敗は魔王の友、その親子をテロに巻き込んだ事である。その代償の1つとして、お前らのローデル王国攻撃部隊を嵐で撃退し、或いはチンケな砦の城壁を砂塵に変えて、更にここ帝都の城壁も皇城の城壁も砂塵に変える準備が終わった。

貴様らの所業許すまじである。 既に気付いておるだろう? 我は賠償の一部として、貴様らの金銭も宝物も食事も全て取り上げた。俺に逆らうと言うのなら、次は寝床を取り上げ、皇帝の血筋の者共を根絶やしにするまでよ! ガハハハハ!」とオーバーリアクション気味に無駄な身振り手振りのアクションを入れてシュタってキメポーズをする俺。


これ、何て罰ゲームなんでしょうか?



衣装が完成するまでの日々の長い事長い事・・・。


確かに、キャラ作りをして普段の俺と懸け離れれば離れる程特定され難いって言うのは良く判るのだがな。

しかし、演技とは言えこのキャラは本当に厳しい・・・。


ちなみに師匠は店にも行かず、俺とアリーシアのこの変な特訓の様子をお茶を飲みながらニマニマと観劇するかの様に見て居るのだった。


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