第130話 女神様へのご報告とお強請り

さて、今日が何の日か知ってるかい?


俺の浮かれた口調で判るかも知れないが、今日は俺とアリーシアの結婚パーティーの日である。


行き掛かり上とは言え王国にちょっかいを掛けて来ていた帝国にはこの先数十年ぐらい立ち直れない打撃を与えてやったので今日と言う人生の節目を爽快な気分で迎える事が出来た。


一口に人生の節目と言っても、2度に渡る人生の節目だけに感無量である。


願わくば、亡くなった両親に胸を張って美人の嫁さんを紹介したかったってのはあるな。


それはアリーシアも同じ思いかもな。 亡くなったお義父さん娘さんは必ず俺が幸せに致します! そしてオヤジ、お袋! 俺こっちの世界で幸せになるわ!


朝から全員バタバタして居たが、まずは神殿で女神様へのご報告参拝をしたいと言う要望を計画の段階で伝えて居たので、ロバートさん達が迎えの竜車を手配してくれていて、その竜車の到着をマッシュが伝えに来てくれた。


俺もアリーシアは当然だけど、ソフィアも含み子供達も全員家の者達は今日の為に一張羅を新調している。 全員何処に出しても恥ずかしく無い程の仕上がりっぷりである。



前回のソリアの時で知ったがこの世界でウェディングドレスは無いのだがかなり可憐な真っ白のワンピース型の衣装をアリーシアに作って着て貰っている。



ブーケを手に持ったその姿は何処の女優かモデルか?と言うぐらいに美しく思わず玄関を出る前に暫し見つめてしまい、恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じた。


慌てて誤魔化す様に・・・「アリーシア、とても綺麗だよ! 最高に似合ってる!」と緊張の余りモロ本音で褒めたのであった。


アリーシアは頬を染めながら、「ありがとうございます、トージさんもカッコ良いですよ・・・。」と恥ずかし気に返してくれたのであった。


そんな一向に玄関から先に進まない俺達2人に業を煮やしたソフィアが、「はいはい、このまま何時までもそこに居ると明日になっちゃいますのでまずは神殿に移動しましょう。女神様をお待たせすると拙いですよ!」と進行を促してくれたのであった。


気付けば子供達や、孤児院の卒園生も含め我が家も大人数になったので、竜車2台が門の所でスタンバイして居る。


御者のオジサンにお礼を言いつつ竜舎に乗り込み、我が家を後にしたのであった。



神殿に到着すると、今日は司祭様が出迎えてくれて神殿内の勝手知ったる祭壇前まで案内してくれたのであった。


司祭様にお礼を言ってから何時もの様に、片膝を床に着いてまずはナンシー様に呼び掛ける。

「おお、トージよ!今回はお主のお陰で素晴らしい成績をキープしておるぞ! おや、横の女子はなんじゃ?お主もヤルのぉ~♪ なんじゃ、何千年も独り身の妾に見せつけに来たのかの?」と後半は僻みっぽい口調で言いやがるナンシー様。


「違いますよ! 俺この度このアリーシアと結婚する事になったので、ご挨拶に連れて来たんですよ!  ナンシー様も今は1人だとしても女神に本採用になれば引く手数多なんじゃないですか? 」と望みはあるだろう?と話の矛先を明るい方へ振ると、


「おお! そうじゃ! そうじゃったわ!妾は今まで受験に賭けておったからのぉ。(人生の女神版)これからじゃ!」と鼻息荒く宣言していた。


しかし、本当にこんな調子のナンシー様が本式の女神になったら、その世界大変そうだなぁ~とシミジミ思うのであった。


「トージよ! 何はともあれじゃ、結婚おめでとうじゃ! 幸せに暮らし、更なる高得点に励むのじゃ!」と言ってナンシー様との接続が切れたのであった。


そして何時もの様に本命の英知の女神マルーシャ様がカットインして来たのであった。


「トージーーー!最近貢ぎ物が少ないのじゃーー! 先日の甘い奴の追加と焼肉も欲しいのじゃ! おっと、お主結婚するのじゃな? そのな女子アリーシアか。なかなかの美人さんじゃの!」と言う何時も通り食い気全開のマルーシャ様。


「マルーシャ様、また今度新作も含め献上に上がります。あと、今回の結婚に際してお願いあるんですが・・・」とマルーシャ様にスイーツと引き換えにお強請りする俺。


「何じゃ・・・つまりアリーシアの亡くなった両親とお主の両親に2人が結婚する事を伝え2人の姿を見せてやれば、あのフンワリスポンジのショートケーキなる物や新作のスィーツも妾の物になるんじゃな? お主の両親は異世界故にちょっと管轄違いでややこしいのじゃが、何とかしてみようぞ!任せておけ!

その代わりと言ってはなんじゃが・・・判って居るじゃろ? たのんだぞ! ああ、序でに幸せになるんじゃぞ!」と言って、代償にスイーツをお強請りされてしまったのだった。



女神としてこれで良いのか?と首を傾げたくなるが、『序で』ではあるが、結婚と幸せを祈ってくれたので。感謝を告げてから、接続が切れたのであった。


元に戻って目を開けるとポカンとして俺を覗き込んでいるいるアリーシアと、驚いた顔で俺を見て居る司祭様が居たのだった。


何でも、俺が女神様と会談していた後半の最後辺りで俺とアリーシアを照らす神々しい光が神殿の天井を突き抜け2人を包む様に照らしていたらしい。


長年の司祭人生に於いて初めての事らしく、司祭様が異常に興奮していたのだった。


多分、最後の『序で』の辺りの『幸せになるんじゃぞ!』って所で光に包まれたのではないかと推測。


一応、司祭様には騒ぎにはしないで下さいとお願いし、神殿を出て、先に子供らは会場の準備で前乗りしているので1台竜車が減っているのだが、


司祭様やシスター、そして孤児院の子供達もパーティーに招待しているので来た時よりも乗り合い竜車の様大人数用の竜車が2台増えているので差し引きで1台増えて居る。


俺とアリーシアが竜車に乗り込んで、まっていると、孤児院からキビキビとした足取りで子供らが出て来て、後続の2台の竜車に分乗した。


子供達は美味しい物が沢山食べられると聞いて朝からハイテンションではしゃいでるが、無秩序と言う感じでは無く、ちゃんと上の子が下の子を良く言い聞かせて節度を保って居る様だった。。


まあ、男の子は食い気だけだが、女の子はアリーシアの素敵な衣装と姿にウットリとした熱っぽい表情で見て居る。


やはり、小さくても女性は女性なんだな・・・とそんな子供らの姿を見て思わず微笑む俺。


みんなを乗せた竜車は号令と共に一列となって会場である中央広場を目指して出発した。


途中メイン・ストリートを通過する際に何故か、俺とアリーシアがパレードして居る様な感じになって、道端の観衆から盛大な拍手と結婚を祝う声援が聞こえて来て恥ずかしくもあり嬉しくもあった。


俺のSランク昇級時のパレード以上の盛り上がり様だった。


■■■


嬉し恥ずかしの道中引き廻しも終わって、会場に到着すると、会場に集まった全員が拍手と歓声で迎えてくれた。


一足先に会場入りした子供らが料理~飲み物までの準備を来賓客と一緒にやってくれていて、俺とアリーシアは決められている所謂『ひな壇』に座る様に案内されたが、先に全員に向かってお礼のスピーチをさせて貰う事にした。


「皆様!本日は私とアリーシアの結婚のご報告をさせて頂きます。本日が迎えられたのは偏に皆様の温かい御声援とご助力のお陰です。 この日の為に家の子達が協力しあって沢山の料理を作ってくれました。みんな、本当にありがとう! 今日お越し頂いた皆さん、ありがとうございます! そしてこれからも宜しくお願い致します!

みんなで、マッシモで幸せに暮らしましょう!」と言って締め括り頭を下げてお辞儀したのであった。


すると会場入りした時よりも更に盛大な拍手に包まれてた。


続いて主賓の1人であるラルゴさんのお祝いのスピーチでは出会いとなった道中の話(但しその中でアリーシアの事には触れなかった)から始まり、王都行きの件等色々美味しい食事の事を交えてお祝いを言ってくれて、最後に乾杯の音頭を取って締め括ってくれたのであった。


乾杯の後、食事が始まると、会場の彼方此方で美味しいと言う声や蕩ける様な声などが多く聞こえていたが、ビュッフェ型式で並べられた料理を各人が好きな様に取って来て食べるのだが、


中でもミノタウロスの肉を使った焼肉のコーナーは大盛況でなかなか壮絶な肉の取り合いが起こっていたのであった。


やはり、焼肉はこの世界でも大人気である。


早くも焼肉屋をヤルと言う話が出回っていてしかも使っている肉が稀少なミノタウロスの肉と言う事でかなり盛り上がって居た。


勿論、この出回った噂の元は商人ギルドの信者2人の仕業である。


その証拠にロバートさんもルミーナ嬢も凄く悪い笑みを浮かべて居たのだった。




こうして、俺達の結婚披露パーティーは大成功に終わり、それ以降、何故か結婚時には神殿で女神様に報告の祈りを捧げるのが定番となったのであった。




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