第127話 報復? いや躾けだよ! その3

空を滑空し始めて15分程で30分以上前に軍全体の運命を背負って出された早竜?の伝令に追い付いてしまった。



普通ならこの伝令を妨害したり殺したりするんだろうけど、ここでは何もしないよ! 彼らは無事に辿り着いて貰わないといけないからな。


最前線の攪乱は先程の嫌がらせでかなり効いているだろう。


それより、この伝令が辿り着けば後方の帝国内にに攪乱が広がって、色々なリソースが無駄に消費するのだ。


よくスナイパーが敵兵を死なない程度に撃ってそいつを餌に他の敵兵を呼び寄せたり、負傷兵を同伴する事で疲弊を招く様にしたりするのと

発想の着眼点は似た様な物だ。



徐々に広がる嫌がらせに何処まで耐えてくれるかなぁ~♪と鼻歌交じりで上機嫌の俺。


やっぱ、俺って性格悪いよな? アリーシアに嫌われない様にしないと!



悪い意味の方の『人の嫌がる事を進んでヤル』って奴だな。


まあ、この作戦の場合、性格の悪い事をヤレばヤル程敵が疲弊し繊維喪失するのだがな。



そんな訳で伝令にちょっかいは出さず上空をそのまま通過した。


商人ギルドで得た情報通りであれば、あの早竜が向かう先は一番近い砦のその先にあるトラバニアと言う都市だろう。


トランバニアはトランバニア侯爵と言う貴族の領都らしい。


一応、対ローデル王国の最前線の補給基地であり防衛の要所でもある。



ラグナ辺境伯領都の様な城塞都市らしい。


城塞都市は作るのもメンテナンスも大変である。籠城して背後に敵を抜かせない為の防波堤でもあるのだが、その頼みの綱である城塞の城壁が破損したり不具合が出たとしたらどうだろう?


そりゃあ、目の色を変えて修繕するよな?


『蟻の穴から堤防が崩れる』的な事になっちゃったら事だし。


まあ簡単な亀裂や穴なら魔法使いがチョチョイと修繕しちゃうかもしれないけど、どうなんだろうな?帝国の魔法使いのレベルって。


見せて貰おうか・・・帝国の魔法使いの力を!



早竜を抜き去って10分もすると大きな城塞都市が見えて来た。


あれがトラバニアであろう。



光学迷彩ステルス・シールドを使って居る俺を感知する者も居らず、本当に遣りたい放題である。


俺は城壁に取り憑いて、フォース・フィールドの足場を出して先程泥濘に変えたのとはやや違うが、脆い泥岩の様に指でホジホジしたらポロポロ砂になって穴が開く様な脆い石にかなり広範囲に変質させて行く。


これも結構魔力を食うな・・・。


城壁の上は通路になっていて、長い槍を持った警備の兵が定期的に行き来している。


うん、この通路も脆い素材に変えちゃおう。


怪我に気を付けてね!

ああ、そんなに乱暴に槍の石突きを通路の石に当てちゃあ、ヤバイって!

と俺が心の中で警告を発した直後、「ひぇ?」って、間抜けな声を出して巡回警備していた不運な衛兵が1人崩れた城壁の一部と一緒に場内の方へと落ちて行ったのだった。


おお、お可愛そうに・・・。


そして俺は更に脆弱な部分を増やして行ってある所では態と判り易い亀裂を入れたり、破壊工作を楽しんだ・・・いや、頑張った!



ある程度城壁をグズグズの物に変えた後、上空からソッと観察していたが、もう蜂の巣を突いた様な大騒ぎになって居て、その波紋はドンドンと広がっていた。


もうね、トラバニアの住民も結構動揺してて、オロオロと避難すべきか?とか真剣に悩んでらっしゃるし、後もう一息背中を押してやる必要があるだろうな。って思っていたら、そんな絶好のタイミングであの伝令がトラバニアに漸く到着し、人々の不安の火に油を景気良くバラ撒いて、炎上した。



軍が市場の食料を抑えようとして居るが、パニック状態の市民が買い付け騒ぎを起こしており、早い者達は荷物を纏めて我先にと竜車に乗ってトラバニアを出て行こうとしていた。


もうこうなると、領軍の方で統制を取ろうとしても民心の不安は爆発してて制御不能であった。



トラバニア市民の皆さん、すまんな! 余り庶民に被害出したく無いのだけど、こっちは無差別テロで無念の死を遂げた親子も居るんでな・・・。 命があるだけマシと思って頂きたい。


と心の中で言い訳するのであった。


まあ何組かの竜車は既に出立したので良い感じに帝国内部にヤバイ噂が広がるだろう。と上空で誰にも聞こえない事を良い事に大笑いするのであった。


取りあえず、トラバニアはこれくらいで良いだろう。次だ、次!



俺は次の経由予定地に向かって飛び始めるのであった。



方向的には多分合っていると思う。


しかし、敵国の情報をよくぞ持ち帰った物だな。先駆者の商団に敬意を表したい。


お陰で短時間にかなりの攪乱工作を効率的に行えている。


多分俺の結婚パティーの頃には

最前線の悲惨な状況やトラバニアの防備が丸裸同然の事も、更には王都でのテロ大失敗と千人以上の兵士の全滅のニュースが追い付いて拡散されるだろう。


ボロボロのトラバニアで敵勢力の歯止めが効かないとなれば、今まで帝国内に国外の脅威は無縁と高を括って居た連中の平和の根底から崩れてしまう。

そうなれば国内の鎮圧に国力を注ぐので精一杯となって他国に攻め入る処ではなくなるだろう。


帝国は身分による上下関係や差別が激しいらしいから、どうなるかなぁ~。と心の中で思いつついやらしい笑いを漏らすのであった。



夕日に代わる頃、漸く5つの都市を越え、帝都まであともう一息と言う距離まで来ている・・・と思う。


ただ5つの都市を通過しただけではないよ!


移動時間と悪戯工作時間を含めトータル1時間で1つの都市へ嫌がらせを行って次へと進むのだ。


トラバニアと同じ様に城壁を欠陥品にした所もあるが、ある所では、領主の食料庫や武器庫、更には宝物庫に入って中身を空にしたり。

ありとあらゆるバリエーションでワンパターンにならない様に創意工夫して頑張ってみた。


4箇所目の子爵領の都市では物資だけでなく、領主の館で帝国の詳細地図をゲット出来たのはラッキーだった。


今までアバウトな情報頼みだったけど、帝国産の地図があるのは心強い。


おそらくだが、食料や武器庫の武器もそうだが、特に地図を盗まれたとは貴族と言う立場上、口外出来ないし、そもそも国家の最高機密情報でもある地図を盗まれたなんて万が一にも帝国側に知られたら、下手すると良くてお取り潰し。

最悪だと一族全員極刑だろう。


だからこそ、おいそれと帝国側に報告出来ず、皇帝側が各地の異変やその異変が徐々に帝都に接近して居る事に気付くのが遅れるだろう。



そして皇帝が気付いた時には・・・既に・・・ ふふふ。


まあ、俺としては最終的に帝都だけで終わらせるつもりは無いけどな!



さてと、本日の第一部はここらで終わりにして一旦帰って夕食後の夜中にあの最前線に戻って悪戯を追加したやろう。



 ◇◇◇◇


みんなと揃って夕食を頂き、今日の成果の話になって、軽く触り程度に話をしたら、ドン引きはされなかったけど苦笑いされてしまったのだった。




そして夕食後、一応風呂にも入ってサッパリしてから礼のちょび髭オヤジのテントに行くと流石に指揮官だけあって、残った食料を掻き集めたのだろうか、そこそこの夕食を取っていた。


この無神経さ、図太さ、凄いなって心底思うよ。他の兵は空腹でヘロヘロなのに、自分はシッカリ食うんだもんな。


一応、下っ端の兵士に代わって恨みを晴らしてやるべく、こっそり食ってる飯にお腹の調子が凄く悪くなると言う薬を混ぜておいた。

スープとワインだから味が濃いので気付かないだろうな。




このオッサンの寝床だけカラッと乾いて居るのは不公平なので、寝付いた後にコッソリ股の辺りのベッドにオシッコをよーく掛けておいた。


え?誰のとか無粋な事は聞かないでくれよ?



その後のこのちょび髭オヤジの動きをコッソリ観察して居たのだが非常に面白かった。


最初何とか隠匿仕様と無駄な抵抗をしていたが、そうこうしてる内に薬の効果でお腹からギュルゥ~♪って地獄の使者の様な音がしてテントから飛び出して草むらへと駆け込んでいたのであった。

可哀想に・・・。



どうやらこの軍には魔法を使える者は居無いみたいである。


これから果敢に王国へ攻め入ろうとする彼らの有り余った体力を消費して貰う為だけにに泥濘にした訳じゃない。


流石に面積が広大過ぎて2回に別けたのだが、本当にやりたかった完成形はこれから行う地形変更である。

ただ広範囲な泥濘だけじゃ眠れないとか火が使えないとかぐらいで捻りが無いじゃん?


本当にやりたかったのは蟻地獄じゃないけど、上がれない様な地形に変えたかったのだ。軽い逆円錐状の地形にしてズリズリと滑って貰いたいのだ。


極端に地形変動を短時間でやってしまうと露骨過ぎて軽快されるので、何日かに分けてコツコツやる予定である。


丁度あの腹痛を抱えたちょび髭オヤジのテントを中心として、陣地全体を中心位置で30cmぐらいジワジワと沈下させてみた。


空腹と寒さでそれどころじゃ無いのか、誰も気付いていない。 良い感じである。


それに気を良くした俺は、更に沈下させる事にして、中心部分で50cm程までさげてみた。

ここまで下げるとジワジワと水分がちょび髭オヤジのテント方面に集まって来てしまうのだが、腹痛でそれどころじゃないので恐らく当分気付かないだろうな。



実際のところ、単純に舞台全体が陣営全体の宿泊地を移動してしまえば簡単に回避出来る話なのだが、割と頑張って広範囲に泥濘に変えたので、全体的に泥濘だと勘違いしており移動しても無駄だと勘違いしてくれているのだ。


トップがバカだと下の者が苦労するよね。 可哀想に・・・。


そんな訳で、一応嫌がらせの第ニ段階も完了したので気分良く自宅の自室に帰ってクリーンを掛けてから、カラッと乾いたお日様の匂いのすいるシーツのベッドに横になって眠りに着くのであった。

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