第126話 報復? いや躾けだよ! その2
城門の衛兵にSランクのカードを見せるとハッと驚いた顔をされたが、その直後に嬉しそうな笑みで俺を恭しく通してくれた。
何だろう?何一つ騙して居ないのにこの言い知れぬ罪悪感。
いや、言うウマでも無くその理由は判って居るんだが、きっと一緒に戦ってくれる援軍と思ったんだろう。
そう言うタイミングだもんな。
まあ、待っててくれよ! 一緒には戦わないが間接的な援軍である事は間違い無いのだから。
昔喧嘩の強い奴が言っていたけど、半端に生かすとまた反撃しようって気になるんだって。ヤルなら徹底的に2度と関わりたく無いって思う程に心を折らないと駄目だってよ。
喧嘩の強い奴はその生かさず殺さずの案配のセンスが良いとか言ってたし。
まあ俺にそんなセンスは微塵も無いけどベストを尽くすから。 と言う気持ちを込めて笑みを浮かべて俺を見て居る城門の衛兵に力強く頷いて見せたのであった。
場内は騒然としており、何処も慌ただしく戦の準備をして居る。
で俺はと言うと悠然とメインストリートを歩きつつ商人ギルドを探していた。
冒険者ギルドに行くとやぶ蛇だと思うから、ここは商人ギルドの方が適切だろうって判断である。
多分、商人なら帝国の奥深くまで入り混んで商売してると思うし。
10分程メインストリートを歩いた所で漸く商人ギルドを発見した。
「こんちは~。」と軽い調子でギルドに入ると結構目を血走らせた情緒不安定っぽい受付嬢が俺の方を見てお決まりの「いらっしゃいませ、商人ギルドへようこそ。今日はどう言ったご用件でしょうか?」と手生け分を継げて来た。
俺は商人ギルドのカードを出してみせつつ「どうも。『オオサワ商会』の商会長をしているトージと言います。一応、冒険者もやってましてね。とある依頼があるんで偵察しないといけないんだけどね。帝都の・・・」と言葉を続けると「えっ!?」って短く声を発した後、絶句していた。
「ああ、一応これでもSランクの冒険者なんだよ。詳細は守秘義務あるんで言えないけど、その為に帝国内の帝都へのルートの情報が知りたくてね。そう言う事なら冒険者ギルドより商人ギルドでしょ?」と言うと納得した様に頷いたのであった。
帝都まで行商に行った商人からの簡易的な情報と地図を購入させて貰ってザックリとした道程とその距離を計算して行く。
国境から帝都はここから王都までの距離以上に遠く想定してたよりも移動に時間が掛かりそうである。
そうと判れば、こんな所で何時までも時間を潰すべきでは無い。サッサと帝国に入って帝都を目指すべきである。
俺は商人ギルドの受付嬢にお礼を言って商人ギルドを後にしたのであった。
さてと、何処から外に出るか? 只でさえ神経質になっているこの時期に愚直にここに入った時の南門の反対の北門からでるのは神経を逆撫でしそうだし・・・。
と暫し思案したが、城門を通過せずに上空から抜ける事を選択したのであった。
まあ、帝都まで当初の想定以上に時間掛かりそうなので、帝国陣営の攪乱と動揺を招く為にちょっとした時間稼ぎ代わりの
俺は滑空を開始して、帝国軍陣営の上空を旋回しつつ悪い笑顔で微笑むのであった。
これが王国と帝国の国境なのか。何て言うんだろうか? もっとベルリンの壁や韓国と北朝鮮の国境の様な厳重な壁や鉄条網やフェンスの代用品で物々しい物を連想していたが、別に明確な点線も杭も無く実にアバウトな感じで王国側の国境警備の詰め所の小屋と物見櫓が点在する感じである。
そんな立派な壁とか建設しても結局直ぐに帝国側の破壊工作で無駄になるから無駄なリソースを割かない事にしたのだろうか?
王国側の国境警備の詰め所のラインの上空を通過した後、1分もせずに帝国軍の陣営を発見って言うか、見た事無いぐらいの大部隊だよ!
コミケの待ちの行列の単位で考えると軽く5倍?ぐらいだろうか?
武装はしているものの、もう完全に寛いでててさ、余裕ぶっこいてナメプモード?だらけて焚き火を囲んで飲み食いして笑い合って居るよ。
多分、距離的にあの王都の襲撃の完全失敗の速報はまだ入ってないのだろうけど、もう奴ら勝った気で居るよな?
しかしこれとまともに戦って王国は勝てるのか? 王国の戦力って、あの脆弱な騎士団と大した戦力でもないのに祖国を裏切ったあの魔法使い達だろ?凌ぐ事さえ難しいと思うのだが?
いや、前回の襲撃で魔法使い居無くなったし戦力は更にダウンしているよな。 ヤバイじゃん!王国!!
そんな訳で俺達の平穏な生活と気分の良い結婚パーティーの為にも全力で俺の性格の悪さを発揮してやるいぞ!と地上に降りる事にしたのであった。
さて、帝国陣営の真っ只中にに降り立ったのだが、全く誰も俺の存在に気付いていない。
ふふふ、元々魔の森で魔物狩りをしてたから気配を殺すのは大得意であったが、最近の色々な鬱陶しい事件等もあってもうちょっと隠密で人に見られる事無く色々な工作が出来る様にしたいなと思って米軍のステルススーツの話やSF映画のエイリアンの装備を思い出して開発したのがこの
単純によく使って居る風のシールドの闇魔法バージョンとでも思ってくれれば判り易いだろう。
余程魔力感知が得意な奴でなければ
と言う事で、アイドルの寝起きドッキリ宜しく、息を潜めて遣りたい放題にさせて貰う事にした。
どこの世界だろうと兵士の最大の楽しみは食事であろう。
食事の質や量は即士気に影響するだろうし、これだけの人数を賄うだけの食料ともなれば相当の量になるし、無くなったからと言ってそう簡単に補充出来る筈もないのだ。
しかも日本の様に物流にトラックで一気に運ぶとかも出来ないし、飢えて干上がって貰わないといけないので精々沢山踊って欲しい物だ。
俺は食料等の物資の備蓄置き場の山の様に積まれた小麦の麻袋や豆の袋等を人目につく外側はそのままに内側からドンドンと『時空間庫』に放り混んで行く。
この様な食料備蓄置き場が師団単位なのか軍隊の事は判らないが複数箇所あるのだ。これは大仕事だな・・・。
いやぁ~大漁だよ大漁!!
干し肉が入った木箱も外側の木箱はそのままに影魔法のチューブを木箱の中に潜り込ませて強制的に血抜きをする時の様にチューチューと中の干し肉を吸い込んで『時空間庫』に回収して行く。
このチューブによる吸い込みはかなり効率が良いようなので、複数のチューブを動じに操作して麻袋の中身だけ吸い込む事にした。
大事な食料だけに見張りの兵士は複数人常時張り付いて居るのだが、荷崩れを起こす事無く徐々に低くなって行く食料の麻袋に気付く者は居らず、あから様になり過ぎない様に気を付けつつ、次の食料備蓄置き場へと移動し、同様の悪戯を熟して行く。
大体、1箇所の食料備蓄置き場をある程度抜いて行くのに所要時間が約40分程掛かっている。
食料備蓄置き場は全部で10箇所なので・・・うっへぇ~ぶっ続けでやって6時間コースかよ!?最悪じゃん。
コレじゃあ、日が暮れると言うか、定時上がり出来ないじゃん!!!どうするよ?俺!
って必死でペースを上げようとしてもやる内容が内容なのでそうそう早くは出来ない。
色々考えた結果、一旦魔の森の小屋に移動して、小屋の前の空いたスペースに食料等をゲートでゴッソリ移動させて、こっちでもっと
効率的に『時空間庫』にぶっ込んで行く事にした。
どうやって、一気に物資をゲートで移動するかって?
大丈夫!地面の上にゲートを発動すれば、上に乗っている物資はそのままあっちに移動するし。
しかし、一気に物資が無くなると流石に見張りの兵士が気付くので、10箇所一気に完遂するのがかなり難しくなる。
更に色々考えた結果、ゲートの繋げた先を魔の森の小屋前の空間では無く『時空間庫』にして直接ダイレクトに『時空間庫』に送り込む事を試す事にした。
試しに小麦粉の袋を幾つか取り出して実験したら、思った通りにダイレクトに小麦粉の袋を『時空間庫』に取り込む事が出来た。
よし!これで1箇所当たり1分掛からずに全回収出来るから、一気に10箇所の食料から、武器等の備品も全部根刮ぎかっぱらえる。
これから、余裕をぶっこいていた1万余りの帝国兵の悲痛な絶叫が彼方此方で聞こえる事になる。
10の部隊毎に配給されている食糧や酒、それに樽に入れられた安全な水これらの全てが見て居る前で一瞬にして忽然と姿を消すのである。
ある見張りの兵は上官から殴られ、盗みを疑われるが、あんな大量の食料を何処かに隠せる筈も無く完全に濡れ衣である。
効率アップした結果全部の物資を頂くのに要した時間は30分程も掛からなかった。こんな事なぞ、朝飯前である。いや、アリーシアの朝飯は今朝食べたけどね!
そんな事を考えて居たら、お腹が減って来たな。
さあ、阿鼻叫喚でパニック状態の帝国の皆さんの状況を上空のフォース・フィールドの足場の上で楽しく拝見しながらアリーシア特製のお弁当でも頂こうかな。
美味しい出汁巻き卵と塩鮭の解した具入りのおにぎり、甘辛の餡掛けになって居るミートボール、里芋と椎茸、コンニャクの入った煮物等、最高のおかずとおにぎりが一仕事を終えた爽快感と相まって非常に美味しい。
ふぅ~一気に食い終わった後、食後の緑茶を1杯頂きふーっと一息付く。
しかし、帝国兵の皆さんは大変だねぇ~! まだ揉めてらっしゃる。
そんな揉めてる暇在ったら、今の内に早馬?早竜を出して食料の補充を急いだ方が良いんと違うの? 一番近い砦だか駐屯地だか知らんけど、運ぶだけでも数日掛かるだろうに?
って思っていたら、漸くこの帝国軍陣営の一番偉そうなちょび髭オヤジが現れて、早竜を出す様に命令していた。
よし、彼奴がこの軍のトップか!顔覚えたよ! 一番豪華で大きなテントに居る様だ。
いや、日本ではこんな犯罪チックな嫌がらせとか出来ないけど、ここだと気兼ね無く出来るから良いね!
食料や備品を奪っただけで満足して終わりだと思う?ノンノン!!
まだまだイケるっしょ!?2度と従軍したくないって思える程の悪夢を味わって貰わないとね!
さて、此奴らは部隊によってバラつきはあるものの、朝食を食べて運の良い奴は昼食を食っているし、運の悪い奴は昼食の配給が滞ってしまってる。
だが、1食程度なのでまだまだ元気だ。
人は食事と安眠が無いと活動力がガッツリ落ちる。
安眠ねぇ~半端に濡れていると火も炊けないし気持ち悪くて眠れないんだよね。
昔学校の林間学校のキャンプで夜中に豪雨に見舞われて、前にそこのサイトを使った奴らが掘ったテント用の側溝の真上にテントを張ってしまったらしく、夜中の豪雨で埋められた側溝の土が雨水で流されてその真上に
寝て居た俺が寝袋ごとその側溝に落ちて水に浸かってしまいグショグショで寝るに寝られず悲惨な思いをした事がある。これがヒントでちょっと思い付いた悪戯があるのだ。
まあ、仕掛けに結構な魔力使うんだけど、これが成功すれば、テントも禄に無い一般兵等は熟睡出来ず最悪体調を崩すだろう。
俺は地上に降りて奴らの居る地面を土魔法と水魔法を使って徐々にジクジクとした泥濘に変えて行く。
ふぅ~、結構広範囲だから魔力持って行かれるな。焚き火をして居る奴らもジューって音を出して浸み出した水で火が消えて驚きの声を上げて居る。
奴らの陣営の宿泊地全体を泥濘に変えた後、遣り切ったと取りあえず現段階の悪戯を終えた。
だがしかし! さっきのちょび髭オヤジもテントの中の簡易ベッドで温々と寝られると思うなよ!?
夜中に戻って来るから恥ずかしい思いをしやがれ!!と心の中で宣言したのであった。
そして騒がしい帝国軍の陣営を見て微笑んで、漸く帝都に向けて出発したのであった。
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