第125話 報復? いや躾けだよ! その1

マッシモに戻った翌日、俺は商人ギルドや冒険者ギルドに顔を出して、直接間接を問わず今回も俺の領域に踏み込んで来たムカつく帝国に関する情報をそれとなく収集し、


帝国へ行く国境を越えるルート情報の入手に成功したのであった。


え?そんな情報仕入れてどうするかって?


勿論、二度と俺の領域に絡んで来れない様に躾けるに決まってるじゃん!



しかも、今回は、俺とアリーシアとの久々の王都デートだったんだ。それを邪魔してケチを付けただけで無く、全く関係無い只の庶民、単に運悪く居合わせただけの子共やその母親等まで巻き込んで爆殺したり、叩き切ったりしやがったからね・・・。


あの母が我が子を庇おうとして覆い被さった所を無惨に串刺しにして親子共々殺した現場を見た時の怒りは忘れられない・・・。

彼らの無念を晴らさいでか!って話だよ。



そりゃあ、正式に宣戦布告して戦った結果ならある程度は仕方無いかも知れないが、今回のは完全にテロだよな。

あの反逆者有りきのテロかも知れないけど、それはそれ。


なまじ国力や余力が在るのが原因でこう言うちょっかいを出すのであれば、最適な対応を取ってやろうじゃないか!と。


まだ結婚まで6日ぐらい余裕あるし、結婚指輪も入手済みだし、せめて気分良く結婚したいと思っているのだ。


まあ、6日で間に合うのかはちょっと微妙だけど、でも出来る所までの準備ぐらいは済ませておかないとね・・・。



さて、バッケルガー帝国への道程だが、王都からだとかなり遠いが、幸いな事にマッシモからと言うよりも地理てきには『魔の森』の反対側の俺の小屋を中心として考えた場合、2時の方向に向かって進んだ所にある、ロンデール公爵領を通り抜け、その先のラグナ辺境伯領の隣がバッケルガー帝国との国境地帯となっているらしい。


つまり、簡単に言えば、魔の森の小屋から出発して2時方向に進んでロンデール公爵領を経由し、再度道の詳細を確かめつつラグナ辺境伯領方面に向かえば良いって事だ。


毎日帰って来るつもりけど、最悪少し夕食に遅れるかも知れない。


余り公言する様な内容じゃないけど、アリーシアにはちょっと帝国まで直ぐに行ける様に一度行って来るとは伝えて置いたのだった。


取りあえず、今回の主な目的はゲートで直ぐに行ける様に一回座標を取得しに行くのが目的で特に危険は無いし。


だが、どうなんだろう? 敵国の首都であんな騒ぎを起こしてその機会を利用しない侵略国って在るかな? とフト不安になる。


もしかしてラグナ辺境伯の所は国境守備の最前線となって戦端が開かれている可能性があるんじゃないか?と・・・いや、まさかな?


そんな訳で朝から、アリーシアのお弁当を貰って魔の森の小屋に移動して、上空にゲートで移動してウィングスーツで滑空を始める。


今回は長時間のフライトになるので出来る限り速度を上げる為、風のシールドで空気抵抗を極限まで抑え何時も以上の速度引き上げた。


まあ、幾ら早いったって音速は超えないし、高々時速400km前後だと思うけど、この世界ではもの凄い速度である。


こうやって見ると王国って結構広いのが判るな。


広大な農地が眼下に広がり農民達が農作業をして居るのが見える。


おそらく厳密には既にロンデール公爵領に入っているんじゃないだろうか?


ロンデール公爵の領都を一旦経由するのが良いと言う事だったけど、一回地上に降りて農民に尋ねるべきだろうか?


なんせ、情報の元にしたのが5歳児の落書きの様な地図なので凄く不安だったりするのだ。


そんな事を考えて居ると、推定時速400km?で飛んでいるのが強烈に不安になってしまった。


そこで一旦地上に降りて領都の方向を確かめる事にした俺は、急激に速度を落としそれに伴ってグングンと高度も落ちて行く。


着地ポイントは前方の農村の手前で良いだろう。

俺はフォース・フィールドの足場を使って音も衝撃も無く静かに地面に降り立ったのであった。


村と言っても10軒にも満たない小さい集落である。村の入り口に門番や警備の者等居る訳も無く、絶賛農作業中の様で村は完全に無人であった。


なんと不用心な・・・この様子だと家の戸締まりさえしてなさそうだな。


それだけ治安の良い所なのかも知れないが。


とは言え、誰も居ないのでは領都の方向を知り様も無い。


取りあえず、誰か村人をみつけないと。


「おーーい!誰か居ないかーー? おーーい!」と大声を上げると、集落に一番近い小麦の中からオジサンがヒョコッと顔を出した。


「おめーさん、呼んだかい?」と。


「ああ、良かった、村に誰も居なくて焦りました。 お仕事中にお邪魔して申し訳無い。 ちょっと道を尋ねたくて。ロンデール公爵領の領都に行きたいのですが、道を教えて頂けますか?」と言うと、


「なーんだ、領都に行くんだか? 結構遠いんだけど歩きかえ?」軽装の俺を見て酷く心配されてしまった。


だが道は居たってシンプルで、村の反対側の出口?門から出てそのまま道なりにまっすぐだそうである。


折角丁寧に教えてくれたオジサンにお礼の代わりにお酒の小樽を2つマジックバッグから出してやると、


「おめーさんのそれって、今噂で聞くあのマジックバッグって物かい?」と実物を初めて見た様で驚いていた。


序でに何か不足してる物を聞くと塩がなかなかてに入り難い場所だと言うので、サービスで塩を麻袋1つ出してやったのであった。


大喜びされて、お金を少しでも払おうとして居たが、とても正規のレートで払える筈もないので、「まあ今回は道を教えてくれたお礼だから」と固辞して村を発ったのであった。


じゃないと、ズルズルと宴会まで開いて歓迎してくれそうな勢いだったのと、


「おめーさん若いのに独身かえ? 家に良い娘さ、居るだで、嫁に貰って行くか?」とか売り込み始めたので身の危険と言うか余計なトラブルを回避の為に早々に発ったのである。


そんな牛の子を売るかの様に娘を売り込むなよ!と言いたい。

それに俺には既にあと数日で奥さんになる人が居るからね!



そして、俺は小走りに村を去ってまた空の人となった。


道なりに真っ直ぐといっても田舎道、真っ直ぐどころか、逆に真っ直ぐな部分が全く無いし、草はボウボウに生えて居て、半分草に埋没仕掛けている様だ。


まあ、上空から見る分には点線状態ではあるものの、十分に判別出来るので支障は無い。


村を発って30分も飛ぶ頃には前方にマッシモと同等レベルの城壁が見えて来た、あれが第一チェックポイントのロンデール公爵領都であろう。


、城門から離れた人気の無い街道の横の原っぱに着地して、小走りに街道に出て城門の方へと進んだ。


ここロンデール公爵領は聞いた範囲の情報ではマッシモ様同様に大変評判の良い領主様の様である。

この先のラグナ辺境伯領の食料庫的な役割を担っているらしい。

更にいざ戦争となった場合、ロンデール公爵の方からも援軍を出すのでこのロンデール公爵とラグナ辺境伯の所の軍が対帝国の要と言って良いだろう。


なのでロンデール公爵領都の雰囲気や状態によって、俺の危惧した最悪のシナリオが始まっているか否かが判明するのだ。



城門の衛兵に冒険者ギルドのSランクのギルドカードを見せるとギョッとされて2度見されてしまった。


うん、確かにSランクは珍しいからな。


「お前さん、Sランク冒険者なのか!? やはり、対帝国の紛争の件か?」と不穏な単語を並べて尋ねて来た。


「ん? すまんな。依頼内容は守秘義務があるんでな。 やはり、帝国側に何か動きあるのか?」と聞いてみると、


「ああ、多分冒険者ギルドに寄れば詳しい話も聞けるだろうが、どうやら、国境付近に帝国軍が先週ぐらいから集まってって、どうにも焦臭い状態らしいからな。」と苦い顔で吐き捨てる様に教えてくれたのであった。

お前さん、ラグナ辺境伯の所まで行くのなら、街道が行軍で混む前に出た方が良いぞ!」と忠告してくれたのであった。


まあ聞きたい事は概ね聞けたので、敢えて冒険者ギルドに顔を出す必要も無い。

と言うか、寧ろ顔出して緊急依頼なんぞ出された日には拒否出来ずにどうなる事やら・・・である。


だから余計な所に鼻を突っ込まずにラグナ辺境伯の領都の道だけ情報入手して速攻でここを発つのが正解だろう。



流石はラグナ辺境伯領の食料庫と言われるだけの事はある。このメインストリートを突き抜けた城門から真っ直ぐ伸びた街道を只管真っ直ぐ道なりに行けばラグナ辺境伯領の領都だそうな。


尤も、通常竜車で約6日間ぐらいの距離らしい。


まあ、竜車で2週間の距離であっても、俺なら2時間掛からないからな。


一応、南の城門から入ったので、北の城門からちゃんと外に出る様にした。


だって、Sランクってだけでかなり悪目立ちするからね。記憶に残ってしまうと面倒だし。



北の城門は出る方よりも入る方が混雑してて、慌ててラグナ辺境伯領から逃げ出して来た商人や一般庶民らを乗せた竜車が城門の外に並んでいた。


この状況を見ると、いよいよ、秒読み段階に入ってそうだな。


何でそんなに他国の領土にちょっかい掛けるかね? 聞いた限りの話だと、別に帝国が資源に乏しい国と言う訳では無いのだ。


食うに困って、国民を支える為に仕方無くとかって嘘臭い理由さえ通用しない程に豊な国土らしいし。別に国内で仲良く平和に暮らしていれば良いのにって心底思うよ。


支配者がバカな欲深い奴だったりすると、国民が、それにその我が儘をぶつけられる方の国民も迷惑するんだよね。


そんなバカな某国の支配者の暴走?によって最終的に俺は焼け死んでしまったんだがな・・・。


まあこの際前世の鬱憤も帝国に晴らして貰おうか!?と思い付いて思わずニヤリとしてしまった。


この世界で2度目の人生を送れたお陰でアリーシアと出会ってもう直ぐ2度の人生初の春を満喫する予定だが、困るんだよね。


俺の春をちょこちょこ横から砂掛けて貰っては・・・。


キッチリ判らせてやらないと、無駄に大国になっちゃってるみたいだし。


漸く俺の順番になって、Sランクのギルドカードを見せると、衛兵が、ハッとした様な真顔になり、何故かザッと敬礼をして「ご武運を!」と言って送り出してくれたのだった。


きっと、義勇軍兵とかで参戦するって思ったんだろうけど、まあ良い読みだよ。


「ありがとう!」と俺も笑顔で返答して、街道をラグナ辺境伯領の方に向かって小走りに走り始めるのであった。



3分も走ると背後の北の城門も見えなくなって、前方にも後方にも人影が無くなった。チャンスである。


こんな所で、マゴマゴしている暇は無い。


俺は直ぐに空に上がって、ウィングスーツで滑空を始めたのであった。



ラグナ辺境伯領までよりも、寧ろその先の帝国内に入った後が大変なのである。


帝国内で帝都までのルートの情報が無いのでどうするか・・・。


一応、ラグナ辺境伯領都で帝都の情報収集が出来れば御の字なのだがな。



まあ、ラグナ辺境伯領都で帝都の情報がなかった場合のプランBは一応考えてあるので多少面倒ではあるが何とかなるだろう。



俺が上手く立ち回れば、無駄な戦端が開かれる事も無く無駄に血が流れる事も無くなる可能性が高いのだ。



まるで、『走れ!○○○』ではなくて『飛べ!トージ』だなと心の中で呟きつつ、眼下の街道を急ぐ竜車の列を見て心が急くのであった。



1時間ちょっと飛行した所で、かなり離れた所に本格的な城塞都市と言うか巨大な砦?の様な建物が見えて来た。



あれがラグナ辺境伯領都で間違いなかろう。


これ、籠城するだけで、そうそう簡単に破られる事は無さそうだな。


本当に凄い建築物である。


後で知ったが、この時俺が見て居たのは対帝国で前戦となる面ではなく、どちらかと言うと裏面で、向こう側の帝国側の面は堀まであってもっとゴツい仕様になっているのだった。



さて、情報収集の為に一旦ラグナ辺境伯領都に入らねばならない。 Sランクの冒険者カードを見られてややこしい事にならなければ良いのだが・・・。


最悪国王陛下から頂いたメダルでゴリ推しすれば何とでもなるだろう!? と腹を括って城門の衛兵やラグナ辺境伯領都に向かう通行者に気付かれない様に地上に着地するのであった。



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