第123話 ジェシカの晴れ舞台 その2

国王陛下が席を立って宰相の誘導で演説様の更に一段高い壇上に上がって声を発した。


どうやら拡声器的な魔動具を使っているらしく、ここに居てもハッキリと傍で会話をしているかの様に聞こえる。


なるほど、こう言う身近に国王陛下を感じる様な声の伝達が出来る魔動具あるとは知らなかった。


遠くて手の届かない高貴なお方が寄り添う様に声を掛けてくれている様に『錯覚』してしまう様な支配者にとっては絶好の魔動具である。


日本の政党も選挙時には是非使うと良いだろう。 支持率アップは間違い無い。


そんな事を考えながら苦笑いしながら国王陛下のありがたい声を聞いていた。



「我が国民の諸君! 今日は大勢集まってくれてありがとう。

今日は重大な発表があって集まって貰ったのじゃ。我が娘、ジェシカ第一王女が、ここ数ヶ月とある地に居る魔法の師匠大先生の下へ魔法の修行に行っておったのじゃが、ジェシカと、そのお側仕えの者の2人共に魔法が使える様になったのじゃ。

これまで魔法は適正の無い血筋の者は使えないとされておったのじゃが、儂も含み、ジェシカも、そしてお側仕えの者も魔法使いの血筋ではなかったのじゃ。

つまり、正しい魔法の修行を行えば儂も含め、国民の諸君らにも魔法が使える様になるかも知れぬと言う事じゃ。


現にその魔法の下には既に何人もの庶民の子共の弟子も居り、全員が魔法を使える様になって居るらしいのじゃ!」と高らかに宣言した。


その言葉に「うぉ~!」と地鳴りの様に沸き立つ観衆達。


てか、おっさん国王陛下!何を暴露してるんだよ!? 特定されて変なのが詰め掛けて来たらどうするんだよ!! と心の中で突っ込む俺。


「さあ、これから我が娘の習得した魔法をお披露目するとしよう。」と締め括り声援と拍手に手を振りながら満面の笑みで演説代を降りて行った。


「トージさん、『あれ』大丈夫なんでしょうか? マッシモって地名こそ言ってませんけど、ジェシカさんってあれだけ派手に行列作ってやって来て、更に王都に戻って行きましたよ。

もうマッシモって言ってるのと同じなんじゃ?」と不安げな様子で俺を見上げるアリーシア。


「うーん、大丈夫じゃないと思う。多分数ヶ月したら、マッシモって突き止められて乗り込んで来る奴が増えそうな厭な予感がするね。」とおれが答えるとアリーシアも「やはりそうですよね。」と更に不安そうな顔で頷いていた。


あのおっさん、本当に碌な事しねぇ~な。少しでも悪い影響があったらキッチリ責任取らせないと!!


そして国王陛下に代わってジェシカが壇上に上がってスピーチを始める。

「国民の皆さん、こんにちは!私は、小さい頃より、魔法が大好きで、色々な本や王宮魔法師団の方々に指導をお願いしたりしておりました。

ですが、皆さんも常識としてご存知の様に、魔法を使える使えないは血筋による物なので無理と言われました。


しかし、私はある出来事で師匠と出会い、師匠の神業の様な魔法に魅せられてしまいました。


師匠の作った石で出来たドームは血筋が良い筈の王宮魔術師団にも壊す事が出来なかったのです。


そんな師匠の下には数名のお弟子さんがいらっしゃいまして、その全員が魔法使いなのです!

特別な血筋で無くとも魔法は使えるのです!」

と言いながら、手の平を前に突き出して、手の平から、火を出しユラユラを炎を揺らした。

更には水の塊を目の前に出して浮かせ、上空へと飛ばして拡散させて見せた。


これには観衆も驚きの声と歓声を上げる。

「ただ、師匠は権力や地位等に靡くお方では無く、私が王女だからと言ってスンナリと弟子にしてくれる様なお方ではないのです。

ただ私も小さい頃からの夢、そうそう簡単単に諦められません。供の者と何度も師匠の所へお邪魔して弟子入りをお願いし、その度に何度も断られてしまいました。

しかし漸く熱意と覚悟を認めて下さり弟子入りが叶いました。

そして師匠の教えに従って毎日鍛錬し1ヵ月ちょっとすると、魔力を扱える様になりました。

そして、こんな私と傍仕えの者に『魔法の才能が在る』と言って下さいました。

私が今日ここで皆さんに魔法をご披露出来るのは全て素晴らしい師匠に出会い魔法を教えて下さったお陰なのです。

さあ、これから幾つか魔法をお店致しましょう。」とスピーチを終えて、


的に向かってファイヤーボールやアイス・アローやストーン・バレットを撃ち込んだり、更には俺が教えたファイヤー・ストームで炎の旋風を出してみせて、観客を多いに沸かせていた。


そして全てをやり終えたのか、一礼をして自分の席へと戻って行こうとしたそのタイミングで、大きな爆発音が聞こえ、観客の一部が巻き込まれ悲鳴が聞こえた。

俺は「魔装展開!急げ」とアリーシアに短く叫び瞬時に状況を確認する。

すると、やけに多いと思っていたゴツい風体の帯剣した冒険者のの様な奴らが、一斉に観客席の仕切りを乗り越えて、王族の居る壇上を目指して斬り込んで居る。


どうやら、クーデターの様だ。

更に近衛騎士団が王族の周囲を守っていると、そこに向けて離れた席に居た魔法使いの集団が在ろう事か近衛騎士に向かって魔法を放って来た。

これはヤバイ状況である。


逃げ惑う観衆の怒声や悲鳴そして、血生臭い鉄錆臭も流れて来ている。俺達は魔装で防御しているので大丈夫だが、どうするか?


ちょっとの間考え込んでいたのだが「ジェシカは?ジェシカを助けなきゃ!」と叫ぶアリーシアの声で腹を決めたのであった。

一旦、アリーシアをゲートで安全な自宅に送り、「しょっと終わらせてくる。後で救援の手伝い頼むかも。」と言い残して、騒乱の現場に戻ったのであった。


どうやや、王族の防衛して居る近衛騎士団の半数が魔法にやられて倒れて居る様子だが、ジェシカとラフティも手伝って、何とか守りを維持している状態である。


しかしジェシカ側の分が悪い。あの魔法使い集団は反逆者か?


で、この武装集団数百名以上は何処かの勢力か。


俺は、逃げ惑う観衆に斬り掛かってパニックを煽っている奴らから始末する事にして、上空にフォース・フィールドの足場を作って上空から、奴らを魔弾で狙撃する。

30名と言った所だろう。一般観衆に斬り掛かる奴らが動けなくなっているのを確認し、今度は近衛騎士向かって行ってる武装集団に対して上空の足場から魔弾をマシンガンの様に撃ち出した。


武装集団の半分程削った所で反逆者の魔法使い集団の後ろに出て、奴らを後ろから、スパパンと魔弾で足や手を撃ち飛ばしてやった。

ギャーーと叫びながらのたうち廻る偉そうなオッサン。


そんな俺に向かってそののたうち廻るオッサンの左右にいたオッサン2人がファイヤーボールっぽいショボい火の玉を撃ち出した奴も居たが、避けもせずに魔装だけで受けて弾くと驚いた表情で俺の方を見ていた。


「反撃はそれだけか?」と言って、奴らの足を石で硬めてやると、何やら必死で石で地面に硬められたのを何とかしようと魔法を使って居る様だが、全く変化が無く、ドンドンと顔色を青くしていた。

俺は更に残った魔法使い達に魔弾を撃ち込んだり、手足を地面に固めたりして、攻撃力を削いで行った。


おっと、ジェシカ側の防御の近衛騎士団がピンチの様である。この魔法使いの集団はもう戦力外なので放置で大丈夫と判断して、武装集団の数を更に減らす事にした。おれが地上に降りて

高周波ブレードで包囲してる後ろから、鎧ごとスパスパと切り裂き数を減らしていると、俺の存在に気付いた奴らが回れ右をして俺に剣を振り上げて斬り掛かって来る。一見ノーガードでその剣を受けると魔装でガキンと弾かれて驚いた表情をするゴツい襲撃犯。


「此奴、剣を弾くぞ!」と叫ぶその帝国訛りの言葉に俺が、「貴様達帝国の手の者か?」と俺が質問するとしまった!って顔をするが、高周波ブレードでサクっと肩から袈裟斬りにして終わらせた。


どうやら、また帝国が出張って来たらしい。


まったく・・・折角の王都デートを台無しにしやがって・・・。

こんなのを幾ら斬ってもムカつくだけで意味はない。



この王国の外交がクソなのか、反逆者を出してしまう王国も王国だよな。と心の中でボヤきつつ、後ろ側から残数をドンドン減らして行く。


まあある程度は尋問用に残して置いた方が良いだろうと考えて、高周波ブレードで真っ二つコースは少し数を減らし、魔弾で手足を吹き飛ばしたり死なない程度に抑えておいた。



漸く残数が数十名になった所で俺は手を引く事にして巻き込まれた観衆の救護に廻る事にして、手伝いにアリーシアを再度呼んだのであった。

「血生臭い所に呼んで悪いけど、治療して廻るから、手伝ってくれる?」とお願いすると、


「はい!」と快諾してくれたのだった。


いや、本当に血生臭い鉄錆臭で気持ち悪い。


兎に角息のある人達を見つけては俺が治療すると言うルーチンである。


アリーシアも治療魔法は使えるのだが、日本での知識のある俺と比べると、効果は小さい。


傷の程度によるが、重傷の場合は俺じゃないと治せない。


観衆の被害はかなりの数で治療が間に合って一命を取り留めたのはほんの僅かであった。

しかし、40名程は何とか助けられたので良しとするしかないだろう。


どうやら、俺達が観衆の治療をしおいている間に襲撃犯である武装集団の撃退が終わった様である。


国王とジェシカが何となく俺の方を見ている気がするが、スルーしておこう。


ジェシカもとんだ晴れ舞台と言うか見せ場になってしまって災難だったな・・・。


一応、師匠としての義理?責務は果たしたと思うし。




俺は、アリーシアを呼んで2人で手を繋いでクリーンを掛けた後、王都の自宅に戻って一休みするのであった。


「ゴメンな。折角の王都デートのつもりが、こんな惨劇の現場になってしまって・・・。 本当に帝国許せんな。これで帝国絡みの騒動何度目だよ!?」と俺がプンスカ悪態をついていると、


「大丈夫ですよ! トージさんの隣に居るだけでどんな所でも私には最高のな場所ですから。」と俺に寄り添って顔を俺の胸に埋めて来るのであった。


俺は思わずそんなアリーシアの肩を抱いてギュッと苦しく無い程度に抱きしめるのであった・・・。

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