第121話 ウキウキしない王都ショッピング その2

昨夜夕飯以降もトライしてみたが、ミスリルの塊を変形させる事が出来ずに終わってしまった。


今日もまた王都へ通う訳だが、昨日の師匠との話で思い付いたのでダンジョンのドロップ品の指輪も含めて探そうと思ったのだ。


王都には多くの商会が王国内外から集まる。

だから、他国からそう言う指輪が持ち込まれている可能性も0では無い。


まあ望みは薄いかも知れないが。



そんな感じに捜索のカテゴリーの幅を広げ気分新たに指輪捜索2日目がスタートしたのであった。


早速王都の商業街へ行き、『愛するアリーシアの為』なんて小っ恥ずかし事はとても口に出来ないが昨日以上の意気込みで店を廻るのであった。


武器屋等ダンジョンのドロップ品を取り扱う店も含めたお陰で指輪は指輪でもダンジョン産のシンプルなシュッとしたデザインの物も幾つか目に入って来る様になって、少し気分が上向きになって来た。


しかし、こうして王都を見て、廻っているとやたら帝国訛りの商人や冒険者が多い様に感じる。

俺の『ホーラント輝石』を落札しようと国王陛下と競っていたのも帝国の商会って事だったけど、仲悪いとか言いながら民間レベルは意外に交流左官だったりするんだろうか? 等と考えながら新しく発見した露店を覗き込むのであった。


そう、昨日は盲点で気付いて無かったが、国外や余所の土地から行商でやって来た商会や商人等は店舗を持っていないのだ。

そうすると商人ギルドにお金を払って市場の出店許可を取ってこう言う風な露店で商いを行うのだ。


ハッキリ言おう。 高級アクセサリー店が犇めく一等地に店を並べる所程に趣味が悪い。


つまりそう言う地区に来る客層に合わせたのだろうが、この市場の露店の方がセンスの良い物が結構多い気がするのだ。



そうして市場の露天を漁っていると、1軒の店で地面に布を敷いて商品を粗雑に置いてある店で燻し銀の様な又はサンドブラストを掛けて態と光沢を抑えた様なミスリル独特の金属表面の色彩を持つ指輪を発見した。


俺の脳裏には『女神の英知』によって、ダンジョン産のミスリル製指輪との情報出ている。

俺は思わず叫びそうになるのをグッと抑え、店主に気付かれない様にその周囲の物を見ながらそれとなく店主に話し掛ける。


「よう、店主見させて貰うよ!」と気さくに声を掛ける。


「おう、兄ちゃん見るだけじゃなく買って行ってくれよな! まだ今朝はサッパリなんだよ。」と苦笑いしながら気易い感じに応じてくれるおっちゃん。


「そうか、じゃあ安けりゃ王都の土産代わりに妹に何か買って行くかな・・・。おっちゃん安くしてくれよ?」と俺も同じ様に軽口を叩く。


「おう、ある程度なら値引きしてやるから頼むよ兄ちゃん!」と乗ってくれたので、ミスリルの指輪の横にあった金のブレスレットを見て、「おっちゃんこれ幾らだい?」と尋ねる。


「うーん、それか! 兄ちゃん、お目が高い!それは、大銀貨3枚だな!」と指を3本立てニヤリと笑うおっちゃん。


「えーー!? おっちゃん、高いよ!!大銀貨3枚?大銀貨2枚でも高いだろ? うーーん、じゃあ、そのちょっと変色しちゃったミスリルの指輪もおまけで付けてくれるなら、大銀貨2枚に銀貨5枚出しても良いかな・・・。」と俺が言うと、


おっちゃんが凄く嬉しそうな顔をチラッと見せてから渋い顔を作って「しょうがねぇ~な。朝一番のお客さんだから大マケにマケてやるよ!!」と言って商談が成立したのだった。


他に面白い物は無かったので、買った金のブレスレットどうでも良い物と目的のミスリルの指輪お宝をマジックバッグにシッカリとしまうのであった。


これは凄い物を掘り当てた!と内心大喜びして小躍りしたい気分だったが、それでもおっちゃんに悪い事をしたかな?って多少良心が咎めたのも事実。


だが、商人は自己の目利きが重要と考えるとおっちゃんの自己責任である。


おっちゃんの店から少し離れた所まで移動し、聞き耳を立てていると、さっきのおっちゃんの独り言が聞こえて来た。


「クックック、あのバカな兄ちゃんのお陰で、今日は朝から絶好調じゃないか!! 笑いが止まらねぇ~よ!!グフフ 大銀貨1枚の価値もねぇ~のにな!」って上機嫌な声が耳に入って来る。


まあどっちがバカかはさて置き、あんな調子なら俺も良心の呵責は無しで良いか。と吹っ切ったのであった・・・。


ミスリルの指輪が手に入って嬉しかったが、忘れていた事をフト思い出して、慌てて、マジックバッグから指輪を取り出して再度ジックリ情報を確認してみた。


そう、ミスリルは固いのだ。そんな固い指輪のサイズ調節が果たして出来るのか?と言う懸念である。


『女神の英知』ではダンジョン産とあって、『サイズ自動調節』と言う情報を見つけた!


どうやら、魔力を通しながら指に填める事で、指輪のサイズが自動的に最適化されるらしい。


何、その便利機能!? ちょっとアリーシアに渡す前に魔方陣とか調べてみないとだな!


もし衣服や靴、それに鎧等の物にサイズ自動調節が付与出来るのであればそれこそ、大革命である。


まあ服や鎧や靴で食ってる職人には収益的に打撃を食らう可能性もあるな。

ダンジョン産のミスリルの指輪は、思った以上のお宝のようだ。




さて本当に欲しい物が手に入った余裕で、心が軽くなった俺は直ぐに帰らずに市場の露天を全部楽しむ事にしたのであった。



市場の露天を見て廻っていると、何処彼処で人々がコソコソ話している話題が耳に入って来た。


どうやら昨日ジェシカ達が王都に帰還したらしい。


えらく時間が掛かったのだな。俺が一瞬で行き来出来ると知ったら激怒しそうだな・・・。と心の中で想像してとても言えないな。


まあ教える気もないけどな!と締め括ったのであった。



「おめぇ~聞いたか?ジェシカ第一王女殿下魔法をマスターしたらいいぞ! 何でもマッシモには魔法の『大先生』が居るって話じゃねぇか!? 血筋関係無く誰でも魔法が使える様になるって噂だろ?」とか囁き合っている。


なかなかに情報が早いな。 しかし、魔法の『大先生』ってのはなぁ~何かむず痒いよ。


「何か、ジェシカ第一王女殿下が魔法を疲労して下さるって聞いたぞ!? 本当か?」と言う話も出ている。


うーん、ジェシカも大変なんだな。 面倒な事多そうで・・・。 と王城の方のジェシカに頑張れとエールを送っておいたのだった。




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