第115話 第53階層 それは雷神の回廊 リテイク編

やはり昨日はあの時間に断念したのは正解であった。


だけど、今日は念の為、1~2時間は遅れるかもと出掛けに予告しておいた。


じゃないと、連日この第53階層双六の『振り出しに戻る』を無限に繰り返してしまう可能性があるからね。


早く最下層まで行って誰も見た事無いダンジョンの真理?真実?を見てみたいって気持ちはある。


果たしてダンジョンの最下層にはダンジョン・コアがあるのか?

ここら辺の情報は『女神の英知』にも冒険者ギルドの方も何処にも無いのだ。



と言う事でアリーシアを悲しませたり、寂しい思いをさせる事より重要か?と言われると微妙だが、やはり異世界に来た以上は、そう言う好奇心も満たして行きたい物なのだ。


■■■



そんな訳でやって来ました振り出しの位置。

昨日の朝と同じ繰り返しっす。


一応、昨日の断念した位置にゲートで移動する事試してみたのだが、結果は俺がこの振り出しの位置に居る事で察してくれ・・・。


兎に角1日で行ける最大限がゴール下層への階段に届かない限り無限ループである。


今日こそはゴールまで行くぞ!と言う意気込みでズンズンと進むのであった。



お昼頃までで、昨日断念したポイント近辺まで進めたのではなかろうか?


残念ながら、明確な比較対象が無いので全部俺の感覚的な憶測だけなのだが、疲労具合と言うか距離的な物がそれ位と感じるだけである。


昼飯を食べ終えると、更にペースを上げて進んで行く。


午後の部に入って暫くすると、明らかに様子がこれまでと違い、スパークがこれまでの様に真上に向かって安定していなくて、左右前後に揺らいで居る。


そう、まるで酔っ払いと言うか『酔拳』の使い手の様である。



何が何でもスパークにあててやるって言う悪意を感じるが、そこまで当てたいならいっその事直に狙って来れば良いのに・・・。と思わず心の中で毒突く。


おっと!!!直接こっちに飛んで来てすんでの所で避けられた? いやヒットしたっぽい。辛うじて魔装で弾いてくれた?


さっきの毒突きは訂正するので、直撃止めてーー!と心の中で焦る俺。


しかし俺の心の声も虚しく、バンバンと魔装に直撃がヒットして行く。


もうこうなったらヤケである。

魔装のイメージを絶縁体のイメージを更に強くしてみた。

謂わば絶縁体の全身タイツを着込んだ様な感じである。


これは功を奏した様で、直撃にあっても、不安感も特に魔力を削られる様なダメージ量も減った様に感じる。


最初からこうして置けば良かったのかも知れない。


更に直撃の中3時間程進んで、行くと雲が俺の視界を遮る様に邪魔をして来る様になったので、今度は風魔法で邪魔する雲を蹴散らかしてやる様にすると、雲の攻撃?妨害の手数が減って来る。


特に雲にダメージが入ってる感じでも無いが、雲を蹴散らすと、スパークの直撃の威力と弾数も減った様に思える。


もしかすると、これが有効打なのかも知れない。


気を良くした俺は、ドンドンと手数を増やして、より広範囲に風魔法で周囲の雲自体を明確に除外して撥ね除けてやった。


何となくだが、雲が弱って来ている様に感じる。


スパークの直撃も最初の頃の半分以下である。


何となく、この回廊の終焉が近い様に感じる。


現在の時刻は午後の5時で、何時ものリミット時間を越えている。



だが、今日はまだ帰らない。今朝ちゃんと予告しているので大丈夫だろう。 折角ここまで来たのだ。一気にキメよう!!



俺は更に広範囲に風魔法で雲を攻撃し、更に速度を上げて行く。


もう回廊自体が明確には判らなくなってしまっているが、大丈夫だ。多分これで道はあっている。 とそう感じるだけなんだが・・・。


あ! 見えた!彼処がゴールだろう!


俺の長い精神的な戦いが彼処で終わるのだ。


下層への階段の入り口に到達し、雲が周囲からも視界からも消えた。


明確にこの場所ならゲートで指定可能だと感じる。


一応念の為、更に進んで階段を降りて、第53階層に別れを告げたのであった。


実に妙な階層であった。

第54階層が階段の出口から見え隠れした所で漸く安心して魔装もシールドも解除してゲートで戻るのであった・・・。


家・・・いやジェシカ邸に戻ると、全員が安心した様に出迎えてくれて、一緒に食事を取った。


そう、嬉しい事に俺の帰りを食べずに待ってくれていたらしい。


どうやら俺は一人寂しく食べる必要は無いみたいである。


お礼とばかりに食後の身体強化と魔装の訓練にも熱が籠もる。


身体強化は全員がマスターし、魔装のイメージを着ぐるみと言うか、全身タイツの様に・・・と説明したが判って貰えず、具体的に紙にイラストを描いて漸く理解して貰えた様だ。


俺のイラストが良かったのか、全員が次々に弱い魔装を纏える様にはなった。


後は各自で魔装の強化を習得すれば良いだけである。


魔装の強化は特に纏う魔力のイメージ次第である。明確にイメージすればその分、ちゃんと魔装に繁栄されるのである。


「よし、大体全員基本は出来たな。後は各自で強化に努める様に。次の休みに全員でマッシモ周辺の森の浅瀬で魔物狩りをするとしよう!」と俺が言うと、全員が喜んでいた。


ピクニックではなく、『魔物狩り』である。ピクニックと勘違いしてないか?ってちょっと不安に思ってしまうのであった・・・。


「じゃあ、お弁当作らなきゃですね!?」と微笑むアリーシアが可愛かったので指摘はしなかった。

子供らも喜んではしゃいで居るし、まあ良いか・・・。

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