第111話 第52階層の長い1日
さて、初っ端からエグい連続攻撃でかなり体力と気力を消費したが、気が付くと既に3時間近くも経過して居た。時間的にはちょっと早めの昼飯時と言った感じである。
ここで無理して急ぐ必要はないのでちょっと場所を移して蟻共の残した酸っぱい匂いがしない所で軽めの昼飯にするとしよう。
と言う事で移動を開始したのだが、重要な事を見落としている事に今更ながら気付いてしまった。
俺は本来ならこの階層に入って直ぐに上空から、向かうべき方向を偵察するのだが、久々だった事もあって、完全に忘れてしまっていた。
イカンな!俺とした事が、こんな初歩的なミスを犯すとは・・・。
俺は両頬をピシャリと叩き、大きく深呼吸を3回してから上空へとゲートを繋いだのであった。
上空にフォース・フィールドの足場を作って、胡座を掻いて落ち着いてこの森林フィールドを眺めているが、ここの樹木の背が高い為、殆ど地上の状況が見えない。
唯一地面の様子が良く見える場所は俺が『アルテミット・バーン』で吹き飛ばした酸っぱい匂いのする所ぐらいである。
怪しい場所も見当たらず、手詰まりな状況だが向こうの方の木の辺り距離にして2km無いと思うが、何か霞みの様な・・・あ!!!蜂かよ!
どうやら、蜂の巣がある様で、一瞬霞か何かかと思ったが、どうやら蜂が群がって居る様子。
蜂と言えばみんな大好き蜂蜜である。
魔物の蜂から取れる蜂蜜は魔力豊富で絶品なのだ。売ると高額で良い金になるのだが、俺の場合余程の事が無い限りは我が家で消費する。
折角の美味しい蜂蜜を金に換えるなんて勿体無い。
まあ普通の冒険者なら真逆の事を言いそうだけな。
我が家には女性陣も子供達も居るし、みんなお喜びするからね。
と言う事で、取りあえず階段の方向は判らないけど、あの霞(蜂)の方を目掛けて移動する事にしたのであった。
方針を決め、ついでに上空で昼飯まで食べてしまい地上に戻った俺は蜂(ハチミツ)の靄の方向へとホクホク顔で進んで行く。
おっと!!蜘蛛だ! 木の上から、ベトベトの糸の塊が弾の様にが俺の方目掛けて飛んで来た。
間一髪で直撃を避ける為にバックステップすると、俺の居た場所の地面がドゴン♪と言う音と共に弾け飛んで小石や土がバチバチと俺の魔装に当たった。
なかなかにヤバイ威力を持っている。スナイプ・スパイダーと言う蜘蛛型の魔物だ。
ドギツイ色のストライプで毒々しさが際立っている。こんなのにマゴついて居るといつまで経ってもハチミツに辿り着かないので、狙撃された礼は狙撃で返してやれと真ドンで4つの目の着いたキショい頭の中心に1発お見舞いしてやった。
蟻とは違って外皮が極度に固い訳でもないので、ポスンと魔弾がめり込んでボトリと木の上から俺の居る方へと落下して来た。
最後の最後まで嫌がらせして来るとはふてぇ~野郎だ!と悪態をつきつつ手で触りたくないのでどうやって収納しようかと一瞬考えたが、手の魔装を少し厚くして、ソッと収納したのであった。
尤も、こんな蜘蛛の素材が有用なのかは疑問だが、もしかすると良い値が付く可能性だって0ではないからね。
まあ、こんなのを食う奴は居らんだろうけど。
◇◇◇◇
たった2km。そう思った目的地に辿り着くまでにタイド・キャタピラーと言う芋虫の集団に出くわしたり、全長50cm程のキラー・モスキートと言う巨大な蚊に襲われたりと、精神的にキツイ奴が多かった。
そもそも全長50cmの蚊ってなんだよ!? あんなのに血吸われたら、痒いとか思う前に貧血で死んじゃうよ!
勿論血を吸われる様なヘマはしないし、全部退けたし、叩き落としてやったけど、キショいから、回収はしていない。
あんなのの素材なんか使わないだろう? ああ、魔石? アレの胴体の中を魔石の為に弄るのは勘弁だぜ。って事でそのまま亡骸ごと放置してきたよ。
虫と言えば子供の頃、蝉やトンボ、更にはカブトムシやクワガタの飼育はしたけど、あの巣箱の匂いがキツくてテンションが途中で下がったのを思い出した。
丁度ワイルド・ビートルって言うカブトムシの魔物に襲われたのが切っ掛けなんだけどね。
カブトムシって、力持ちのイメージあったけど、こっちの魔物のカブトムシは力持ちの度合いが異常で、倒れた倒木を口で咥えて振り回して来やがった。
魔弾を撃ったけど、予想通りに固い外骨格に阻まれて、方向を逸らされてしまった。
カブトムシのくせして生意気である。
どうやって倒そうかと考えたが、結構金色に光る外骨格が派手で綺麗なのでフォース・フィールドの足場で奴をひっくり返して、然程固く無い腹の方からサクっとブレードで斬ってトドメをさしてやった。
漸く蜂の靄のあった木の麓の近所まで辿り着いた頃にはここを目標に出発してから既に2時間が経過して居る。あともう少しは帰宅時間だ。
焦る訳では無いが、美味しいお土産を持って帰りたいのでちょっと巻きで行こう。
さて、何時ものハチミツ採取時の作戦で行くか?と木の裏からソッと顔を出して様子を窺うと、巣の周りにさっきの蚊よりは小降りだけど、30cmぐらいのサイズの蜂がブンブンと羽音を響かせてホバリングしている。
これは全部やっつけないと後々鬱陶しく付き纏われるパターンではなかろうか?
巣の中の蜂ごと一網打尽にするのは容易いが、巣の外に居て巣の警備をしている彼奴らはヤバイ。
どうしようか?と思案した俺は、まずは無属性のブロックで巣の出入り口を封鎖し、飛んでる奴らに無属性魔法で作ったネットを構築し、投網の様に撃ち出してやった。
地面にドサリと落ちてギギギと声を発して仲間に助けをモテ尾メル蜂共。
無属性魔法で作ったネットに電気をピリリと効かせて全匹を始末した。
外で飛んでる護衛がいなくなれば、後は簡単である。
無属性魔法で作った触手の様なチューブを上手く巣の入り口から突っ込んでハチミツの在処までズイズイと進ませる。
そして見つけたハチミツをチューチューと吸い込んで土魔法で作った蜜壺にドンドン
と貯めて行けば良いだけだ。
この場所は覚えて置けば次回もまた美味しい蜂蜜のお替わりが出来るかも知れない。
ハチミツの匂いと言われてもピンと来ないが甘い香りが周囲に漂って居る。
余計な魔物が来ない内にサクっと作業を終わらせねばと大急ぎでハチミツを全部頂き、夕方に差し掛かる午後4時と言う事で、ゲートをマッシモの貴族街の目立たない場所に繋いで、コッソリと戻ったのであった。
そしてジェシカ邸に戻った俺は、クリーンで身を綺麗にしてから出迎えてくれたアリーシアに、
「ただいま! 今日は美味しくて甘い物をお土産に採って来たよ!」とハチミツの入った壺を見せると嬉しそうに微笑んでくれた。
寒い冬等にレモネードなんかも美味しいけど、
手軽に食べられる様にこれを使ってレモンのハチミツ漬けでも作ろうかな。と思うのであった。
案の定、帰って来た子供達はハチミツのお土産をとても喜んでくれた。
夕食後のデザートの代わりにパンにハチミツを垂らして美味そうに食べていたのであった。
そうそう、今朝ジェシカ達からの要望のあった魔物討伐体験の話をして、折角だから子供らやアリーシア、ソフィアの女性陣2人にも魔物討伐の体験をしないかと言う事を提案してみた。子供らは勿論即参加を表明していたが、当初拒否されるかと思った女性陣は、意外にも乗り気で、全員ジェシカ達と一緒に魔物討伐をする事になったのだった。(勿論この中に師匠は入っていないけどね。)
とは言え、安全の為に、身体強化と魔装の訓練をする事を提案し、毎日夕食後に俺が見てやる事になったのだった・・・。
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