第99話 Sランク冒険者の誕生

俺はマッシモ東ダンジョンの第50階層のボスを攻略したと言う報告を何時もの様に50階層のボスまでの報告をきちんと纏めてからゲンダさんに報告すると、俺の事を思わず顔が赤くなってしまう程に賞賛し、褒め称えて、ゲンダさん自身も大喜びしてくれた。

「もしかして、トージが王国初のダンジョン踏破者になっちまうかも知れんな。俺はそんな伝説になる1ページを生で見ているのかも知れないな。」等と呟いていた。


「いや、確かに最下層まで行ってみたいけどさ、何階層まであるのかさえ判らないからね。先が見えないって結構モチベーション的に辛いよね。 しかも、1階層進む毎に致死率の上がり方って言うか、殺意度がガンガン上がって行って相当にヤバイからね。ウカウカしてると、びっくりする様な殺し方して来るから。敵は魔物だけじゃ無いって事だね。 50階層で『これ俺の纏めた報告書の束』のエグさだから、仮にキリの良い100階層が最下層だとすると生きて帰って来られるか、正直俺にも判らないな。」と正直な感想を告げたのであった。


何はともあれ、これでキリも良い感じにSランクに昇格出来ると言う物だ。


え? どうせなら、最下層までクリアしてからSランクを誇れって? 無茶を言っちゃ駄目だよ。本当にドンドン生還するのが難しくなって行くんだから。

まあ、どうせ、何階層まであるのかを女神マルーシャ様にお窺いを立ててみたとしても、食い気ばかりでそんな細事なんて忘れてそうだしな。



そう言えば、先日献上したホットケーキはえらくお気に召したっぽいな。

その後の会話ではしきりと、「毎日でもええのじゃぞ?」と何回も言っていたけど、毎日なんて献上しに行ける訳が無いって!


毎日献上ねぇ~。出来なくもないけど、司祭様やシスター達に目撃されると面倒な事になるし。なんなら、あの女神像を1体貰って自宅に奉って置くのも手かな?

日本人的な感覚だと、自宅や(職種によるけど)会社の事務所とかに神棚とかあってもおかしく無いし。家内安全ってね。


ちなみに、祖父母の家にも神棚だあったのを覚えて居る。爺ちゃんの家に行くと

必ず仏壇と神棚に手を合わせてたし。


しかし、あれだな!最近では、英知の女神ってよりも食い気の女神だな・・・。と本人の前ではとても思いもしちゃ拙い事を思って苦笑いするのだった。



漸く今週である!もう届いているのだろうか? だが非常に不思議な事があって、ギルドからは何も言ってこないけど、先週末辺りからなにやらマッシモの衛兵や普段これと言って仕事らしい仕事もなさそうな?マッシモ騎士団の様子が変で、かなり念入りに巡回したり、城門での検査やチェックが入念になっているのだ。こう言っては何だが、『たかが』Sランクの冒険者カードの運搬ぐらいなのにな!?って、正直、思ってしまった。


騎士団の団長さんは普段は気の良い飲んだくれのオッサンなんだが、妙にピリピリしている様に見えるし。






普段とのギャップが激しいのだ。


な?何か違和感あるだろう?


あれか!? マッシモ初のSランク冒険者誕生の授与式と大宴会するとかって言ってたからか?


あとね、マッシモの街のど真ん中の公園にステージっぽい壇上だ作られて観客席や屋台の準備とかも始まってるんだよね。


何か俺の事なのに、俺は蚊帳の外で申し訳無く思ってしまうのだが・・・。




 ◇◇◇◇


あれよあれよと周りがドタバタしている内に当日となった。


今日までの数日間俺は、ゲンダさんのお願いを聞いて家で大人しくミンサーの開発の為の細かな実験を行って家に篭もっていたのだった。


そして、パレードをしなくちゃいけないので、家までパレード用の竜車で迎えに来ると言う事で、何時もよりちょっと小ざっぱりした服に着替えて待っていた。


そして、家の前に竜車と護衛?先導のマッシモ騎士団の一団が到着して、家のドアをノックされた。



俺がドアから出て笑顔を作ろうとしたが、その警備の物々しさに若干引き攣りつつお出迎えしてくれたマッシモ騎士団の団長さんに

「団長さん、お出迎え恐縮です。ありがとうございます。」と言って頭を下げると、


「いえ、職務故、当然の事でありますれば、お気遣い無く。」と返してくれた。


そして、誘導されるがままにパレード用の竜車のお立ち台?に行くと、既に先客?が微笑みながら、その美しいドレス姿で立っていて、その横に見覚えのあるメイド服お女性が居た。


「あっ!!」と思わず声を上げ、必死でかなり前に聞いた名前を思い出そうと焦る俺。


そうだ!「戦闘メイドの・・・ラフティさん!?」と俺が小さく叫ぶと、戦闘メイド服姿のラフティさんがニッコリと笑顔を見せて軽く頭を下げた。


「あれれ? 何でマッシモに居るの? 結局ブラックな王宮勤め辞めたの? 前にそんな会話した様な?」と俺が混乱しながら呟く様に尋ねると。


「いえ、トージ様のお誘いに乗ろうと一旦王宮の職を辞したのですが、非常に残念ながら退っ引きならない事情で阻止されてしまいまして・・・、王宮勤務からは何とか離れられ亜のですが、こうしして、高貴なお方のお付きの任を命じられてしまいまして・・・。

まあ、マッシモ滞在任務との事でしたので、お請けした次第でございます。」と非常に判り易い説明をしてくれた。


「ふ~ん、そうなんだ?逃げ損なったのか。可哀相に。まあ、何だかんだ言っても本気では逃げなかったんだろ?君の実力がったら、本気で逃げてばそこらの騎士や衛兵なんかじゃ刃が立たないし。」と俺が推測した内容を言うと、微妙な苦笑いで躱されたのであった。


そうか。 で、こちらの女性は? 何やら、遠い昔に何処かでお会いした様な、しなかった様な?」と釈然としない感じで尋ねると、思いっきり嘆かれてしまった。そのドレスの女性に。


「トージ様!酷いですわ! 庭園で浴室作って見せて頂いたり、的撃ちの提案をして一緒にお兄様をギャフンと言わせた仲なのに!? 私の事をお忘れですか?」とすねた様に鳴き真似をする知らない人。


「えっと、それって・・・申し訳無いです。厭な思い出や怒った事は頭の中から消し去って置かないと、報復リストとして残る事がありますので。

 初めて無く、庭園に浴槽と言うと、王城での一件ですね? と言う事は、王女殿下?」と言うとニッコリ微笑むその女性。


「おかしいですね? 確か国王陛下の話では、俺に二度と絡まない様にすると言う話だった様な・・・」と俺が呟くと、


「正にそれですわ!」と王女殿下が小さく叫ぶ。


王女殿下曰く、二度と先日の何チャラ子爵の事件の様な事が起きない様に、虫除けの意味も兼ねてラフティ嬢と一緒に俺から『魔法を習う』弟子股は生徒と言う名目でマッシモに来たそうだ。


「えーー?何それ? 承諾した覚えは無いですが?」と若干イラッとして語尾が強くなる俺。


そんな俺の方を非常に申し訳なさそうな顔で見るラフティ嬢。


「そんな!今更拒絶されたら、私、修道院送りになってしまいますわ。もう既に全貴族に通達しておりますし、この歳で未婚のまま修道院は酷ですわ!」と芝居がかった感じに嘆く王女殿下。


「まあそれは、取り敢えず今日の式典が終わって空にしましょう。皆さんがお待ちの様なので。」と降って湧いた厄介事にガックリしながら、諭すのであった。


漸く竜車が出発し緊張した面持ちの団長と騎士団がガッチリ隊列を組んで街を練り歩く。


何か俺は引き籠もっていたので知らなかったが、既に街の住民には王女殿下のマッシモ訪問と滞在はお達しがあったらしく、「キャー!ジェシカ第一王女様ーー!」と声援の声を鳴り響いている。


そうか、『ジェシカ第一王女』ってのが正式名称ね!?と一応名前を覚えたのであった。

初っ端に厭な事があったからと、仏頂面のままだと、折角ここまでお膳立てをしてくれたみんなの努力がフイになると思って、声援をくれる蜷さんに笑顔で手を振る俺。



つまり、よくよく考えると、あの何チャラ子爵の跡地を購入し、俺の職人達を横取りしたのは、『こいつ』って事だ。


それで、よく俺が喜ぶと思ったな? とここの所の不思議な事や不可解な色々の謎が解けた俺は心の中で深いため息をついたのであった。




マッシモにとって、第一王女こいつが滞在する事はメリットのある事だろうか?と考えると、確かに客寄せパンダぐらいにはなりそうである。


だが、それと俺が第一王女こいつに魔法を教えるか?は別の話だ。


兎に式典が全て終わるまで笑顔が引き攣らない様に気を付ける事にして何とか過ごすのであった。



どうやら、俺のSランクのカードは第一王女こいつらが運んで来たらしい。


と言っても、ゲンダが俺の微妙な怒りを感じ取ったゲンダさんが小声で教えてくれた情報いよるとそもそもは別便でもっと早くに届くのを横取りして利用したって事の様だ。

一瞬第一王女こいつらに感謝しそうになってしまったよ!危ない危ない。

そんな情報あったなら、もっっと早く言ってくれよ!! ゲンダさ~ん!と大きな声で言いたい所だが、ゲンダさんも立場故に言うに言えなかったのだろう。


式典会場で授与式とかスピーチとかをして、


「皆さん、トージです。今日は俺の為にここまで盛大に祝って頂き、誠にありがとうございます。 今日のこの日に挑むに際し、折角だから胸張ってSランク冒険者を名乗れる様にとマッシモ東ダンジョンのキリの良い所で第50階層のボス部屋まで何とか攻略を済ませました。情報は冒険者ギルドに渡してあるので嘗ての冒険者の先輩が後に続く俺達の為に情報を残してくれた様に何時しか俺の後続が頑張ってくれる事を期待しています。

ただ、無茶はいけません。冒険者は冒険はしても無謀はしちゃいけない。ちゃんと無事に帰って来ないと。俺達の帰りを待つ家族や仲間がいるのだから。 みなさんも、『命大事に』で冒険して下さい。今日はどうもありがとうございました!」と言ってスピーチを締め括ったのであった。


マッシモ様のスピーチで盛り上がった後に第一王女こいつも一席ぶって居たが、余り聞いて無かった。


そんな冷ややかな視線を感じ取ったのか、マッシモ様が苦笑いしていた。



そして、式典自体は終わり、俺も無事にSランクのカードを手に入れ、Sランク冒険者となったのであった。


そしてそのまま解散となる訳では無く、勿論住民上げての大宴会となり、俺は良く知らなかったのだが、アリーシアさんと子供達が協力し相当数の料理を提供してくれたらしい。


アリーシアさん達に心の底から感謝しみんなと合流し、大宴会を一緒い楽しむのであった。



え?第一王女の事? まあスルーだよ、スルー!今後どう対処するかは明日以降に考える予定だ。


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