第97話 俺の職人横取り事件発生
定休日に全員でピクニックで例の丘へ行ったのだが子供達も女性陣も、あの師匠でさえ、はしゃいだ様子だった。
師匠の場合、少々の事では動じない様なクールな雰イメージあるけど、どうやら、感情表現が得意で無いと言うか下手みたい。
長年1人で居るとそうなっちゃうよね?
斯く言う俺も両親の死後は1人が長かったから、段々感情を出す様な変化に乏しい生活で、気付くと1日全く笑って無いって事も多々あった。
そんな訳で珍しく喜んでいるる乙女っぽい表情の師匠の姿を見てちょっと日本に居た頃の自分の生活を思い出してしまった。
師匠曰く、こう言う大地や水のマナの澄んだ所には精霊が居ると言う通説があるとの事だった。
尤も、精霊を見ようと思っても精霊自らが姿を見せようと思ってくれないと我々には見る事が出来ないのだとか。
どんな感じの姿見えるのだろう?
精霊の存在なんて、正にファンタジーそのものである。もし居るのであれば、一度は姿を拝んでみたいと思うは当然だろう?
俺達の話の内容にみんな興味津々で聞き耳を立てている。
やはり、こっちの世界の住民も、こう言うファンタジーな話が好きなのだろう。
ましてや、第二期生以外の全員は魔法が使える様になったばかりだし、興味のある分野なのだろう。
一応、第二期生も俺や他のみんなの指導や助けを受けて魔法の習得の努力を日々行っている。
「どんな姿をしてるんでしょうかね?師匠は見た事は?」と期待を込めて聞いてみると、
「そんな希有な存在をこの私が見られる訳がなかろう?」と自虐気味に吐き捨てる様に呟いていた。
そんな師匠の自虐的な発言は何時もの様にスルーして、「小さい人の形とか、光の玉とかかなぁ~?」とよくある異世界物の定番の姿を呟いていたのだった。
ふと『女神の英知』で探ってみると、確かに精霊と言う存在がヒットしたが、姿形までは情報がなかった。
やはり存在は居ると思って良いのだろう。
ただ、知性のある存在で、異世界物によくある様に意思疎通が可能かは微妙だと思って居る。
興味が湧いたのでこの世界の精霊に纏わるお伽噺を聞いてみたが、誰に聞いても大した内容も無く、何か大きな魔法を使ったと言う事でもなさそうな話だった。
まあ、そんな訳で、ピクニックは俺の作ったホットケーキと精霊ネタもあって大盛況の内に終わった。
こんなに喜んで貰えるのなら、定期的にみんなでお出かけする機会を設けるのも良いと思うのであった。
■■■
さて、全員でのピクニックも終わった後、俺はハードにならない程度にダンジョンアタックを進めており、第42階層のゾンビエリアを風のシールドで匂いが付着しない様に防御しつつ更に朽ちと鼻を覆うマスクをして浄化して、臭い匂いで発狂しそうなりながら廻った。
ここのゾンビに噛まれると元の世界のパニック映画やドラマの様に噛まれた者もゾンビになるのかは微妙だが、ゾンビ自体は痛みも恐怖も感じない様で、半端な攻撃しても動ける間は半壊状態で襲って来ようとする鬱陶しい奴らだ。
まあ、浄化を掛けると、魔石を残して消えてくれるのはありがたいが、トングや火挟みの様な物で抓む様にしないと腐った肉が時折魔石に付着して残っていたりするので要注意である。
そんな鬱陶しい第42階層を経て何だかんだで、約1ヶ月の時を掛けて48階層まで進んだ。
安全第一、命大事にで今の所前回の様な命の危機を感じる様な事も無く無事にやっているが、1つ言えるのは、階層を追う毎に殺意マシマシのフィールドになって行く事である。
このダンジョンが何階層まであるのかは知らないが、最後の階層まで到達出来るのか、ドンドン怪しく感じるのであった。
まあ義務ではないが、出来るだけ先に進めて情報を残す事はしたいと思う。多分この先にも俺以上に先に進める者は現れないと思うので。
そうそう、ちょっと問題と言うかトラブルがダンジョンとは無関係な地上であったんだよ!
ほら、先日アリーシアさんが言っていた、例の何チャラ子爵の跡地を買った貴族?があの跡地の大改装と建築を大急ぎで行うとかで、俺の方の豆腐&シラタキの工場建築現場の職人を横取りされちゃってね・・・。
建築予定が大幅に遅れてしまったので、仮設の工場(倉庫)で引き続いて製造は行っているんだけど、工場の建築を俺がかなり代行する必要になったのだ。
巫山戯るな!俺の職人達を返しやがれ!!と、文句の1つでも言いたい所だが、マッシモでまた貴族絡みの揉め事あると、必然的に間に入る事となる領主様や、仕事を断れない職人達が板挟みに合って迷惑掛かりそうと思ったので我慢したのであった。
この所為でダンジョンアタックが強制的に約1ヶ月程停滞する事になってしまったのであった。
折角あともう少しでキリの良い第50階層のボス部屋だっただけに非常に残念である。
一応、建築中の設計図的な適当なメモを頭領から借りて、チョイチョイ助言を貰いながら後を継ぐ感じで何とかやれる所はやった。建物自体と外装はまあほぼOKだろう。
問題は無いそうで、2階への階段や、事務所や更衣室や休憩スペースの内装や扉等はどうしても職人さんにやって貰った方が良いだろうって事で頭領に無理を言って5人程2週間貸して貰う感じに無理を言ったのだった。
てか、そもそも、家が契約していた職人さんなのに、『貸して貰う』って表現がへんだよな!と後で気付いたが、彼らに文句を言っても始まらないのでグッと我慢である。
短期間でお借りした諸君さん達は申し訳なさそうにしながらも、限られた日数で、必要な内装や扉等全てをキッチリ完成させてくれたのだった。
そして、漸く、新しい工場が完成し、仮設工場の方は原状復帰して元の倉庫に戻し、新工場の方に全てを移して、製造ラインと言うか、増産も様に機材を増やしたのであった。
アランさんを始め、工場に勤める全員に工場建築が予定より遅れた事を詫びて新工場開きのお祝いの宴会ではこれからも宜しくと言う意味で美味しい食べ物と金一封を渡しておいた。
◇◇◇◇
新工場に完全にチェンジしてから、1ヶ月が経った頃、風の噂で件の何チャラ子爵の跡地の改装工事?が完全に終わったらしい。
元は伯爵だった頃に建てられた広大な敷地である。キチンと整え整備すれば見応えのある屋敷となるだろう・・・。
頭領から、やっと駆り出されていた工事が完了し、それは見事な屋敷にあったと報告を受けたのだが、余りにも自慢気に頭領が言うので、どれ程の物かちょっと見たくなって、コッソリ上空から、フォース・フィールドを足下に置いた状態で宙に浮かんで視察してしまった。
確かにこれだけの改装工事、よくあんな短期間で行ったなぁと感心する程に、ビフォアーとアフターで大きな違いがある。
しかも、屋敷の建物だけで無く、庭園まで完全に綺麗に整備されていて、王城程ではないにしても、白亜の宮殿と呼んでもおかしくない出来映えで、あのくだらない禿げ豚貴族の下品なイメージを微塵も感じさせない仕上がり具合であった。
「これは確かに自慢したくなる仕事だろうな・・・。」と独り言を呟いて、自宅に戻ったのであった。
ぼやいて居ても始まらない。
ハプニングの所為で中断していたが、そろそろ俺もダンジョンアタックを再開しよう・・・。
そう決意したのを見透かした様に冒険者ギルドのゲンダさんからのお呼びが掛かり、久々に冒険者ギルドに顔を出す事にしたのであった。
「ゲンダさん、何か用事があるって?」と久々に見る厳つい顔に挨拶をすると、
「おお、トージ!多分来週辺りに漸くお前さんの新しいギルドカード届くって知らせが入ったんでな。ダンジョンに篭もりっきりだと渡せなくなるんでな、そこら辺にの日程を頭に入れて置いてくれ。少なくとも前日にはマッシモに戻って居てもらわないと拙いからな!」と何時もは割と大雑把なゲンダさんが緊張した面持ちで俺に釘を刺していた。
なんでもこのマッシモからSランク冒険者が誕生するのは初めての事なんだそうで、
それなりにキチンとした祝賀会的な事をするんだそうだ。
尤もそれを受ける俺が居ないと洒落にならないので、事前にキッチリ念を押していると言う事である。
まあ、ギルドとしては初なら大々的に祝いたいってのも判るので、
「ああ、了解した。完全に日時が確定したら、家の者にでも伝言頼むよ!」と言って冒険者ギルドを後にしたのであった。
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